「自治体消滅」批判① ふるさとには帰れない
民間の有識者会議が4月、若年(20~39歳)女性人口が半減するという「消滅可能性自治体」のリストを公表しました。財界からは人口減少などを口実とした「合併を含む地方自治体単位の見直し」を求める声があがっています。これまで人口減少や地方の過疎化、大規模災害を口実に、憲法が規定した地方自治を否定するような、自治体「再編」や市町村合併の議論が幾度も繰り返されてきました。こうした自治体つぶしの背景に迫ります。
能登半島地震で震度6強以上を観測した自治体のうち「平成の大合併」で誕生した2市2町
関係人口の拡大
「必ずふるさとに帰すという決意で、元日から取り組んできた」
能登半島地震から半年を控えた6月27日の会見で、馳浩石川県知事はこう力を込めました。同日、馳知事は「県創造的復興プラン」を公表。「リーディングプロジェクト」(先導的な取り組み)の最初に掲げたのは「関係人口の拡大」です。
「関係人口」とは、その場所に住む「定住人口」や、観光に来た「交流人口」ではなく、地域と多様にかかわる人々を指しています。
「必ずふるさとに帰す」という知事の言葉とは裏腹に、平日は都市部で仕事をし、週末は能登で過ごしながら復興の活動を行う「2拠点居住モデル」を検討するといいます。
国の「財政制度等審議会」の分科会(4月)では被災地の「集約的なまちづくり」も議論されています。能登半島地震の被災地の多くで人口が減少するなか、小さな集落を放棄して、一定程度の人口規模の集落に「集約」させようとの考え方です。
いずれも被災者が主役の復興ではありません。両親が建てた自宅を泣く泣く解体し、ふるさとを離れた被災者たちに背を向けています。これでは被災地の自治体はますます人口が減って、成り立たなくなります。
「大合併」を総括
総務省は2010年3月に「平成の大合併」を総括しています。
国は99年以来、合併特例法により全国的に市町村合併を進め、市町村数は3232から1727まで減りました。同省は①周辺部の旧市町村の活力喪失②住民の声が届きにくくなっている③住民サービスの低下④旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などの喪失―などと合併による問題点や課題、を整理しています。
1月の地震で震度6強以上を記録した能登半島の3市3町のうち、2市2町が2000年代の「平成の大合併」で誕生した自治体です。市町村合併を行うと自治体の面積は拡大する一方で、役場は出張所に格下げとなり、自治体職員数が減ってしまいます。当然、災害対応に従事できる職員数も減ります。役場までの距離が遠くなり、災害にぜい弱な自治体となることは、これまでも指摘されてきたことです。
このうえ、被災者をふるさとから遠ざける「2地域居住」や、実質的に小規模集落を切り捨てる「集約的なまちづくり」を進めれば、ますます地域の人口は減り続け、住民自治は成り立たなくなり、住民サービスを支える自治体は弱体化していくしかありません。そんな状態で大規模災害があれば、助かる命も助かりません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月18日付掲載
馳石川県知事は「県創造的復興プラン」を公表。「リーディングプロジェクト」(先導的な取り組み)の最初に掲げたのは「関係人口の拡大」。
「関係人口」とは、その場所に住む「定住人口」や、観光に来た「交流人口」ではなく、地域と多様にかかわる人々を指しています。
「必ずふるさとに帰す」という知事の言葉とは裏腹に、平日は都市部で仕事をし、週末は能登で過ごしながら復興の活動を行う「2拠点居住モデル」を検討。
民間の有識者会議が4月、若年(20~39歳)女性人口が半減するという「消滅可能性自治体」のリストを公表しました。財界からは人口減少などを口実とした「合併を含む地方自治体単位の見直し」を求める声があがっています。これまで人口減少や地方の過疎化、大規模災害を口実に、憲法が規定した地方自治を否定するような、自治体「再編」や市町村合併の議論が幾度も繰り返されてきました。こうした自治体つぶしの背景に迫ります。
能登半島地震で震度6強以上を観測した自治体のうち「平成の大合併」で誕生した2市2町
関係人口の拡大
「必ずふるさとに帰すという決意で、元日から取り組んできた」
能登半島地震から半年を控えた6月27日の会見で、馳浩石川県知事はこう力を込めました。同日、馳知事は「県創造的復興プラン」を公表。「リーディングプロジェクト」(先導的な取り組み)の最初に掲げたのは「関係人口の拡大」です。
「関係人口」とは、その場所に住む「定住人口」や、観光に来た「交流人口」ではなく、地域と多様にかかわる人々を指しています。
「必ずふるさとに帰す」という知事の言葉とは裏腹に、平日は都市部で仕事をし、週末は能登で過ごしながら復興の活動を行う「2拠点居住モデル」を検討するといいます。
国の「財政制度等審議会」の分科会(4月)では被災地の「集約的なまちづくり」も議論されています。能登半島地震の被災地の多くで人口が減少するなか、小さな集落を放棄して、一定程度の人口規模の集落に「集約」させようとの考え方です。
いずれも被災者が主役の復興ではありません。両親が建てた自宅を泣く泣く解体し、ふるさとを離れた被災者たちに背を向けています。これでは被災地の自治体はますます人口が減って、成り立たなくなります。
「大合併」を総括
総務省は2010年3月に「平成の大合併」を総括しています。
国は99年以来、合併特例法により全国的に市町村合併を進め、市町村数は3232から1727まで減りました。同省は①周辺部の旧市町村の活力喪失②住民の声が届きにくくなっている③住民サービスの低下④旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などの喪失―などと合併による問題点や課題、を整理しています。
1月の地震で震度6強以上を記録した能登半島の3市3町のうち、2市2町が2000年代の「平成の大合併」で誕生した自治体です。市町村合併を行うと自治体の面積は拡大する一方で、役場は出張所に格下げとなり、自治体職員数が減ってしまいます。当然、災害対応に従事できる職員数も減ります。役場までの距離が遠くなり、災害にぜい弱な自治体となることは、これまでも指摘されてきたことです。
このうえ、被災者をふるさとから遠ざける「2地域居住」や、実質的に小規模集落を切り捨てる「集約的なまちづくり」を進めれば、ますます地域の人口は減り続け、住民自治は成り立たなくなり、住民サービスを支える自治体は弱体化していくしかありません。そんな状態で大規模災害があれば、助かる命も助かりません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月18日付掲載
馳石川県知事は「県創造的復興プラン」を公表。「リーディングプロジェクト」(先導的な取り組み)の最初に掲げたのは「関係人口の拡大」。
「関係人口」とは、その場所に住む「定住人口」や、観光に来た「交流人口」ではなく、地域と多様にかかわる人々を指しています。
「必ずふるさとに帰す」という知事の言葉とは裏腹に、平日は都市部で仕事をし、週末は能登で過ごしながら復興の活動を行う「2拠点居住モデル」を検討。
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