こつなぎの写真ノート

身近な自然の彩りを楽しみながら

今年の花から、サイハイランとヤワタソウ

2019-12-21 | 赤城自然園

どちらも赤城自然園で出会った花である。この日、サイハイランとヤワタソウの開花情報に誘われて、私たちは園内を散策した。入園時に教えていただいた場所の周囲を行きつ戻りつして、ときどきは木漏れ日が射すような薄暗い木陰で、花を見つけた。

サイハイランは(采配蘭、ラン科サイハイラン属の多年草)、地味な部類のランといわれている。ところが、木漏れ日を受けたとき、数株の群れは実に慎ましやかで美しい花を開くランに変身した。花茎の高さは20-30 cmであった。

 

 

采配を思わせる花序の形、淡紫紅色を帯びた唇弁、淡色系の側花弁、棒状に突き出たずい柱などが、私たちの視線の先に浮かび出たのであった(持久戦(約30分)の褒美として)。

 

 

木漏れ日が去ったときに。

 

各株に緑葉が一枚付いている。しかし、サイハイランは、葉を持ちながらも、菌根菌に炭素源を依存する部分的従属栄養植物である。そのため、移植を試みても、ランは数年以内に枯死するといわれている

 

余談ながら、自然園の開花情報で紹介されていたのは、この群れであった。

 

ヤワタソウ(八幡草、ユキノシタ科ヤワタソウ属の多年草、日本固有種)は、マルバタケブキに囲まれている木陰で、花を開いていた。大きな葉(10-30 cm)に似合わず、花は小さかった(1 cm程度)。しかし、その形と色は私たちにとって強く印象に残るものであった。このものは、山地の谷沿いのような暗い湿った環境を好み、本州中部以北に分布する。花は下向きに咲き始めるが、後に上に向くとのことである。画像は、その重さに少し閉口しつつ持って歩いた望遠レンズ(200 mm、F2.8)が威力を発揮した結果である(苦笑)。

 

 

 

花には、キレンゲショウマのそれを想わせる雰囲気がある。八幡草との名は興味深いが、花名の由来ははっきりとしていないようだ。このものの仲間には、九州と四国(愛媛県、香川県)に分布している、ワタナベソウ(渡辺草、花名は発見者への献名)がある。

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撮影、2019年6月。

 


シキンカラマツ、赤城自然園にて、2019年8月

2019-08-07 | 赤城自然園

シキンカラマツ(紫錦唐松)はキンポウゲ科カラマツソウ属の多年草である。そして、このものは関東・甲信越・東北において限られた地域(群馬、長野、福島、茨城)に分布している。花期は7-9月である。この花を今年こそは盛りの時に撮ってみたいと意気込んでいたが、シンポジウム参加などの藪用に追われて、そのチャンスを失ってしまった。それでも、先週前半、赤城自然園でシキンカラマツに、私たちはレンズを向けてみた。

 

木漏れ日を浴びるときを待って。風で揺れる花を、何度か焦点合わせに失敗しながら撮ってみた。シキンカラマツにおいて、花びらに見えるものは萼であり、花弁はない。

萼と蕊の彩りを楽しめることにおいて、シキンカラマツは特異的である。同属のカラマツソウやミヤマカラマツでは萼が早期に脱落してしまう。萼での赤紫班線は彩りの美しさを強調している。

 

花は小型である。

 

いつものことながら、美しい花々を前にして、同行者(家内)とアングル選びでディスカッション(口論?(苦笑))が始まる。

 

ここでの草丈は50-100 cm程度である。

 

 

 

萼が落ちて、そう果ができている株を選んで。

 画像は背景にみに日差しが射すときを待った結果である。

 

 

園内では随所でレンゲショウマの花が開き始めたので、シキンカラマツは脇役になってしまったようである。しかし、この花には一度みたら忘れられないほどの魅力が備わっている。そのため、私たちは再びシキンカラマツのそばに立ちたい気分になっている。

 

園内で咲き始めたレンゲショウマの花から

 

 

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撮影、8月4日午後。

 


木漏れ日を浴びる花々(その2)、ヤマシャクヤクなど、赤城自然園にて、2019年5月

2019-05-11 | 赤城自然園

赤城自然園では、総面積120ヘクタール(東京ドームの26倍の広さ)のうち、60ヘクタールが一般公開されている。そして、かつてマツやスギから成っていた雑木林は、里山の雰囲気を強く感じさせる広葉樹などの森に変わっている。

