my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

Noelka

2011-01-26 16:30:44 | 好きな本
ムシェロヴィチ本の3冊目です。
一緒に借りた『嘘つき娘』と、どちらを先に読もうか迷いましたが、知ってる名前が
たくさんあったことと、表紙の絵に惹かれて(絵は作者が描いたようです)、
ノエルカ』を選びました。

ノエルカ


1991年のクリスマスイヴの一日を、主人公のエルカを中心に描いた話しです。
読みだしてしばらくしてから、『金曜日うまれの子』よりも、ちょっとだけ「前」の
ことが書かれているのだということに気がつき、調べてみたら、金曜日~は
1993年が舞台で、こちらは1991年‥。あー2年前にガブリシャは、今の夫を
初めて家族に紹介したのかとか、このときクレスカのお腹にいた赤ちゃんが
生まれたんだなあとか。順序的には「逆」になってしまいましたが、それはそれで
楽しめました。

1991年12月24日イヴの日。
ポーランドのポズナニの一画にあるイエジツェ町にはずっとずっと雨が
降っていました。時にざあざあと、時にはしとしとと。
その中を、エンジェルに扮したエルカは、その日、出会ったばかりのトメク
(サンタクロースに扮してます)と、家々を回ることになってしまいます。

自分の気持ちを強い言葉で吐き出し、家を飛び出してしまったエルカが、
トメクと一緒にいろんな家庭を見たり、彼との会話から、すこしだけ前とは
違った自分になって、イヴの夜を迎えられる結末は、とても心が温まります。
中でも、ガブリシャを長女とするボレイコ家の場面や、テレサが絵を売る
地下道の場面はとても好きでした。

「たったの一日」といっても、ひとりひとり、一軒一軒、どの街角にだって、
様々なドラマは潜んでいるわけで、それが微妙に絡み合ったり、結びついていたり
するのを、ドキドキしたり、困惑したり、自分だったらどうするだろう、と考えさせられたり
しながらの読書は、本当に楽しい時間でした。


私が感動して手帳に書き写した文は‥213ページ

 「でも、何でわたしたちは幸せを願うの?」
 「幸せが生まれた時からそばにあることを思い出さなければ
  ならないからかな。ただ‥幸せを持っていることを感じるためには、
  何か捨てなければならない。幻想、そしてレッテルを。ここの家族は‥
  それができる」


そして‥258ページ

 「許すも許さないもないじゃない!」
 そしてエルカの袖を軽く、せわしなく撫でた。
 エルカの胸から大きい石が落ちた。
 それがいかに重い石であったか、落ちてから初めてわかった。

あ、それから、SONYのテープレコーダーとカセットテープが出てくるところもよかったなあ。
1991年といえば、日本ではほぼCDにとって変わった頃だと思うのですが‥
ポーランドでは、まだカセットテープが主流だったのかなと思ってみたり。



読み終わったのは1月23日の夜で、クリスマスイブから1ヶ月後だったことに
なんとなく意味を持たせたくなるような、そんな本でもありました。

この日、Tシャツを買ってくださったお客様から、とても心に沁み入るメールを貰い、
ただ漠然と過ぎていっている日や時間などというものはどこにもなく、
今すぐにはわからなくても、いろんなことはいろんなところに結びついて
いるのかもしれないと、しみじみした気持ちを抱えて眠りにつきました。



コメント (6)
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ピスタチオのセカイ

2011-01-25 17:25:55 | 好きな本
梨木香歩さんの新刊が出ていると知り、図書館に予約して借りました。

カウンターで手渡された本‥表紙がとてもいいなあと思いました。
ほら、こんな感じです。

ピスタチオ』 梨木香歩 作


ゴムの風船を膨らませようとして、懸命に息を吹き込んでいるのだけれど
なかなか膨らまなくて、もうこれでやめようと思ったとたんに、ぷうっと膨らんできて
わあって思って、口を放して風船をよく見ると、へんなところが大きく伸びてて‥。
形のゆがんだ風船のできあがり、ということを経験したことないですか?

