my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

気持ちはいつでも初夏のまま

2006-05-31 15:40:16 | 想うこと

 東京近郊のこのあたりは、今日はとってもいい天気。(午後はまたにわか雨の可能性大ですが)

 娘の通う小学校では、6年生がプール掃除をしていました。銀行へ行く途中に小学校があるのですが、生垣の向こうから、それはそれは賑やかな声が聞こえてきました。もし、人生に四季があるのなら、間違いなく6年生の子たちは、今日のような季節、すなわち【人生の初夏】に向おうとしている時ですね。なにを見ても、なにをやっても、心から笑うことを、友だちと共有できる季節‥です。

 じゃあ、私は、私の年代はいまどの季節?と考えるのもばかばかしく。真夏の時期はとっくに過ぎてしまい、夫や娘のことではなくて、自分自身のことで、心ときめくようなこと、心からわくわくできること、あるのかなあと思ってました。

 それが意外にも、あったのですね‥このblogというものに。わくわくの気持ち、やってくるものですね。

 去年の今頃は、ブログというものを知り、友人が自身のブログを持っていることを知り、そこへコメントしてみたりしながら、私もやってみたい、私に書ける話題はなんだろうと模索していました。
 好奇心と躊躇の気持ち。前者が勝って、6月の終わり頃にやっとこのブログを始めることができました。

 それまで思ってもみなかったことが現われる驚き。blogというものの感想を一口で言うと、こんな感じでしょうか。驚きと発見が気持ちにわくわくをもたらせ、日常生活に喜びを与えてくれました。

 blogっておもしろいものだと、思います。

 まあ、私自身のblogに対する気持ちは、このへんで脇に置いて‥。

 ほんとうにお知らせしたかったことは、東京絵本化計画の絵本おじさん の『計画』なんです。
 私がブログを始めていなくても、絵本おじさん のこの『計画』は着々と進んでいたでしょうが、私はそれを知ることができなかったわけです。知らなくても、きっと私の毎日の生活には何の支障もでないと思います。でも、知ったことによる気持ちの動きは、知ったものにしか味わえないもの。そして、ただ遠くで応援しているだけなのに、あたかも一緒に活動しているようなわくわく感を覚えるのです。

 日時  6月14日(水) 午後3時から
 場所  錦糸町olinas アべニューステージ

 ここで↑絵本おじさんによる『もうすぐ父の日チャリティイベント』があるんです。詳しいことは、ぜひぜひ絵本おじさんのところを訪れ、ご覧になってください。すごい内容です。
 そして、【号外】やまねこ新聞社の山猫編集長も、当日応援にいらっしゃるそうです。筑波からですよ。すごいです。私も、仕事場を離れることができれば、ぜひ見に行きたいです。(かなり無理そうですが)

 絵本ブログの輪がどのように広がっているのかわかりませんが。もしも、私のブログを訪れてくださる方で、絵本おじさん 山猫編集長のことをご存知でない方がいたら、と思い、この6月14日のことを書きました。


 気持ちはいつでも【初夏】のまま。



 

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リネンが欲しい

2006-05-29 16:44:04 | 好きなもの・ちくちく

 近所の「中央図書館」が閉館し、駅前に出来た新しいビルの中で「新中央図書館」として、オープンするまで、自転車を15分近くこぎ、線路下の通路を通って、別の図書館へ通っています。

 別の図書館は、そこに流れる空気も違うけれど、本の整理のしかたなんかも、おんなじ市内の図書館なのに微妙に違い、新鮮さを感じています。

 先日そこで見つけたのがこの本。

リネン屋さんのリネンの本

『リネン屋さんのリネンの本』










 二子玉川にある、リネンバードというお店による本です。

 パラパラっとめくって、なんかよさそう、と軽い気持ちで借りてきたのですが、なかなか引きこまれる内容でした。中味は大きく2つに分かれていて‥毎日の暮らしの中にリネン と 
作る素材としてのリネン

 写真を見ているだけでも、リネンの美しさを楽しむことはできるのですが、「リネンをもっとよく知ろう」とか、「新しいリネンはいきなり使い始めず、一度洗濯してから」なんかを読んでいると、使ってみたい、買いにいきたいという気持ちがむくむく湧いてきて、「キッチンタオルのデザインバリエーション」のページを見ては、まずはキッチンタオルからね、と自分に言い聞かせているのでした。

 しかし、まあ。リネンとひとくちに言っても、実に多くの種類があるのですね。「200種類もある生地をざっくりと6つに分類しました」の項で、勉強しました。
 そこらへんをじっくり読んでいくと、今度は、生地を買って何かを作ってみたい!という気持ちがむくむくと‥。でも、コットンに較べてリネンの生地は軽い気持ちで、2m下さい、とか言えないお値段‥。ここは慎重に取り組まなければいけないなあと思いつつ、いつか作る日のために、何枚かコピーをとっておきました。
 
 とっても惹かれているのは、正四面体で作った「ラベンダーのサシェ」。一辺が6cmの正四面体なので、余り切れで作れますね。余り切れが出たら、の話ですが。
 もうひとつは、ざっくりとして透け感のある生地で作るカーテン。出窓のレースのカーテンを、こんなリネンで作ったらいいだろうなあと‥。こちらはまだまだ先になりそうですが。

 小さなはぎれで作る「くるみボタン」なんかも載っていて。それに、もうすぐ夏だし、キッチンタオルの次は、リネンのシーツが欲しい。いつか教えてもらったリネンのバスタオルも使ってみたい、と今日の頭の中は「リネン」でいっぱいです。
 

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たからさがし

2006-05-26 15:52:31 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 前回に続き、5月19日(金曜日)の読み聞かせの話です。

