12月は半ばくらいまで、ずっと香君の下巻を
だらだらあと読んでいましたので、終わってみれば
12月中に読み終えた本は1冊だけでした。
作者の岩井さんは別の作品で直木賞の候補にも
なったそうですがまったく存じ上げず‥この本を
知ったきっかけも、表紙に使われた小さな家の
オブジェからでした。
谷中にある穀雨のオーナーであり、デザイナーで
ある長南さん作の【どこか遠くにある街】が、本の
表紙を飾る!ということを知り、長年のファンと
してはとても嬉しく誇らしい気持ちにもなり、
作者も内容も知らないままに10月末に早速購入したのです。
手にしたことでなんとなく安心?してしまい、
2か月近くも寝かしてしまいましたが、深夜の古書店で
開かれる「読書会」という設定は面白く、本の帯に
あるように、読書会に参加した男女6人の物語はそれぞれ
興味深いものでした。
妻子あるゼミの担当教授と不倫関係を自分で断ち切った
吉乃。
野球を続けることができなくなった自分をやっと
受け入れることができるようになった真島。
非正規雇用の悪状況でも好きな司書の仕事を選んだ
安井さん。
家族を捨てて出て行った父への葛藤を抱えたままの
中澤さん。
バイオリニストへの夢を諦めた国分さんが、再び
バイオリンを弾いてみたいと思えるようになったこと。
そして、古書店【深海】の店主である吉乃の叔父の
遠藤さん。
それぞれの方が選んだ本で、読書会が開かれ、それは
同時にその方の「物語」が紐解かれることでもあり‥。
物語の終盤では、遠藤さんが以前の店の持ち主であった
庄司さんから店を引き継いだ経緯と、タイトルの
「夜更けより静かな場所」とは何を意味しているのか、
そこはいったいどこなのかーがわかります。
人は誰でも自分のココロの奥底に「深海」を持っていて
本を読むという行為はそこへ降りていく、あるいは
潜っていく、ということなのか、と思いましたが、
そこまで行かずとも、「深海」が存在していることを
思い出す行為そのものが、読書なのだろうと思いました。
そして「読書会」
開催してみたくなりました。