my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

サマヴィアのために

2010-09-26 22:34:55 | 好きな本
この夏、いくつかのブログで「おもしろかった」と紹介されていた、バーネット作の
消えた王子 上 』をやっと読むことができました。

噂通り、ほんとにおもしろかったです。

    


ヨーロッパのどこかにあるという架空の国、サマヴィアは、小さいけれど
とても美しい豊かな国でした。
しかし、500年前から政権を争って内紛が続き、今では手がつけられないほど荒廃しています。

サマヴィアの民の心のよりどころは、500年前に突然姿を消してしまった王子の伝説です。
どこかに逃れた王子が、サマヴィアの行く末を案じ、自分が成し遂げられなかったことの
すべてを息子に託し、その息子は、また自分の息子へと語り継ぎ、そうしていつか
やってくる「時」を待ち、サマヴィアを再び幸せな国へとまとめあげてくれると信じています。

さて。
物語の主人公はマルコという名前の少年です。父と、父の執事とともに、
サマヴィアからの亡命者として、ヨーロッパを点々として暮らしています。
マルコにとって、父は何ものにも代えがたい、絶対的な存在です。
心の拠り所のすべてであり、生きるうえでの師であり、目標です。そしてマルコの父
ロリスタンは、それに100%答えることができる素晴らしい人物なのです。

サマヴィアに、果たして「消えた王子」は戻ってくるのかー。平和は取り戻されるのかー。
マルコとその友ラットは、サマヴィアのために何ができるのかー。
結末を早く知りたくてどんどんページは進みました。


ロリスタンから、幼い時より色々なこと教えられたマルコは、若干12歳の少年とは
思えないほど思慮深く、鍛え上げられています。

下巻の中ほどを過ぎたあたりでしょうか、とても心に残る記述がありました。
場面は、マルコとラットが、大切な知らせを伝えるという使命を持って、旅に出た先で、
行き詰まってしまったところです。前にも一度そういうことがあって、その時は、
山に登り、静かな岩棚でゆっくり休み考えることによって、新たな展開を生むことが
できたのですが、今居る場所には静寂を得られる岩棚はありません。

でも、マルコはラットへこう言います。

 「自分で岩棚をこしらえて、そこにすわるんだよ。いい考えがわくように」

 しばらくのち、ふたりはぐっすり眠っていた。深い、健康な、平和な眠りであった。
 (中略)

 これまで自分たちの身に起こったさまざまなふしぎなことについて語り合ううちに、
 ふたりの少年は、力と勇気の泉は自分を解き放つことにより得られるのだということを
 学んでいた。くよくよと思いわずらうのをやめさえすれば、答えはかならずあたえられる。

 
ね、素晴らしい少年でしょう? マルコって。

マルコの祖国サマヴィアが、どんなふうになったか、ぜひ読んで確かめてみてください。


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アボカド・ベイビー

2010-09-19 19:38:28 | ひらきよみ(読み聞かせ)
17日(金曜)は、久しぶりの、小学校での読み聞かせのお当番でした。

例年、2学期の読み聞かせは、運動会終了後となっているので、9月にクラスに
行くことは今までありませんでした。今年は校舎の耐震工事の関係で運動会が
春の開催となったため、読み聞かせの始まりも早くなりました。

いつもだったら、時期的に間に合わない、敬老日の向けの、おじいちゃん
おばあちゃんが登場する絵本もいいかなと思いましたが、図書館でこの絵本を
見つけたら、とても読みたくなって、決めました。

アボカド・ベイビー
  ジョン・バーニンガム作 青山南 訳


絵本は何度か読んだことがありましたが、教室で読んだのは初めてでした。
5年生のクラスだったので、ちょっと短いかなとも思いましたが、なかなか楽しく
読むことができました。

学期の初めだったし、5年生は、1学期にも入っていなかったので、進級して
初めての読み聞かせということもあり‥長くてちょっと退屈してしまうよりも
短いものをゆっくり目で読むほうがいいのでは、と思ったのです。

担任の先生不在で、最初はすこしざわついていましたが、最前列の男子が
本好きの子たちだったみたいで、アボカド食べて、超力持ちになる赤ちゃんに
素直に反応してくれました。

小学生ってかわいいなあと、思う瞬間、です。


それにしても、この絵本って、おもしろいですよねー
書き出しが、いきなりこんなですもの。

 ハーグレイブさんのところは、おとうさんもおかあさんも、
 こどもたちふたりも、あまりじょうぶではありませんでした。
 おかあさんのおなかには、おかんぼうがいました。
 みんな、じょうぶなこどもがうまれるといいなあ、と
 おいのりしていました。

