成人の日に、大泉学園で八生さんの原画展を観た後、
その日が最終日だった、駒形克己さんの展覧会を観るために、
板橋区立美術館へ移動しました。
リニューアルオープンしてから、私は訪れるのは初めてで、
電車とバスを乗り継いで向かうのも初めてでした。
(過去2回は、どちらも家から車で行ったのでした)
駒形さんと言えば、私の中ではこちらの絵本。
1997年7月号。娘が1歳になるすこし前に出会い、驚かされ、
そして家族で愛読してました。
最終日は駒形さんがおいでになり、サインもしてくださるとのこと
だったので、私と友だちは、「せっかくだからねえ」と、展示を観る前に
売店へ直行し、サインをいただいたのでした笑。
『ごぶごぶ~』の思い出として、当時新米ママの自分にとって、いかに
この絵本が役にたち、同じく新米パパの夫も、喜んで読んでいた、と話すと
駒形さん、ゆっくりと笑顔になり、そうでしたか、お役に立ててそれはよかった
と、言ってくださって‥なんかとても嬉しく幸せな気持ちになりました。
(同じ年に産まれた、スペイン人の友だちの赤ちゃんにもこの絵本を
贈ったはなしも、調子に乗って話しました)
展示はONE STROKE から出ている本の他に、デザインの仕事もたくさんあって、
アメリカに居た頃のタバコのパッケージとか、日本に戻ってからの、ファッション
ブランドのロゴや招待状、オフコースのレコードジャケットまで!貴重なものを
たくさん観ることができました。
(1982年のNBAオールスターゲームの案内状もありました!)
※下の画像は、撮影可のお部屋で何枚か撮ったものです。
それにしても、駒形さん、サイト等で観るよりもずっと素敵な方でした。
もしも、今は亡き水丸さんにサインしていただく機会があったとしたら、
(駒形さんと)おんなじように、(水丸さんも)ゆっくり笑顔を作られるのでは
ないかなーと想像しました。
お二人の作品の画風は違うけど、ダンディでかっこいいという共通点が、私にそう
思わせるのですね、きっと。
本日は小学校での図書ボランティア活動日でした。
4年生のクラスで絵本を2冊読んできました。
最初は、今回の「届ける絵本」『ゆきむすめ』
『おおきなかぶ』でおなじみの、内田莉莎子(再話)、佐藤忠良(絵)
コンビです。おなじく元はロシアの昔話です。
私、小学校で読むのは3度目だと思っていたら、今日が初めてだと
あとからわかりました。(終わり方が寂しいので、読もうと思って
やめたのかもしれません。)
おじいさんと、おばあさんは、自分たちにこどもがいないことを
たいそうさびしく思って暮らしていました。
ある時、雪の中で遊ぶこどもたちを眺めていたら、外へ行きたくなり‥
「おばあさんや、わしらも そとに でてみよう」
「ええ、おじいさん。ゆきで おんなのこを つくりましょう。
ゆきむすめをね」
二人が作ったゆきむすめのなんとかわいらしいこと。
(まるで忠良さんが作った氷の彫刻のようです笑)
ゆきむすめは、突然にっこり笑うと、雪の中を小屋の方へ歩き出します。
おじいさんと おばあさんは、おどろくやら、よろこぶやら。
あわてて、あとを おいかけました。
ゆきむすめは、おじいさんとおばあさんに可愛がられて、賢く美しく
成長していきますが、春が来て、夏が訪れるにつれ元気がなくなります。
そしてある日、女の子たちが森で遊ぼうとゆきむすめを誘いに来ます。
「あついわ。おひさまが こわいわ」
ゆきむすめはしかたなく出かけて行き、帰ることのない結末をむかえてお話は
終わります。
雪でできているので、夏になったら溶けてしまうよね‥?
だからだんだん元気がなくなってきたんだよね‥?
