my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

それがバターというものか

2021-05-11 17:17:24 | 好きなもの・音楽や本

インスタでいくつかの書店をフォローしているのですが、
この本を推している方が何人も居て、そんなに薦めるのなら、
と図書館で予約待ちして読みました。



裏表紙の説明に、男たちの財産を奪い、殺害した容疑で
逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない
彼女がなぜー。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の
助言をもとに梶井の面会を取り付ける。
とあったので、
なんとなく事件の真相に迫る系のサスペンスなの??と
何の予備知識も持たないまま読み始めてしまったところ、
あれ?これって何かに似てる‥と、木嶋佳苗をモデルに
していることがわかりました。


殺人容疑で拘置されているカジマナは、実に堂々としていて、
髪や肌の手入れも怠っていないように見え、多忙な記者で
ある里佳よりも余裕を持って、人生を楽しんでいるかの
ように振る舞います。
いかに自分がバターを愛しているか、バターのない(あるいは
けちった)料理がどれほど不味いか、バターをきちんと
味わったことのない里佳が、どれほど貧相な女であるかを
語り、それに頷くしかない里佳は、「カジマナマジック」に
かかったような状態になると同時に、バターの美味しさを
知っていきます‥。

カジマナは本当に犯人なのか、里佳は真実を引き出し、
記事にすることができるのかー。

そこが主軸の物語として読み進めていくと、作者の意図は
それだけに留まらず、私たちが直面しているありとあらゆる
こと‥(思いつくだけでも)過度なダイエット、ネットの炎上、
妊活、父と娘、推しのアイドルなどなど‥に及んでいること
がわかり、しかもそのどれもが「さらっと」ではなく、
「わりとたっぷり」なのです。

すごいな、うまいな、と思いながらも、読み手の私はそれを
次第にヘビィに感じてきて‥あれあれあれ。
これはそう、まさにバターと同じだと思いました。

たまに食べるとすごく美味しいけれど、私にとっては重すぎる
食べ物。本文中に、自分の適量をいつか知ることができたら、と
いう箇所がありましたが、柚木麻子本は、私にとってはどうやら
バターのようなので、またいつか、を楽しみにすることにします。








 

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賢治探偵

2021-05-06 16:52:20 | 好きなもの・音楽や本

図書館で偶然見つけた文庫本。


宮澤賢治が、親友の女学校教師、藤原嘉藤治から不思議な話を
聞いたり、彼を通して持ちかけられた相談に応えるために
「探偵」まがいの捜査をし、万事上手く解決してゆくという
短編が3つ収められていました。

最初のはなしは、賢治が書いた童話「月夜のでんしんばしら」
のように、電柱が歩くのを見た!という人が現れるというもの。
文学だけではなく、科学にも強い賢治は仮設を立て、それが
何ゆえそう見えたのかを立証してゆきます。

どの話も、事件が解決していく面白さだけではなく、その土地
に住む人々の暮らしや心情に深く寄り添っていることにココロ
打たれます。

宮沢賢治という人は、自分にとても厳しい人で、常に俯いて
いるような(勝手な)イメージがありましたが、この本の中の
賢治は、とても行動的で、笑顔が似合う愉快な人だったので、
なんだか安心しました(笑)。


探偵ものって、ほんとにときめきます笑。大好き。

余談中の余談ですが、名探偵コナンもずっとずっと観続けて
いまして(現在もTV録画して観ています)。でも劇場版が公開
されてすぐに、映画館で観るのはこのたびが初めてでした。

昨日ひとりで観てきましたが、楽しいひとときでした。
わかっていても、コナンが「らーーーーーんっ!!」って叫ぶと
うるっとせつなくなりますね~(笑)。

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そんなふたりにあこがれる

2021-04-22 15:49:47 | 好きなもの・音楽や本

図書館の文庫の棚で見かけて、借りてみました。



表紙の二人が主人公の、女の子がヘガティーで男の子が麦くん。

第2章で小学6年になっていたので、第1章では「その2年前」
の4年生。

走るのが誰よりも速くて、映画のビデオを観るのが大好きな
ヘガティー。ほぼ一日中寝ているおばあちゃんの部屋で、
おばあちゃんに話しかけながら絵を描くのが好きな麦くん。
ヘガティーにはお母さんが居なくて、お父さんは映画評論の
(ような)仕事。麦くんのところはお父さん居なくて、
お母さんは、なんかスピリチュアルなシゴトをしています。

