周体制10年 「つよさ」と「ひずみ」 中国共産党大会を前に① 新型コロナ 異論許さず厳しい対策
7月上旬、中国湖北省武漢市の中心部に位置する華南海鮮市場は閉鎖されたまま高い壁に覆われていました。
市場の周りには、高層マンションや低層住宅が立ち並び、かつては多くの市民が食料品の買い出しに訪れていました。
2019年12月、春節(旧正月)を控え買い物客でにぎわうこの市場で、新型コロナウイルスの感染が初確認されました。ウイルスは瞬く間に武漢市内に広がり、今でも続く世界的大流行(パンデミック)を引き起こしました。武漢市は翌年1月23日からロックダウン(都市封鎖)されました。
閉鎖された華南海鮮市場。高い壁で中を見ることはできません=7月12日、中国湖北省武漢市
ある医師の警告
都市封鎖の中、医療関係者や薬などを自家用車で運ぶボランティアをしていた男性は「都市封鎖の通知は突然だった。それまでは、多くの市民が集まって食事したり、旅行に出かけたり。なんの警告もなかった」と当時を振り返りました。
新型ウイルスについて、その存在を当局が認める前から警告していた医師がいました。眼科医の李文亮(り・ぶんりょう)医師らです。しかし警察当局は「デマを流した」として李氏らを訓戒処分。李氏は、患者の診察を続け、新型コロナに感染し亡くなりました。
「武漢市民はみな李氏を尊敬している。あの警告が受け止められていれば、結果は違った可能性もある」と前出の男性は語ります。
李氏は死の直前、「健全な社会は一つの声だけであってはならない。公権力に過度に干渉されることに同意しない」(中国誌『財新』のインタビュー)と語っていました。この言葉に、多くの人が共感しました。
その後、中国政府はコロナ対策として、感染者や接触者を迅速に隔離し、大規模なPCR検査を行うなど「動態ゼロコロナ政策」を実施。今も感染が増えた都市をすぐに封鎖するなど、抑え込み政策を続けています。
管理強化の手段
今年4月には、中国最大の経済都市・上海で2カ月にわたる都市封鎖を実施。習近平国家主席は「動態ゼロコロナ政策の堅持」を繰り返しましたが、対象者の強制隔離などには異論も相次ぎ、感染症や経済の専門家からも政策見直しを求める声が出ました。
中国のある政治学者は「科学に基づいて政策を見直しするのは当然だ。しかし、コロナ対策は、堅持することが目的の政治運動になっている」と語ります。
中国政府はコロナ対策に行動管理アプリなどのデジタル技術も導入しました。中国に住む人は、どこに行くにも当局に行動が把握されるようになっています。7月、資金繰りが悪化した河南省の地方銀行が預金引き出しを停止した際、預金者が省政府に訴え出ることを当局が妨害する事件も起きました。同アプリを不正操作し、「感染の疑い」と表示させて足止めしたのです。
ある弁護士は「コロナ対策は政府が社会の管理を強める手段の一つになっている」と指摘しました。
◇
中国の政権党・中国共産党の第20回大会が16日から開かれます。
前々回の大会(2012年)で発足した習近平総書記が率いる中国。権力集中ともいわれる習指導部体制の―強さ」のもとで、深刻な社会の実態が見えてきました。この10年を振り返ります。
(武漢〈中国湖北省〉=小林拓也 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月9日付掲載
新型ウイルスについて、その存在を当局が認める前から警告していた医師がいました。眼科医の李文亮(り・ぶんりょう)医師らです。しかし警察当局は「デマを流した」として李氏らを訓戒処分。李氏は、患者の診察を続け、新型コロナに感染し亡くなりました。
今年4月には、中国最大の経済都市・上海で2カ月にわたる都市封鎖を実施。習近平国家主席は「動態ゼロコロナ政策の堅持」を繰り返しましたが、対象者の強制隔離などには異論も相次ぎ、感染症や経済の専門家からも政策見直しを求める声が。
新型コロナ対策を政治に利用してはいけませんよね。