教室の4年生は、声には出しませんがそう思ってなりゆきを見守っていることが
よく伝わってきました。
唐突に(本の中の)女の子たちが「たきびの とびこえごっこ」をしようなんて
言いだした時には、聴いていた皆はダメダメダメと思ったことでしょう。
最後に(ゆきむすめが)白い湯気になって、細い雲になって、上へ上へとのぼって
いく時の空の色を、忠良さんは子供のときに見た北海道と、抑留先のシベリアでの
夕焼けが混ざり合ってできた場面、と語ったそうです。
※絵が変わると、だいぶ印象が変わりますね。
こちらのヴァージョンも、今度図書館で探してみようと思います。
岸田衿子(文)スズキコージ(絵)
2冊目は、ネズミ年だし(笑)、と思い、こちらの絵本を選びました。
題名は知っていましたが、小学校で読むのも、もしかしたら、声に出して
読んだのも、初めてだったかもしれません。
チュー先生はとても腕のいい歯医者さん。奥さんと協力して、自分より
ずっと大きな動物の口の中へも入って治療するので、人気があります。
でも、先生はネズミですから、きけんなどうぶつのちりょうはしません。
かんばんにも、ちゃんと書いてあります。
ネコやその他 きけんな動物の ちりょうは おことわり
ある日外を見ると、立派な服装のキツネがほっぺたを包帯でぐるぐる巻きに
して、立っていました。
「ちりょうはできません!」と一度は断りましたが、泣いて痛みを訴える
キツネがかわいそうになり、中へ入れてあげることにー。
キツネは床に膝まずき、「どうにかしてください。歯がいたくて、死にそうです」
キツネのこの言葉よりも、べそをかきつつもキツネがチュー先生が口の中に
いることに気がつくところとか、麻酔を打たれ、ネズミを生で食べている「寝言」を
思わずもらしてしまうところの方が面白いと思ったのですが、本日の4年生は
「歯がいたくて、死にそうです」に、どっと笑ったのでした。
え?ここで??と、読みながら私はひそかにびっくりしました(笑)。
それにしても、野生のサガなのか、キツネったら治療してもらっている恩も忘れて
ひどいですよね。
あしたちりょうがおわったら、先生を、たべてやろうかな とか、
「ふたりをくっちゃいけないかな。とても、がまんできないぞ」 とか、
「おまえは、だれにもあえなくなるのさ」キツネは 考えました。
とうとう、ふたりをたべてしまうことにしたのです。あたらしい歯をつかってね。
でも、チュー先生夫妻も黙って食べられるわけにはいきませんから、
何度も二人で話しあい、計画を立てて‥キツネをぎゃくに、ばかしてやって
ハッピーエンドでお話はおわります。
お話もおもしろいですが、スタイグの描くキツネの表情がとてもよいです。
特に、ちょっとした目の動きや、耳の角度なんかで、キツネの邪(よこしま)な
考えがよーく伝わってきます。
教室の4年生も、楽しんでくれたようでした。
2020年の成人の日、友だちと二人で、初めて練馬区立牧野記念庭園記念館という
ところを訪れました。大泉学園駅には何度も降りたことがあるのに、駅近くの
教習所の裏にこんなステキな場所があるなんて思いもせずびっくりしました。
植物学者の牧野富太郎氏の御自宅跡を、庭園および記念館として練馬区が管理しているそうです。
入ってすぐの大きな松の木の圧倒され‥。
その根元のこんなしつらえに、ダイオウマツのマツボックリの大きさに驚き‥。
そして、この日の目的はこちらの絵本の原画展を観るため、でした。
お庭を通った奥に「記念館企画展示室」があり、そこに八生さんの原画と
幼い牧野氏が飽かず眺め勉強に役立てたという『植物図』のレプリカと、
牧野氏愛用のメガネや帽子や採集かばんなどが展示され、その間あいだに、
植物の標本(押し花)も飾られていました。
造園家であり画家である、八生さんが、この絵本の作者であるということは、
とても自然というか、八生さん以外にどなたが??と思ってしまいますが笑、
もしも博士ご自身も、この絵本を読む機会があったら、きっと嬉しく思ったはず、
と強く思いました。
展示室の中にいらっしゃった係りの方が、私たちが展示品の中の「採集箱
(ガラスケース)」を見ていたら、こんな話をしてくださいました。
‥地方の山や野に出かけて行った先生は、採集した植物をどんどんまとめて自宅に
送ってくるそうで。家に居るお弟子さんたちや、ご家族は、それらが萎れないうちに、
あるいは枯れないうちに、細部をスケッチしたり押し花にしたりする作業はさぞかし
大変だったことでしょう。あんなにきれいに標本になって残っているのも、何度も何度も
ご家族が新聞紙を取り換えた賜物だと思います‥。
お話を伺ってから、もう一度戻って標本を観てみると‥ほんとうにうっすらと花の黄色まで
残っていて、ご家族の(奥様の)ご苦労が忍ばれるのでした。
展示室から外へ出て、ゆっくりとお庭を周りました。
大きな木にはもちろん、どこにその植物が植えられているのだろうと、探してしまうような