 1冊目の本として『きつねとねずみ』を読み、2冊目は『たからさがし』を読みました。

 ご存知のとおり、この『たからさがし』は、ぐりとぐらの黄金姉妹、中川李枝子さんと山脇百合子さん(描かれた当時は、大村百合子さんですが)による作品で、主人公は、ゆうじとうさぎのギック。
 「あ、どこかで見たことある!」「あの絵本に出てきた」と、気がつく子もいるかもしれないなあと思い‥まったく、ゆうじとギックのことを知らなくても、山脇百合子さんの絵を見たことがない子は、おそらくいないはず‥と思いました。
 認知はしていなくても、なんとなく知っているなあ、の気持ちが、安心感に繋がるのではないかと考えたのです。

 こどもたちのよく知っている絵、よく知っている登場人物、という点から言えば、ぐりとぐらのシリーズの中から選んでもよかったのですが、いつだって仲良しの、ぐりとぐらの関係よりも、見つけた棒を取り合いする、ゆうじとギックの関係のほうが、なんか新1年生にふさわしい感じがしたのです。

 ゆうじは かわらへ たからさがしに いきました。

 
魔法の杖にちょうどいい棒を見つけ、おどりあがった ちょうど そのとき、うさぎのギックが、とんできて、「ぼくが、さきに みつけたんだよ」 とすぐに取りあいっこがはじまります。どっちが先に見つけたのか言い合って、かけっこで勝ったほうが棒をもらうことにしようと決めるのですが、ふたりとも、かぜのように はやいので、決着はつきません。
 次に相撲で決めようということになりますが、どちらも譲らず、どちらも動かず、また決着がつきません。
 「それなら、はばとびをしよう」 と2人は力いっぱい飛びますが、「ああ、また、おんなじだ!」


 ふたりは、見つけた棒を自分のものにするために、相手と競い合っているわけですが、走ったり、相撲をとったりしているうちに、競い合いそのものが、いつのまにか、棒を取り合っているライバルとの「遊び」に進展していることに、当のふたりは、気がついていないように思えます。
 ギックのおばあちゃんに、勝負をつけてもらおうと、おばあちゃんの家を訪ねたときも、棒の支配権をめぐる争いに、決着をつけてもらうというよりも、遊びのネタがつきてきたので、新しいアイデアを出してもらおう、という感じに見えますし。
 そして、おばあちゃんから「たからさがし」の課題を出されて、ふたり同時に仲良く駆け出して‥

 「ぼく、いいものを しっているなあー」と、はしりながら ゆうじがいうと、
 「ぼくだって、いいもの しってるなあー」と、ギックが いいました。

 そしてふたりが、また一緒につかんだのが、あの すばらしいぼう なんです。そんなに大事な棒なのに、はらっぱに放置したままだったんですね。常識的な大人の考えでは、二人で争っているものなら、どっちのものか決ってなくても、目の届くところに置いておきます。

 さっきまで、ふたりとも棒のことなんか、ほんとは忘れていたんじゃないの? と思わずつっこみたくなる言動ですが、また、同時に見つけたので「たいせつなぼう」に戻ったのかもしれません。

 ふたりが一緒に、その棒を欲しくなるところがポイントなんですよね。

 「たからさがし」の、ほんとの【たから】は、こうやってふたりで遊んでいる時間そのものなのかもしれないなあ、と思うのです。

 それで、おばあちゃんがその棒を「自分の杖」にしてしまうと、

 ゆうじは ギックの みみに くちをつけて、そっと いいました。
 「あのぼう、ぼくは もうほしくない」
 すると ギックも、ゆうじの みみに くちをつけて、
 「ぼくも ほしくないや」と、いいました。

 とっても正直なんです、ふたりとも。


 私が、この本の中でとっても好きなのは、ギックがおばあちゃんを呼ぶところ。こういうふうに書けるなんて、ほんとに中川李枝子さんは、すごいなあと思うです。

 ギックは、おおきなこえで「おばあちゃん、うさぎのおばあちゃん、ぼくのおばあちゃん」と、よびました。
たからさがし(福音館書店)




 2冊読んでも、まだすこし時間があったので、家にあった「こどものとも年少版」の中から、1999年10月号『ぞうっていいなあ』 を読みました。
 
 文は『まゆとおに』 の富安陽子さん。絵は寺村輝夫さんの王さまシリーズの絵でおなじみの和歌山静子さんです。

 夕ご飯の後、「おのこしはいけませんよ!」とおかあさんに叱られたまあちゃんが、

 「ぞうって いいなあ。
  ぼく、ぞうなら よかった」  

 
と、次々と、ゾウだったらこんなにいいことがある、を見つけていくお話です。

 こどものとも年少版は、少ないページの中にも、きちんと起承転結をつけたお話や、ふわっと包み込むような暖かいお話、小さい子どもにもわかる身近な題材からのお話、時には「!」びっくりするものなど、なかなかの内容のものが揃っていると、思っています。へえー、この方たちが、こんなお話や絵を描いているんだあというものが時々みつかり、年少さんとはまったく縁がなくなったにもかかわらず、図書館などでは、今もまめにチェックしています。

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きつねとねずみ

2006-05-24 16:26:39 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 先週の金曜日(5月19日)は、今年度最初の読み聞かせの日でした。

 その前の週の土曜日に、新しく加わった方を含めての顔合わせがあり、9月いっぱいまでの、ペアも決めました。が、1回目の1年生のクラスは、新ペアのOさんのお仕事の都合がつかず、私ひとりで読むことに‥。

 新1年生のための選んだ本は、次の3冊です。

 『きつねとねずみ』 ビアンキ 作 内田 莉莎子 訳
きつねとねずみ(福音館書店)

 『たからさがし』 中川李枝子 文 大村百合子絵 
たからさがし(福音館書店)