この本を読み終わったときに、何か違和感みたいなものが残って、それって
何に似ているだろうと考えたときに思い浮かんだのが、ゆがんだ風船だったのです。

主人公の翠は、ライターで、仕事の時のペンネームを(たな)と自分で名づけます。
本名よりも、棚と呼ばれる方がさっぱりしていてよいと思う感覚や、アフリカへ
行くことを決め、でも数年ののちに帰国を決めた時の理由など、冒頭部分で
てきぱきと語られます。

そして、
なんだかよくわからない病に罹る愛犬。
散歩コースになっている公園の池にいる、渡っていかない「渡り鳥」。
マンションの上の階の、胡弓を弾く中国人。
異常気象に因る豪雨と、そこから導かれる大量の水のイメージ。

どこへ物語は流れていくのだろう、導かれていくのだろうと思っていると、
舞台は、再び棚が訪れることになったアフリカへと移るのです。


この筋を追っていけば、最後にはちゃんと結末が見えてくる‥そんな展開を
期待しながら読んだので、漠とした違和感が読後に残ったのかもしれません。

イメージを追っていきながら、流れの中で、流木に次々と飛び移るような気持ちで
読んでいくと、そして、最後に遠いところからそれ全体を眺めてみると
とてもよくできた小説ということになるのだと思います。


なまえ。水。渡り。空気の流れ。

そんなのがすべてのキーワードになっているのかなと思いました。



梨木さんの作品は、1冊読むと、未読のものを探して読みたくなって、
それを待っている間に、今読み終わったものをもう一度読みたくなって‥
1冊の本に書かれている内容がおもしろいとかそうでもなかったと思うのではなく、
梨木ワールドを、解明したい、見逃していたに違いないものを探し出したい
という気持ちになっている自分を感じます。
この『ピスタチオ』も、もう一度最初から読み直したら、きっともう
ゆがんだ風船のイメージは消えているような気がします。






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植田正治写真展@埼玉県立近代美術館

2011-01-22 15:50:51 | 好きなもの・美術館や展覧会

植田正治写真展 覚書

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おばあちゃん 再び

2011-01-17 16:50:31 | 好きな本
ダウデルおばあちゃんの、「シカゴより~」の3冊目を読みました。

シカゴよりとんでもない町


『シカゴよりこわい町』、『シカゴより好きな町』 の2冊はいっぺんに読んでしまったため、
私にとっては、おばあちゃん再び、という感じです。

この作品で、おばあちゃんは90歳!近くになっているのに、体の不調や
老いの気配は感じられず、相変わらず豪快で、相変わらず「自分」の正義にのっとった
行いをたっぷりと見せて(読ませて)くれます。

前2作と違っているのは、語り手がおばあちゃんの孫ではなくなったということ。
1958年の夏に、ひとり暮らしを続けているおばあちゃんの隣の家に、牧師一家が越してきます。
その一家には、女子、男子、女子という順番で3人で子どもが居て、その真ん中の
ボビーが今回の語り手なのです。

なるべく関わらないようにしようと思っていたのに、不運な出来事から
おばあちゃんを知ることになってしまったボビー。
彼が観る「隣のすごいおばあちゃん」の姿を、私たち読者も一緒に楽しむことに
なるわけですが、「外」からの分、おばあちゃんの「老い」も感じにくく、それが
よかったような、そうでもないかも、の所で揺らいでいます。

よかったのは、90歳近いとはいえあんなに元気なんだから、このシリーズは
まだまだ続いていくよね、もっともっと続きが読みたいという活劇物に期待するような気持ち。
そうでもないかも、は、前2作で孫のジョーイたちに見せたような、内側の
おばあちゃんの顔が見たいからーです。

あーそれにしても、今回も、終わり方はとてもよかったです。
サプライズゲストも登場して、そうでもないかもと、私が上に書いたようなことも
杞憂で終わるかもしれないなあと思わせてくれましたし。


表紙に載っている緑の車‥ピクルスって、うまいネーミングですよね・笑。
読み終わった後に、この絵を見ると、この場面のおかしさがこみあげてくるんですよー。




コメント (10)
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ハーブ&ドロシー

2011-01-12 14:55:19 | 好きなもの・映画やDVD

公開前に、新聞で知ってから、なんとなくいいかもと思っていましたが、
昨年末に、hinataさんご夫妻が観に行った話を、こちらのブログで読み、
それならば、ぜひ行かなくては、と気合が入り直した(笑)、映画です。




このお二人が、主役の、ドロシーさん(左側)とハーブさん(右側)。

それぞれ図書館司書、郵便局員として働きながら、
ドロシーさんのお給料で生活をし、ハーブさんので、好きなアート作品を
買うという選択をします。
その結果、アパートメントの部屋に集まった作品は、4000点以上!!