 

森では、ヤマシャクヤクの花が木漏れ日を浴びていた。花がもつ和紙のような質感が柔らかな日差しで引き出されている。

 

 

 

 

春の花にとって、木漏れ日は最高の引き立て役である。

ジュウニヒトエ(十二単、シソ科キランソウ属の多年草、日本固有種)

 

ラショウモンカズラ(羅生門葛、シソ科ラショウモンカズラ属の多年草。国内では本州、四国、九州に分布する)

 

 

ホタルカズラ(蛍葛、ムラサキ科ムラサキ属の多年草、花名は草むらの中で点々とする花の色をホタルの光に例えたことに由来する)

 

 

自然園に向かう道にて。

榛名山、市街地(渋川市)、右奥(山腹)に伊香保温泉

雪を被る谷川岳(左に俎嵓、右に山頂(双耳峰))

左から、本白根山(花の山)、逢ノ峯、草津白根山(中央、湯釜)、渋峠(国道最高地点)、そして横手山(長野県、展望の山)

 

撮影、5月8日午前・午後。 


木漏れ日を浴びる花々(その1)、シラネアオイなど、赤城自然園にて、2019年5月

2019-05-09 | 赤城自然園

赤城自然園(群馬県渋川市)では、創設期に移植された草花での種子繁殖が進み、見事なシラネアオイ、ヤマシャクヤク、 レンゲショウマなどの群生が生まれている。

昨日は、シラネアオイの群れが木漏れ日を浴びていた。

 

 

 

 

 

優しい日差しで生み出される雰囲気に魅せられて。

 

 

 

木漏れ日で浮き出る、花びら(実は萼片)と葉の色彩。

 

この個体では、葉の上で水滴が輝いていた。

 

ところで、園内ではシャクナゲやツツジの花も見頃となっていた。

ヒカゲツツジ

 

トウゴクミツバツツジ 

 

 

 

背景は榛名山である。

 

5月7日午前・午後。


赤城自然園での夏の花(2)、タムラソウ、シキンカラマツ(残花)など、2018年8月

2018-09-01 | 赤城自然園

タムラソウ(田村草、キク科タムラソウ属の多年草)。花名は面白いが、その由来ははっきりとしていない。

 

アザミ類とは異なって葉にとげ(刺)がないために、このものは見る者に穏やかな印象を与える。なお、ここでは保護色を帯びた昆虫が写っている。

 

シジミチョウが吸蜜している。蜜腺はどこにあるのだろうか。

 

とびだしている雄しべ(濃い色)が花にアクセントを与えている。

 

タムラソウの花は小さな花の集まりである。細長い花びら(5枚)、雄しべ、雌しべ(雄しべの中心)。

 

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自然園では、シキンカラマツ(紫錦唐松、キンポウゲ科カラマツソウ属の多年草)が花を開いていた。このものの分布域は限られていると言われている(長野、群馬、福島など)。残花の状態になっていたが、独特の美しさは残っていた。レンズを向けながら、花びらに見える萼の色合いと質感に魅せられてしまった。

 

蕾の色と質感も印象的である。

 

淡い桃紫色の萼花びらと黄色の葯との対比が美しく、風に揺れて咲く姿には風情がある(NHK出版、みんなの趣味の園芸)。

 

この時季にしか見られないシキンカラマツの姿。これから最高調に達しようとしている花とドライフラワー化したものが混在している。

 

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他の花々など。

マツムシソウ。

 

ツリガネニンジン

 

オミナエシ

 

 

吸蜜しているハチでのだんご状の花粉「花粉荷」。

 

見かけたチョウから、サカハチチョウ。

 

キンミズヒキ

 

林内の暗い場所で一際目立つヤマシャクヤクの実。不稔(未受粉)のものである。受粉したものは黒色の実になる。

 

 

撮影、8月2日。EF 100 mm F2.8。

 


晩春の花から(赤城自然園にて)、2018年5月

2018-05-13 | 赤城自然園

赤城自然園は赤城山の西山麓(標高 600-700 m)に位置している。先週金曜日の午後(11日)、わたくしたちは晩春の花々を眺めながら同園内を散策した。

 

シャクナゲ園にて。

 

オオヤマレンゲの蕾

 

 

芳香を放つ開花直前の蕾

 

