米の異常事態なぜ(中) 農家の6割 70歳以上
日本共産党農林・漁民局次長 橋本正一さん
米の生産や安定供給が中長期的に危ういことも指摘しないわけにはいきません。長年の米政策によって生産基盤が著しく弱体化し、“体力”が失われてきているからです。
最大の要因は生産者米価の下落です。政府が1995年に主食・米を市場まかせにして以降、生産者米価は下落傾向を続け、かつて1俵(60キロ)平均2万円を超えていたのが一昨年は1万3000円前後にまで低下。生産費1万5000円を大きく下回り、米農家の時給が2年続けて10円という悲惨な状況に追い込まれました。
米農家は次々に離農を余儀なくされ、2000年に175万戸あったのが23年には58万戸に激減しました。若い後継者が極端に少なく、米農家の基幹的従事者も70歳以上が約59%を占め、近い将来の大量のリタイアは避けられません。このままでは担い手が激減し、需要を国内産で満たせない事態が来るのは必至です。
担い手確保急務
三菱総合研究所は昨年7月、米需要量は今後大幅に減少するが、生産量は農家の激減が主な要因でそれ以上に落ち込み、2040年には最大156万トンが不足するとの試算を発表しています。
わが国の食料自給率38%は先進諸国で最低です。そのもとで辛うじて自給してきたのが米です。その“最後のとりで”さえ自給できなくなるというのです。「金さえ出せば食料は輸入できる」時代ではなくなっている今、それがいかに危ういかは明白でしょう。
米農家の離農は水田の耕作放棄を一気に広げ、国土や環境を守る役割も弱め、国民の生存基盤を脅かすことになります。
この流れを逆転させ、米・農業の次代の担い手を確保することは社会の持続に関わる待ったなしの課題です。
何より重要なのは大多数の農家が安心して生産に励める条件を政治の責任で整えることです。その柱が生産費に見合う価格保障であり、農村で暮らせる所得補償の実現です。
それがあってこそ次代の就農者の本格的な増加が可能になります。
手厚い支援必要
政府はいま農家への所得補償は否定しながら、高騰する資材コストを食料システム全体で消費者価格に転嫁する仕組みを検討しています。しかし実質賃金が低下し、国民生活が悪化するもとで消費者価格へのストレートの転嫁は、買えなくなる国民が増え、国産需要を減らし、国内農業のいっそうの縮小につながりかねません。
消費者団体の多くも農家経営と消費者の実態を踏まえ、政府に農家への所得補償を求めています。EU諸国では、農業所得の6~9割が政府の補助金で占められています。いま日本に必要なのはEU諸国なみの農業者への手厚い支援です。
あわせて子ども食堂やフードバンクへの備蓄米放出など政府による食料支援の抜本的な強化も求められます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年10月4日付掲載
最大の要因は生産者米価の下落。政府が1995年に主食・米を市場まかせにして以降、生産者米価は下落傾向を続け、かつて1俵(60キロ)平均2万円を超えていたのが一昨年は1万3000円前後にまで低下。生産費1万5000円を大きく下回り、米農家の時給が2年続けて10円という悲惨な状況に。
米農家は次々に離農を余儀なくされ、2000年に175万戸あったのが23年には58万戸に激減。
消費者団体の多くも農家経営と消費者の実態を踏まえ、政府に農家への所得補償を求めています。EU諸国では、農業所得の6~9割が政府の補助金で占められています。いま日本に必要なのはEU諸国なみの農業者への手厚い支援。
日本共産党農林・漁民局次長 橋本正一さん
米の生産や安定供給が中長期的に危ういことも指摘しないわけにはいきません。長年の米政策によって生産基盤が著しく弱体化し、“体力”が失われてきているからです。
最大の要因は生産者米価の下落です。政府が1995年に主食・米を市場まかせにして以降、生産者米価は下落傾向を続け、かつて1俵(60キロ)平均2万円を超えていたのが一昨年は1万3000円前後にまで低下。生産費1万5000円を大きく下回り、米農家の時給が2年続けて10円という悲惨な状況に追い込まれました。
米農家は次々に離農を余儀なくされ、2000年に175万戸あったのが23年には58万戸に激減しました。若い後継者が極端に少なく、米農家の基幹的従事者も70歳以上が約59%を占め、近い将来の大量のリタイアは避けられません。このままでは担い手が激減し、需要を国内産で満たせない事態が来るのは必至です。
担い手確保急務
三菱総合研究所は昨年7月、米需要量は今後大幅に減少するが、生産量は農家の激減が主な要因でそれ以上に落ち込み、2040年には最大156万トンが不足するとの試算を発表しています。
わが国の食料自給率38%は先進諸国で最低です。そのもとで辛うじて自給してきたのが米です。その“最後のとりで”さえ自給できなくなるというのです。「金さえ出せば食料は輸入できる」時代ではなくなっている今、それがいかに危ういかは明白でしょう。
米農家の離農は水田の耕作放棄を一気に広げ、国土や環境を守る役割も弱め、国民の生存基盤を脅かすことになります。
この流れを逆転させ、米・農業の次代の担い手を確保することは社会の持続に関わる待ったなしの課題です。
何より重要なのは大多数の農家が安心して生産に励める条件を政治の責任で整えることです。その柱が生産費に見合う価格保障であり、農村で暮らせる所得補償の実現です。
それがあってこそ次代の就農者の本格的な増加が可能になります。
手厚い支援必要
政府はいま農家への所得補償は否定しながら、高騰する資材コストを食料システム全体で消費者価格に転嫁する仕組みを検討しています。しかし実質賃金が低下し、国民生活が悪化するもとで消費者価格へのストレートの転嫁は、買えなくなる国民が増え、国産需要を減らし、国内農業のいっそうの縮小につながりかねません。
消費者団体の多くも農家経営と消費者の実態を踏まえ、政府に農家への所得補償を求めています。EU諸国では、農業所得の6~9割が政府の補助金で占められています。いま日本に必要なのはEU諸国なみの農業者への手厚い支援です。
あわせて子ども食堂やフードバンクへの備蓄米放出など政府による食料支援の抜本的な強化も求められます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年10月4日付掲載
最大の要因は生産者米価の下落。政府が1995年に主食・米を市場まかせにして以降、生産者米価は下落傾向を続け、かつて1俵(60キロ)平均2万円を超えていたのが一昨年は1万3000円前後にまで低下。生産費1万5000円を大きく下回り、米農家の時給が2年続けて10円という悲惨な状況に。
米農家は次々に離農を余儀なくされ、2000年に175万戸あったのが23年には58万戸に激減。
消費者団体の多くも農家経営と消費者の実態を踏まえ、政府に農家への所得補償を求めています。EU諸国では、農業所得の6~9割が政府の補助金で占められています。いま日本に必要なのはEU諸国なみの農業者への手厚い支援。
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