『ぞうっていいなあ』 
富安陽子 文 和歌山静子 絵
 こどものとも年少版(通巻271号) 1999年10月号


 小学生になったばかりの子供たちのために、どんな本を選ぼうかなと考えた時、最初に浮かんだのは、「おなじみの人や動物が出てくる話」でした。慣れない小学校生活の中で、緊張しているにちがいないから、せめて絵本を読んでいる時だけでも、「知ってる」「見たことある」とリラックスできるような‥そんな絵本がいいかなと思っていました。

 でも、図書館で探しているうちに、1冊目の『きつねとねずみ』に気がつき、手にとり読んでみたら、短い話だけれど、とてもおもしろいのです。私自身も今回初めて読んだ本だったのですが、何度も小さい声で読み返しているうちに、大きい声で読みたくなってきて、決めてしまいました。

 出だしはこんなふう。

   きつねの
   だんなが、
   やってきた。

   じろ。

   じろ。

   じろ。

   なにか
   いいこと
   ないかなあ。

 きつねはとってもはらぺこなんです、たぶん。でも、「きつねのだんな」ですから、きょろきょろ、せかせかするわけにはいきません。あたりをゆっくり見回します。そして、シャベルで穴を掘っているねずみを見つけ、尋ねます。

   おい、
   ねずみ。
   ねずみ。
   はなが どろんこ、
   どうしたんだい? 

 問われたねずみは、逃げ出すわけでもなく、堂々と答えます。  じめんを ほったのさ。

 
こんなやり取りが、いくつか続き、結局きつねは すてきな ごちそうに にげられた。 となってお話は終わりです。さらっと読めば2分もかからないくらいの短いものです。

 簡潔な文章のよさも、お話のおもしろさも、ゆっくり、「間」を十分にとって読んでこそ、生きてくる絵本なので、物語の本を読むより、かえって難しいくらいでした。

 聞いていた側の1年生の反応は‥。
 読み終わって本を閉じ、裏表紙、表紙と見せていくうちに、ああ、そういうお話だったんだと「じわじわ」理解が伝わっていっているかあと思いました。


※2冊目、3冊目の絵本は、次回につづく。


 

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まだ読んでないんですが

2006-05-20 17:10:35 | 日々のこと
 未読の本を紹介するのはちょっと気がひけるのですが。
 昨日、本屋さんに立ち寄った時に気がついて、ちょっと驚いたものですから、そのお話だけでもしたくって‥。

 アリス館から5月に出たばかりの絵本、 『ベンジーとおうむのティリー』。

 作者は、あの『どろんこハリー』等でおなじみの、マーガレット・ブロイ・グレアムさんです。絵を見ると、ああ同じ人の作品なんだとすぐにわかります。そして、日本語訳は、わたなべてつたさん。わたなべしげおさんではなく、てつたさんなんです。
 ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、鉄太さんは、茂夫さんの息子さんなんです。親子2代で、同じ作家さんの作品を翻訳することになるなんて、すごいなあと驚き、そして感心したしだいです。

 堀内誠一さんの絵、わたなべしげおさん文の『てつたくんのじどうしゃ』という絵本がありますよね?その「てつたくん」って、息子さんのことだったんですね。割と最近その事実に気がついた私は、そのときも妙に感動してしまいました。

 次に図書館に行った時、早速この絵本のリクエストをしてこなければと思っています。(ちなみに渡辺鉄太さんの奥様は、 『おおきなカエル ティダリク』などの作者、加藤チャコさんです。)
ベンジーとおうむのティリー
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いつか感じた風の匂い

2006-05-19 11:05:49 | 好きな絵本

 この本も、「詩人が贈る絵本」シリーズの中の1冊です。

十月はハロウィーンの月
『十月はハロウィーンの月』

 ジョン・アップダイク
 長田弘 訳
 ナンシー・エクホーム・バーカート 絵





 原題は『A CHILD'S CALENDAR』 子供時代の1年間の、詩のカレンダーです。

本を開いて‥左のページにその月の詩と小さいカット、右のページ全体に、その月に
とてもふさわしい絵、という構成になっています。
 
 題名には「10月」が入っていますが、表紙に使われている絵は、JUNE 6月のものす。
でも、違和感を覚えないのは、パステルグリーンのチェックの地のせいでしょうか。

 
 今は5月なので、そのページの詩を、ここに残しておきたいと思います。

      May

    5月だ。子どもたちは
     外へ でてゆく。
    上着なし で
     キャンディー・ストアへ。

    5月だ。 リンゴの木 が
     枝いっぱいの 花を
    空中に 浮かべている。
     梨の木も。

    5月だ。父親は
     クワを とりだしてくる。
    家の横の 土のところに
     トマトを 植えるのだ。

    5月だ。そのあとは
     もう 何も しない。
    たぶん 野球を 見る。
     テレビを つけて。

 
月ごとの絵の中には、そこにしか吹いていない、その季節の風までもが
描きこまれています。
 5月の風は緑の葉を揺らし、6月の風は川面をなで、8月の風はブランコに乗る
女の子の髪の中で遊び、12月の風は、うっすら積もった窓枠の雪の上に佇んでいます。

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「ずっと遠いところ」

2006-05-18 13:52:02 | 好きな絵本

 画家のジョージア・オキーフをご存知ですか?

