テレワークの落とし穴 格差広げ 労基法骨抜き
新型コロナ感染症対策として、職場以外で仕事をする「テレワーク」の利用が広がっています。コロナ収束後の「新しい働き方」として推進の旗を振る菅義偉政権ですが、課題も含めた議論は不十分なままです。テレワークに関する調査報告書や研究者らは、格差拡大とともに、労働基準法が骨抜きにされる恐れがあると警鐘を鳴らします。
(小村優)
そもそもテレワークとは何でしょうか。厚生労働省の定義によると、テレワークとは「情報通信技術を利用して行う事業場外での勤務」を指します。
大きく①在宅勤務②サテライトオフィス勤務③モバイル勤務―の三つに分類されます。サテライトオフィス勤務とは、職場や自宅以外の特定の場所で業務を行うことで、会社が契約する外部オフィスなどがこれに当たります。一方、場所を特定せず、ノートパソコンやスマートフォンを活用して、移動しながら働く形態が三つ目のモバイル勤務です。電車内や出張先のホテルなどで業務をする場合がこれに当たります。
コロナ禍のもと、感染防止策として、主に在宅勤務の利用が拡大しました。16日に公表された厚労省のテレワーク実態調査によると、7月時点で約3割の労働者が在宅勤務を経験。その内9割が通勤時間の負担軽減を実感するなど、一定の効果も示されています。
テレワークする女性
在宅勤務に差
その一方、コロナ禍においてテレワークができる人とできない人の間で、格差が生じている恐れも指摘されています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告書では、「高学歴や正社員、高収入、大規模企業勤務といった属性を持つ労働者ほど、在宅勤務がしやすい職種に偏在しており、在宅勤務可能性において格差が存在することを示唆する」(「コロナ禍における在宅勤務の実施要因と所得や不安に対する影響」)と指摘しています。
具体的に、4月時点で年収1000万円以上の労働者は、年収200万円未満の労働者と比べ、在宅勤務の実施率が4割強も高かったといいます。
また、大企業ほど在宅勤務の実施率が高く、従業員1000人以上の企業は、30人未満の企業よりも在宅勤務がおよそ2割多く実施されていました。
報告書は、在宅勤務をした労働者ほど、コロナ禍でも収入や労働時間の減少幅が小さい傾向にあったと分析。対照的に、アルバイトや派遣社員に加え、飲食・宿泊を含むサービス業では、月収と労働時間が大幅に減少していました。
これらの調査結果は同時に、低収入、小規模企業の労働者ほど在宅勤務ができず、労働時間の減少と、収入の低下に直面している実態を示しています。
政府はテレワークを感染症対策にとどまらない恒常的な働き方にしようと、推進の旗を振ります。「骨太の方針2020」には、コロナ後の「新たな日常」の構築に向けたデジタル化の一環として、テレワークの促進が明記されました。
不払い拡大も
テレワークの定着・拡大を図る政財界の狙いについて、情報通信研究者の高野嘉史氏はこう指摘します。
「テレワークは、通勤時間の負担を解消し、労働時間に一定の自由度を与えるなど、労働者に歓迎される側面があるのも、否定できません。しかし、忘れてはならないのは、テレワークは、長時間・不払い労働の拡大につながるだけでなく、ジョブ型社員の導入、成果型の労働時間管理、裁量労働制など『柔軟な働き方』として資本の側が導入を試み、労働者側の抵抗に直面してきた課題を一挙に解決しようとするものだということです」
高野氏はさらに「テレワークの普及による労働基準法の実質的な骨抜きに対する草の根からのたたかいが重要です」と強調します。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年11月27日付掲載
コロナ禍のもと、テレワークでできる仕事ならこしたことはありません。
なにせ、満員電車で通勤する時間と肉体的苦痛から解放されるのですから。
でも一方、労働時間の掌握や仕事と休憩時間の管理へのあいまいさの問題が発生します。
成果型や裁量労働制の拡大への懸念があります。