5年生も、いきなりのはじまり方に、なりゆきが心配そうでした・笑。

ちょっと日本の昔話みたいだなと思いました。力太郎とか、そんなような‥



読み聞かせ終了後の、ノート記入タイムにそんな話もしたり、高学年のクラスが
初めてだったという方に、過去の経験を話したり‥
中学のPTA活動が忙しいので、読み聞かせは休ませてもらおうかなと、ちょっと
弱気になっていたのですが、休んだりしなくてよかったなあと思いました。
絵本について、絵本好きの人たちと話すのって、ほんとに楽しいですものね。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アートの秋ですね

2010-09-09 11:41:16 | 日々のこと
毎週水曜日の夕刊に載る美術ガイドが楽しみです。

これから始まるもの、すでに始まっているもので、行きたいなあというのが
昨日はいくつも見つかりました。(忘れないように記しておきます)


陰翳礼讃ー国立美術館コレクションによる @国立新美術館

    9月8日(水)~10月18日(月) 


 今朝のJ-WAVEに、この展示を手掛けた学芸員の方が出ていて、別所さんと
 話しているのを聞きました。
 昨日新聞でみつけたときも、陰翳礼讃から谷崎潤一郎をふと思い、惹かれましたが、
 話を聞いていたら、さらにおもしろそうと、思いました。絵画だけでなく、写真、
 版画、映像、立体と、100作家により170点がそろっているそうです。
  




ポップアート1960’S~2000’S @横須賀美術館

    9月11日(土)~10月17日(水)


 横須賀美術館は機会があったら一度は行ってみたいと思っていました。
 そのロケーションが素晴らしいそうですねー。
 rのピアノの先生、いちおしの美術館で、いつか一緒に行こうと誘われていましたが
 今回やっと実現するかなと楽しみにしています。





ウィリアム・モリス展 @うらわ美術館

    9月11日(土)~10月31日(日)


 お馴染み、ご近所のうらわ美術館。
 ウィリアム・モリスの壁紙のカタログのような画集(?)を持っていて‥
 いつ買ったのか、どうして買ったのかまるで思い出せない‥のですが
 好きな模様です。





和田誠の仕事展 @たばこと塩の博物館

    9月11日(土)~11月7日(日)


 ハイライトというたばこ、ご存知ですか?
 私のおじがたしかこのたばこで、父はショートホープを吸っていたように
 思うのですが(二人とも鋳物職人でしたから‥)、ハイライトのパッケージを
 デザインしたのが和田誠さんだということは、ちっとも知りませんでした。
 そして、今年はハイライトが発売されて50年なんだそうです。
 たばこ関係のお仕事だけでなく、半世紀(!)の間に、和田さんが手がけた
 多くの作品が並び、イベントや講演会もあるそうです。





ゴッホ展 @国立新美術館

    10月1日(金)~12月20日(月)


 こうして私はゴッホになった というサブタイトル付で、この展のための
 テーマ曲まであるなんて、です。
 平井堅さんの「太陽」という曲だそうです。
 ゴッホは人気がありますからね~きっとすごく賑わうでしょうね。
 陰翳礼讃展とかぶっている期間もあるので、そのときに行けば、両方観ることは
 可能ですが、それだけの体力があるか?ってことですよね。
 美術館で観て回るのって、相当エネルギー使いますから。




こうして書いていたら、なんかもう半分は観たような気になってきました・笑

今週末の運動会に始まり、地区での演奏会やら、保護者会やら、バザー準備や
バザー本番や、文化祭、高校見学会など、とにかく予定盛りだくさんで‥
あ、工房からの風もあるし‥どのくらいお出かけできるか謎ですが、
やってくる季節に胸弾ませていたいです。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借りぐらしのアリエッティ

2010-09-08 16:07:06 | 好きなもの・映画やDVD
夏休みに入って原作『床下の小人たち』を読み、8月の終わりに映画を観に行きました。
もう時間がたってしまったので、感想は(書かなくても)いいかなと思っていたのですが、
後から、去年の今頃って何書いていたっけ(何していたっけ)?と思ったときのために
簡単に記しておくことにしました。



原作はとても好きな話でした。
映画になって、視覚的に楽しめたところもたくさんあったけど、そうでなくても
ペン画の挿絵から、いろんな場面が想像できて、頭の中では勝手に動き出していました。
(今は、『野に出た小人たち』を読んでいます)

映画の方は、観た方のレビューを読んでいたので先入観はありました。
賛否両論あるのもわかるなあとも思いました。



私が好きだなと思った場面は、アリエッティが初めてお父さんと一緒に「借り」に行き、
人間の台所を見たところです。
その「大きさ」に圧倒されるアリエッティが、これから世の中へ出て、未知のものに
出会っていく14歳の少女を象徴しているような気がして。

