きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

読み解き 新ガイドライン⑥ 国民との関わりは? 若者の命まで差し出す

2015-05-13 21:35:33 | 平和・憲法・歴史問題について
読み解き 新ガイドライン⑥ 国民との関わりは? 若者の命まで差し出す

新ガイドラインは、日本の国のかたちや国民生活を対米従属・軍事中心にいっそうゆがめていく深刻な内容をはらんでいます。

“血の同盟”約束
最大の犠牲者になりうるのは、自衛隊の若者です。
「軍事同盟というのは“血の同盟”だ。…日本の自衛隊は少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」。かつて安倍晋三首相は自著『この国を守る決意』でこう強調していました。
新ガイドラインには、首相の念願どおり、自衛隊が集団的自衛権の行使によって、「米国または第三国に対する武力攻撃に対処する」ことが明記されました。
米軍の占領政策の継続という日米安保条約の屈辱的本質には全く手をつけず、「日本の防衛」とは無関係の米軍の戦争を支援するため、若者の命まで差し出す“血の同盟”を約束したのが、新ガイドラインです。
前ガイドラインには、米軍機や艦船による民間空港・港湾の全面利用、物資の積み降ろし場所の確保、日本国内での傷病兵の治療など、民間分野を巻き込むあらゆる戦争協力の項目が盛り込まれていました。
新ガイドラインでもこの立場は踏襲されており、米国などが攻撃を受けて、日本が集団的自衛権の行使で参戦する場合についても、地方自治体・民間の権限や能力を「適切に活用する」と明記されました。「米国防衛」の戦争にも、国民が戦時協力を迫られる危険があります。



羽田空港

中国動向念頭に
「中国による南シナ海、東シナ海の活動と軍備拡張もある」。
安倍晋三首相は新ガイドラインで中国の軍事動向を念頭に置いていると明言しました。(4月30日の日本テレビ番組)
新ガイドラインが、安倍政権の「中国脅威論」の産物であることが、首相の発言からも見てとれます。
しかし、米中関係も日中関係もかつての冷戦期と異なり、経済的な相互依存を深めつつあるのが現状です。中国と戦争になれば、双方に計り知れない損害をもたらすこととなり、こうした「脅威論」で軍事対応を強めることこそ非現実的です。
新ガイドラインは中国との軍事的緊張を将来にわたり固定化しかねないもので、軍事費の拡大という形で国民生活にも悪影響を及ぼします。
また、「情報保全・情報協力」では、「秘密情報の保護に関連した政策、慣行、手続きの強化における協力を推進する」ことが初めて盛り込まれました。国民が知るべき情報が秘密保護の名目でいっそう隠されていく危険があります。
(おわり)
(この連載は、池田晋、竹下岳が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月9日付掲載


中国の東シナ海や南シナ海での軍事行動を念頭に入れた新ガイドライン。
でも、かつての冷戦時期と違って、米中、日中は経済的に強く結びついています。
アメリカも日本の財界も、中国に対して軍事的緊張を高めることは望んでいません。

読み解き 新ガイドライン⑤ 日米の命令系統は? 米軍指揮下 逃げられず

2015-05-12 22:41:12 | 平和・憲法・歴史問題について
読み解き 新ガイドライン⑤ 日米の命令系統は? 米軍指揮下 逃げられず

新ガイドラインでは、平時から有事まで日米が「調整」を行う「同盟調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは事実上の日米統合司令部と呼ぶべきもの。自衛隊が米軍の戦争に完全に組み込まれ、逃れられなくなる危険があります。

「調整」の名目で
軍は必ず司令部を持ち、傘下の部隊を指揮下に置きます。多国籍軍など、複数の軍が共同作戦を行う場合も、基本的に1人の司令官が全権を握ります。
日本はこれまで、イラク戦争や「対テロ」戦争に派兵してきました。しかし、米軍主導の多国籍軍の指揮下に入れば、自衛隊の活動が憲法上、できないとされる「他国の武力行使との一体化」につながることから、直接の指揮下には入らず、防衛省などを通じて多国籍軍との「調整」を行うという形を取ってきました。
「日本有事」で自衛隊を米軍の指揮下に組み込む「統合司令部」の設置も、表向きは否定してきました。国家主権にも関わる問題だからです。
ただ、イラク、「対テロ」戦争で米軍は一貫して、自衛隊を「連合軍」の一員とみなし、日米共同演習などでも事実上、米軍が主導しています。「調整」の名の下で、米軍の指揮下に置かれているに近い実態があります。



日米共同方面隊指揮所演習ヤマサクラ=2013年12月(米陸軍ウェブサイトから)