新型コロナ感染症対策として、職場以外で仕事をする「テレワーク」の利用が広がっています。コロナ収束後の「新しい働き方」として推進の旗を振る菅義偉政権ですが、課題も含めた議論は不十分なままです。テレワークに関する調査報告書や研究者らは、格差拡大とともに、労働基準法が骨抜きにされる恐れがあると警鐘を鳴らします。
(小村優)
そもそもテレワークとは何でしょうか。厚生労働省の定義によると、テレワークとは「情報通信技術を利用して行う事業場外での勤務」を指します。
大きく①在宅勤務②サテライトオフィス勤務③モバイル勤務―の三つに分類されます。サテライトオフィス勤務とは、職場や自宅以外の特定の場所で業務を行うことで、会社が契約する外部オフィスなどがこれに当たります。一方、場所を特定せず、ノートパソコンやスマートフォンを活用して、移動しながら働く形態が三つ目のモバイル勤務です。電車内や出張先のホテルなどで業務をする場合がこれに当たります。
コロナ禍のもと、感染防止策として、主に在宅勤務の利用が拡大しました。16日に公表された厚労省のテレワーク実態調査によると、7月時点で約3割の労働者が在宅勤務を経験。その内9割が通勤時間の負担軽減を実感するなど、一定の効果も示されています。
テレワークする女性
在宅勤務に差
その一方、コロナ禍においてテレワークができる人とできない人の間で、格差が生じている恐れも指摘されています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告書では、「高学歴や正社員、高収入、大規模企業勤務といった属性を持つ労働者ほど、在宅勤務がしやすい職種に偏在しており、在宅勤務可能性において格差が存在することを示唆する」(「コロナ禍における在宅勤務の実施要因と所得や不安に対する影響」)と指摘しています。
具体的に、4月時点で年収1000万円以上の労働者は、年収200万円未満の労働者と比べ、在宅勤務の実施率が4割強も高かったといいます。
また、大企業ほど在宅勤務の実施率が高く、従業員1000人以上の企業は、30人未満の企業よりも在宅勤務がおよそ2割多く実施されていました。
報告書は、在宅勤務をした労働者ほど、コロナ禍でも収入や労働時間の減少幅が小さい傾向にあったと分析。対照的に、アルバイトや派遣社員に加え、飲食・宿泊を含むサービス業では、月収と労働時間が大幅に減少していました。
これらの調査結果は同時に、低収入、小規模企業の労働者ほど在宅勤務ができず、労働時間の減少と、収入の低下に直面している実態を示しています。
政府はテレワークを感染症対策にとどまらない恒常的な働き方にしようと、推進の旗を振ります。「骨太の方針2020」には、コロナ後の「新たな日常」の構築に向けたデジタル化の一環として、テレワークの促進が明記されました。
不払い拡大も
テレワークの定着・拡大を図る政財界の狙いについて、情報通信研究者の高野嘉史氏はこう指摘します。
「テレワークは、通勤時間の負担を解消し、労働時間に一定の自由度を与えるなど、労働者に歓迎される側面があるのも、否定できません。しかし、忘れてはならないのは、テレワークは、長時間・不払い労働の拡大につながるだけでなく、ジョブ型社員の導入、成果型の労働時間管理、裁量労働制など『柔軟な働き方』として資本の側が導入を試み、労働者側の抵抗に直面してきた課題を一挙に解決しようとするものだということです」
高野氏はさらに「テレワークの普及による労働基準法の実質的な骨抜きに対する草の根からのたたかいが重要です」と強調します。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年11月27日付掲載
コロナ禍のもと、テレワークでできる仕事ならこしたことはありません。
なにせ、満員電車で通勤する時間と肉体的苦痛から解放されるのですから。
でも一方、労働時間の掌握や仕事と休憩時間の管理へのあいまいさの問題が発生します。
成果型や裁量労働制の拡大への懸念があります。
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