二人とも、若干浮いてる?感はあるものの、すごく大人びて
いるわけでも、閉じこもっているわけでもなく、フツーの
小学生なんですが、その内面を知っていくうちに、こんな
ナイーブな小学生って居るのかな、という気持ちに満たされ
ていきました。それは二人がそれぞれお母さんお父さんと
幼い時に死別していることに関係あるかも、とも思いながら‥。

でも気が付けば、二人の気持ちを丁寧に掬い取っていく
文章を、次々にページを繰って追っていました。
そうだよね、小学生とはいえ、考えるときにはとことん考え、
悩み、悲しみ、怒り、恐れるよね‥。

それにしても、大泣きしていた同級生に、
「肩くもう」「肩くむとね、ちょっとらくになるんだよ」
って、言える麦くんって素晴らしい。


親友が男子って、素直に、羨ましいです。




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遠くても近くても

2021-04-07 14:43:26 | 好きなもの・音楽や本

図書館の文庫の棚「よ」の所で、そうだ久しぶりに
吉本ばなな本を読んでみようと思い、迷ったあげく
この本を選びました。

「不倫」「南米」をで接続するなんて、すごい
タイトルだーと思いつつ‥。


どうせ読むなら今の自分から最も遠いものが
いいなあと思って(笑)。
そして山口昌弘さんによる写真や原マスミさんの
挿画(表紙ももちろん)が、魅力的だったので。

世界の旅③とあったので、シリーズものみたいです。


ブエノスアイレスやその周辺が舞台で、7つの短編が
収められています。

電話
最後の日
小さな闇
プラタナス
ハチハニー
日時計
窓の外

最初の話「電話」の冒頭で、読み手は自分の知らない
南米の街をこんな風に知ることになります。

はじめて見たブエノスアイレスは、ヨーロッパの街並に
確かに似ていた。しかし、そこに息づく濃厚な南米のムードは
至るところから漂い出て、すべてを覆いつくしていた。
壁の落書き、広告の激しい色彩、ごみの舞う舗道、見たことも
ない街路樹は激しく枝を伸ばし紫や赤の花をつけ、子供たちは
どんな狭いところでも空間さえあればめったやたらにサッカー
をしていた。空の青も、強烈だった。押さえても押さえても
にじみ出る南米の大地の力が街を行く人々の顔に刻み込まれていた。

そんなところでの不倫の話はすごい展開になっているのでは?
と、ちょっと思いましたが笑、主人公が不倫真っ最中の話もあれば、
すでに過去のものになっていたり、自分の肉親がかつてそういう立場に
居たという話もあったりで、全体的には、むせ返る空気の中でも
その人たちが居る場所は(逆に)ひんやりしている、という印象を
(私は)受けました。

物理的な距離と、ココロの距離は比例するわけではなく、かと言って
離れているほどに、想いは強くなる、なんてロマンチックでもなく。
すべては人のココロという、ブラックホールの中で、どこをどう
とらえていくかって、ことなのかあと思いました。

「最後の日」の中で、主人公がこんなふうに思うところがあって。

私にとって一日とはいつも、のびちぢみする大きなゴムボール
みたいなもので、その中にいるとたまになにかをふと眺めている時、
なんの脈絡もなく突然、蜜のように甘く、豊潤な瞬間がやってくる
ことがあった。(中略)私にとって生きるというのはそういう瞬間を
くりかえすことであり、続いている物語のようではなかった。
だから、どこでとぎれても、私は納得するのではないか、と思えた。

ここでは、一日という「時間」のことを語っていますが、
遠くに居る、すぐそばに居る、という「距離」も、こういう気持ち
のありようと同じことなのかもしれないと思ったのでした。



***     ***     ***



数日前の明け方にみた夢の中で、私は20代前半で、サークルの
先輩にボーイフレンドを紹介されたり、友だちがやっていた
テレビの仕事が3月で終わってしまうことを悲しがったりしていて、
その気持ちがとてもリアルだったので、目覚めた時に、24歳の娘が
居る自分の方が、長い長い夢だったのではないかと思え、なんとも
不思議な気持ちを味わいました。前の晩読んでいた、小説が影響
していたのかもしれません。

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動いている村上春樹を初めて見た

2021-02-25 16:04:58 | 好きなもの・音楽や本

2月21日(日曜日)。買っておいた配信のチケットで
MURAKAMI JAM いけないボサノヴァ を観ました。

日曜日19時~不定期で放送されている、村上RADIO から
発生したライヴで、今回が2度目。初回はラジオでしか
聴けなかったので、このたびが初めての映像解禁というか、
会場に来られなかった人のために、と配信も行われました。

司会というか進行は坂本美雨さんと村上春樹氏。
いつものラジオのオープニング曲が流れた後に、会場が
徐々に明るくなり、二人が登場するのですが‥
そういえば、私、動いている村上春樹を見るのは初めて!!
ということに、そこで気が付き、軽いためいきほどの(笑)、
感銘を受けました。

書いてものを30年以上読んできて、村上RADIOで初めて
声を聴くことができて、そしてやっと「生身」の春樹氏を
見ることができたというわけです。

ライブは、とてもゴージャスで楽しいものでした。
大西順子さんのバンドで、小野リサさんが歌ったり、
村治香織さんがボサノバやったり、さらには山下洋輔さんまで!

