環境にやさしい町へ 鳥取・北栄町 風車9基が並ぶ北条砂丘
福島第1原発事故後、広範な地域で続く放射能汚染など「異質の危険」に「原発ゼロ」は大きな世論です。再生可能エネルギーの爆発的な普及、省エネルギー社会の実現が求められています。前年からのシリーズ「再生可能エネぐんぐん」は、地域の農林漁業や中小商工業と結びついて広がる、行政や市民の取り組みを引き続き紹介します。
一般家庭の約6600戸分発電
鳥取県の中央部に位置する北栄町(人口約1万6000人)。冬は主に日本海から強い風が吹く北条砂丘に、9基の風車が並んでいます。西端の1号機から東端の9号機までは、距離にして4キロです。5号機には、「啓発掲示板」があります。
「環境にやさしい町へ未来の子ども達のために」と2005年に建設された町営の「北条砂丘風力発電所」です。1基当たりの出力規模は1500キロワット、9基で年間2390万キロワット時の発電をしています。
この発電量は一般家庭の約6600戸分の年間使用量に相当し、これにより、年間約1万3300トンの二酸化炭素が削減できる見込みだといいます。この風力発電所で起こした電気は、すべて中国電力に売電しています。
北条砂丘風力発電所5号機
北条砂丘の風車_06 posted by (C)きんちゃん
鳥取県・北条砂丘の風車群
風力発電機はドイツ製です。風の強さに合わせてブレード(羽根)の角度を調整したり、風向の変化に合わせて風車の向きを変えて発電しています。風車は風速毎秒3メートルになると発電し始め、風速毎秒20メートル以上になると安全のため停止。00年~01年にかけて行われた鳥取大学の風況調査(地上高さ70メートル)によれば、年間平均風速毎秒5・68メートルの風が吹いていることが分かっています。
開始時の総事業費は約28億円でした。財源は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の補助金7億円と公営企業債20・5億円。同町地域整備課の飯田光男課長は「合併前の町の一つ、北条町(当時)の一般会計の予算総額が約30億円ですから、不安や心配の声があり、町民の方へ何度も説明会を開き、了解を得ながらすすめました」と話します。
北条砂丘の風車の全景。写真の左側は日本海(北栄町提供)
北条砂丘風力発電所5号機にある「啓発掲示板」
北条砂丘の風車_01 posted by (C)きんちゃん
北条砂丘の風車_02 posted by (C)きんちゃん
風車の耐用年数は、約20年。年間売電収入は約2億5000万円で、「少しの黒字」だといいます。飯田さんは「7年目を迎えた風車はさまざまな故障も起きています。故障を最低限にとどめるよう定期部品交換やメンテナンスの充実を検討してきました。『再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度』が施行され、年間約2億円の増収が見込まれます。大規模修繕の費用や立て替えの費用を確保しながら、来年度からは町民に還元できる施策にも充当する方向です」と話します。
雇用と仕事を生む
日本共産党北栄町議の長谷川昭二さんの話
太陽光発電所地元企業が建設
北栄町では昨年12月、町有地を貸し出し、地元企業による「北栄高千穂太陽光発電所」が完成しました。出力規模は750キロワット、太陽光パネル枚数は3136枚。同町住民生活課の大庭由美子課長は「使途を検討してきた町有地は、再生可能エネルギーで産業振興をはかることになりました。公募した結果、地元企業に決まりました。施設管理・環境美化のための地元の障害者雇用も生まれました」といいます。
住宅用太陽光発電設置のための町の補助は、1キロワット当たり6万円、上限は4キロワット24万円(県が半分を補助)です。国の補助も合わせて受けられます。大庭さんは「補助制度ができて164件の申請がありました。東日本大震災後や『固定価格買い取り制度』が始まって以降、増えてきている状況です」といいます。
一方、町内の63自治会(公民館)に天ぷら油の回収ボックスを設けてバイオディーゼル燃料化など、さまざまな環境政策も実施しています。
地元企業により町有地に建設された「北栄高千穂太陽光発電所」。後方は隣町にある民間の風車=2012年12月
地産地消で注目小型風力発電 年3万台の設置めざす
設置が容易で、地産地消のまちづくりや電気のないところでも自己消費型の電力として有効な小型風力発電が注目されています。
小型風車とは、電気事業法によると、出力規模20キロワット未満の製品です。受風面積が200平方メートル以下のものをいいます。
