どちらも赤城自然園で出会った花である。この日、サイハイランとヤワタソウの開花情報に誘われて、私たちは園内を散策した。入園時に教えていただいた場所の周囲を行きつ戻りつして、ときどきは木漏れ日が射すような薄暗い木陰で、花を見つけた。
サイハイランは(采配蘭、ラン科サイハイラン属の多年草)、地味な部類のランといわれている。ところが、木漏れ日を受けたとき、数株の群れは実に慎ましやかで美しい花を開くランに変身した。花茎の高さは20-30 cmであった。
采配を思わせる花序の形、淡紫紅色を帯びた唇弁、淡色系の側花弁、棒状に突き出たずい柱などが、私たちの視線の先に浮かび出たのであった(持久戦(約30分)の褒美として)。
木漏れ日が去ったときに。
各株に緑葉が一枚付いている。しかし、サイハイランは、葉を持ちながらも、菌根菌に炭素源を依存する部分的従属栄養植物である。そのため、移植を試みても、ランは数年以内に枯死するといわれている
余談ながら、自然園の開花情報で紹介されていたのは、この群れであった。
ヤワタソウ(八幡草、ユキノシタ科ヤワタソウ属の多年草、日本固有種)は、マルバタケブキに囲まれている木陰で、花を開いていた。大きな葉(10-30 cm)に似合わず、花は小さかった(1 cm程度)。しかし、その形と色は私たちにとって強く印象に残るものであった。このものは、山地の谷沿いのような暗い湿った環境を好み、本州中部以北に分布する。花は下向きに咲き始めるが、後に上に向くとのことである。画像は、その重さに少し閉口しつつ持って歩いた望遠レンズ(200 mm、F2.8)が威力を発揮した結果である(苦笑)。
花には、キレンゲショウマのそれを想わせる雰囲気がある。八幡草との名は興味深いが、花名の由来ははっきりとしていないようだ。このものの仲間には、九州と四国(愛媛県、香川県)に分布している、ワタナベソウ(渡辺草、花名は発見者への献名)がある。
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撮影、2019年6月。