 この本も、先日紹介した『いちばん美しいクモの巣』と同じ、「詩人が贈る絵本」シリーズ
の中の1冊です。
 
近くの図書館には、シリーズ全部は揃ってなくて、やっと3冊見つけたのですが、
この題名を見たときに、一瞬手がとまりました。なぜって、私はずっとずっと前から、
ジョージア・オキーフの絵が大好きで、もしやこれは、彼女のことを書いた本だったりして、
と思っただけで、ドキドキしてきたからです。


私、ジョージア
『私、ジョージア』

ジャネット・ウィンター 作
長田 弘 訳






 この本の作者、ジャネット・ウィンターさんは、画家ジョージア・オキーフの自伝として、
この本を描きました。中味の絵はすべて作者自身が描いたものですが、ジョージアの
絵への敬愛をこめて、どの絵も、ジョージア自身しばしば用いたたくさんのイメージに
もとづいています。
 
また、文章も様々なジョージア伝に収められた彼女自身の言葉から選んで、作者が
自分の言葉に書き直したものだそうです。

 ジョージア・オキーフは1887年に、アメリカ合衆国ウィスコンシン州の農場に生まれました。

 12歳のときには、もう、
 じぶんが何になりたいか、わたしは知っていた。
 ―わたしは芸術家になるのだ。


 
わずか12歳で、自分の進む道がわかっていたことに、まず驚き、


 しかし、美術学校をでると、わたしは
 ひろい世界のなかへ、じぶんからふみだしたのだった。
 じぶんのかきたい絵を、わたしはかきたかった。

 
誰かから与えられたり、教えられたりするものではなく、自分の内面が求めるものに
耳を澄す、その姿勢に感じ入りました。


 ジョージアは、テキサスの大平原の空を描き、芸術家たちの住むニューヨークへ戻ってきて、
高層アパートメントの窓から見えるものを描き、都会の中の庭に咲く、花の絵を描きました。
 
 彼女の描いた花は、なぜあんなにも大きいのでしょうか?
それは、わたしが、見つめたように、みんなに、花を見つめてほしかった 
からだったのですね。

 わたしが見つめた花々を、みんなが見つめられるように、
 わたしは、じぶんの絵いっぱいに、花々を咲かせた。

 
多くの人が彼女の、彼女にしか描けない絵を見るようになっても、ジョージアの心は
まだ先を見つめています。 「ずっと遠いところが、いつも、わたしをよんでいた」

 
そして彼女は、ニューメキシコの砂漠へ行き、(そこは土が乾きすぎていて花は
育たなかったため)、砂漠に散らばっていた骨を集めて、その骨の絵を描きました。

 骨、赤土、ペダナル山、そして空。

 98歳でこの世を去るまで、ジョージア・オキーフは描き続けたのでした。
「ずっと遠いところ」へ想いを馳せて、「ずっと遠いところ」から聞こえてくる心の声に従って。


 ジョージア・オキーフの作品をあまり見たことがなくても、この本を楽しむことは
できるのではないかな、と思います。長田弘さんの訳は、それ自体が、画家の生涯を
モチーフとした、詩としても読むことができ、日本語のそのつらなりが、とても素敵なのです。

Georgia O'Keeffe: One Hundred Flowers


One Hundred Flowers

  Georgia O'Keeffe




 私はこの画集を持っているのですが‥。画家の、若い頃と、もう少し年月がたってからの
写真がそれぞれ1枚づつ、載っています。どちらもはっとするほど美しい女性です。










 

 

 

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「こどものとも」絵本の世界展

2006-05-17 14:59:26 | 好きなもの・美術館や展覧会

 もうだいぶ日にちがたってしまったんですが・・・。5月4日、玉川高島屋SCに、
ぐりとぐらのともだちあつまれ!福音館書店「こどものとも」絵本の世界展 に行きました。

 この絵本展も、こどものとも50周年記念の、イベントのうちのひとつです。私の家から二子玉川までは、
そんなに近いとも言えず、かといって、行かれないほど遠くもない微妙な位置なので、
どうしようか迷いましたが、娘と二人で出かけてみました。

 イベントの内容は、すでにみなさまご存知だと思いますので、詳しい説明はなしにしますが、
あれほどいろいろな装置(?)を作ったのに、ゴールデンウィークの期間ただ1回きりで
終わりにしてしまうのかな?と思っていたら、どうやら夏に札幌で、同じものが開かれるらしいです。
なんとなく安心(?)しました。

 先日行った「絵本作家ワンダーランド」のイメージが残っていたせいか、私、もっと原画が見られると
思っていたんです。あと、今までの「こどものとも」も、現物が見られるのかなって。そしたら、
原画はとても少なく、「こどものとも」も、昔のをそのまま見ることはできませんでした。

 でも、とっても貴重なもの、見ることができました。

 一番感激したのは、山脇百合子さんが、中川李枝子さんに贈った
「ぐりとぐらの立体絵はがき」。
(もしかして、ついていたタイトルが違っているかもしれませんが)

 なんて説明したらいいんでしょ。はがきくらいの大きさの四角い箱に、紙芝居のように、絵が何枚か入っていて、
手前が小さい絵で、後ろに行くほど紙は大きくなっています。最初に、はらっぱにいるぐりとぐらが描かれていて、
次の絵には、草や木、またその次に中くらいの景色があって、最後一番遠景に、
大きなたまごが野原に置かれているんです。
 平面に描いた絵を、箱の中に入れて立てることで、奥行きが出て、まるでちっちゃい舞台装置のようでした。
 とっても丁寧に描かれた、その立体えはがきからは、ぐりとぐらをとても大切にしている山脇百合子さんの愛情が
ひしひしと伝わってくるようでした。そして、それを、もらった中川さんも、とっても嬉しかっただろうなあと思うと、
よその家の姉妹関係のことなのに、なぜかじーんと胸を厚くしてしまったのでした。

 2番目の感激は、 『はじめてのゆき』
の「とらたのモデルになった人形」。
 中川李枝子さんが、昔むかしに、ご自分の息子さんのために、どこかのデパートで買い求めたものだそうです。
あたりまえですが、とらたにそっくり。耳が大きくてとてもかわいらしい顔しています。かなりのくたびれ具合なのですが、
中川家で今も大事に保管されているのでしょうね。