小型風力発電機や部品メーカーなど27社でつくる日本小形風力発電協会によると、2010年度に約2000台が設置されました。多くが出力1キロワット未満で、4分の3を占めます。同協会は、20年度には現在の15倍の年約3万台の設置を目標にしています。
これまで、小型風車は、防災・防犯用、環境・エネルギー教育、山岳、港湾、離島など無電源地域で多く使われてきました。
今後、再生可能エネルギーの普及拡大にともない、欧州にみられる商業施設や農業、工場・住宅分野での導入が期待されています
収益は地元に還元
日本小形風力発電協会の本田昭生専務理事の話
小型風力発電は、設置が容易で、計画から据え付けまで短期間で行えるために、運用がすぐに可能という利点があります。
設置面積が小さく場所もとりません。地元に設置すれば、地元に収益は還元される、文字通りの地産地消です。
おおよそ風速毎秒4メートルを超えると、設置面積当たりの発電量が、太陽光発電より大きくなります。機器の小型化や高性能化が可能で、身近に導入できる再生可能エネルギーです。
課題は、小型風力発電機の安全性、信頼性をいっそう高めることです。協会では、「安心・安全」を第一に、学識経験者を含む第三者委員会を設置して国際規格(IEC)に沿った機器の認証規格を制定しました。
実証試験によるデータの確保など認証には6カ月ほどかかります。これが壁となって、これまで設置が進んでいませんでした。今回、本規格に基づく認証制度ができたことで、「固定価格買い取り制度」に対応した設備認定をすすめ、行政の支援も得て小型風力発電を広く普及させたい。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月12日付掲載
北条砂丘の風車_12 posted by (C)きんちゃん
風力発電の普及自体はいいのですが、時と場所によっては、低周波振動やブレードによる光の遮りなどが問題になっています。
北栄町の場合は合併前の北条町からの取り組みですが、地元の町民とよく話し合って納得の上に進めてきたのですね。風車は国道9号線からよく見えます。9号線の北側、北条砂丘との間の畑の中に作られています。
最近は太陽光発電所もできたんだ。また、鳥取に行くときは寄ってみましょうね。
福島第1原発事故後、広範な地域で続く放射能汚染など「異質の危険」に「原発ゼロ」は大きな世論です。再生可能エネルギーの爆発的な普及、省エネルギー社会の実現が求められています。前年からのシリーズ「再生可能エネぐんぐん」は、地域の農林漁業や中小商工業と結びついて広がる、行政や市民の取り組みを引き続き紹介します。
一般家庭の約6600戸分発電
鳥取県の中央部に位置する北栄町(人口約1万6000人)。冬は主に日本海から強い風が吹く北条砂丘に、9基の風車が並んでいます。西端の1号機から東端の9号機までは、距離にして4キロです。5号機には、「啓発掲示板」があります。
「環境にやさしい町へ未来の子ども達のために」と2005年に建設された町営の「北条砂丘風力発電所」です。1基当たりの出力規模は1500キロワット、9基で年間2390万キロワット時の発電をしています。
この発電量は一般家庭の約6600戸分の年間使用量に相当し、これにより、年間約1万3300トンの二酸化炭素が削減できる見込みだといいます。この風力発電所で起こした電気は、すべて中国電力に売電しています。
北条砂丘風力発電所5号機
北条砂丘の風車_06 posted by (C)きんちゃん
鳥取県・北条砂丘の風車群
風力発電機はドイツ製です。風の強さに合わせてブレード(羽根)の角度を調整したり、風向の変化に合わせて風車の向きを変えて発電しています。風車は風速毎秒3メートルになると発電し始め、風速毎秒20メートル以上になると安全のため停止。00年~01年にかけて行われた鳥取大学の風況調査(地上高さ70メートル)によれば、年間平均風速毎秒5・68メートルの風が吹いていることが分かっています。
開始時の総事業費は約28億円でした。財源は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の補助金7億円と公営企業債20・5億円。同町地域整備課の飯田光男課長は「合併前の町の一つ、北条町(当時)の一般会計の予算総額が約30億円ですから、不安や心配の声があり、町民の方へ何度も説明会を開き、了解を得ながらすすめました」と話します。
北条砂丘の風車の全景。写真の左側は日本海(北栄町提供)
北条砂丘風力発電所5号機にある「啓発掲示板」
北条砂丘の風車_01 posted by (C)きんちゃん