ものにまで、ひとつひとつ名前の札がついていて‥。馴染み深い名や、初めて目にするもの
などを追っていくうちに、大事なことに気が付きました。
それは、どんなものにも名前があるということ。
それを知っていく、覚えていく、ということが、すなわち人が生きていくということ
なのではないだろうか、と思ったのです。
好きなものや人の名前は特に知りたいと思うし、名前があることによって、それは
個々の記憶に残っていく‥そういう循環の中に(人は)居るのだと思います。
スエコザサ 昭和2年に博士が仙台で発見し、翌年亡くなった奥様の名前を命名
ウバユリ
オオカンザクラ
ヘラノキ
センダイヤ 元は高知県高知市内の仙台屋という店の前にあった桜の木、博士が命名
アブラチャン
サイカチ
センダン
覚えることより、忘れていくことの方を得意をしていますが笑、
せめて、博士ゆかりの植物としてパンフレットに載っていたのものだけでも、
季節季節に訪れて、忘れないようにしたいものだと思います。
(太字部分はパンフレット内の見所より転記しました)
そしてもうひとつ。
「季節の中で冬がいちばん好き」という八生さんの言葉を抱いて、日々の散歩を
楽しみたいと思いました。
*手しごとを結ぶ庭の中の、本日の記事とリンクしていました、嬉しい。
そうそう、ムベの木もあり、初めて実物を見ました。たしかむー嬢のお名前は
ムベから、ですよね~違ったかな。
今日は、今年初めての図書ボランティア‥読み聞かせ‥の日でした。
6年生のクラスで、「届ける絵本」は『ギルガメシュ王ものがたり』
14分はかかる長い絵本で、ペアさんが読みたいとおっしゃったので、
私は、もしも時間が余った時のための詩を2編ほど選んでおいて、
見学にまわりました。(時間はほぼぴったりだったので、詩の出番はなし)
自分で読んだ本ではないので、このログのタイトルは( )の中に入れました。
今までも何人かの方がこの絵本を選んでいて‥学年ごとに「届ける絵本」を
あらかじめ決めるようになった昨年からも6年生のリストの中に入っていました。
が、私自身は教室で読んだことも、家で読んだこともなく、今回初めて
図書館で借りて読んでみました。
まず絵が素晴らしいです。トーンが統一されていて、細かなところも
ちゃんと描きこまれていて。
お話は「世界最古の物語」ということで、神が人間界へギルガメシュを送って
くることから始まるのですが、王であるギルガメシュが、人間(民)を信じることが
できないのは、友だちがいないから、と、わかりやすく書いていて、さらに、
高い城壁を理由も告げず民に作らせるのは、彼の孤独感をよく表していると思いました。
長い物語ではありましたが、6年生は飽きることもなく真剣に聴き入っているのが
その背中から伝わってきました。(一番後ろに座ってみていたので)
この物語には、続編があるので、ぜひ読んでみようと思います。
★ ☆
もう1か月も前になってしまいました。
SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 ❝MIKKE❞
私が参加したのは、12月7日@武蔵野の森総合スポーツプラザ と
12月15日@横浜アリーナ
その横浜アリーナから、もう1ヵ月もたってしまいましたよ。
これ以上記憶が薄まらないうちに(笑)、残しておかなくては。
まずは、12月7日土曜日
調布にこんな大きなアリーナがあるなんて知らなかった!と思っていたら、
2017年にできたばかりだったのですね~外観もアリーナ内のスタンド席もきれいでした。
この日は、スタンド1階の、ステージに向かって左側‥そうベースギターの田村さん側、でした。
結構左側に寄っていたため、両側にあるスクリーンの、右のはまるで見えず。でも、田村さんの
動きはとてもよく把握&堪能でき、これはこれでとても楽しかったのでした。
(黒のジャケット着ていたのもかっこよかった)
全23曲+アンコール3曲。
ニューアルバム『見っけ』からの曲が、9曲あり、あとはコンサートでの定番曲や、
誰もが知っている大ヒット曲や、とても久しぶりの曲などなど‥。
私的には、初めて行ったコンサートが『さざなみCD』が出たあとの時だったので、
「僕のギター」が、初めて聴いた時に重なり、とてもとても感動しました。
あの時は、私自身はひどく久しぶりのコンサートで、しかも初めての子供連れ。連れていかれた
娘は小学6年生‥。11年という時間が重なり、23歳になった娘とこうしてあの時の曲や、新しい曲を
聴いている、というその事実に胸が熱くなったのでした。
アルバムのタイトルが『見っけ』だと知った昨年の秋。スピッツ(っていうか草野氏)
ますます攻めてるな~(笑)とすごーく愉快な気持ちになったものでした。
(50代のバンドのアルバムタイトルが『見っけ』ってねえ笑。)
その攻めてる感じプラスとっても楽しい、心底楽しい感じが、1曲目の「見っけ」のイントロから
炸裂。幕じゃないんだけど、幕が上がっていくようなオープニングの演出、すっごくよかった!
