きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

溶ける公教育 デジタル化の行方④ 管理と統制強化に利用

2022-05-11 06:27:44 | 政治・社会問題について
溶ける公教育 デジタル化の行方④ 管理と統制強化に利用
2007年に米国ワシントンDCの教育長に就任したミッシェル・リー氏は、子どもの学力向上を理由に教師の実績を点数化するプログラムを導入する。4段階で最も高く評価された教師には高額の報酬を支払う一方、最低評価の教師は即解雇。就任から1年半で270人の教師が解雇され、その1年後にも財政難を理由に229人が解雇された―。

学力変化
子どもの学力変化は、地域の経済格差や家庭環境など複雑な要因が影響します。学力変化への教師の貢献度を測定することは本来不可能です。ところがリー氏が採用したプログラムは、学力変化への教師の貢献度に評価ポイントの50%を与えていました。
米国の著名なデータサイエンティスト、キャッシー・オニール氏の著書には、子どもに対するきめ細かな配慮で高く評価されていた教師が、リー氏が採用した複雑な数学モデルによって「無能」のレッテルを貼られ、解雇される事例が出てきます(『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』)。オニール氏はそうした有害な数学モデルを「数学破壊兵器」と名付けます。
物語は遠い海の向こうにとどまりません。2000年以降急速に広まった教員人事評価に基づく給与の差別化をはじめ、評価で教師を管理・統制する衝動は日本でも繰り返し起きています。
「大阪維新の会」は11年、教師を授業などの「貢献度」で5段階に評価し、給与や期末手当、勤勉手当で差をつける教育基本条例案を提出。18年にも吉村洋文大阪市長(現大阪府知事)が、全国学力テストの結果を教員や校長のボーナス査定、各学校の予算配分に反映すると表明し批判を浴びました。
大阪府・市で強引な学校統廃合を進める維新の会の姿は、財政難を口実にワシントンの公立学校を06年の137校から10年に107校まで減らしたリー氏の姿にかぶります。



リー氏の「ダメ教師切り」を報じる『エコノミスト』(2011年3月15日号)の記事とオニール氏の著書

人事評価
今国会に政府は、教師の研修受講履歴の記録を義務化し、研修を通じて教師への管理・統制を強める教育公務員特例法改悪案を提出しています。将来は全教師に識別番号(ID)をつけ全国共通の記録管理システムを立ち上げる計画です。
大阪府箕面市が実施する、教室の天井にカメラを設置し教師と子どもの行動を捕捉する実証事業(連載①)や、毎年の学力、体力、生活状況の調査(連載②③)は、現時点では人事評価と結びついていません。
しかし、権力者に都合のいい教員評価システムに“正当性”を与えようとする人物が表れたとき、同様の仕組みが数学破壊兵器として出現しない保証はありません。
デジタル技術での個人情報収集の動向に詳しい内田聖子さん(アジア太平洋資料センター共同代表)は、ワシントンと同様の事態が米国各地で進んでいるとし、日本での動きにも警鐘を鳴らします。
「コンピューターは子どもの成績、高校や大学の合格率など数値化できる情報だけを評価し、教師が子どもの心にどれだけ寄り添ったかなどの活動はいっさい評価しない。デジタル化の名で実際に進んでいることは行政に企業経営のような効率性を求め、住民にとって必要な公共サービスを縮小することだ」
(シリーズ第1部おわり。佐久間亮が担当しました。リー氏の「改革」による解雇数などは山下晃一神戸大学教授らの14年の論文に依拠しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月8日付掲載


子どもの学力変化は、地域の経済格差や家庭環境など複雑な要因が影響します。学力変化への教師の貢献度を測定することは本来不可能です。ところがリー氏が採用したプログラムは、学力変化への教師の貢献度に評価ポイントの50%を。
米国の著名なデータサイエンティスト、キャッシー・オニール氏の著書には、子どもに対するきめ細かな配慮で高く評価されていた教師が、リー氏が採用した複雑な数学モデルによって「無能」のレッテルを貼られ、解雇される事例も。
教育の現場で、デジタル化の名で実際に進んでいることは行政に企業経営のような効率性を求め、住民にとって必要な公共サービスを縮小すること。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 溶ける公教育 デジタル化の... | トップ | 年金 あれ?コレ! 無年金... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・社会問題について」カテゴリの最新記事