 

レンゲショウマの群れ

 

木漏れ日を楽しむ。

 

 

木漏れ日によるやわらかな光を浴びるエビネ

 

 

ジャコウアゲハ(♂)

 

逆光でのシーンに、心を動かされて。

 

 

5月11日午後1-4時、EOS 6D、EF 100 mm 2.8L。


逆光で撮る花の魅力、レンゲショウマ、赤城自然園にて

2015-08-28 | 赤城自然園

 

 

 

 

この時季、レンゲショウマの群れには、蕾、花、そして育ち始めている果実が混在している。

透過光によって浮かび出るそれぞれのシルエットには、和の花としてのレンゲショウマの魅力が如実に表れる。

ちなみに、レンゲショウマ(蓮華升麻)は1属1種の日本固有の草花である。

 

自然園での群から

 

 

 

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撮影、8月22日午後(後半)、赤城自然園(群馬県渋川市、開園スケジュール:同園HP)

キヤノン EOS 6D、EF 70-200 mm F4L、EF 100 mm F2.8L、手持ち、Lightroom  CC(2015)。


レンゲショウマの花に集まる昆虫

2015-08-14 | 赤城自然園

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

レンゲショウマは虫媒花植物であると言われている。なるほど、花には何種類かの昆虫が集まっている。森の妖精は巧みに昆虫を誘うことにおいてしたたかである。花弁の内側に蜜線をもち、吸蜜に訪れる昆虫を花粉に触れさせる。そして、昆虫に花粉を運ばせる。

昆虫は、私達には見えない紫外線が見えると言われている。花弁には、紫外線を反射したり吸収したりする模様があるのであろう。その模様は昆虫にとって魅力的であるに違いない。

 

昆虫を同定するために、市内にある「群馬県立ぐんま昆虫の森」(桐生市新里町)に行ってみることにしよう。

 

8月8日午後、赤城自然園にて。

 


レンゲショウマの群生、赤城自然園にて

2015-08-09 | 赤城自然園

 レンゲショウマ(蓮華升麻)の花は1属1種の日本特産種である(キンポウゲ科レンゲショウマ属)。花がもつ美しさと雰囲気によって、このものは森の妖精とも言われている。御岳山(東京都青梅市は自生種の群生地として著名である。


ここでは、赤城自然園(群馬県渋川市、標高 600-700 m)で撮った画像をアップロードする。自然園では、レンゲショウマの群れがあちらこちらで木漏れ日を浴びていた。

 

 

 森の木々によって、レンゲショウマの葉は強い日差しから守られている。

そのため、日差しによる葉焼けが園内ではほとんど見られない。

 

 

 

 

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花は下向きに咲く。花をよく見るためには、窮屈な姿勢が求められる。

しかし、花が醸し出す雰囲気は見る者にその姿勢での疲れを忘れさせる。

 

 


萼の色合いに魅力を感じて

 

 

花を背景とする蕾の列

 

レンゲショウマは福島県から奈良県までの範囲に分布している(山渓ハンディ図鑑2、山に咲く花、山と渓谷社)。この分布範囲はあの美し花を開くキレンゲショウマのそれとは異なっている(四国、九州、紀伊半島)。


自然園のレンゲショウマは個体数は年々増えている。自生化が進んでいるようである。実際、園内の花では、蜂(ミツバチの1種であるクロハナマルバチ)などが吸蜜している。そして、これらは花粉媒介者(ポリネーター)となるはずである。

ところで、レンゲショウマの自生種の数は絶滅危惧種になるまで減っている。近所の山でもかつて見られた群生地が消滅した。その理由は言わずもがなである。

 

撮影、2015年8月8日午後。


ヤマシャクヤクの花、赤城自然園にて、2015年5月上旬

2015-05-14 | 赤城自然園

ヤマシャクヤク(山芍薬)は山地に生えているボタン科ボタン属の多年草である。花名は花がシャクヤクのそれに似ていることに由来する。各々の花について、花期は3-4日と言われている。

和紙のような質感をもつ花は、山に春が到来したことを静かに告げる風情を感じさせる。しかし、自生しているヤマシャクヤクの個体数はかなり減ってしまった。かつては、近所の山でその清楚な花を見ることができた。今ではそのことは夢物語に近くなっている。

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赤城自然園(群馬県渋川市赤城町)では、広葉樹林の中で花の群れが、やわらかな木漏れ日を受けていた。

