読み解き 新ガイドライン⑥ 国民との関わりは? 若者の命まで差し出す
新ガイドラインは、日本の国のかたちや国民生活を対米従属・軍事中心にいっそうゆがめていく深刻な内容をはらんでいます。
“血の同盟”約束
最大の犠牲者になりうるのは、自衛隊の若者です。
「軍事同盟というのは“血の同盟”だ。…日本の自衛隊は少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」。かつて安倍晋三首相は自著『この国を守る決意』でこう強調していました。
新ガイドラインには、首相の念願どおり、自衛隊が集団的自衛権の行使によって、「米国または第三国に対する武力攻撃に対処する」ことが明記されました。
米軍の占領政策の継続という日米安保条約の屈辱的本質には全く手をつけず、「日本の防衛」とは無関係の米軍の戦争を支援するため、若者の命まで差し出す“血の同盟”を約束したのが、新ガイドラインです。
前ガイドラインには、米軍機や艦船による民間空港・港湾の全面利用、物資の積み降ろし場所の確保、日本国内での傷病兵の治療など、民間分野を巻き込むあらゆる戦争協力の項目が盛り込まれていました。
新ガイドラインでもこの立場は踏襲されており、米国などが攻撃を受けて、日本が集団的自衛権の行使で参戦する場合についても、地方自治体・民間の権限や能力を「適切に活用する」と明記されました。「米国防衛」の戦争にも、国民が戦時協力を迫られる危険があります。
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羽田空港
中国動向念頭に
「中国による南シナ海、東シナ海の活動と軍備拡張もある」。
安倍晋三首相は新ガイドラインで中国の軍事動向を念頭に置いていると明言しました。(4月30日の日本テレビ番組)
新ガイドラインが、安倍政権の「中国脅威論」の産物であることが、首相の発言からも見てとれます。
しかし、米中関係も日中関係もかつての冷戦期と異なり、経済的な相互依存を深めつつあるのが現状です。中国と戦争になれば、双方に計り知れない損害をもたらすこととなり、こうした「脅威論」で軍事対応を強めることこそ非現実的です。
新ガイドラインは中国との軍事的緊張を将来にわたり固定化しかねないもので、軍事費の拡大という形で国民生活にも悪影響を及ぼします。
また、「情報保全・情報協力」では、「秘密情報の保護に関連した政策、慣行、手続きの強化における協力を推進する」ことが初めて盛り込まれました。国民が知るべき情報が秘密保護の名目でいっそう隠されていく危険があります。
(おわり)
(この連載は、池田晋、竹下岳が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月9日付掲載
中国の東シナ海や南シナ海での軍事行動を念頭に入れた新ガイドライン。
でも、かつての冷戦時期と違って、米中、日中は経済的に強く結びついています。
アメリカも日本の財界も、中国に対して軍事的緊張を高めることは望んでいません。
新ガイドラインは、日本の国のかたちや国民生活を対米従属・軍事中心にいっそうゆがめていく深刻な内容をはらんでいます。
“血の同盟”約束
最大の犠牲者になりうるのは、自衛隊の若者です。
「軍事同盟というのは“血の同盟”だ。…日本の自衛隊は少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」。かつて安倍晋三首相は自著『この国を守る決意』でこう強調していました。
新ガイドラインには、首相の念願どおり、自衛隊が集団的自衛権の行使によって、「米国または第三国に対する武力攻撃に対処する」ことが明記されました。
米軍の占領政策の継続という日米安保条約の屈辱的本質には全く手をつけず、「日本の防衛」とは無関係の米軍の戦争を支援するため、若者の命まで差し出す“血の同盟”を約束したのが、新ガイドラインです。
前ガイドラインには、米軍機や艦船による民間空港・港湾の全面利用、物資の積み降ろし場所の確保、日本国内での傷病兵の治療など、民間分野を巻き込むあらゆる戦争協力の項目が盛り込まれていました。
新ガイドラインでもこの立場は踏襲されており、米国などが攻撃を受けて、日本が集団的自衛権の行使で参戦する場合についても、地方自治体・民間の権限や能力を「適切に活用する」と明記されました。「米国防衛」の戦争にも、国民が戦時協力を迫られる危険があります。
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羽田空港
中国動向念頭に
「中国による南シナ海、東シナ海の活動と軍備拡張もある」。
安倍晋三首相は新ガイドラインで中国の軍事動向を念頭に置いていると明言しました。(4月30日の日本テレビ番組)
新ガイドラインが、安倍政権の「中国脅威論」の産物であることが、首相の発言からも見てとれます。
しかし、米中関係も日中関係もかつての冷戦期と異なり、経済的な相互依存を深めつつあるのが現状です。中国と戦争になれば、双方に計り知れない損害をもたらすこととなり、こうした「脅威論」で軍事対応を強めることこそ非現実的です。
新ガイドラインは中国との軍事的緊張を将来にわたり固定化しかねないもので、軍事費の拡大という形で国民生活にも悪影響を及ぼします。
また、「情報保全・情報協力」では、「秘密情報の保護に関連した政策、慣行、手続きの強化における協力を推進する」ことが初めて盛り込まれました。国民が知るべき情報が秘密保護の名目でいっそう隠されていく危険があります。
(おわり)
(この連載は、池田晋、竹下岳が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年5月9日付掲載
中国の東シナ海や南シナ海での軍事行動を念頭に入れた新ガイドライン。
でも、かつての冷戦時期と違って、米中、日中は経済的に強く結びついています。
アメリカも日本の財界も、中国に対して軍事的緊張を高めることは望んでいません。