ジブリ映画の中で描かれる少女の、よしって強い意志を秘めた顔は
いいなあと思いました。
それに比べると、心臓の弱い「人間の」少年は、ちょっとひ弱かな‥
母親不在で、難しい手術を受ける前で、ナーヴァスになっているのはわかるけど
厭世感漂ってましたねー
まあラストはあんな感じでまとめてあって‥終わりよければ的でしたが‥
嫌いではなかったです。

ただ、よくわからないのは、お手伝いのハルさんの描きかた。
なんであんなにグロテスクというか、過剰にしなければいけなかったのかな。
ハルさん、むかし小人のせいで嫌な思いとかしたんでしたっけ?
いろんなものが台所からなくなっているのを、不審に思っているという前提も
なかったみたいだし。

千と千尋の~映画が死ぬほど怖かった(中2の今でもコワイ)rは、
ハルさん=湯バアバと位置付けていて、それも間違っていないかも、と私も
思いました。
なんかアクセント(悪者)つけなくちゃって感じだったのかなと察しますが‥。


***


原作を読んでいて、その原作に入りこんでいた場合、映画に満足いくことって
難しいなあと思います。

『ノルウェーの森』はどうなんでしょうね~(自分への問いかけです・笑)
どっかの映画祭での評判はよかったようですが、マツヤマさんも、キクチリンコさんも
どちらの役者さんもほとんど知らない、に加え、私の中では、登場人物の
イメージと今のところ大きく離れているのです。
映画は、観ようかなとは思っていますが、その前にもう一度原作読んでおこうかなと
思っています。もう長い間‥15年くらい、もっと? ページを開いていないので。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有元利夫展@庭園美術館

2010-09-04 15:54:19 | 好きなもの・美術館や展覧会

有元利夫展 覚書

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミムス

2010-09-03 22:54:43 | 好きな本
とてもおもしろくて、2回続けて読んでしまいました。

『ミムスー宮廷道化師
  リリ・タール 作   大木 栄  訳


ミムスの語源はラテン語の物まねにあり、古代ギリシア・ローマ時代に
市場や私邸等で演じられた口上、軽業、物まね、身振り狂言等の芸と
その演者をさすのだそうです。

話の舞台は、中世ヨーロッパ(だと思われる)のどこかの都市。
歴史に忠実な話ではないので、ファンタジーということになるのでしょうかー。
長年争っている二つの王家‥ヴィンランドとモンフィール。
ヴィンランドのテオド王の策略によって、モンフィールのフィリップ王と家臣が捉えられ、
その王子であるフロリーンが道化(ミムス)にされてしまうことから話は始まります。

人間としての尊厳を一切与えられていない王様付きの宮廷道化師は、
サルや熊と同じ扱いです。
そこへ一国の王子であるフロリーンは連れてこられ、15年もの間道化として
生きているミムスの弟子になるよう言い渡されます。他に選択肢はありません。

ミムスの弟子になったので、チビミムスと呼ばれ、蔑まされるフロリーン。
逃亡を試みますが、自分が逃げようとすると地下牢に居る父や家臣の身が
危なくなるという、「見えない鎖」でがんがらめになっていることを知り、フロリーンの
苦悩の日々が続きます。


表紙に描かれている憂い顔の少年がチビミムスとして生きるように強いられた
フロリーンです。(かわいいです)
一方、裏表紙には、同じ道化の衣装をまとった狡猾そうなミムスが描かれていて
読んでいる間、私は何度このふたりの姿を眺めたことでしょう。

本当にあったわけでもない、この道化物語の、何が私を惹きつけたのだろうと
考えました。

最初は、フロリーンの行く末が気になるばかりに先へ先へと気持ちが走り、
2度目を読んで、すこしわかってきたのは、理不尽きわまりない王様と、それに従わざる
負えないミムスの関係は、人間関係と社会の縮図なのではないかということでした。
自分の意思から道化になったわけでもないのに、その状況から抜け出すことが
できなくなり‥それならば、いかにしてその中で生き抜いていくかを考えたミムス。
憎めないところがあるかと思えば、その許し難い言動に辟易し、それでも彼は
読者の目を(私の気持ちを)そらさない何かを持っているのです。


遠い昔の、遠い国のお城の中の事であるのに、情景は目の前に浮かびあがり、
城外へ出ることを許されないフロリーンが、深まる秋を恋しく思う、その空気の匂いまで
感じられるようでした。
また、フロリーンと友だちとの間の友情という側面も忘れることはできません。

人にとって何が大切なことかを教えてくれるラストシーンは、とてもよかったです。
自分の中にある、良心や誇りを、決して失ってはいけないのです。





*いろんなところのレビューを読んでいたら‥
 この話が映画になればいいのに、というものがありました。私もそう思います。
 ハリウッドだったら、ミムスの訳は、やはりあの人 J・ディップ氏でしょうか‥?
 フロリーンは、もう今はいないけど、スタンド・バイ・ミーのときのリバー・フェニックスが
 いいかなあなんて思います。



コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする