2020年回顧② 南シナ海 緊張続くも認識に変化
南シナ海の緊張はコロナ禍や相次ぐ自然災害に見舞われても和らぎませんでした。
中国は係争地・西沙(パラセル)諸島周辺で7~9月、少なくとも3回の軍事演習を実施。8月下旬には中距離弾道ミサイルを同海へ発射しました。
さらに、軍事拠点化する南沙(スプラトリー)諸島の人工島に哨戒機や戦闘機を配備し、防空識別圏の設定を検討。沿岸諸国は「南シナ海行動宣言に反し、情勢を複雑化させる」(ベトナム)、「緊張をさらに高める」(フィリピン)と強く反対しました。
米戦略国際問題研究所(CSIS)は12月、中国海警の艦船が今年も他国の排他的経済水域内の複数の環礁で日常的にパトロールを実施していたとの報告書を発表。海警艦船による他国の資源開発の妨害、漁船沈没事件も相次ぎました。
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の閉幕後、記者会見をするベトナムのグエン・スアン・フック首相(中央)ら=11月15日、ハノイ(ASEAN提供)
先月ハノイで開かれた「南シナ海国際会議」。主催したベトナム外交学院のズン学院長代行は、複雑化や懸念の一方、「光明もあった」と指摘しました。
「多くの沿岸諸国が南シナ海に関して法的な立場を明確にしたことだ。国連海洋法条約と国際法の役割と価値に対する各国の強い支持が示された」
インドネシア、マレーシアを含む沿岸4カ国は今年、国連向け外交書簡で、南シナ海のほぼ全域に権益があるとする中国の主張に反論。さらに米国、オーストラリア、英仏独(共同提出)も、初めて国際法の角度から突っ込んだ見解を発表。いずれも中国の主張は海洋法条約と国際法に合致しておらず、受け入れられないとの立場で共通しています。
南シナ海問題で「国際法の擁護」を一致点とする立場は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の舞台で推進されてきました。
「すべての国が法の支配と国際協定での約束を順守するよう強く要請する」(6月、ドゥテルテ比大統領)。同首脳会議や東アジアサミット(EAS)の声明は、「海洋法条約は、すべての海洋活動がその中で行われるべき法的枠組み」と述べ、交渉中の南シナ海行動規範も国際法と合致したものとなるべきだとの考えを示しました。
南シナ海に国際的な注目が集まり始めたのはハノイでASEAN関連会議が開かれた2010年。今年、国際社会が国際法との関わりで示した認識の深まりは、10年間の大きな変化を物語るものとなりました。
(ハノイ=井上歩)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年12月17日付掲載
中国は東シナ海でも尖閣諸島で日本の漁船を威嚇するなど無法な行為を繰り返しています。
しかし、南シナ海では軍事基地を建設したり、軍事演習をしたり…。もっと露骨です。
それに対して、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどASEAN諸国が一致団結して対応。まさに光明です。
南シナ海の緊張はコロナ禍や相次ぐ自然災害に見舞われても和らぎませんでした。
中国は係争地・西沙(パラセル)諸島周辺で7~9月、少なくとも3回の軍事演習を実施。8月下旬には中距離弾道ミサイルを同海へ発射しました。
さらに、軍事拠点化する南沙(スプラトリー)諸島の人工島に哨戒機や戦闘機を配備し、防空識別圏の設定を検討。沿岸諸国は「南シナ海行動宣言に反し、情勢を複雑化させる」(ベトナム)、「緊張をさらに高める」(フィリピン)と強く反対しました。
米戦略国際問題研究所(CSIS)は12月、中国海警の艦船が今年も他国の排他的経済水域内の複数の環礁で日常的にパトロールを実施していたとの報告書を発表。海警艦船による他国の資源開発の妨害、漁船沈没事件も相次ぎました。
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の閉幕後、記者会見をするベトナムのグエン・スアン・フック首相(中央)ら=11月15日、ハノイ(ASEAN提供)
先月ハノイで開かれた「南シナ海国際会議」。主催したベトナム外交学院のズン学院長代行は、複雑化や懸念の一方、「光明もあった」と指摘しました。
「多くの沿岸諸国が南シナ海に関して法的な立場を明確にしたことだ。国連海洋法条約と国際法の役割と価値に対する各国の強い支持が示された」
インドネシア、マレーシアを含む沿岸4カ国は今年、国連向け外交書簡で、南シナ海のほぼ全域に権益があるとする中国の主張に反論。さらに米国、オーストラリア、英仏独(共同提出)も、初めて国際法の角度から突っ込んだ見解を発表。いずれも中国の主張は海洋法条約と国際法に合致しておらず、受け入れられないとの立場で共通しています。
南シナ海問題で「国際法の擁護」を一致点とする立場は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の舞台で推進されてきました。
「すべての国が法の支配と国際協定での約束を順守するよう強く要請する」(6月、ドゥテルテ比大統領)。同首脳会議や東アジアサミット(EAS)の声明は、「海洋法条約は、すべての海洋活動がその中で行われるべき法的枠組み」と述べ、交渉中の南シナ海行動規範も国際法と合致したものとなるべきだとの考えを示しました。
南シナ海に国際的な注目が集まり始めたのはハノイでASEAN関連会議が開かれた2010年。今年、国際社会が国際法との関わりで示した認識の深まりは、10年間の大きな変化を物語るものとなりました。
(ハノイ=井上歩)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年12月17日付掲載
中国は東シナ海でも尖閣諸島で日本の漁船を威嚇するなど無法な行為を繰り返しています。
しかし、南シナ海では軍事基地を建設したり、軍事演習をしたり…。もっと露骨です。
それに対して、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどASEAN諸国が一致団結して対応。まさに光明です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます