2月の「はじめましての絵本たち@こひつじ文庫」で、早々とこの図録を
手に入れて、4月6日からはじまる展覧会へ行く気満々だったのに、
実際に行ったのは5月19日だったので、前半の展示は見ることが
できませんでした。
佐々木マキ見本帖 武蔵野市立吉祥寺美術館
吉祥寺は、いってみれば川口から全然遠くはないのに、人が多いことを
真っ先に思い浮かべてしまって‥。前半の展示の目玉は『やっぱりおおかみ』の
原画で、全部揃ってました、と聞いたときは、やっぱりガッツだせばよかったと
思いました。
私が友人と訪れた5月19日は、ギャラリートークが14時からあった日で、
ひととおり見終わった後だったので、どうしようか‥?という雰囲気を互いに
醸しつつも、口には出さず(笑)、そのままなんとなく聴くことになったのですが、
ほんとうに聴くことができてよかった、と1時間後にはどちらも思うことができた
よい内容でした。
話し手は、長く福音館書店で編集をなさっていた方で、佐々木マキさんとも
趣味があい、個人的にも親しくしているとかで、マキさんのお人柄を親しみを
こめて話してくださいました。
トークを再現することはできませんが、美術館入口横のテレビモニターで
マキさんご自身が編集されたビデオが流されていて‥それを展示の前か後かに
観ると、元編集者さんが話してくれたこととも重複しているので、とてもお薦めです。
私が佐々木マキさんのお名前を知ることとになったのは、春樹氏の本の装丁を
またこの人がしているなあと、意識したことからでした。
春樹氏は佐々木マキさんの描くマンガの大ファンで(そう、マキさんの出発点は
マンガなんです)、自分がいつか本を出すことになったら装丁をお願いしようと
決めていたそうです。
私は、娘が幼いときにも、マキさんの絵本を一緒に読んだことありましたが、
『やっぱりおおかみ』を知ったのは、この絵本ブログを始めてからでした。
この印象的なシルエットのおおかみ、初期のマンガ作品の
中にも描かれていました。
マンガを描いていたときは、マキさん、まだ大学に在学中で、そしてその時の先生は、
秋野不矩さん!で、秋野先生が、マキさんを福音館書店の松井さんに紹介し‥
この絵本が生まれたということでした。
(なんかすごくないですか?マキさんと秋野先生の関係‥わたし感動しました)
感動といえば、マキさんの原画の美しさは、もうほんとうに感動ものです。
絵本の原画展にいけば、元々の絵と、印刷された書物ではこんなにも色は変わって
しまうものなのだとわかりますが、今回の佐々木マキさんの原画も、それはそれは
美しく、そしてあまりにもきちんとしているのです。
トークの時にも元編集者さんが驚きながら言ってました。こんなにも修正されて
いない70年代のマンガ原稿はないって。修正ペン(ホワイト)さえほとんど
使っていないのです。
「どうしてこんなに訂正や修正や、描き直したところがないんですか?」と訊いたところ
「失敗したものはすべて捨てて、最初からやり直していたから」とのお応えだったそうです。
佐々木マキさんという方のシゴトに対する姿勢が集約された言葉だと思います。
言葉と言えば、もうひとつとても印象的だったのが、こちらです。
(見本帖をひらいてすぐのところに書いてありました)
心はもちろん大切ですが
わたくしどもの仕事では
見かけはもっと重要です
というのも
見かけに心が出るからです
ー亞里馬々商会主人謹白
佐々木マキさんの絵も、佐々木マキさんという方も、好きだなとおもいました。
「佐々木マキ見本帖」は7月6日から、滋賀県立近代美術館で行われるそうです。
前期・後期と分かれることなく両方の出展作が一度に全部見られるそうです。