どこをとっても、どこで切っても、まあとにかく「すごくよかった」に尽きるのですが、
「小さな生き物」~「遥か」~「快速」の後の、「放浪カモメはどこまでも」~「ミーコとギター」
かなりやばかったです(笑)。
そして「僕のギター」~「まがった僕のしっぽ」(調布の時はこのあとメンバー紹介・横浜はMC)
~「青い車」~「YM71D」~「ロビンソン」~「ありがとさん」
青字にした曲名が新曲なので、まさに新旧混ぜこぜなんですが‥なんていったらいいのかな。
もう、どこでもドアって感じでもないのです。そのドアを開けたら、10年前、20年前に
行くことができた、って、その曲があの頃を思い出させてくれた、とかよりも、もっと自然で、
もっと軽やかで‥まるで「窓」だな、って思いました。
開けるとか、行かれるとか、ではもはやなく、自分自身がもはや風のような(笑)。
スピッツの演奏、草野さんの歌は、どこへでも自由に行き来できる「窓」なんですよー。
MCの中で印象的だったのは、今日はじめてスピッツのコンサートへ来てくれた人~?
って、(たしか)田村さんが訊いた時に、予想以上の手が挙がり、それに対して
初めての方がこんなにたくさん、と感激した声のあと、マサムネさんが
「初めての方、はじめまして、スピッツです」って言ったこと。笑
朝ドラ主題歌から確実にファン層が広がり、はじめて来てみた!っていう方
多いのだろうな、の予想通りで‥ライブ歴10年を越えちゃった方としては(偉そう笑)、
なんか「よーこそ」的な、「ほんまもんすごいでしょ」的な、先輩感覚みたいな笑
ものがありました。
そして、30年以上やっていて、それでも新しいアルバム出て新しいファンがライヴに
来てくれるって、すごーく嬉しいことだろうなーと、一ファンの私までも胸がじんとなりました。
本編最後は、「8823」~「俺のすべて」~の「春の歌」
すこし先には必ず春がやってくる、って、約束されたようで、これまたすごくよかったです。
アンコール3曲目は新曲「ヤマブキ」。一番聴きたい曲かも、だったので、とっても嬉しかった。
そして草野さん、最後の言葉は「またお会いましょう」ではなくって、「またお会いしますよ」。
ロック大陸の時の締めの言葉だけど、ステージ上から投げられると格別です(笑)。
そしてこちらは12月15日日曜、横浜アリーナ。
ここへ来るのは2度目。
そうそう、今回のツアーからは、当日入場するまで自分の座席がわからないシステムが
導入されてまして‥。こんな↑わさわさの中、ドキドキしながらピッと発券してもらったところ、
なんと「センター14列」だったのです。しかもほぼ中央。2019年の最後にこんな運が残っていたとは!!