 

逆光にて。自然園では、順光と逆光の両条件で花を見ることができる。

 

広葉樹林の中で見頃となっていた花。黄色の花はヤマブキソウである。

 

花が白く見えるのは、花弁の中に空気などのガス泡が多く含まれていることによる。空気の泡が少なければ透明感が増す。ガスの泡が多い部分とそうでない部分があることは、光の当たり具合と相俟って花弁の見え方に多様性をもたらす。

 

 

理屈はともかく、花の形は手漉き和紙による折り紙を想わせる。

 

園内には個体数が多いので、花の一生が見られる。

 

葉の質感も魅力的である。

 

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自然園では、ヤマシャクヤクのみならず、シラネアオイ(白根葵、シラネアオイ科シラネアオイ属の多年草、日本固有種)も多く育てられている。

 

撮影、5月2日(12-15時半)

 


ヒメサユリの花など、赤城自然園にて、2012年6月

2012-06-05 | 赤城自然園

自然園で、オオヤマレンゲのみならず、ヒメサユリの花などが見頃となっていた。ヒメサユリは日本特産の美しいユリであるが、自生種の分布は新潟・山形・福島の三県に限定されている。

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ヒメサユリの花、6月2日撮影

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ヒメサユリ(姫小百合): 別名、オトメユリ。山間部に自生しているユリ科ユリ属の多年草である。環境省の準絶滅危惧種に指定されている。花は芳香を放つ。嫌煙植物であるため、自生種の保護地では喫煙が禁止されていると聞く。

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いつものように、後から撮ってみる。芳香の誘われただろうか、花に小さな昆虫がとまっていた。

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このような蕾もあった。撮る者としてはため息をつきたくなる。しかし、この姿は自然の厳しさが自然園で保たれていることの証でもあるとして、気を取り直す。

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園内で咲いていた花から


エビネ(海老根、ラン科エビネ属、山野の落葉樹林内に自生している多年草)

近頃は、山で自生種に出会うことが少なくなった。

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クサタチバナ(草橘、ガガイモ科の山地に生える多年草)とアサギマダラ

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アサギマダラ(タテハチョウ科の大型の蝶)は、南西諸島や台湾から北上してきたものであろう。この蝶は長距離を移動する。


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そして、オオヤマレンゲ

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オオヤマレンゲの花、赤城自然園、2012年6月

2012-06-03 | 赤城自然園

赤城自然園(群馬県渋川市)で、オオヤマレンゲの花が咲き始めた。一ヶ月ほど前は、青くて硬かった蕾が、心に残るような美しい花となった。

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自然園でのオオヤマレンゲの木立と蕾、5月5日撮影。

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オオヤマレンゲの花、6月2日撮影。

白色の花(直径5-7センチ)は、緑の葉と好対照をなしている。花は下向きに咲く。雌しべや雄しべを雨から守るためであろうか。花期は数日である。余談ながら、この画像を撮ったとき、背景として青空が欲しかった。

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花の気高さと美しさ、オオヤマレンゲが森の貴婦人といわれる所以である。ところで、森の貴婦人は芳香を出してポリネーター(花粉の媒介をする昆虫)を巧みに誘うとのしたたかさも持っている。

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花には、開き始めるときから、並ではない色彩と雰囲気が現れている。そのためであろう。園芸種は茶花としても喜ばれている。

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花には、その色と質感を反映して、光を背後から受けると透明感に満ちた美しさが現れる。

逆光で見る森の貴婦人の姿。

 

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ところで、貴婦人の後ろ姿も麗しい。

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「オオヤマレンゲ(大山蓮華)」
モクレン科の落葉性小高木にて、高さが4~5メートルになる。レンゲ(蓮華)との名は、花の形がハス(蓮)の花に似ていることに由来する。牧野植物図鑑には、「奈良県大峰山(大峯山)で咲くのでオオヤマレンゲといわれる」とのような説明がある(花の大歳時記、角川書店、1990年発刊)。大峰山系での自生種は国の天然記念物に指定されている。

関東地方およびその近辺では、谷川岳や志賀高原に自生種が存在すると言われている。

赤城自然園には、数株のオオヤマレンゲが植えられている(見事なほどに、大きい株がある)。昨日(6月2日)は、蕾が開いていない株もあった。自然園の春季開園は6月10日まで(同園HPから)。