7月上旬、中国湖北省武漢市の中心部に位置する華南海鮮市場は閉鎖されたまま高い壁に覆われていました。
市場の周りには、高層マンションや低層住宅が立ち並び、かつては多くの市民が食料品の買い出しに訪れていました。
2019年12月、春節(旧正月)を控え買い物客でにぎわうこの市場で、新型コロナウイルスの感染が初確認されました。ウイルスは瞬く間に武漢市内に広がり、今でも続く世界的大流行(パンデミック)を引き起こしました。武漢市は翌年1月23日からロックダウン(都市封鎖)されました。
閉鎖された華南海鮮市場。高い壁で中を見ることはできません=7月12日、中国湖北省武漢市
ある医師の警告
都市封鎖の中、医療関係者や薬などを自家用車で運ぶボランティアをしていた男性は「都市封鎖の通知は突然だった。それまでは、多くの市民が集まって食事したり、旅行に出かけたり。なんの警告もなかった」と当時を振り返りました。
新型ウイルスについて、その存在を当局が認める前から警告していた医師がいました。眼科医の李文亮(り・ぶんりょう)医師らです。しかし警察当局は「デマを流した」として李氏らを訓戒処分。李氏は、患者の診察を続け、新型コロナに感染し亡くなりました。
「武漢市民はみな李氏を尊敬している。あの警告が受け止められていれば、結果は違った可能性もある」と前出の男性は語ります。
李氏は死の直前、「健全な社会は一つの声だけであってはならない。公権力に過度に干渉されることに同意しない」(中国誌『財新』のインタビュー)と語っていました。この言葉に、多くの人が共感しました。
その後、中国政府はコロナ対策として、感染者や接触者を迅速に隔離し、大規模なPCR検査を行うなど「動態ゼロコロナ政策」を実施。今も感染が増えた都市をすぐに封鎖するなど、抑え込み政策を続けています。
管理強化の手段
今年4月には、中国最大の経済都市・上海で2カ月にわたる都市封鎖を実施。習近平国家主席は「動態ゼロコロナ政策の堅持」を繰り返しましたが、対象者の強制隔離などには異論も相次ぎ、感染症や経済の専門家からも政策見直しを求める声が出ました。
中国のある政治学者は「科学に基づいて政策を見直しするのは当然だ。しかし、コロナ対策は、堅持することが目的の政治運動になっている」と語ります。
中国政府はコロナ対策に行動管理アプリなどのデジタル技術も導入しました。中国に住む人は、どこに行くにも当局に行動が把握されるようになっています。7月、資金繰りが悪化した河南省の地方銀行が預金引き出しを停止した際、預金者が省政府に訴え出ることを当局が妨害する事件も起きました。同アプリを不正操作し、「感染の疑い」と表示させて足止めしたのです。
ある弁護士は「コロナ対策は政府が社会の管理を強める手段の一つになっている」と指摘しました。
◇
中国の政権党・中国共産党の第20回大会が16日から開かれます。
前々回の大会(2012年)で発足した習近平総書記が率いる中国。権力集中ともいわれる習指導部体制の―強さ」のもとで、深刻な社会の実態が見えてきました。この10年を振り返ります。
(武漢〈中国湖北省〉=小林拓也 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月9日付掲載
新型ウイルスについて、その存在を当局が認める前から警告していた医師がいました。眼科医の李文亮(り・ぶんりょう)医師らです。しかし警察当局は「デマを流した」として李氏らを訓戒処分。李氏は、患者の診察を続け、新型コロナに感染し亡くなりました。
今年4月には、中国最大の経済都市・上海で2カ月にわたる都市封鎖を実施。習近平国家主席は「動態ゼロコロナ政策の堅持」を繰り返しましたが、対象者の強制隔離などには異論も相次ぎ、感染症や経済の専門家からも政策見直しを求める声が。
新型コロナ対策を政治に利用してはいけませんよね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます