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「ベルリンの壁」崩壊30年 極右台頭の旧東独の歴史 「東の視点」で批判的に 東独出身の歴史家 コワルチュク氏に聞く

2019-11-25 09:20:24 | 国際政治
「ベルリンの壁」崩壊30年 極右台頭の旧東独の歴史 「東の視点」で批判的に
東独出身の歴史家 コワルチュク氏に聞く


旧東ドイツ出身の歴史家イルコサーシャ・コワルチュク氏(52)は、東独の反体制運動や一党独裁体制下の抑圧などを研究してきました。今年、新著『吸収合併-東独はいかにして連邦共和国の一部になったか』を発表。極右勢力の台頭などが起こっている旧東独部の歴史を「東からの視点」で批判的に振り返りました。同氏に書面でインタビューしました。(ベルリン=伊藤寿庸)


イルコサーシュ・コワルチュク氏(©Ekko von Schwichow)

イルコサーシャ・コワルチュク氏 1967年東ベルリン生まれ。フンボルト大学で歴史を学び、ポツダム大学で博士号取得。連邦議会や連邦政府で、統一後の東独の問題に関する調査委員会などの委員を歴任。

―新著には「東独の経済的吸収合併とその受益者」「東独文化の無価値化」などの章があります。なぜこの本を書こうと思ったのですか。
東西ドイツ統一について、東からの視点で批判的に書く必要を感じたからです。今も東と西の間には大きな溝があります。旧東独地域は人種差別とネオファシズムという大きな問題を抱えています。積極的な側面とともに、何が間違っていたのかを説明したかったのです。
―この30年間、東独の人々はどういう体験をしたのでしょうか。
東独の人々には、1990年に突然すべてが変わりました。西独の人々には、何の変化もありませんでした。統一は東独の人々が望んだことでしたが、その結果を予想していなかった。

「二級市民」
問題は経済的、物質的というより、文化的なものです。東独の多くの人々は、人生の思想的意味を失いました。(「ベルリンの壁」崩壊の)89年以前のものがすべて無価値になり、「二級市民」となり、文化的な立ち位置を失った。この影響は巨大で、今後何世代もの問続くでしょう。
―旧東独で極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が台頭しています。どう立ち向かうべきでしょうか。
東独社会の多くの人々が、「他者」とらく印を押せる人々を求めています。その人たちより上にいると感じることで、自らの失望を軽くするためです。AfDの台頭と、それが他の地域に広がることへの恐怖が、東独部への関心をもたらしています。

自由に敵対
しかしこのような政治的潮流は、欧州の他の地域でも長らく強まってきていました。さらに、米国のトランプ大統領やブラジルなど世界的な現象です。これは反グローバリズム・反ヒューマニズム・反西欧・人種差別・民族主義・ファシズムの運動です。
それは抗議ではなく、民主主義と自由に敵対する運動だと明確に認識しなければなりません。民主主義者のすべてが団結して立ち向かわなければ、深刻な事態になります。
―「壁」崩壊は欧州にとってどのような意味があると考えますか。
「壁」の崩壊は正しく、必要な事でした。ただそのあとの政治が、常に正しかったとは言えません。路線の転換が必要です。何よりグローバル化や世界のデジタル化は、自由市場の力にゆだねるのではなく、規制が必要です。人類を支配する手段ではなく、われわれの道具としていくための哲学が必要となっています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月24日付掲載


東独の市民は、ベルリンの壁崩の89年以前のものがすべて無価値になり、「二級市民」となり、文化的な立ち位置を失った。
それが30年経過した今、極右の思想を生み出している。
でもそれは、民主主義と自由に敵対する運動。許されるものではない。

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