「平時」から機能
1997年の前指針で米軍と自衛隊の情報共有や協議を行う「調整メカニズム」の設置が盛り込まれました。これは戦争司令部とも呼べるものです。
ただ、同メカニズムは平素から設置するものの、機能するのは日本への武力攻撃や「周辺事態」が発生してからとなっています。
これに対して「同盟調整メカニズム」は平時から機能し、集団的自衛権の行使やイラク・アフガン型の戦争といった事態まで「切れ目のない形で…活用」されます。
その結果、どうなるか。例えば、新指針では、「戦地」での自衛隊派兵を可能にする「戦争立法」に基づき、自衛隊が戦闘地域で米軍への物資や弾薬などの補給を行うことが盛り込まれています。
「戦争立法」では、海外派兵で自衛隊の活動区域が「戦闘現場」になれば、活動を「休止」「退避」するとしています。しかし、「同盟調整メカニズム」に基づいて、自衛隊が米軍の前線での活動に不可欠な補給を担っていれば、勝手に戦場から逃げることなど不可能になるのは目に見えています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月8日付掲載


自衛隊が米軍の指揮下に入るって事は、憲法上からも認められないし、国家主権に関わる問題。でも、演習では事実上米軍指揮下で行われてきました。
新ガイドラインでは、「戦争立法」ですら踏み込んでいない事、実際の戦闘の場面でも米軍の指揮下に置かれることになります。

読み解き 新ガイドライン④ 憲法との関係は? 「制約の範囲内」消える

2015-05-11 14:48:53 | 平和・憲法・歴史問題について
読み解き 新ガイドライン④ 憲法との関係は? 「制約の範囲内」消える

日米共同の戦争マニュアルであるガイドラインは、それ自体が平和主義や国民主権を掲げる憲法の原則に真っ向から反するものです。このため、過去の自民党政権は自衛隊の活動に「歯止め」を設け、憲法との整合性を図ろうとしてきました。ところが新ガイドラインは、これらの「歯止め」さえなくしています。

苦肉の「歯止め」
前ガイドラインの際、政府は、米軍の武力行使と「一体化」しないものについては憲法上問題ないとの理屈を立て、補給や輸送といった米軍への兵たん支援(後方支援)に踏み込みました。
その際に、「一体化」を避けるための枠組みとして設けたのが、「後方地域」という概念です。「後方地域」とは「(米軍の)戦闘行動が行われている地域とは一線を画される」日本国内や、その周辺の公海上を指します。(図)
そのため、自衛隊は戦闘発生の可能性がある地域では活動できないこととなり、この枠組みはインド洋やイラクへの海外派兵の際も応用されました。
そもそも兵たん活動とは、前線部隊の戦闘を維持・支援するため、物資・装備・人員などを提供するもの。戦争遂行に不可欠の作戦で、相手国からみれば敵対行為です。
国際法上は「一体化」する・しないなどという基準はなく、兵たん活動自体が武力行使とみなされます。憲法上許されません。
政府が「一体化」という苦肉の策を持ち出したのも、自らの憲法解釈の範囲内で説明しようとしたためでした。
そのため、前ガイドラインは「基本的な前提と考え方」で、「日本のすべての行為は、憲法上の制約の範囲内において…行われる」と明記していました。



新ガイドラインの活動範囲拡大のイメージ

「戦地」でも活動
安倍内閣は「一体化」の考え方自体は維持するとしていますが、昨年7月の「閣議決定」で「後方地域」の枠組みを撤廃。銃弾が現に飛び交う「戦闘現場」でなければ憲法上問題ないという“その場判断”に変更しました。
新ガイドラインからは、「閣議決定」に対応して、先の記述が消えています。日米間で「憲法上の制約」は残っていないことになります。
また、協力項目の「後方地域支援」はただの「後方支援」に、「後方地域捜索・救難」は「戦闘捜索・救難」へと書き換わりました。「戦闘捜索・救難」とは、戦闘機の撃墜などによって敵地で遭難した兵士を救出する危険な軍事作戦の一部です。
今後は従来の「戦闘地域」で自衛隊が活動するということです。現場自衛官が判断するものを「憲法上の制約」と呼べるはずはありません。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月6日付掲載


「後方支援」と言いながら、「戦闘地域」のすぐそばまで行って支援できる様に「大変質」されてしまう。

読み解き新ガイドライン③ 何が狙いなの? 「防衛」と無縁 米戦略へ奉仕

2015-05-10 14:41:51 | 平和・憲法・歴史問題について
読み解き新ガイドライン③ 何が狙いなの? 「防衛」と無縁 米戦略へ奉仕

新ガイドラインには、過去のガイドラインの一貫した建前だった「日本防衛」と全く異質の章が、新たに設けられました。「地域およびグローバルな平和と安全のための協力」をうたう5章です。
4章は、集団的自衛権行使による他国防衛まで含まれていますが、「日本防衛」や「日本の平和と安全」が建前にはなっています。
これに対し5章は冒頭で、「日米両国は、アジア太平洋地域およびこれを越えた地域の平和、安全、安定および経済的な繁栄の基盤を提供するため、主導的役割を果たす」と宣言。焦点はすでに日本にはなく、世界全体です。
また、「平和、安全」に「経済的な繁栄」などの記述が加わることから明らかなように、海外戦争時の自衛隊派兵に限定されない、米国の世界戦略へのきわめて広範な協力が約束されています。




