「ベルリンの壁」崩壊30年③ 東西格差と極右台頭 世代を超えて続く怒り
ドイツ統一後、ベルリンの旧帝国議会議事堂を改修して作られた連邦議会。ここで8日、ベルリンの壁崩壊30年の討論が行われました。
ベルリンの壁崩壊30年を記念し、壁を訪れたメルケル首相ら=11月9日、ベルリン(ロイター)
統一過程の誤り
与党キリスト教民主同盟(CDU)のブリンクハウス議員団長(51)は「西ドイツは、金やインフラよりも、東ドイツの人々の人生の断絶にもっと目を向けるべきだった。それが統一の過程の大きな誤りだった」と指摘しました。
CDUは、東西ドイツ統一当時のコール首相を輩出した政党です。
そのコール氏との間で東西統一などを交渉した旧東独最後の首相ロタール・デメジエール氏は、保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネで、「多くの東ドイツ人の胸に屈辱は深く刻まれている」と語りました。
同氏は「コール(首相)は東ドイツの人間は彼に従うべきだと考えていた」と述懐。
コール氏に「(東ドイツ国民は)文字の読めない国から来ているわけではない。彼らの職歴を奪うことはできない」と反論したと振り返っています。
同氏によると、ドイツの80以上の大学の学長に東独出身者は一人もおらず、200人以上の大使の中でもほぼ皆無です。
討論で左翼党のグレゴール・ギジ議員(前党首)は、「人ロ17%の東独人で、政府の要職についているのは1・7%だけだ」と発言。人口比に応じた配分と、東西間の平等な賃金、労働時間、年金を要求しました。
旧東独では統一後、「信託公社」による東独企業の清算・売却で、大量の失業者が生まれました。西独のライバル企業に格安で売却されて、閉鎖された鉱山会社もありました。
南ドイツ新聞9日付は、統一の過程で生まれた怒りが、親から若者へと世代を超えて受け継がれていると指摘。喪一失感や、自分たちの声が届かないという気持ちが、東の有権者を極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に追いやっている、と分析しました。
AfDの連邦議会議員(東部ザクセン州選出)は8日の討論で、「信託公社による未曽有の略奪」などと語る一方で、「私の夢は、伝統に根ざし、(移民・難民に)ナイン(ノー)と言える、国境によって守られる統一ドイツ民族」と主張。ナチスを思わせる移民排斥と自国民中心主義を、他党は厳しく批判しました。
新しいチャンス
シュタージ博物館前の展示でガイドを務めたアイゼンロールさんは、「私は楽観的だ」と語ります。
「今日若者たちは、(議会で唯一、気候変動を否定する)極右の強まりに対抗して、気候変動の課題に取り組もうとしている。危険の高まりが、逆に若者が活発になる新しいチャンスを作り出している」
(ベルリン=伊藤寿庸)
(インタビューにつづく)
「しんぶん赤旗」日刊 2019年11月22日付掲載
東西統一の過程で、経済的な格差だけでなく、政治や社会的な分野でも格差があったのですね。
しかし今、若者たちは、極右の強まりに対抗して、気候変動の課題に取り組もうとしている。
希望があると。
ドイツ統一後、ベルリンの旧帝国議会議事堂を改修して作られた連邦議会。ここで8日、ベルリンの壁崩壊30年の討論が行われました。
ベルリンの壁崩壊30年を記念し、壁を訪れたメルケル首相ら=11月9日、ベルリン(ロイター)
統一過程の誤り
与党キリスト教民主同盟(CDU)のブリンクハウス議員団長(51)は「西ドイツは、金やインフラよりも、東ドイツの人々の人生の断絶にもっと目を向けるべきだった。それが統一の過程の大きな誤りだった」と指摘しました。
CDUは、東西ドイツ統一当時のコール首相を輩出した政党です。
そのコール氏との間で東西統一などを交渉した旧東独最後の首相ロタール・デメジエール氏は、保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネで、「多くの東ドイツ人の胸に屈辱は深く刻まれている」と語りました。
同氏は「コール(首相)は東ドイツの人間は彼に従うべきだと考えていた」と述懐。
コール氏に「(東ドイツ国民は)文字の読めない国から来ているわけではない。彼らの職歴を奪うことはできない」と反論したと振り返っています。
同氏によると、ドイツの80以上の大学の学長に東独出身者は一人もおらず、200人以上の大使の中でもほぼ皆無です。
討論で左翼党のグレゴール・ギジ議員(前党首)は、「人ロ17%の東独人で、政府の要職についているのは1・7%だけだ」と発言。人口比に応じた配分と、東西間の平等な賃金、労働時間、年金を要求しました。
旧東独では統一後、「信託公社」による東独企業の清算・売却で、大量の失業者が生まれました。西独のライバル企業に格安で売却されて、閉鎖された鉱山会社もありました。
南ドイツ新聞9日付は、統一の過程で生まれた怒りが、親から若者へと世代を超えて受け継がれていると指摘。喪一失感や、自分たちの声が届かないという気持ちが、東の有権者を極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に追いやっている、と分析しました。
AfDの連邦議会議員(東部ザクセン州選出)は8日の討論で、「信託公社による未曽有の略奪」などと語る一方で、「私の夢は、伝統に根ざし、(移民・難民に)ナイン(ノー)と言える、国境によって守られる統一ドイツ民族」と主張。ナチスを思わせる移民排斥と自国民中心主義を、他党は厳しく批判しました。
新しいチャンス
シュタージ博物館前の展示でガイドを務めたアイゼンロールさんは、「私は楽観的だ」と語ります。
「今日若者たちは、(議会で唯一、気候変動を否定する)極右の強まりに対抗して、気候変動の課題に取り組もうとしている。危険の高まりが、逆に若者が活発になる新しいチャンスを作り出している」
(ベルリン=伊藤寿庸)
(インタビューにつづく)
「しんぶん赤旗」日刊 2019年11月22日付掲載
東西統一の過程で、経済的な格差だけでなく、政治や社会的な分野でも格差があったのですね。
しかし今、若者たちは、極右の強まりに対抗して、気候変動の課題に取り組もうとしている。
希望があると。
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