嬉しくなって、買おうかどうか迷っていたTシャツも買ってしまいました(笑)。
同行した娘も、場所(席)が違うと、周りの人のテンションも違うね~今までで一番楽しかった!と
言いきったほど。前回は見えにくかったテツヤ氏も今回はよーく見えて、ほんとうに素晴らしかった。
セトリで違っていたのは、「ミーコとギター」→「点と点」。「僕のギター」→「プール」。
アンコールの「桃」→「群青」でした。
「桃」。すごく好きだけど、ここでまた「群青」聴けるなんて!と感激しましたよ。
だって「群青」も、前出のさざなみCD後のコンサートで聴いた思い出の曲でしたから。
この日は、新横浜に泊まることにしていて、娘とビールを♡
こういう日が来るんですねーというか、来たんですねー。そういうことまで全部含めて
私のスピッツ大好き熱は留まるところを知りません。
ツアーは今年の方がむしろ多く、7月まで続いていくのですが、今のところ、私は今年のチケットは
持っていないのです。。。。。大宮は抽選で落ち、ゴールデンウィーク中の名古屋も抽選で何度も
落ちながらチャレンジを続け、もっと遠くでも、飛行機に乗ってでも行く覚悟もあるのですが、
果たしてくじ運の神様は私に大きな笑顔を届けてくれるでしょうか。
どうかどうかよろしくお願いします。
今年2本目の映画は、こちら。
1966年ル・マン24時間レースを軸とした、実話の映画です。
(もちろん)観たがったのは夫ですが、マット・デイモンが出ている映画は
好きなものが多いので、私も一緒に観ることにしました。
たっぷり2時間半ありましたが、飽きることもなく、カーレースの音に
辟易することもなく、人間ドラマとしても面白かったですし、60年代の
雰囲気がよかったですねー。この時代のクルマが好きな人はもうそれだけで
楽しかったでしょうね。
アメリカ代表のクルマ、フォード対、イタリア代表のフェラーリ、という
構造よりも、フォードの上層部と現場組との葛藤の方が真に迫って感じられました。
いつの時代も、どの組織も、大きければ大きいほど、いろんな思惑を持っている
人が渦巻いていて難しいのだろうなと、ちょこっと池井戸ドラマを思い出したり
してしまいました(笑)。
クリスチャン・ベイルが演じたケン・マイルズの息子ピーターがとても
可愛らしく、ひたむきにお父さんを慕っていて、そこがとてもよかったです。
時に、事実は、映画のシナリオよりもさらに残酷ですよね。
ずっとむかしから好きな作家、気になる作家というのが何人か居て。
角田光代さんも、そうと言えばそうなのですが、だいぶ前に『対岸の彼女』を
読んでから、意識して、読んでなかった気もしていました。
『八日目の蝉』や、『紙の月』など、ドラマ化や映画化されたものは
なんとなく観ていたものの、小説からはすこし離れてところにいました。
なぜって、すごく小説が上手いから。
それなのに、昨年秋ごろから、『それもまた小さな光』『福袋』『空中庭園』と
続けて借りては読み‥「ひとり角田さんまつり」をしていまして、ああどれも
やっぱり上手いなあ、と思いながら読みました。
そして、こちらの『さがしもの』。
平成17年に『この本が、世界に存在することに』という題名で最初に刊行
されたそうですが、私は、どなたかのレビューか、何かの紹介でこちらの
文庫版の方を知り、ぜひとも読んでみたいと図書館で予約しました。
★
旅する本
だれか
手紙
彼と私の本棚
不幸の種
引き出しの奥
ミツザワ書店
さがしもの
初バレンタイン
9編の、全然つながっていない短編がおさめられていて、表題作の
『さがしもの』がこんなふうに、紹介されています。
「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床の
おばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描くー
もうこれだけで、すごく読んでみたくなったのですが笑、他のタイトルからも
なんとなくわかるように、どの短編も、本が好きな人だったら、大きく頷いたり
苦笑いしたり、ためいきついたり、涙ぐんだりしてしまうような、本にまつわる
はなしばかりなのです。
ここでちょっと横道にそれますが、本が好きと、読書が好き、は似ているようで
違いますよね。本が好きな人はたぶんほとんど読書が好きな人と重なり、読書好きも
本好きだとは思いますが、「本が好き」な人は、まず「本」という形が好きなのですよ。
紙に文字が印刷されていて、固い表紙が付いていて、それが綴じられている、という
その「もの」がもうすでに好きなのです。
そして、そこに付いてくるもろもろ‥手触りだったり、匂いだったり、色だったり
