赤城山の上空や山腹ではさまざまな形の雲が発生する。この山が関東平野と日本海側まで続く山岳地帯との境界に位置しているからだ。平野から流れてくる気流は赤城山に沿って上昇する。一方、山岳地帯方向からの気流は赤城山を越えると下降する。どちらの気流にとっても、赤城山は気流の温度を著しく変化させるエネルギー障壁である。結果として、気流の温度は一気に10℃以上も変化する。 冷房が一般的でなかった頃、赤城山はわたくしたちにとって近場の避暑地であった。余談ながら、富士山は海方向からの気流が急激に4000メートル以上も上昇することにおいて、雲を生み出す「奇跡の山」である。
さて、今月上旬、帯状の雲が赤城山の上空で水平に伸びる景色が現れた。市内から見る赤城山の姿は上底と下底が長い台形状である。だからこそ、このような帯状の雲が生まれたに違いない。
最高峰の黒檜山(1828メートル、外輪山)には灰色の雲がかかろうとしていた。中央は長七郎山と地蔵岳(無線中継アンテナ、中央火口丘(ドーム))である。
雲の有様とともに赤城山が雪を被っていなかったことに、わたくしは感慨を覚えた。かつて、12月中旬に無雪状態の地蔵岳などの山頂を歩いたことがあるからだ。
帯状の雲は一種の波状雲に分類されるが、これに加えて新たな波状雲が伸びてきた。上昇気流に新たな乱れが生じたためであろう。
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画像は市内の別の場所で撮ったものである。彩りが残っている里山の奥に、山頂部が霧氷か雪を被っている赤城山・黒檜山、そして笠雲に見える厚い雲。今月の上旬ならではの風景である。
今年も今日を含めて2日間。原稿を書きながら眺めると、数本の飛行機雲が上空に伸びている。来年は巳年(へびどし)であるぞと強調するかのように。
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12月上旬、9時頃、桐生市にて。