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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「骨太」の雇用政策② 労働者の団結弱める

2023-07-09 06:56:17 | 働く権利・賃金・雇用問題について
「骨太」の雇用政策② 労働者の団結弱める
全労連雇用労働法制局長 伊藤圭一さん

「骨太の方針2023」の雇用政策の背景にあるのは「日本の労働者は必要なスキルを理解せず、業務へのエンゲージメント(愛着心)が低く、自己啓発と転職を怠ってきたから賃金の低迷が起きている」という岸田文雄政権の認識です。

構造的な賃下げ
そこで岸田政権は労働者に対し、就社でなく就職(ジョブ)志向を強め、自己責任でスキルアップし、昇進・昇格、転職や副業・兼業をして企業を渡り歩いて自らの雇用を確保せよ、と迫っています。企業に対しては、正規雇用向けの年功型賃金・長期雇用慣行を捨て、成果・業績主義の日本型職務給と解雇しやすいジョブ型雇用を導入し、労働移動を促すことを求めています。
この政策の目標は「内部労働市場と外部労働市場のシームレス」化(切れ目をなくすこと)です。つまり、労働者が一企業に定着せずに転職が頻繁化し、副業・兼業が常態化する社会です。それが実現すれば、「構造的な賃上げ」だけでなく、人手不足分野(地域の中小・小規模企業など)への人材供給も可能となる、といいます。しかしこのままでは、むしろ真逆の事態が起きるでしょう。
「三位一体の労働市場改革」で平均賃金が上昇する可能性は低く、むしろ「構造的な賃下げ」が起きます。政府推奨の「日本型職務給」を導入した企業をみると、賃金から経験加算や生計費・家族手当などの要素を削り、賃金水準全体を下げ、賃金カーブを寝かせています。賃金アップは一部の幹部職や高度専門職に限られています。
集団的労使交渉に基づく労働組合の賃金闘争は弱体化させられます。▽評価と連動した個別賃金管理の強化▽社内公募などによる労働者間の競争激化▽副業・兼業による追加所得の個人責任化(労働者のフリーランス化)―は、労働者の団結を弱めるからです。



「労働移動推進」を掲げる経団連の本部が入る経団連会館=東京都千代田区

教育投資はせず
転職による賃上げも簡単ではありません。転職志向を明らかにする労働者に、企業は教育投資をしません。労働者は自己啓発でリスキリングして転職にのぞむことになりますが、それで賃金が増えるとは限りません。厚労省「転職者実態調査」によれば、転職による賃金の「増加」と「減少」は各4割で拮抗(きっこう)し、50代以上になると転職で賃金が下落するケースが多数です。
成長産業や人手不足産業への労働力供給の実現も望み薄です。政府は「デジタル人材を100万人から2026年度までに330万人に拡大」との方針を掲げますが、他職種からのIT技術者転換は容易ではありません。
また、人手不足の業種の主な問題はスキル習得の困難さより、労働条件の悪さにあるのに、政府は改善の手だてを打っていません。そもそも今は各産業が人手不足で、人員過剰産業から人手不足の成長産業へという構図はありません。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月6日付掲載


岸田政権は労働者に対し、就社でなく就職(ジョブ)志向を強め、自己責任でスキルアップし、昇進・昇格、転職や副業・兼業をして企業を渡り歩いて自らの雇用を確保せよ、と迫って。
労働者が一企業に定着せずに転職が頻繁化し、副業・兼業が常態化する社会。それが実現すれば、「構造的な賃上げ」だけでなく、人手不足分野(地域の中小・小規模企業など)への人材供給も可能となる、と。しかしこのままでは、むしろ真逆の事態が起きる。
転職、リスキング、教育投資もすべて自己責任の世界。


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