もちろん書かれている内容、フォントの色や形‥そんなものすべてが好きなのです。
それを踏まえた上で、この『さがしもの』は、本好きな人なら、ほぼ必ず、満足
できる内容だと思います。
思わぬところで、自分の本と再会する『旅する本』。
遠い南の島でなんとなく手にした文庫本の、以前の持ち主を想う『だれか』。
旅館で見つけた詩集のあいだに挟まれてあった『手紙』。
同棲を解消し、共同の本棚から自分の分だけを持って引っ越した『彼と私の本棚』。
その本があるから次々自分によからぬことが起きたのだと思う『不幸の種』。
古本屋に突如現れる、書きこみのある伝説の本のはなし『引き出しの奥』。
新人賞をとった作家のふるさととココロの中にある『ミツザワ書店』。
その本を見るまでは死ねないよ、と祖母に頼まれた『さがしもの』。
初めての恋人との初バレンタインに本を贈ったわたし『初バレンタイン』。
こうして、(忘れないように)書き出してみると、どの話もみなすごくよかったなと
あらためて思います。
でも、この中で、泣いた話はひとつで、泣きそうになったはなしは2つでした。
~ぽとりと水滴な落ちる。頬をはられたように気づく。
だれかを好きになって、好きになって別れるって、
こういうことなんだとはじめて知る。
本棚を共有するようなこと。たがいの本を交換し、隅々まで読んで、
おんなじ光景を記憶すること。記憶も本もごちゃまぜになって
一体化しているのに、それを無理矢理引き離すようなこと。
自信を失うとか、立ちなおるとか、そういうことじゃない。
すでに自分の一部になったものをひっぺがし、永遠に失うようなこと。
巻末に角田さんご自身の読書体験が書かれたエッセイもあって‥
幼少期からの本とのあれこれが語られています。
そう、本は人を呼ぶのだ。
私も、もうひと組のココロの耳をすませ、これからも角田さんの本や、
角田さんのじゃない本と幸せな関係を作っていきたいと思います。
昨日1月10日より、日本橋小舟町にあるヒナタノオトのサイトが
リニューアルされました。 手しごとを結ぶ庭
オウンドメディアのスタイル なんだそうです。
しくみやらその他色々うまく説明できませんが(笑)、ブログや展示の紹介に
とどまらない、「素敵感」がびしびし伝わってきます。
なにしろ、クリックしてサイトを開くたびに、大野八生さんの植物画が
たびたび変わって登場するのですよ、それだけでもわくわくしますよね。
長年おともだちの方は、もう何度も書いているので、ご存じだと思いますが、
15年くらい(!?)前に、私がブログというものを知り、ぜひともやってみたい
と思ったきっかけは、ヒナタノオトの稲垣早苗さんがブログを始めていたから
なんです。
以来、ブログによって、私を取り巻くセカイは大きく広がり、人生そのものが
広がったといっても、言い過ぎではないくらいの出会いや出来事に恵まれました。
そのあともツイッターやフェイスブックやインスタや、ノートなど、
どんどん増えていき、私自身も愛着や興味を持つものもありますし、なんとなく
新しい年に新しいこと初めてみたい気もしていますが。
でも、もうしばらくこのブログにしがみついてみようと思っています。
そして今年の目標は、できるだけ多くのことを(想ったこと感じたこと)を
忘れないうちに残しておく、です。
年末から年明けにかけて読んでいたこの本のことも、だから忘れないうちに。
図書館の棚で、偶然見かけて借りたのですが、長田さんの最後の
エッセー集でした。
主に(タイトル通り)果実‥くだもののことを書いたエッセーですが、
なかには「落花生」や、「もやし」や、「納豆」なんかもあって(笑)。
そのものに対する長田さんご自身の思い出や、思い入れだったり、
むかし昔に詠まれた句だったり、アプローチは様々ですが、その選ばれた
言葉に、はっとさせられ通しでした。
たとえば、「トマト」の出だし。
ぜんぶ好きになった。何の留保もなく。たった一度の、幸運な偶然のおかげで。
相手はトマトである。
「メイプルシロップ」の結びもよかった。
小さな壜のなかに、明るい大きな森がある。それがわたしのメイプルシロップ。
そうして、「甘夏」は、(夏みかんからの連想もあって)思い出した友のために。
大きな甘夏を掌に持って歩いて、結局そのまま持って帰った日。
甘夏の切ないような味の清明な秘密を知った。明るい孤独の味なのだ。
人が一人でいることのできる孤独な場所と孤独な時間が、甘夏のような
果物にとっては、第一になくてはならないものなのである。
甘夏をまるっぽのまま皮を剥いて、一房一房食べる。ただそれだけのことが、
実は一人でしかできないことだからだ。余言なく、一人、黙々と、人の視線に