 
 このイベントの目玉の一つが、冒頭の写真にある、組み立て式・豆本『かめくんのさんぽ』です。
入場者はもれなく貰えます。
 そしてもうひとつの目玉が、ぐりとぐらが、たまごの殻で作った「あの車」。ここだけは写真撮影がOKなので、
長蛇の列ができていました。一応、娘に「乗って写真撮る?」って聞いたのですが、「もう4年生だもん、いいよ」と
言われました。そうだよね、友達かいとこか誰かが一緒に乗るならまだしも、4年生ひとりで乗って、
にこにこできないよね、と思い、ほんのすこしだけ寂しくなった母でした。

 次の人が乗り込む「間」に、ささっと撮った写真です。

 

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ブルーベリーパフ

2006-05-15 15:10:07 | 好きなもの・お菓子

 先週は、GWに更新をさぼっていたことを反省し、「5日間連続で絵本か本をエントリーする」ということを、自分に課してみました。(なかなか大変なことでした。)今週からは、また週3くらいのペースで、ぼちぼちやっていこうと思っています。

 ところで、昨日の日曜日は、娘と「ブルーベリーパフ」というお菓子を作りました。
 レシピは、ずっとずっと昔に図書館で借りたお菓子の本から、自分にできそうなページだけをコピーしておいたものです。本のタイトルをどこかに控えておけばよかったのですが、今となってはまったく思い出せず、それが悔やまれてなりません。
 「ココナッツバナナケーキ」「かぼちゃのマフィン」「チョコミントケーキ」「バナナブレッド」。これら4つのレシピは残っているのですが、きっと他にも、お菓子作り万年初心者の私でも、失敗せずにおいしくでき、しかもヘルシー感漂うレシピがたくさん載っていたと思うのですが・・・。

 
 それでは、ブルーベリーパフに戻ります。

 これは直径4.5センチのマフィン型24個分のレシピです。
  薄力粉 160グラム
  無塩バター 40グラム
  卵  1個
  きび砂糖(又は三温糖)  80グラム
  牛乳  130CC
  ベーキングパウダー  小半分
  ベーキングソーダ    小半分
  レモン汁  大1
  ブルーベリー(冷凍)  100グラム

 作り方は・・・
 1 ボールに室温に戻したバターを入れて、泡立て器で
   クリーム状にする
 2 砂糖をすこしづつ加え、すり混ぜる
 3 といた卵と牛乳をすこしづつ加えて混ぜ、レモン汁も入れる
 4 粉、ベーキングパウダー類を合わせてふるい入れ、
   さっくりと混ぜる
 5 型にスプーン1ぐらいづつ生地をいれ、ブルーベリーをちらす
 6 さらに7分目くらいまで、型に生地を入れていく
 7 200℃のオーブンで20分焼く
 
 ※仕上げにバターを湯せんで溶かたものを上の部分にだけつけ
  そこにグラニュー糖とシナモンを合わせたものをまぶしつける

 ブルーベリーパフの何が「パフ」なのかなあ? と思うのですが。きっと、これを大きいマフィン型で焼くと「ブルーベリーマフィン」になって、このように小さい型の場合を「パフ」と呼ぶのではないか、というのが私なりの考察です。それとも牛乳をたくさん使って、生地を軽くしたものをパフというのでしょうか?(どなたかご存知ですか?)

 冷凍のブルーベリーはとっても便利ですが。来年あたりは、家で採れた実を使って、このお菓子が作れるかもしれません。  「母の日」の前日に、ブルーベリーの苗木を2本買ったのです。

 ホームセンターの園芸コーナーに行ったら、ブルーベリーだけの囲い(?)ができていて、系統が2つあり、その同系統の中から違う種類を一緒に植えると実のつきがよい、とのこと。突然思い立った買い物だったし、雨も降っていたのでので、ほとんど感だけで(笑)、選んでしまいました。
 買ったのは、ハイブッシュ系の【ジャージー】と【デキシー】。もうひとつの系統の名前はもう忘れてしまいましたが、ハイブッシュ系のほうが、紅葉がきれいと書いてあったのが決めてとなりました。

 ラズベリーに加え、ブルーベリー育ても!!
 夏の訪れがますます楽しみです。
 

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やっぱりやっぱり

2006-05-12 15:34:30 | 思い出の絵本
 あさっては「母の日」ですね。
 私も母となってこの夏で10年になりますが、気持ちはいつまでも新米で、なかなか
ちゃんとした「おかあさん」にはなりきれていない気がします。

 そんな私にでも、「ママ、大好き」と手放しで、100%の気持ちで、そう言ってくれる人の
存在は大きいです。私自身は、素直に気持ちをぶつけられる子どもではなかったので、
今そう言ってくれる、娘を前にして、戸惑うような身にあまるような、くすぐったい気持ちを
感じています。

 母の日を前にして、私も何か、お母さんが印象的な本を紹介したいなあと思っていました。
幾つか思い浮かんだのですが、結局この本を選びました。
いえでだブヒブヒ

『いえでだ ブヒブヒ』

 柳生まちこ 作






 こぶたの ブウと、トンと、ヤンは、
 タオルを とりっこして、
 おかあさんに おこられました。

 
お話が始まってすぐに、前置きも説明もなしでいきなり、こぶたの3兄弟はタオルを
とりっこして、おかあさんに怒られちゃうんです。にんじんを残し、おもちゃを片付けず、
また小突き合い・・・。
 しまいには、おかあさんの堪忍袋の緒が切れて、どこへでもいきなさい! と一括されます。

 3人揃えば、こわいものなし。しょんぼりしたのも束の間、3人はいそいそといえでを
します。こんな歌を歌いながら。

 ここの うちとは おわかれだ
 よその おうちの こになろう
 いえでだ、ブヒブヒ
 いえでだ、ブヒブヒ

 
うさぎさん親子の家、わにさん夫婦の家、子沢山のカラスさんの家、色々行ってみたけれど、
どうもしっくりいきません。今度は野宿を考えて、勇んで、シーツでテントのうちを作りますが、
楽しかったのは最初だけ。だんだん日が暮れてきて、つまらない気持ちが増してきます。
ヤンがとうとう泣き出してしまったとき、遠くからおかあさんの声が聞こえました。そうして、
こぶたくんたちの「短い家出旅行」も終わります。