村上RADIOはこの先も続いていくと思うので、第3回、第4回と
ライブも続いていくかもしれません。
いつの日か、この目で、動いている村上春樹を見ることができる
日がやってくるでしょうか‥来るといいなあ。

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気が付けば2月も半ばを過ぎ‥

2021-02-17 17:00:52 | 好きなもの・音楽や本

陽の入りがしだいに遅くなり、気が付けば
17時を過ぎても暮れてゆく美しい空が見えるような
季節になっていました。

駅の西口側の公園の白梅ももうこんなに咲いています。


1月は「SPITZ映画 猫ちぐらの夕べ」に始まり、それに尽きたと
いう感じで‥結局合計で6回観ました。

2月に入って、ぼんやり過ごしていたのですが、この1週間くらいで
配信ライブを3つ観ました。

2月11日 sumika  本当だったらこの日に行われるはずだった
さいたまスーパーアリーナのチケットを持っていたのです。
でもそれが中止になり、払い戻しをしてしまったので、9日の
配信は観ることができず、ちょっと後悔していたところ、10日の
夜に急遽11日の「無料!」配信が決まり、それをyou tubeで
観たというわけです。

すごいなあと思ったのは、9日にチケットの払い戻しをしていな
かった人向けのライブをやり、翌10日にファンクラブのみのライブを、
どちらも有料で行った上での、11日の無料配信を決めたこと。
その理由をボーカルの片岡さんは、「好きな曲が入ったカセット
テープを、聴いてみて、と友達に貸すような気持ち」‥と話ていました。
この7曲のライブ。とっても沁みました。
そしていつか、sumika のコンサートに必ず行こうと思いました。



2月14日 YOASOBI  昨年『夜に駆ける』が大ブレイクしたユニットの
初ライブが配信で行われました。

曲がCD化されていないのに、そして初めて出るテレビ番組が紅白歌合戦
ということで相当話題になってましたよね。曲のタイトルがスピッツの
『夜を駆ける』と似すぎているので笑、それで知っていたくらいなの
ですが、歌番組のライブ観たりしているうちに、曲も聴くようになって、
娘と一緒に配信も観たのですが‥。

話題のユニットの「初」ライブということで、どんな会場を選ぶのかなー
と思っていたら‥なんと建設中のビルの8階部分を借りて、でした。
なかなか考えたなーとひとりおばちゃんは感心してました(笑)。



そして15日 リトグリ  先月、武道館で行われたライブの配信で、
娘が観に行っていた日のもの‥断続的でしたが、なかなかの感動ものでした。
全員が20歳を過ぎて‥これからもっと表現力とかに磨きがかかっていくと、
ただ歌が上手い子たち、だけではない魅力が増し、もっともっとファンが
増えるのでは、と思いました。(娘がとってくれたチケットで、この秋
弘前に行くことになっているのです、とっても楽しみ)


昨年末に、遅ればせながら Apple Music デビューをしたので、
散歩の時に、色々ダウンロードして楽しんでいます。


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村上春樹のおかげで

2021-01-28 17:02:20 | 好きなもの・音楽や本

たしか、インスタで友達の紹介文を読んで‥なにこれ、
こんな本あったんだー!と急いで図書館に予約したの
だったと思います。



日本語タイトルがいいですよね?
村上春樹の「せいで」、何が起こった??と
とても興味を惹かれました(笑)。


作者は、韓国の作家イム・キョンソンさん。
いかに自分が村上春樹から影響を受けてきたか、を綴ったエッセイ
なのかと思いきや、春樹氏の著作はもちろんのこと、経歴や過去の
様々なエピソード、奥様のことまで、詳細に語られている研究本でも
ありました。

若い頃から熱心なファンだった私にとっては、88%くらい?は、
知っていたことなので、自分の中での「確認」になり、
あまり読んだことがない初心者の方にとっては、これ1冊押さえて
おけば、村上春樹の学生時代がどんなふうで、前職は何で、
どのような経緯で作家になったのか等々が簡単にわかる凄い本です。

