1か月半くらい前に、『飛ぶ教室 ほぼまるごと一冊 長新太』を図書館から借りていました。
その中に載っていた数々の長新太さんの絵本の中で、とても気になったのが、この本でした。
『よる わたしのおともだち』
今江祥智 文 長新太 絵
解説によると、この絵本の元版は、1969年。「黒の絵本」3部作だったそうです。
子供のための絵本に「黒」。新鮮…というより冒険だったでしょう。その時のいきさつが、今江さんの文章でこんなふうに残されています。
「カラーブック」と銘打ち、12人の作家と画家が、それぞれの“色”を受け持って物語を考え、絵をつけるーという企画だった。
組む画家は、はなから長さんにお願いするつもりで、色も好きなブルーやホワイトをと思っていると、お前さんは一番若輩だから残ったものでやるんだよ…と先輩たちに言われ、オシマイに残った“黒”になった。
-あのときはもう目の前がまっ黒になってしまって…。
と長さんに呟かれたが、そこを逆手に取った発想が、かえってユニークな物語を生み出す力になった気がする。
なるほどなるほど。そういういきさつで生まれた本なのですね。
だから、タイトルも、表紙の絵も、ぐっと引きつける強い力を持っているのでしょう。
後ろ姿で描かれているのは、主人公のひろこちゃんと、ひろこちゃんちのネコのマリ。
ひろこちゃんは、とっても早起きな女の子なので、夜もとっても早く眠ってしまい、夜がどんなものかよく知りません。そんなひろこちゃんに「つきあって」一緒に寝てくれるマリ。二人はとっても仲良しなんです。
あるとき、ひろこちゃんは、にいちゃんに尋ねてみます。
-よるって なあに?
この本を読んでいると、いろんな時の、いろんな夜の思い出が胸に広がります。
まず、自分が小さかった頃の夜のこと。特に日曜日の夜…いつも見ていたテレビ番組が終わってもなかなか眠れず、とてもとても困ったこと。
なかなか寝付けず、すぐに起きてしまう赤ちゃんだった娘のこと。それといつも一緒に思い出す、寝かせるのがとても下手だった母になりたてだった自分のこと…ふとんに寝かせると泣いてしまうので、一時期、ソファで抱っこしていて…新聞配達のバイクの音が遠くに聞こえてきたときは、なんだかせつなさを通り越して、「午前3時半は、夜中なのか、朝なのか」とぼんやりした頭で考えたこと。
寝付きの悪い赤ちゃんは、そのまんま、なかなか眠れない子供になって…この夏初めての、臨海学校で「お泊り」があるのですが、どんな夜を迎えるのか、母としてはちょっと心配です。友達と笑い転げて、そのまんま眠れればいいけどね…。
お話の中のひろこちゃんは、にいちゃんに聞いてもよくわからないので、かあさんにもとうさんにも、なかよしのまことくんにも、聞いてみます。それでもわからないので、自分で確かめることにします。
ひろこちゃんが、出会った「夜」は、素敵でした。「早寝早起きのひろこちゃん」に戻れるかなと思うくらい。
夜にも、いろんな「色」や、「におい」や、「肌ざわり」があると知ったのはいつ頃だったのでしょう。
もう長い間、甘い夜や、しっとりした夜には触れていないけど、確か昔に、そんな夜もあったような…。
季節がよくなって、月が輝いたりしていると、ふらふら夜の中を歩いてみたくなりますねえ。