 おかあさんの声が聞こえて、3人が家に帰る場面は、ほんとうにいじらしくてかわいらしいんです。

 こぶんたくんたちは ぱっと とびおきると、
 はしって はしって
 はしって はしって
 おかあさんの まっている うちへ かえりまーす。

 
ただ「走る」んじゃなくって、「はしって×4」のところに、こぶたくんたちのおかあさんへの
気持ちが表われています。うちへ「帰ります」ではなくって、「かえりまーす」の伸ばし棒の
ところに嬉しさがにじみでてますよね。

 
 なにがあっても、やっぱり、やっぱり、みんなおかあさんのそばがいいんです。
 小さい頃は、いっつも、何するのも「見てて」「ママ、見てて」です。取り合いも、好き嫌いも、
けんかも、お母さんが居るところで、見ているのがわかるところでするから、楽しいんですね。
 だから。ああ、うっとおしい、静かにして、たまにはどっかいっちゃって。そう思っている時が、
実は母としてのピーク時なのかも、と思うこの頃です。


 この本は、見開きに地図が描かれています。それを見ると、こぶたくんたちの「家での足跡」が
よくわかります。娘がまだ保育園へ通っていた頃、寝る前にこの本を読むと、読み終わった後、
必ず地図を見ていました。昨日も見たからもういいんじゃない、と言いたいのをこらえて、
毎晩それにつきあって一緒に地図を辿ったこと思い出しました。懐かしいです♪♪♪

 
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究極のにほんご

2006-05-11 14:57:40 | 好きな本

 たった2つの音なのに、言ったわたしも、言われた誰かも、気持ちがすこしやさしくなって、くふっとしたり、きゅんとしたり・・・そんな極めつきのことばは、なんでしょう。なんだと思いますか?
                                                                                    
         すき(理論社)  
            
   『すき 谷川俊太郎詩集』
    
和田 誠  絵

 
 好き という日本語ほど、短いのにインパクトがあって、前向きかつ肯定的で、まっすぐなことばはないんじゃないかなと、この本の表紙をみただけで、思ってしまいました。

 書店では、黄色の帯が巻かれていて、「谷川さんから、子どもたちへのメッセージ。最新書き下ろし詩集です!! 詩のなかに、ぼくがいる。わたしがいる。」と書かれていました。
 谷川俊太郎さんの書き下ろしの詩で、和田誠さんの絵 の本なら、もう迷うことなんか全然ないです。ろくに中味も見ずに買ってしまいました。

 目次を開くと、1~5までの見出しがあって、「3 はみ出せこころ」に括られている5編の詩は、小学校の校歌として作られたようです。 たとえばこんなのがありますよ。

  かんがえるのって おもしろい
 
 かんがえるのって おもしろい
 どこかとおくへ いくみたい
 しらないけしきが みえてきて
 そらのあおさが ふかくなる
 このおかのうえ このきょうしつは
 みらいにむかって とんでいる 
(※校歌として歌う時は最後に学校の名前が入るそうです)

 
 
いいですね、ひらがなだけで、書かれた校歌。もう一度小学生になって、真っ白な気持ちで、勉強したくなっちゃいます(笑)。

 ひとつだけ、この本の中の詩を載せたいないなあと思って・・すごく迷っています。なんだかもったいなくって、全部読んでないせいもあるのですが。
 表題作の『すき』もいいし、最初の『きいている』も『いる』もとても好き。けれど、あえて「4 まり」の括りから選んでみました。

   はこ

 もしぼくがはこだったら
 だれにもなにもいれさせない
 からっぽがいいいつまでも

 でもちきゅうのうえにあるのだから
 からっぽはくうきでいっぱい
 においもおともかくれてる

 もしぼくがはこだったら
 ふたはあけておいてくれ
 みえないものをいれるために

 いっしょにいたいひとにあったら
 はこをきもちでいっぱいにする
 「すき」がはこからあふれだすまで

 

 
 
谷川俊太郎さんの話題の続きなんですが、ほぼ日刊イトイ新聞 のGW特別企画で「谷川俊太郎質問箱」というのをやっていました。あらかじめ寄せられた質問に、毎日一つづつ答えていく形式で、13この質問とその答えを読むことができます。

 質問12は、「自業自得で苦しい時、どうやってその苦しさに立ち向かっていったらいいのでしょう?」というものでしたが、こんなふうに答えていました。

 苦しいのも生きている味わいのひとつだから、
 苦しみのグルメになれるといいなあ。
 苦味や渋みや刺すような辛さに、
 かすかな甘みもまじっているその複雑な味を知ると、
 喜びの味も深まるからね。
 この質問には
 古今東西のさまざまな宗教が答えを用意してますが、
 それはあんまりあてにしないほうがいい。
 お金取られたりするからね。

 さすがですね、すごいです。なんかこの先、つらいことに遭遇しても、この言葉を思い出せば、なんとかやっていけるかも、と思ってしまいます。

コメント (8)
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夢に乗っているのかも

2006-05-10 16:00:00 | 好きな絵本

 平凡なタイトルなのに、読み終わった後、あらためて題名の持つ「意味」を考えてみたくなり・・。
考えてはみたものの、作者に深い意図があったのか、それとも、「さらっと流しちゃって下さい、
そのあたりのこと」と思っているのかよくわからないなあ、と思いつつ。それでも、あまりに美しい
色合いに、また最初からページを繰ってしまいたくなる絵本です。