お父様の仕事の関係で、海外と自国を行ったり来たりしながら、
青春期を過ごした作者が、アイデンティティ確立の過程で、
村上春樹という作家に惹かれたのは、頷けるし、その思いを
素直に書いているところに好感が持てました。

副題の「どこまでも自分のスタイルで生きていくこと」は、
作者の思いというか、決意の現れですよね。

面白く読みましたが、私が知らなかった10%くらいのことを
(残り2%は誰にもわからない部分)
知っていたことに長年のファンとして、ほんのりジェラスを
覚えました(笑)。


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どこかで句点、あるいは助詞を

2021-01-15 15:57:22 | 好きなもの・音楽や本

名前は知っていても、なんとなく読む機会がないままだった
自分にとっての「新しい作家」の本、読みました。



作者の川上未映子さんは、春樹氏との対談本があったり、
なんとなく華やかなイメージがあったので、この本も
キラキラした恋人たちが出てくる恋愛小説なのかなーと
(勝手に)思っていたのですが。

主人公の入江冬子さん34歳の、孤独な毎日と、
孤独だった過去の日々にページは埋められていて、
なかなか「恋人」が現れない展開でした。

でもそれが退屈なわけでも、じれったいわけでもなく、
自分にとっての初めての川上さんの文章は、むしろ心地よく、
誕生日の夜に、冬子が町をひとり歩く場面や、冬子が窓の外を
ただ眺めるこんな描写が響きました。

動くものと動かないもののあいだを満たしてゆく
インクのような夜の濃さを、わたしはコーヒーカップに
唇をつけたまま、ぼんやりと眺めていた。

ただ、途中読んでいて苦しくなったのは、冬子がアルコールに
依存し始めたとき‥。
缶ビールやワンカップの力を借りなければ、カルチャーセンターの
受付でさえ話す勇気が出ない、孤独の深さに胸が痛くなったのでした。

ひりひりするような孤独の殻から出ていくためには、力づくで
その殻を割るのでも、縁側昼寝のようにぼんやりと温めるのでもなく、
水分を与え、輪郭をまず滲ませ、外と内との境界を曖昧にしていくのが
いちばんだったのかなー、と、ゆうべお風呂の中でふと思ったり。

文庫本の帯に書いてあったような、恋はこんなにも孤独で、せつなくて、
涙が出るほど美しい。とか、天才が紡ぐ繊細な物語に超感動 とか、
これが、究極の恋。とかそこまでは、思わなかったけれど、人を好きに
なった時間は無駄ではなかったよね、とそっと背中に言ってあげたい
ような気持ちです。



それにしても、タイトルの「すべて真夜中の恋人」。
何度口の中でなぞってみても、頭の中に吸収されていきません(笑)。
(それゆえココロに残る、さすがのタイトルだと思います)

すべて、真夜中の恋人  だったら、真夜中を歩いている、
真夜中という時間に属している人たちはみんな恋人同士みたいな(?)。

すべて真夜中、の恋人   だったら、(自分の)恋人が存在していた
時間はいつでもその全部が真夜中だった、という印象になるし。

もし、一文字増えて すべて真夜中の恋人 とか、
すべて真夜中の恋人 とか、すべて真夜中の恋人 だったら? 
タイトルからくる印象はだいぶ変わってきますよね。

もしかして、冬子の恋も、あの時句点をひとつ入れてみれば、
あと一歩踏み出して、助詞を一文字変えてみれば、三束さんとの恋も
違う方向に進みだしたりしたのかなーと、そんなことも思ってみました。



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年越し~年明けの読書

2021-01-09 15:57:49 | 好きなもの・音楽や本

読書の記録を、その流れを感じながら(?)残しておこう
と思った年の初め‥。

12月は2度続けて『グレート・ギャッビーを追え』を
読んでいました。それは『一人称単数』からの流れ、というか、
その2冊は店頭に並んでわりとすぐに購入したのですが、
なんとなく、図書館からの本を優先して?いや、買ってすぐに
読み終わってしまうのがもったいなくて、とっておいたのです。

 
表題作の「一人称単数」のラストは、半年前に読んだ
チーヴァーの「泳ぐ人」のラストを私に思い起こさせました。
漂う空気の冷たさがとても似ていると感じました。


ジョン・グリシャムの小説を村上春樹が訳す!それだけで
興味津々でしたが、邦題はどうかなー?微妙だなーというのが
私の率直な感想。あとがきで春樹氏はこれ以外は思い浮かばなかった
と書いてたように、たしかにフィッツジェラルドといえば、
ギャッツビーだし、たしかに「追って」はいるのですが、邦題からの
イメージだと、もっと追って欲しい、というか、もっとコナン的な
刑事ドラマ的な展開を期待してました‥(笑)
その点からいくと、この小説のクライマックスは「そこ」では
なかったのが残念、かな。海辺の町とか、疑似恋愛とか、せつない系
の気持ちは満たされたような気がしました。