妨げられず、無我に口にできてこその、きれいな味。孤独というのは
本当は明るいのだ。甘夏を欲するとき、人は甘夏のくれる明るい孤独を
欲している。
お正月休みになったら観に行こうと楽しみにしていたゴッホ展。
混んでるらしいよ、と聞いていましたが、やはり噂通り混んでいて、
1月3日の昼前で40分~50分待ちでした。
みんなゴッホの絵、好きなんですよねー。
展覧会は、ゴッホが影響を受けた2つのもの‥ハーグ派と印象派‥の
2部構成になっていて、(会場内ももちろん混みこみでしたが)、
わかりやすいと思いました。
上の写真の右側の、自画像の下にある「馬鈴薯を食べる人々」は、
初期の作品として有名ですが、それよりももっと前に描かれた、本当に
絵を書き始めて間もない頃の作品もあり、とても新鮮でした。
ハーグ派の画家に師事することで、画家としての自分を確立していこうと
していたゴッホ。抑えた色調、広い空が描かれている風景や、そこで暮らしている
ふつうの人たち‥。
オランダのハーグで、そのままそういう絵を描き続ける選択も、もしかしてゴッホに
あったのではないかと、勝手に仮定しながら観ていったのですが‥だって、ずっと
ハーグに留まって、その地で画家として一生を全うした方だって居たし、
ハーグ派と呼ばれた人たちの絵もなかなかよかったのです‥。
でも、遅かれ早かれ、ゴッホはパリへ出ていくことになったのだろうなと、やっぱり
思いました。もちろん弟テオの存在は大きいですが、そうでなかったとしても、
まず、同じ一つの場所で、人間関係を築き上げていくことができない人だし、
時代の大きなうねりみたいなものも感じただろうし、パリはとても魅力的な街
だっただろうし。
俯瞰して見てみると、あの時のあの選択がなかったとしても、すこし遅れただけで
結論は同じ、ということは人生にはままあることかもしれませんが。
凝縮された時間、そこに継ぎこまれたハンパじゃない情熱と苦悩と喜び‥そんなもの
全部ひっくるめて、私たち(私は、かな)はゴッホの絵が好きなんじゃないでしょうかー。
今展の目玉はチケットにも使われている「糸杉」ですが(冒頭写真の真ん中)、
私は、こちらの「薔薇」がとてもよかったです。(会場の壁面広告に使われてました)
静物画なのに、背景で、雲が流れているみたいに白い線が描かれているのに
なんだかじんと感動しました。気持ちが動いているように思えて。
それにしても、上野でゴッホってここ数年で3度目ですねー。
2016年10月~12月『ゴッホとゴーギャン展』
2017年10月~1月 『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』
2019年10月~1月 『ゴッホ展』
ゴッホとゴーギャン展も観に行ったはずですが、ログは残っていませんでした。
あの時は、共同生活を送っていた時に互いの椅子を描いた、その作品が
来ていた気がします。
2020年
あけましてあめでとうございます。
今年も、観たり読んだり出かけたりして感じたことを、細々とでも
綴っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
で。新年最初のお出かけは、こちらの映画鑑賞。
何年か前に大ヒットした時の「アナ雪」を映画館で観ていなくて、
しばらくしてからテレビ放送を観ただけだったので、「2」についても
全然積極的ではなかったのですが、ある方がある場所で、
めっちゃ面白かった! 前作が序章で、2がクライマックスって感じだったのか〜
と、書かれているのを読んで、そうなんだ、この方がそう仰るのなら
ぜひ観なくては!と思ったしだいなのです。
結論から言うと‥
はい、面白かったです。映画館で観てよかったなーと思いました。
ディズニーの映画はその美しさとスケールの大きさと、スピード感が、心地よいと
いつも思うのですが、こちらもまたそうでした。それに歌が、とっても合っていて
それが自然で気持ちよく感じられました。
オリジナルタイトルの「FROZEN」と「FROZENII」に、今更ながら大きく納得。
雪の女王っていうところに、前作の時も、??と思っていたのを思い出しました。
まあ確かにそのほうがわかりやすいし、日本語として美しいタイトルだとは
思いますが。
それにしても最近のディズニー映画の女子はいいですねー
(王子様を)待ってるだけではなく、自分から欲しいものを探しに行くし、自らの意思で
冒険の旅にも出るのだから、って、帰り道に娘と話しました。
「橋にも袂が2つあるでしょ」という、エルサの言葉、姉妹ならではだなと
思い、娘には、姉も妹もいないことが少しだけ切なく、すまん、という気持ちになりました。