 『バスにのって』 荒井良二 作


 4月に行った「絵本作家ワンダーランド」展で、この原画を見て、その美しさに心底打たれました。
 荒井良二さんが描く、空の色が美しいのは、もっと前から知っていたのです。(描かれる人物が
こけし風なところや、メキシカンな帽子をかぶっているところだって、好きなほうでした)でも、
土の色が、大地の色がこんなにきれいな夕焼け色をしているのは、(たぶん)今まで、どこでも
見たことがなかったように思います。

 
 照りつける太陽の下、バス停の「待合所」のような所で、男の子が一人座っています。
大きなトランクに、大きな風呂敷包み、そして赤いラジオ。壁には時計がかかっていますが、
何時を指しているのか、そもそも針がついているのかどうかさえ、わかりません。

 
バスにのって
 とおくへ いくところです

 そうぼくが言っているので、旅の途中なのだろうなあと思います。

 
空は ひろくて
 風は そよっとしています

  まだ バスはきません

 
バス停の前には道が1本あるだけで、あたり一面夕焼け色の大地が広がっています。その道を、
牛を繋いだ車が行きすぎ、トラックが行き過ぎ、馬に乗った人が通り過ぎ、たくさんの荷物を積んだ
自転車が行ってしまっても、ぼくは、まるで同じ姿勢で座り続けます。

 ぼくは ラジオをつけました 

 ラジオからは、はじめてきくおんがく が休みなしに流れてきます。

 トントンパットン
 トンパットン

 やがて陽が沈み、夜になって(ラジオもねむってしまったのでぼくも眠ります)、また次の朝がきても、
まだバスは来ません。ラジオからはまた トントンパットン・・・
 
 バスに乗って、遠い所へ行くのなら、もうこの辺でバスが来たっていいんじゃない。
 バスが来ないのなら、バスに乗らないのなら、『バスをまって』という題じゃないんじゃない。

 こんなふうに心の中が、ざわざわし始めますが、もうちょっと辛抱していると・・地平線の彼方に
何かが現われ、やがてものすごい砂けむりとともに、待望のバスがやってきました!!
待っていれば、いつかバスはやってくるのですね。
 でも、ここは、どうみても異国なんです。荷物を下ろして、窓際の席に座って、シートをリクライニングにして、
といった「なにもかも快適な旅」が、必ずしも用意されているとは限りません。バスが来たって、
そのバスに乗ることができるかどうかだって、保証はされていないんです。

 ぼくは、すさまじくでかいこのバスに、本当に乗って、どこか遠い所へ行かれたのでしょうか・・。
 最後のページにきても、ぼくは表情ひとつ変えずに、淡々としています。ラジオからは、トントンパットン。
この音楽が、この情景を支え、ぼくの旅を支え、ぼく自身を支えているように、私には思えました。

 
 「遠くへ行きたい」と思うとき(それは物理的かつ具体的な場所でなくても)。
 ある時、バスがやってきて、はいはいどうぞと乗せてくれて、自分の行きたい場所、イメージするもの、
なりたい自分に、砂けむりをあげるほどのスピードで、連れて行ってくれたらなあって思うのは正直な気持ちです。
 けれど、バスが来なかった時、バスに乗リそこなった時も、バスに乗れなかったことを悔い、またバスを
待ち続けるのはいやだなあと思います。「遠くへ行きたい」のなら、自分の力で行くことだって、できるのですから。
 それと、しばらく待つと決めたなら、その「待つ」時間さえも楽しめる人でありたいです。
風がそよっと吹いてくるのを感じたり、聞こえてくる音楽の中で旅したり。


 

 

コメント (12)
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『のはらのおかしや』

2006-05-09 17:14:42 | 好きな絵本

 昨日に引き続き、カズコ・G・ストーンさんの作品ですが、「やなぎむら」ではなく、
おとなりの「しげみむら」のお話なんです。春、夏、秋、冬と、やなぎむらのお話が揃った
後も、虫・虫ワールドは広がっています。

しげみむらおいしいむら
『しげみむらおいしいむら』

 カズコ・G・ストーン 作




 私が最初に、虫たちが住む村のお話を知ったのは、こどものとも2000年5月号の、
この作品でした。すっごくちっちゃい絵、というのが第一印象。すんなり溶け込めたわけではなく、
読み返すほどに楽しさが増してきた、本でした。

 しげみむらに住んでいるのは、こんな虫たちです。

こがねむしのブンブンさん、だんごむしのコロコロさん、
くさかげろうのミドリさん、おとしぶみのツツミさん、
はちのチークリファミリー(とうさん、かあさん、ふたごのチークリくん、
チークリちゃん) 

 そして、しげみむらは おいしいむらとも よばれていて、 みんな とても
 おいしいものを つくるのです。

 
ブンブンさんがみつあめ。ミドリさんがミントのはっぱにたまった露を集めて、
はっかすい。チークリファミリーはかふんだんごを作ります。ここまでは、なんとなく順当ですね。
 では、おとしぶみのツツミさんは、なに屋さんでしょう?その名も「つつみや」。
買ったものを、おみやげに包んでくれるお店です。
 だんごむしのコロコロさんだって、『のはらのおかしや』には欠かせない存在です。
糸電話を使って、近くに住む虫たちに、開店のお知らせをするんですから!!
そして、ちゃんとデリバリーの注文だって受付てます。

 頼まれたのはバースデーケーキ。配達先は、セッセかぞくのぼうやが待つやなぎむらです。
デリバリーの担当者は双子のチークリくんとチークリちゃんです。またしても、アクシデント
が起こりますが、二人はいもりのペタリさんの協力もあって、なんとかケーキを取り戻します。
もちろん、その先には、やなぎむらのみんなが待つHAPPYな場面が待っています。


