映画化されたのって、去年だったでしょうかー。
思い出のマーニー。
原作も未読のままで、映画もDVDになってからも観ていないし。
そんなある日。
ちっとも買う気じゃなかったのに、なぜ突然角川文庫のを買って
しまったのかといえば、いい年して、ハッケンくんの動く!文庫カバーが
なんとなーく欲しくなったからでした。(未使用の図書カードも持って
いたのも原因のひとつ‥)
新訳と書いてあったので、へえそうだったんだーとサイトを開いてみたら
こんなに選択の幅があったのかと驚きました。すごいですねえ、
映画化の威力。
こちらが角川文庫、私が買ったもの。
新潮文庫のも新訳とか。この表紙もいいですねえ。
こちらは元祖。松野さん訳。
こんな低年齢向け?のもあるんですねー。
動く!文庫カバーでも(一応)遊んだので、集中してマーニーを
読んでしまおうと思います。
今日は1学期最後の読み聞かせ当番の日でした。
ついこの間新しい学年が始まったと思ったのに、もうすぐ夏休み!
早いですね~
行ったのは4年生のクラス。ひとりで2冊読みました。
まず1冊目は、先日の新刊絵本講座で紹介してもらったばかりのこちら。
(その時はゆっくりと読むことができなかったので、後から図書館で借りました)
モンゴルの、作家ご夫婦の共作絵本です。
なんといっても、絵がとてもステキなんです。(なのであえて大きい画像を載せて
おきました)
どのページも見開き2ページにわたって、場面が描かれています。
トヤというのは、表紙の真ん中下あたりで白い馬に乗っている女の子の名前です。
ここよりも もっと みずも くさも ある いいところ へ
ゲルのほねぐみをはずし、しきものをまき、らくだに机や椅子や服や食べ物を乗せ、
ヤギやうしや羊を連れて、一家で引っ越しする様子がお話になっています。
絵がとても細かく、小さいので、教室で読むのには適さないかもしれないと思いました。
けれど、初夏の大草原の様子がとても清々しく、トヤの家族で交わされる会話も
とてもシンプルで、こういうふうに過ごしている同じ年くらいの子が居るんだよ、という
ことも、4年生に教えてあげたいような気持ちになって、読んでみることにしました。
途中、おおかみが来るので夜は怖いというところや、嵐でやぎたちが散り散りになりそうな
ところはありましたが、全体的には穏やかに進んでいくものがたり‥でも、咳をしたりあくび
したり、下を向いたりしている子はほとんどいなかったので、真剣にトヤたちの「引っ越し」を
見守ってくれていたのかなーと思います。
もう1冊は、とても久しぶりにこの絵本を読んでみました。
前回同様、食べ物に関係している絵本を、ということがありましたので、
たべものが出てくる絵本を‥と考えていたところ、そうだそうだ!と
思い出したのです。
だいぶ前に2年生のクラスで読んだことがあったので、そのログを
読み返してみましたが、今日の4年生も、あまり反応はなく、なぜトラが??
と思っていたのでしょうか‥?
私は‥トラがやってきたときのお母さんの対応といい、ソフィーの懐く様子と
いい、帰宅したお父さんの提案といい、読んでいて、じんわり笑みが浮かんで
くるのですが。
今年5月に、たくさんのふしぎ傑作集として出版された本ですが、
初出は1995年7月の月刊「たくさんのふしぎ」。
私はそのころ、子どもを持っていなかったので、福音館書店の月刊誌の
ことを何も知りませんでした。
今、こうして単行本として、この本に出会うことができて、ほんとうに
よかったなと思っています。
教科書や歴史の本やもっと難しい本を何冊も読むよりも、いろんなことを
思うきっかけを、この絵本が与えてくれるのですから。
内容紹介ページには下のように記されています。
著者の鶴見俊輔さんは哲学者。「思想の科学」創刊などで著名な、戦後思想界の巨人です。
15歳で渡米し、太平洋戦争が始まったときはハーバード大学に在学中でした。
敵国人として留置場に入れられた後、交換船で日本に帰国した鶴見さん。アメリカにいても、
日本に帰ってからも、自分を「外人」だと感じて生きてきました。その頼りない気分が今も残っていて、
自分のくらしを支える力になっていると言います。
交換船で日本に帰る前、同級生だったアメリカ人の友人がこう言ったそうです。
「戦争がはじまった。これから憎みあうことになると思う。しかし、
それをこえて、わたしたちのつながりが生きのびることを祈る」
作者、鶴見さんはその続きに、こう書いています。
しかし、日本にもどってからも、わたしはアメリカ人を憎むことが
できないでいました。自分が撃沈か空襲で死ぬとしても、
憎むことはないだろうと思いました。
日米開戦という緊迫した状況であるにも関わらず、作者の語り口は
あくまでも穏やかで、FBIの取り調べの最中に脇を触られ、思わず
笑いだしてしまう場面や、刑事が行きつけの酒場でサンドイッチをごちそう
してくれたことなども描かれています。
作者にとってのアメリカは、そんなふうに思い出される場所だったのだなと
私は想像してみるのです。
そして、帰国した後すぐに受けさせられた徴兵検査、その後の海軍への志願。
淡々と語られる任務とジャワ島での生活と二度の手術と、敗戦と‥。
静かに文章が運ばれていくほどに、作者の胸のうちに折り重なっているであろう
ものを思い、読み進める私は胸がふさがっていくようでした。
作者は本が終わりに近づいたときに、こう記します。
わたしは、アメリカにいた時、外人でした。戦争中の日本にもどると、
日本人を外人と感じて毎日すごしました。それでは、日本人のなかで
外人として生きていたことになります。今は、わたしは外人ではないのか。
自分の底にむかっておりてゆくと、今もわたしは外人です。
この絵本は、大学1年になった娘にぜひ読んでもらいたいと思っています。
6月の、「はじめましての絵本たち」で紹介してもらった絵本で、
さらにじっくり読みたいと思ったものを、図書館で予約して借りました。
(今回、なんだか響いてくる絵本が多かったのです)
その中の1冊。
宮沢賢治が、妹トシを亡くした翌年の大正12年8月、樺太へ向かう旅の
途中で旭川を訪れたことを書き記した詩が残されていて、
その「旭川。」という詩をもとにして、あべ弘士さんが、あらたに創作を
加えた絵本です。
裏表紙の見返しに、宮沢賢治直筆の詩が載っていますが、その一篇の詩を
ただ読むよりも、あべさんの「創作」で、賢治自身と御者との会話を中心とした
散文と、さらにあべさんの絵が加わることで、とても上質のドラマか、まるで映画を
観ているような気持ちなったのでした。
夏の朝の、爽やかな空気の匂いまで紙面から立ち昇ってくる気がしました。
パカポコゆれる
馬車の振動のこころよさ。
こんな小さな軽やかな馬を、
朝はやくから私は街をかけさす。
天にものぼる気分だ。
そして、ポプラ並木を抜け、そのむこうに官舎が見えてきて…
「つきましたよ」
「農場試験場はやっていますかね」
「聞いてきましょう」
という御者との静かな会話…。
目当ての農場試験場は別の場所に移っていて、御者は賢治に
「お役にたてませんで…」
「いえいえ、お世話になりました。
とてもさわやかな街でした。
好きになりました」
空を舞うオオジシギは樺太まで飛んでいくやつもいるらしいと教えてもらい、
「樺太ですか……。
むこうでまた会えるとうれしいなあ」
と、こたえる(絵本の登場人物の)賢治が、詩の作者の宮沢賢治よりも、
私は、読み終わった後に、確実に好きになっていました。