北条砂丘の風車_02 posted by (C)きんちゃん
風車の耐用年数は、約20年。年間売電収入は約2億5000万円で、「少しの黒字」だといいます。飯田さんは「7年目を迎えた風車はさまざまな故障も起きています。故障を最低限にとどめるよう定期部品交換やメンテナンスの充実を検討してきました。『再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度』が施行され、年間約2億円の増収が見込まれます。大規模修繕の費用や立て替えの費用を確保しながら、来年度からは町民に還元できる施策にも充当する方向です」と話します。
雇用と仕事を生む
日本共産党北栄町議の長谷川昭二さんの話
太陽光発電所地元企業が建設
北栄町では昨年12月、町有地を貸し出し、地元企業による「北栄高千穂太陽光発電所」が完成しました。出力規模は750キロワット、太陽光パネル枚数は3136枚。同町住民生活課の大庭由美子課長は「使途を検討してきた町有地は、再生可能エネルギーで産業振興をはかることになりました。公募した結果、地元企業に決まりました。施設管理・環境美化のための地元の障害者雇用も生まれました」といいます。
住宅用太陽光発電設置のための町の補助は、1キロワット当たり6万円、上限は4キロワット24万円(県が半分を補助)です。国の補助も合わせて受けられます。大庭さんは「補助制度ができて164件の申請がありました。東日本大震災後や『固定価格買い取り制度』が始まって以降、増えてきている状況です」といいます。
一方、町内の63自治会(公民館)に天ぷら油の回収ボックスを設けてバイオディーゼル燃料化など、さまざまな環境政策も実施しています。
地元企業により町有地に建設された「北栄高千穂太陽光発電所」。後方は隣町にある民間の風車=2012年12月
地産地消で注目小型風力発電 年3万台の設置めざす
設置が容易で、地産地消のまちづくりや電気のないところでも自己消費型の電力として有効な小型風力発電が注目されています。
小型風車とは、電気事業法によると、出力規模20キロワット未満の製品です。受風面積が200平方メートル以下のものをいいます。
小型風力発電機や部品メーカーなど27社でつくる日本小形風力発電協会によると、2010年度に約2000台が設置されました。多くが出力1キロワット未満で、4分の3を占めます。同協会は、20年度には現在の15倍の年約3万台の設置を目標にしています。
これまで、小型風車は、防災・防犯用、環境・エネルギー教育、山岳、港湾、離島など無電源地域で多く使われてきました。
今後、再生可能エネルギーの普及拡大にともない、欧州にみられる商業施設や農業、工場・住宅分野での導入が期待されています
収益は地元に還元
日本小形風力発電協会の本田昭生専務理事の話
小型風力発電は、設置が容易で、計画から据え付けまで短期間で行えるために、運用がすぐに可能という利点があります。
設置面積が小さく場所もとりません。地元に設置すれば、地元に収益は還元される、文字通りの地産地消です。
おおよそ風速毎秒4メートルを超えると、設置面積当たりの発電量が、太陽光発電より大きくなります。機器の小型化や高性能化が可能で、身近に導入できる再生可能エネルギーです。
課題は、小型風力発電機の安全性、信頼性をいっそう高めることです。協会では、「安心・安全」を第一に、学識経験者を含む第三者委員会を設置して国際規格(IEC)に沿った機器の認証規格を制定しました。
実証試験によるデータの確保など認証には6カ月ほどかかります。これが壁となって、これまで設置が進んでいませんでした。今回、本規格に基づく認証制度ができたことで、「固定価格買い取り制度」に対応した設備認定をすすめ、行政の支援も得て小型風力発電を広く普及させたい。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月12日付掲載
北条砂丘の風車_12 posted by (C)きんちゃん
風力発電の普及自体はいいのですが、時と場所によっては、低周波振動やブレードによる光の遮りなどが問題になっています。
北栄町の場合は合併前の北条町からの取り組みですが、地元の町民とよく話し合って納得の上に進めてきたのですね。風車は国道9号線からよく見えます。9号線の北側、北条砂丘との間の畑の中に作られています。
最近は太陽光発電所もできたんだ。また、鳥取に行くときは寄ってみましょうね。
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