 足元に広がるちょっとしたしげみや、風にそよぐ木の下に、こんなスモールワールドが
展開されていたら、ほんとうに素敵だろうと思います。
 でも、何度も何度も本を読んでいると、ちっちゃな虫の、ちっちゃな世界の出来事、とは
全然思っていない自分に気付き・・・。そう、私は登場人物のこと、「虫」って、もう思わなく
なってます。ただそこには、アイデアを駆使してお店屋さんをする楽しさとか、心をこめての
ケーキ作りとか、配達に行った二人(二匹)を待つ、家族の気持ちとか、そういうものがあり、
それらを「共有」する仲間が居る、といった感じでしょうか。

 
 

コメント (2)
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二度おいしい

2006-05-08 17:45:03 | 好きな絵本

 春になったら、柳の若葉が出たら・・書きたいな、紹介したいなと思いながら、
あとすこし、もうすこしと「待って」いました。何を「待って」いたのかというと、うちの庭の
こでまりが満開になるのを、です。
 この本を開いたことがある方なら、ああ、
あのページのことね、と思い出して
くれているかもしれません。やなぎむらのむしたちが、こでまりの花ふぶきに埋ってしまった、
とても美しい場面があるんです。

サラダとまほうのおみせ
『サラダとまほうのおみせ』

 カズコ・G・ストーン 作




 やなぎむらのおはなしを、このブログで紹介するのは、この本で4冊目になりますが、
ほんとうは、この『サラダとまほうのおみせ』がやなぎむらシリーズの第1作目で、
春のおはなしです。(私は夏のおはなしの『ほたるホテル』から紹介し始めました)
 
 おおきな おおきな やなぎの きの したに、ちいさな ちいさな むらがありました。
その むらは やなぎむら といいました。

 あるひ、このやなぎむらに いもむしの モナックさんがひっこしてきました。
そして、『サラダとまほうのおみせ』をひらきました。

 
表紙の真ん中あたりに描かれているのが、モナックさんとそのお店です。
おいしいサラダを食べさせてくれるだけでなく、それプラス「まほうのおみせ」です。
毎日サラダを食べに行きながら、やなぎむらの仲間たちも何が「まほう」なのだろう?と
興味しんしんですが、モナックさんは 「それは ひ・み・つ。でも、もうすぐ わかるよ」 
としか言ってくれません。そしてその後、お店の扉をぴったり閉めてしまいました。
何日ものお休み続きに、みんなは心配になり様子を見に行きます。声をかけると、
中からモナックさんの声。

 「ありがとう。ちょうど いいところへきてくれました。どうぞ なかへ おはいりください」
中へ入ると、声はしたのにモナックさんはそこにはいなくて、代わりに
へんなものがぶらさがっていました。「まほうの はじまり はじまり・・・・あぶら かだぶら~」
 
ついに「まほう」が始まったのでした。

 「えーっ、あなたは ほんとに あのいもむしの モナックさん?」
 「ヒャーッ、これは すごい まほうだ!」
 やなぎむらの面々がのけぞって驚くのも無理はない、モナックさん一世一代の、素晴らしいショウなのでした。

 モナックさんが去ってから1週間後、とんぼのピューさんが、モナックさんからの手紙を届けてくれました。
中味は結婚式のパーティへの招待状と地図。モナックさんは結婚したんですね。
場所は「たちあおいむら」ですって。
 ずいぶん とおい ところのようなので、みんなで ちずを みながら、
どの みちを とおっていくか、よくそうだんしました。

 
クローバーのはら(ここで、セッセかぞくのぼうやが、よつばのクローバーを見つけます)
 こでまりトンネル(花ふぶきでみんなが埋ってしまう場面がここです。トビハネさんが
みんなを助けます)
 きのねトンネル(青く光るきのこを探しながら行けば、迷わず出られるそうです)
 さらさらおがわにかかるはし を渡ればもうそこが「たちあおいむら」ですが、橋が壊れていたため
すぐには渡ることができません。知恵と力を出し合って協力し、この問題を解決します。

 出迎えてくれたモナックさんとモナックおくさん。タチアオイの花の下で楽しいパーティが始まりました。
それぞれが用意したプレゼントをあげたあとは、くさむらでかくれんぼ。
おひさまが オレンジいろになって にしに かたむいたころ、

ようやく、さよならを言って帰ります。

 しかし、ここで思わぬアクシデント。先頭きって歩いていたトビハネさんが、大事な地図を
川に落としてしまったのです。地図がなくては帰れないと泣いているみんなを、
今度はかたつむりのキララさんがなぐさめます。
 「しんぱいしなくても だいじょうぶ。かえりみちなら わたしに まかせて!」


 
やなぎむらシリーズのとっても素敵なところは、それぞれがみな、自分の特性をさりげなく
活かして、協力しあっていくところです。モナックさんの「まほう」は、いもむしならではのものだし、
キララさんが帰り道を知っているのも、かたつむりであるがゆえのこと。
お話を楽しんでいるだけで、そんな虫の特性も知ることができるのは、「二度おいしい」と
言うことができるかもしれません。
 それと、「モナックさんの魔法」と、「たちあおいむらへの旅」で2つのお話を、
1冊の本で楽しむことができた、という意味もこめられています。
 でも、【二度】どころじゃないですね。みんながモナック夫妻にあげたプレゼントは、
なぞなぞ形式になってるし、かくれんぼの場面では、どこに誰が隠れているのか、
そこだけでも遊べるし。ひとつひとつの場面がほんとうにきれいなので、じっくり見ている
だけでも楽しいし・・・最後のページには、ちゃんと「オチ」までついてます。

 私にとってこの『サラダとまほうのおみせ』は、噛めば噛むほどの・・スルメ本かもしれません。

※ところで、みなさんは「モナック」さんの名前の由来をご存知でしたか?
私は先日、こどものとも50周年記念ブログで、作者のカズコ・G・ストーンさんのエッセイを
読むまでは、気にとめて考えてみることさえしませんでした。モナック蝶は、ストーンさんの
お住まいのあたりでは(NY近郊のことでしょうか)、日本のモンシロチョウのように、ポピュラーな蝶だそうです。
 



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