映画はそんなお二人の若い頃と今の様子をいったききたりしながら、
二人に作品を「選ばれた」、アーティストのインタビューを要所に挟んだ、
ドキュメンタリーです。


わざわざ映画館へ出かけていかなくても、上に書いたようなことは
解説を読めば十分わかるので、私も最初は、そうなんだ、夫婦で、
そういう選択もあるよね、くらいに思っていました。
コレクションが好きな人たち、というふうに思っていたのです。

けれど、二人には元々アートの素地があり(それぞれに絵を描いていた
時期がありました)、描くことをやめた後も、時間をやり繰りし、本腰を入れた
勉強もしていました。
その結果、誰かに薦められたり、言われるがままに作品を選ぶことなく
二人で観て、二人が気に行った作品だけを、手元におくということができたのです。
そして、二人は、アーティスト本人と会って、話して、作品に対する思いを聴いて‥
という行為をとても楽しんでいると思いました。作品を「買う」ということを前提に
アーティストと付き合っていくことが本当に楽しいのでしょう。

マンハッタンに住んでいる、ということも、二人の生活にとって、なくてはならない
ことだったと思います。
マンハッタンに居るからこそ、アートの膨大なコレクションができたのだ、と
いうこともできるし、アートが本当に好きだからこそ、二人は、マンハッタンに
住み続けている、という言い方をしてもいいかなあと、私は思います。

ドロシーが、自分の生まれ故郷のニューヨーク校外の町のことをこう言うのです。
「生まれ育つにはいい場所だわ、そして、終わりをむかえるのにも。
けれど、途中がね‥」と。
マンハッタンが好きな人には、心から納得できる発言です(笑)。
年をとっても(とってからこそ!?)マンハッタンは、本当に住みやすい場所で‥
どこへ行くのも(買い物やシアターや美術館などなど)タクシーに乗ってもすぐだし、
(自分で車を運転しなくていいんです)
大きなパーク、小さなパーク、色々揃っているし‥。

私はマンハッタンが大好きなので、つい、そこに力を入れた見方をしてしまうのですが
映画の終わり方も、とても好きでした。(観ていない方のために書きませんが)
なんとそこで、涙が流れてきたんですよー。観た方はえっ、あの場面のどこで???と
お思いになるでしょうね。



ハーブ&ドロシー @渋谷イメージフォーラム 







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ムシェロヴィチ

2011-01-05 17:07:20 | 好きな本

あけましておめでとうございます。

年末に色々なこと思って、ブログにも目標を掲げましたが、
早くも、挫折しそうな気がしてきたり、弱気な方の自分が出てしまいそうな気配が
漂っていますが、もうひとりの、カラ元気の方の自分を引っぱり出していこうと
思います。

どうぞよろしくお願いいたします。



クリスマスの頃から、昨日まで、ムシェロヴィチの本を読んでいました。
クレスカ15歳 冬の終りに』 と 『金曜日うまれの子



どうして、こんなに読み進むことができないのだろうと、あきれるくらい『クレスカ~』には
手こずりました。

ポーランドの地名や、人の名前がとても覚えにくいということも、一因だったと思いますが、
題名にもなっている、クレスカが主人公のはず、と思いながら読み始めたのに、
どこにでも、出てくる、誰とでも、絡んでくる少女(本名アウレリア)の存在が、
よくつかめなかったから、それに困惑したというか、イラついていたような気がします。

でも、辛抱強く読んでいたら、突然、残り3分の1くらいのあたりから、おもしろさが
広がってきて‥それは、アウレリアがどこの子で、母親が誰で、どんな人か
というのがわかってきたあたりからなんですが‥
はじめから、ぱらぱらと読み返してみたりしました。

クレスカと男ともだちの関係も、最後まで、ひやひやしました。
うまくいくんだろうなー、元々好きだった子と、と思ってはいたものの、感情の
ぶつかり合いというか、気持ちをことばで表すのがヘタというか‥そういう思春期の頃の
人たちの不器用さを、十分味わった気がします。



アウレリアがどんな子で、彼女を取り巻く人たちがどんな環境で暮らしているのかが
よくわかっていただけに、続きの『金曜日生まれの子』は、本当に、サクサクと
気持ちよく読むことができました。

『クレスカ~』の時から、10年たっていて、アウレリアは高校生になっているし、
時代も1993年。私にも容易に思いだせる年代で‥その頃のポーランドは
そういう風になっていたのかと(クレスカの時とは、まるで違う体制になっています)
思いながら読むのも楽しかったです。

それになにより、『金曜日~』の方には、アウレリアのおばあちゃんが登場します。

1993年6月。
ポーランドの田舎町で、おばあちゃんと暮らすうちに、なんとか自分を取り戻し、
アウレリアが生き生きとしてくる様子や、ふたりのボーイフレンドとのやりとり
なんかも、おもしろかったです。


というわけで、図書館でさらに2冊、ムシェロビィチの本を予約しました。
「確保できました」メールが届くのが楽しみです。

コメント (8)
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