そしてここからが、(やっと)年越し。4冊予約していた本のうち
年末に3冊を借りることができ、どれから読もうか迷った結果
この本から。
 表紙だけ見て、そそられて、借りてみたら
絵本ではなくて(勝手に絵本だと思ってた)詩集でした。
作者は1990年生まれ、早稲田大学文化構想学部卒。才能のある
方なんだと思いました。
短い詩ばかりではなく、散文形式の短いお話もあり‥
保育園の頃に、私にはお父さんが二人いた、と始まる「おとうさん」
がわかりやすかった。



 SNSに流れてきたので、
借りてみました。(私と)等身大の主人公が出てくる等身大のはなし。

本文中で紹介されている「水曜日郵便局」。
実在していた!と知ったのは読了後だったけど、もし今もやっていたら、
私は私の水曜日を書き記して見知らぬ誰かの元へ届くことを想って、
送ったのだろうかー。


 厚く重たい本を想像していましたが、
文庫本になってました。

アラスカ・インディアンに語り継がれる知恵と勇気の物語‥。
日本でも姥捨てがあったように、部族や集落が生きのびるためには
弱者を切り捨てていくことも必要、という考え方。
置いていかれたのが、おじいさんではなく、おばあさんであったこと、
そして二人が置き去りにされた屈辱をばねに、生き抜いてやろうと
決めたことが(私の)ココロに風を吹かせ、二人を応援しながら、
時に見守りながら、そして終始祈りながら、読み進めました。

人して生を受けた以上、自分にできる限りのことを続けていく
努力をしていこうと、素直に思わせてくれる本でした。


次の読書は、貸してもらった本といただいた本。
恋愛ロマンス系みたいです。






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みみをかたむける

2020-11-25 17:07:08 | 好きなもの・音楽や本

福袋』と一緒に図書館から借りてたのは、まかてさんの
こちらの本。


前から気になっていたのを、やっと借りたって感じ
なのですが。

江戸吉原の話‥くらいしか中味を知らなかったので、
てっきり表紙に描かれている太夫が主人公なんだと
思っていたら、吉原黎明期の遊女屋で育てられ、のちに
その店の女将になっていく花仍(かよ)の生涯の物語でした。

もちろん、読み応えはたっぷりありました。
一面、葦で覆われていた辺鄙な土地が江戸一番の色街へと
変わっていく歴史的な側面がわかったりとか‥遊女たちの
生活がリアルに描きだされていたところとか‥。
ただ、花仍と、花仍を引き取りのちに妻にした西田屋の甚右ヱ門
との関係を、もう少し知りたかった読みたかったという気持ちも
残りました。


読了後、すこし江戸時代から離れたくなって、偶然見かけた
この文庫本を読んでみました。(表紙に惹かれたのかもしれません)


普段自分からは進んで手にすることはないジャンルなのですが、
同じ職場の人や、近所の読書好きな方が、時折この手の本を
勧めてくれたりするのです。

少年犯罪を扱った、とても重い内容の物語でした。
終盤になってわかってくるいじめも、とても陰鬱で残忍で‥
果たして最後に救いはやってくるのかーと、何度も息苦しく
なりながら、でも、結末が知りたいので、とても早く読み終えました。

親と子の関係は一筋縄では行かず、こじれてしまった糸を
ほぐしていくのが難しいことはわかりますが、こんなにも子どもの
気持ちをわかってあげられなかったのか、と非常に残念でした。

あの時、電話に出ていればと、この物語の中で何度も何度も
父親は悔やむのですが、あれ何かと似ていると、読了後に気になって‥
何が自分の中でひっかかっているのかと思ったら。
落花狼藉』の中で、花仍がひきとって育てている娘との関係が
うまく行ってないと思い悩む中で、なんでもっと早く言わなかったのと
きつく問いたときに、娘から、自分はすべて言ってきたのに、
お母さんはいつも忙しくしていて、自分の言うことなんてまるで
聞いていないようだった、と言い返される場面があり、それから後も
何年も口をきいてくれなかったというのがあったのです。

父と息子。母親と娘。もちろん親子の関係でなくても、夫婦であっても
兄弟姉妹であっても、誰かの話に耳を傾ける、ということは、人間関係の
基本中の基本なんだなーと思った次第です。


犯罪が描かれている物語はもうやめよう、と思ったにもかかわらず、
もう1冊この本も読みました。

こちらは警察もの、ですね。誘拐事件をめぐる物語です。
たしかに「少女」がキーになっていますが、この表紙の絵は
何を意味しているのでしょう?(笑)。
なんかこれだけ見ると、自転車とか白いワンピースを着た
女の子とかが、真犯人捜査にかかわってくるみたいですよね。
(それとも重大な何かを私が見落としていただけなのか??)

