近くに住んでいる、ちょうど20歳年上の男の人(Iさん)から、
「今ね、あさのあつこの本を読んでるんだけど、それがおもしろくてさ」と
言われた時には、驚きました。
「え、あの『バッテリー』の作者ですよねえ?」と訊き返し、そうそう、と頷かれ
そこで話はなんとなく途切れてしまったのですが、それから1週間くらいのちに、
家を訪ねる機会があって、そこで「持ってく?」と渡されたカバー付文庫本の
表紙めくってみたら、こんな表紙が現れました。
あさのあつこさん、こういう小説も書かれていたとは!
(不勉強でお恥ずかしいです)
「小説宝石」に連載していた小説が、光文社時代小説文庫から出ていて、
最新作でもう5作目とのこと。
近所に住むIさんが教えてくれなければ、決して自分からは探せなかったなー
と思いながら、お正月休みに、この1作目と、その次の『夜叉桜』を読み、
三連休で、3作目の『古練柿』を5分の4くらい読みました。
北町奉行所定町廻り同心、木暮信次郎
岡っ引の伊佐治親分
小間物問屋「遠野屋」の清之介
一筋縄ではいかない面々が、江戸の町で起こる事件の渦中で、
悩みながら、絡んだ糸をほぐし、真相を明らかにしていく様子は
読み飛ばしたり、読み急いだりできない「手ごたえ」を感じました。
ただの、推理ものでも、捕物帳でもなく、三者三様の「人生」がきちんと
描かれているから面白いのだと思います。
生まれたときから身分も将来の職業も決まっている江戸の世に、
もしも自分が居たとしたら‥ふとそんなことを思ってみました(笑)。
もしも、そうだったら。
そうだ、小間物屋遠野屋で働きたい、赤い襷をかけて、おくみちゃんと
一緒に奉公しよう、と思いました。
遠野屋さんって、こんなお店なんです‥。
吹き込んでくる風に涼やかに鳴る風鈴。季節に合わせた小物をずらりと
並べた棚。毛氈の上で煌めく簪、櫛、笄。丁稚の安吉と末助が店先を掃いている。
帳場では喜之助が大福帳を睨み、その後ろを信三が急ぎ足にすり抜けていく。
おくみが赤い襷をかけ、おしのに茶を運んでいた。
江戸の町娘になってみたいと思うのも、読書の楽しみ♪
今年も、いろんな本に出会って、いろんなセカイに飛びたいですねー。