知的障害者の挑戦 選挙に行こう③ 当事者の声 反映させて 活動続けることが必要
大阪府東大阪市長選・市議選(9月)の投票を無事に終え、障害者たちは自信を付けました。一方で課題も浮かび上がりました。支援者は、行政の取り組みに「障害者の声を反映していないのでは」と疑問の声を上げます。活動継続の必要性も語っています。
同市の社会福祉法人「創思苑」の事業所を利用する知的障害者15人が、同市長選・市議選の投票に挑戦しました。そのひとり、山田浩さん(51)は、投票後の仲間が「みんな生き生きしていた」と話します。
山田さんは、今回の選挙に向けて約4カ月前から学習会を開くなど準備をしてきました。字が読めず書くことができません。支援員らに選挙公報などを読んでもらって自分で候補者を選び、代理投票で投票しました。福祉の充実を訴える候補者に入れたといいます。
無事に投票を終え、自信を付けた障害者=9月、大阪府東大阪市
“障壁”をなくす
障害者が投票するには、さまざまな“障壁”があります。字が読めない人や書けない人、適切な支援を自ら求めることが困難な人もいます。視覚障害者や肢体不自由の人もいます。
障害者差別解消法は、障害のある人が、ない人と同じように社会生活を送るため、社会的障壁をなくすことを国や自治体、企業の責務としています。
各地の投票所では、障壁をなくすために段差がない会場にしたり、自身で書けない人には代理投票を実施したりしています。
ただ、こうした配慮が現場で行われないケースがあると障害者団体は声を上げています。
同市は、今選挙から「投票支援カード」(写真)を導入しました。投票所で、投票者が支援を求めることや代理投票を行うかの意思表示ができます。
前向きな取り組みではあるものの、支援者からは疑問の声が上がります。
カードに書かれている漢字に振り仮名はありますが、冒頭から長文の説明が続きます。イラストもありません。そのため、知的障害がある人などは内容を理解できない可能性があると指摘します。
取材に対し、同市選挙管理委員会は、カードの作成過程に「当事者の声はない」と回答しました。
学習会の講師を務め、投票所に付き添った「大阪手をつなぐ育成会」の菅谷(すがたに)泰行さんは、「(行政は)障壁をなくしたいなら、まず当事者の声を聞くことから始めるべきだ」と強調します。
学習会などに時間や労力が割かれることも課題です。「創思苑」の林淑美理事長は、「国や自治体にもっと動いてほしい」といいます。例えば、学習会を行政が開いたり、選挙公報の内容を障害者に理解しやすいものにするなどです。
社会変える力に
他方、選挙に向けた取り組みについて支援者は「続けることが必要だ」と訴えます。
菅谷さんは、「全国の福祉施設や保護者に広めたい」といいます。学習会では、参政権の歴史や政治参加の大切さなどを伝えました。「障害のある人たちには、自ら社会を変える力をつけていってほしい」と期待します。
林理事長は、「投票した市長・市議の活動を追い、公約通りなのか当事者と一緒にみていきたい。当事者の声が社会に反映されるようロビー活動もしていきたい」と、今後の取り組みについて話しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月19日付掲載
山田さんは、今回の選挙に向けて約4カ月前から学習会を開くなど準備をしてきました。字が読めず書くことができません。支援員らに選挙公報などを読んでもらって自分で候補者を選び、代理投票で投票しました。福祉の充実を訴える候補者に入れたと。
東大阪市は、今選挙から「投票支援カード」(写真)を導入しました。投票所で、投票者が支援を求めることや代理投票を行うかの意思表示ができます。
前向きな取り組みではあるものの、支援者からは疑問の声が。
カードに書かれている漢字に振り仮名はありますが、冒頭から長文の説明が続きます。イラストもありません。そのため、知的障害がある人などは内容を理解できない可能性があると指摘。
大阪府東大阪市長選・市議選(9月)の投票を無事に終え、障害者たちは自信を付けました。一方で課題も浮かび上がりました。支援者は、行政の取り組みに「障害者の声を反映していないのでは」と疑問の声を上げます。活動継続の必要性も語っています。
同市の社会福祉法人「創思苑」の事業所を利用する知的障害者15人が、同市長選・市議選の投票に挑戦しました。そのひとり、山田浩さん(51)は、投票後の仲間が「みんな生き生きしていた」と話します。
山田さんは、今回の選挙に向けて約4カ月前から学習会を開くなど準備をしてきました。字が読めず書くことができません。支援員らに選挙公報などを読んでもらって自分で候補者を選び、代理投票で投票しました。福祉の充実を訴える候補者に入れたといいます。
無事に投票を終え、自信を付けた障害者=9月、大阪府東大阪市
“障壁”をなくす
障害者が投票するには、さまざまな“障壁”があります。字が読めない人や書けない人、適切な支援を自ら求めることが困難な人もいます。視覚障害者や肢体不自由の人もいます。
障害者差別解消法は、障害のある人が、ない人と同じように社会生活を送るため、社会的障壁をなくすことを国や自治体、企業の責務としています。
各地の投票所では、障壁をなくすために段差がない会場にしたり、自身で書けない人には代理投票を実施したりしています。
ただ、こうした配慮が現場で行われないケースがあると障害者団体は声を上げています。
同市は、今選挙から「投票支援カード」(写真)を導入しました。投票所で、投票者が支援を求めることや代理投票を行うかの意思表示ができます。
前向きな取り組みではあるものの、支援者からは疑問の声が上がります。
カードに書かれている漢字に振り仮名はありますが、冒頭から長文の説明が続きます。イラストもありません。そのため、知的障害がある人などは内容を理解できない可能性があると指摘します。
取材に対し、同市選挙管理委員会は、カードの作成過程に「当事者の声はない」と回答しました。
学習会の講師を務め、投票所に付き添った「大阪手をつなぐ育成会」の菅谷(すがたに)泰行さんは、「(行政は)障壁をなくしたいなら、まず当事者の声を聞くことから始めるべきだ」と強調します。
学習会などに時間や労力が割かれることも課題です。「創思苑」の林淑美理事長は、「国や自治体にもっと動いてほしい」といいます。例えば、学習会を行政が開いたり、選挙公報の内容を障害者に理解しやすいものにするなどです。
社会変える力に
他方、選挙に向けた取り組みについて支援者は「続けることが必要だ」と訴えます。
菅谷さんは、「全国の福祉施設や保護者に広めたい」といいます。学習会では、参政権の歴史や政治参加の大切さなどを伝えました。「障害のある人たちには、自ら社会を変える力をつけていってほしい」と期待します。
林理事長は、「投票した市長・市議の活動を追い、公約通りなのか当事者と一緒にみていきたい。当事者の声が社会に反映されるようロビー活動もしていきたい」と、今後の取り組みについて話しています。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月19日付掲載
山田さんは、今回の選挙に向けて約4カ月前から学習会を開くなど準備をしてきました。字が読めず書くことができません。支援員らに選挙公報などを読んでもらって自分で候補者を選び、代理投票で投票しました。福祉の充実を訴える候補者に入れたと。
東大阪市は、今選挙から「投票支援カード」(写真)を導入しました。投票所で、投票者が支援を求めることや代理投票を行うかの意思表示ができます。
前向きな取り組みではあるものの、支援者からは疑問の声が。
カードに書かれている漢字に振り仮名はありますが、冒頭から長文の説明が続きます。イラストもありません。そのため、知的障害がある人などは内容を理解できない可能性があると指摘。
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