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運命なのか、奇跡なのか

2020-10-22 16:34:02 | 好きなもの・音楽や本

図書館で長い間予約待ちして、上巻と下巻のあいだも3か月
くらい待って、やっと読み終えることができました。

 

風神雷神図屏風

歴史の教科書で、必ずだれでも目にしたことがあるこの絵が、
そのままタイトルと表紙に使われている物語って?
という好奇心で、図書館に予約を入れました。

原田マハさんの美術や絵画を巡る物語は、舞台が外国であっても、
まるでその時代を今自分が生きているかのように思わせてくれる
ところが魅力の一つだと思うのですが、このたびの「物語」は、
そこに壮大な謎解きが加わり、さらに面白く読み進むことができました。


京都国立博物館研究員の望月彩が主人公。彼女は幼い時から俵屋宗達の絵
に魅了され続けています。そんな彼女の前に、マカオ博物館の学芸員が現れ、
箱に収められた古文書と1枚の絵を彼女に見せるのですが。
古文書の署名は天正遣欧使節団の一員であった原マルティノ。
文中には、俵屋宗達の文字。そして「風神雷神」が描かれた西洋絵画‥。

使節団の中心であった4人は当時まだ13歳~14歳だったそう。
史実の中の「出来事」ではなく、3年もの年月をかけて、遥かかなたの
ローマを目指した少年たちの生き生きとした姿と、揺るぎない信仰心が
まぶしく、そこに当時の「大殿」であった織田信長や、京の絵師たちが
関わってくる上巻は、とても読み応えがありました。

船旅が終盤を迎える下巻では、これを運命と呼ぶのか、それとも
神が起こした奇跡なのか、という「出会い」が描かれますが、そこへの
道しるべを、すでに読者である私たちは手渡されていたので、上巻ほどの
勢いは(私には)感じられず、ああこれでこの物語は終わっていくの
だなと、すこし寂しくなりました。


それにしても、16世紀。京のみやこにさえ行ったことがない少年たちが
マカオやインドのゴアを経て(よい季節風が来るまで何か月もその場所で
風待ちをして)、アフリカ大陸の喜望峰を通り、ポルトガルまで辿り
着いたのち、スペイン国王に見え、ローマ教皇に謁見を果たしたなんて、
本当にものすごい旅であり冒険です。
(しかも、4年の歳月をかけて、ちゃんと帰国を果たしているのですから!)

一度も考えてみたこともなかった、彼らの旅に思いを馳せることができた
のも、この本のおかげだと思っています。






 

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いつか行きたい夢の旅

2020-10-13 15:28:44 | 好きなもの・音楽や本

今年は遠くへの移動が叶わない年なので、せめて気持ちだけでも
どこか遠くへ、と思い、外国の街の本屋さんや図書館が載っている
本をなんとなく探していて見つけました。



他にも似たようなタイトルの本が数冊見つかったのですが、
試しにこちらを読んでみようと思ったのは、画像が写真ではなく、
(時間がたっても古びた印象にならないようにと)イラストにした
と書いてあったことと、作者が6次元ナカムラクニオさんだったから。

ナカムラさん。6次元の店主になる前は、テレビのディテクターとして
世界中を取材で旅していて、その際に、本屋さんを訪れていたことが
元になって出来上がった本とのことでした。


アジアの本屋さん
ヨーロッパの本屋さん
アメリカの本屋さん

の3章からなっていて、本屋情報だけでなく、現地でお勧めの本とか、
本屋さんのオリジナルバッグとか、各地域で有名な作家とか、
図書館も本屋さんの「仲間」として紹介されていて、読みどころ満載
でした。

全世界的な傾向としては、電子ブックの台頭と、書店と
他業種との融合‥書店+カフェとか、書店+レストランとか、
書店+ホテルのような‥新しい形態の誕生でしょうか。

紙の本から電子書籍へ移行することで、書店の倒産は
どの国どの地域でも免れないことですが、なかには、広大な領土を有する
ロシアのように、電子書籍が広まることで、今まで本や書店というもの
が身近になく縁がなかった人も、手に取りやすくなったということも
あるようで、紙の本を愛する自分としては、つい電子書籍を疎んじて
しまうのですが、よい側面も十分にあることを認識しました。