分野は無限定に
「国際的な活動における協力」の節では、▽平和維持活動▽海洋安全保障▽情報収集・警戒監視・偵察▽後方支援iなど8分野を例示。「この指針に含まれない広範な事項について協力」とも明記しており、分野は無限定です。
平和維持活動の範囲は、「国連により権限を与えられた」との記述からも、国連PKOに限られず、アフガニスタンでの治安維持活動で参加国に多数の戦死者を出した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動も含まれます。
後方支援にはアフガニスタン戦争やイラク戦争時に自衛隊が参加したような多国籍軍での補給・輸送活動が、海洋安全保障には機雷掃海や海賊対処などの軍事作戦が含まれます。

何の根拠もない
前ガイドラインは日米安保条約の大改悪でしたが、依然として日本有事への対処を建前とした同心円の体裁をとっていました。(図)しかし、新ガイドラインの5章は「安保条約の目的達成とは違う世界の話だ」(防衛省幹部)とされるように、政府の立場からしても、条約上何の根拠も持たない協力分野です。
そのため新ガイドラインは「日米同盟のグローバルな性質」を強調することで、こじつけています。要は、海外派兵特措法などで2000年代に例外的に広げてきた同盟協力を、この際、両国の共同方針にまでしてしまうということです。
宇宙・サイバー空問(6章)、武器開発など軍事基盤面での協力(7章)まで加わり、新ガイドラインはもはや「日本防衛」とは無縁の構造になっています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月5日付掲載


新ガイドラインの5章は「安保条約の目的達成とは違う世界の話だ」。日本有事の同心円状の話しではなく、宇宙・サイバー空問、武器開発など、「日本防衛」とは無縁の構造。

読み解き新ガイドライン② 新指針の特徴は? 「切れ目ない」戦争態勢

2015-05-10 10:58:29 | 平和・憲法・歴史問題について
読み解き新ガイドライン② 新指針の特徴は? 「切れ目ない」戦争態勢

新ガイドラインの最大の特徴は、対処範囲が「日本周辺」から全世界まで拡大された点にあります。
新ガイドラインは全8章で構成され、その冒頭で①平時から戦争時までのあらゆる状況下で日本の安全を確保する②アジア太平洋およびこれを越えた地域の安定1の二つの目的をあげています。
二つの目的にそれぞれ相当するのが4章(日本の安全の切れ目のない確保)と、5章(地域・グローバルな協力)の記述です。
どちらの章にも地理的制約がなく、地球規模(グローバル)の派兵に二つの道が確保されています。


日米の協力項目例
 後方支援戦闘捜索・救難ミサイル防衛・迎撃海洋安保警戒監視(ISR)武器防護民間空港・港湾、自治体利用
平時 
日本の平和・安全への脅威(重要影響事態)   
日本に対する武力攻撃(武力攻撃事態等)  
日本以外に対する武力攻撃(存立危機事態)△(機雷掃海・臨検) 
国際的な活動  ○(機雷掃海)  
※全ての項目に「これに限らない」とのただし書きを付記。
△は海上での戦闘作戦▲自治体、民間の能力を活用


平時の対処盛る
4章の眼目は、「日本の安全確保」を名目にした、平時から戦時までの「切れ目のない」戦争態勢の構築です。①平時②日本の平和・安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)③他国有事(存立危機事態)④日本有事―の4段階で日米の行動を定めています。
他国有事(米国または第三国に対する武力攻撃への対処)は、日本の集団的自衛権行使容認を受けて、初めて盛り込まれました。
前ガイドラインには、平時からの対処行動は含まれていませんでした。それは、そもそも戦争を放棄した憲法9条の下で、当時の政府ですら事態が何も発生していない時点からの軍事行動に踏み込めなかったことを意味しています。
しかし新ガイドラインでは、平時からの対処として▽米軍の装備品等(アセット)防護▽防空・ミサイル防衛―など7項目を例示。自衛隊の日常任務が無限に拡大されています。
前ガイドラインは、日本周辺で米軍が武力介入した場合(周辺事態)に、自衛隊が自動参戦する仕掛けでした。これに対し新ガイドラインは、平時からの日米一体の対処作戦が、戦争まで自動的に切り替わる仕組みです。
そのことは、▽後方支援▽海上作戦(海洋安全保障)▽アセット防護▽ミサイル防衛iが平時から戦時の全段階で明記されていることに示されています。

米軍巻き込めず
日本が新ガイドラインでもくろんだのは、中国との尖閣諸島をめぐる領有権争いに米軍を巻き込むことでした。しかし、平時からの協力に「島嶼(とうしょ)防衛」の記述はなく、日本有事でようやく自衛隊の作戦を「支援し補完する」だけ。自衛隊の役割が日米安保条約すら超えて地球規模まで拡大する一方、米軍の役割は条約上の「義務」から一歩も出ていません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月4日付掲載


「なんとか事態」とかいろんな理由をつけて、自衛隊を米軍の起こす戦争に参加できるような策略です。