読んでいて、いいなあと思ったのは、台湾の無人図書館。
地下街、公園、空港など、どこでも気軽に本の返却や貸し出しが
行えるシステムができているそう。
デンマークでは、実際の図書館を利用して、性的マイノリティの方などを
「生きている本」として、貸し出し、立体的な「読書」を通じて偏見を
乗り越えようという試みがあるそうです。

驚いたのは、パプアニューギニア。先住民が暮らす村に電話会社が
アンテナをたてたことで、急速にスマートフォンが広まり、それまで
先祖代々の物語を口伝えで語り継いでいたような人々が、フェイスブックに
夢中になっているという話。


世界最古の本屋さんとか、美しい本屋さんとか、世界で一番高い場所に
ある図書館とか‥。
本屋さんや図書館にまつわるはなしは本当にどれも面白かったです。




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詰め込まれていた

2020-10-02 14:41:39 | 好きなもの・音楽や本

雪と珊瑚と』が面白かったので、梨木さんの作品が
もっと読みたくなって、図書館の文庫の棚にあったものから
1冊選んできました。

 タイトルは知っていたのですが、
未読だと確信してました。(文庫になって表紙が変わったから‥?)

でもブクログに登録しようと思ったら、9年前にすでに登録
していたことがわかり‥ってことは、すでに一度読んでいたんだーと
なったのですが、ストーリーの片りんすら思い出せませんでした。


染色家の叔父さんが出てきたり、町の中でかつて富裕な農家だった
土地と屋敷を護っている親友が居たり、ヨモギ団子を作った時の
エピソードがあったり‥ココロにひっかかりを残していそうな箇所は
いくつもあるのに、なんでだろう?と自分の記憶力のはかなさに
やれやれという感じでしたが‥ゆうべ布団の中で、親友のユージンが
学校に行くのをやめることにした理由が明らかになる場面を読んでいて、
この箇所を自分の頭の中からすべて消去したかったから、ココロが
覚えていることを拒否したから、まるで記憶に残っていないのでは?と
思いました。それくらい、その箇所で描かれている担任教師の
偽善的教育者ぶりと、その授業内容は(私にとって)いたたまれない
ものでした。

主人公のコペルも、コペルの親友のユージンも、ユージンの従妹の
ショウコも皆14歳。
ユージンの家で過ごす「とある一日」の中に、14歳でも容易に想像
できること、14歳の手には負えないもの、14歳に考えさせるには惨いの
ではと思えること、苦い後悔や、少し先の光りまで、あらゆるものが
ぎゅっと詰まっています。
どこをとっても、自分の頭で考えていかなければいけないことばかり。
(私が相当嫌悪した先にあげた教師のエピソードもその一つ)

詰め過ぎじゃないですか、梨木さん、と言いたい気持ちは、きっと
自分の甘さなのだろうなあと思いつつ。


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ルイス・ミショー

2020-07-22 17:12:11 | 好きなもの・音楽や本

数か月ぶりに図書館へ行き、YAコーナーの棚で
こんな本を見つけたので借りてみました。



ルイス・ミショーは、1938年、43歳のときにニューヨークの
ハーレムに本屋を開きます。

ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア
黒人に関する本ばかりを扱う書店、通称「ミショーの店」、そして
訪れる人は彼のことを「プロフェッサー(教授)」と呼んでいたそうです。

マルコムXをはじめ、ミショーのことを慕い、店に通って来ていた
常連は私でも、あ、この人なら知ってる、という面々も多く‥。
ミショーの影響力が計り知れないものであったことは、容易に
想像ができます。

作者のヴォーンダ・ミショー・ネルソンは、ルイス・ミショーの
弟の、孫にあたる人だそうで。彼の入念なリサーチとインタビュー、
新聞に載った写真などからも、その時代の雰囲気を読み取ることが
でき、とても面白い構成の本だと思いました。
(訳者である原田勝さんのログがこちらに載ってます

:::   :::


なぜ彼が本屋を始めようと思ったのかー。
こんなふうに書かれているページがあります。

わたしは多くの黒人たちと接したが、残念ながら、自分たちの
歴史をちゃんと知っている者はごくわずかだった。
自分がどこから来たのか知らなければ、どこへ行こうとしているのか
わからない。自分にどれだけの価値があるのか知らなければ、働いた
対価をいくら受け取るべきなのかわからないはずだ。自分が何者なのか
知って初めて、現状を改善できる。
黒人は眠っている。いや、眠っているわけではない。目はさめている。
ベッドの端に腰かけて脇腹をかいているのだ。

今、自分の胸の中にある気持ちを、分析したり、書き表すことは
とてもできませんが、この引用した部分はどんな人にも当てはまる
とても大事でとても普遍的なことを言っているのだと感じます。

私は、ルイス・ミショーという名前を、この本を目にするまで、
一度も聞いたことがなかったし、彼の本屋のことも何も知りませんでした。
でも、今は知っているし、ずっとむかしに観た映画「マルコムX」
今だったらもっとよくわかると思うのです。

そして、本ってすごいと、また思うのです。

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外出自粛中に買った本

2020-06-26 16:55:59 | 好きなもの・音楽や本

絵本は1ヵ月に1冊くらいは購入するのですが、
ものすごく読みたいか、手元に置いておきたい本以外、
基本的に最新刊本は買わないきまりが、なんとなく
自分の中でできていました。
(単行本の)本棚がいっぱいで、置くところがないのと
図書館で予約すればいずれ順番がまわってきて読めるから。

でも。
図書館が閉館していたので、(家に読んでない本があるけれど)
新しい本を久しぶりに購入しました。


  『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ。
6つの短編が入っています。

映画を観てしまったあとなので、表紙の帯にもあるように、
どうしても演じた役者の方のイメージに引っ張られてしまいますが、
それでも、巨匠ホフマンが初めて塵と会った時のはなしとか、
カレッジ時代のマサルの話とか、なかなか面白かったです。
(桃李さんが演じた高島明石さんの話がなかったのは少し残念でした)

もう一度『蜜蜂と遠雷』を読み返してみたくなりましたが、
なにしろ長いので、躊躇したままになってます(笑)。




『祝祭と予感』を本屋さんで買った時に、この本を見かけて、
こっちも買っておこうかな、でも読みきれるかな、と迷い、でも結局は
翌週にまた買いにいきました。

 表紙がステキじゃないですか。

春樹氏が翻訳した本も、むかしはすべて買って読んでいたのですが、
チャンドラーあたりからは、図書館のお世話になっています。
この本も、いつも通りの日常だったら、きっとそうしていたと思いますが、
たまには買うのもいいよね、という気持ちになったのは、表紙が気に
いったからかな。

ジョン・チーヴァーの作品を読むのは初めてで、しかも中は2段組みに
なっているので、躊躇したのですが、冒頭の春樹氏の解説と、巻末の
柴田さんと春樹氏の対談も交互に読んだりしつつ、なんとか読み終える
ことができました。

短編小説の名手。都会派。雑誌ニューヨーカーの常連作家。
ピューリッツァ賞受賞‥こちらは紹介文の最初に書かれている光の当たって
いる側で‥。かなりの量のアルコールを摂取。同性愛的嗜好との折り合いに
苦悩‥光の反対側あり。


表題作の『巨大なラジオ』は、1947年に雑誌ニューヨーカーに掲載
された作品だそうで‥大きなアパートメント(日本的に言えば高級
マンション)に住む夫がある日「巨大な」ラジオを買ってきて、その
姿かたちに嫌悪していたはずの妻の耳に、なぜか同じアパートメントに
住む人たちの暮らしぶりが(ラジオから)聴こえるようになり、妻は
嫌悪しながらも、聴くことをやめられなくなるというはなし。

不条理ではあるけれど、ストーリーの着陸地点よりも、私は、
2020年に突然現れたウイルスによって、世界中のあらゆる場所の人たちが
家の中でのステイを求められている私たちの方がよっぽどシュールな
セカイに住んでいると思え、そんな中で、なぜ1947年の古き良きアメリカの
はなしを読み、その中の人たちを理解しようとしているのか、と思って
いました。

もう一つの表題作『泳ぐ人』。
私はこのはなしが、一番面白く、また一番感じ入るところがありました。

郊外の大きな住宅‥どこの家にもプールがあるような‥に住む主人公が
パーティに呼ばれていった先の家のプールから、点在する家の、プールで
泳ぐことを続けながら自宅へ帰ってみようと思い立つはなしです。
主人公は家には帰り着きましたが、スカッとした気分にもならず、
ココロ温まるようなことも起こりません。

でも、小説って、読むことによって、知らないセカイを知り、知らない
物事に思いを馳せることなので、そういう意味でとても面白いはなしでした。

どんな物語のなかにも存在する普遍性。そんな言葉が読んでいる間中
あたまの中にありました。





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