my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

内なるヴォイス

2007-10-30 14:01:04 | 好きな本

文字を覚え、自分の力で、それを読めるようになったとき、
ただの四角や棒線に見えていたものに、意味があるのだとわかり、
驚きました。

口 という文字と、川 という文字でした。

いつも通っている道にある、大きな看板に書かれていたのですが、
ある日、突然「読める」ようになってから、まわりの風景が違ってみえ始めた
ような気がしました。

本に出会ったのは、たぶんその頃よりももっともっと小さかったと思いますが、
私が娘に読んで聞かせたようには、残念ながら、絵本に親しんでこなかったので、
幼い自分がどれくらい、本に愛着を感じていたかはわかりません。

でも、きっと、文字を知り、それを覚え、自分の力で本を読むことを覚えた
私の喜びは、そのときには意識はしていなくとも、それはそれは大きかった
のだろうと思います。だからこそ、今の私は本を、こんなにも愛しています。



アーシュラ・K・ル=グウィンの「新しい」三部作、西のはての年代記 に
惹かれるのも、同じ理由からなのかなと思っています。

Ⅰの『ギフト』の<高地>は、文字を持たない人たちの土地でした。
そこへ<低地>から略奪婚のような形で連れてこられたオレックの母は、
息子のために自分の知っている限りのものがたりを語って聞かせ、
布を綴じ、本を作りました。

読み終えたばかりの、 Ⅱ『ヴォイス』は、<高地>からはるか南にある
アンサル国の首都アンサル市が舞台になっています。
アンサルは、学問や芸術の盛んな都市でしたが、オルド人に侵略され
街は破壊され、書物を持つことを禁止されました。書き文字は邪悪なものと
オルド人は考えていたからです。

『ヴォイス』の主人公は、17歳の少女、メマーです。
彼女は生まれたときから、本のない世界に住んでいましたが、
本の存在を知らなかったわけではありません。
ある日、アンサルの市場で、メマーは、詩を朗読するオレックと
ハーフライオンを連れたグライに出会います。
その出会いが、メマーのその後の生き方を変え、アンサルの人たち
運命をも変えていくことになるのですが‥


オレックとグライは、 『ギフト』から20年たった夫婦として描かれています。
新しい舞台アンサルの様子や、生き生きとした17歳のメマーに夢中に
なりながらも、私は、あの若かった『ギフト』の頃のふたりが、20年の月日を
ともに過し、西のはての国々を訪ね歩いてきたその時間に、気持ちの多くを
寄せました。



ものがたりを語り、文字として残し、本となったものを後の人たちが読むー。

それを、あたりまえのことに思える世界に生きていることを、しあわせだなと
思う気持ちを忘れないようにしたいです。


   ヴォイス (西のはての年代記) (西のはての年代記 2)
            『ヴォイス』
        アーシュラ・K・ル=グウィン 作
            谷垣暁美 訳






上に書いたことと、直接の関係はないのですが、本文の中にこんな記述が
ありました。(すこし長いのですが抜き出してみます)


男は女に比べると、人間を生身の肉体をもつ命としてではなく、
数としてー頭の中の戦場で思いのままに動かす、頭の中の
おもちゃとしてーとらえがちなのではないだろうか。この非肉体化によって、
男たちは快感を感じ、興奮し、行動したいから行動するということを
何とも思わなくなる。その場合、愛国心とか名誉とか自由とかいうのは、
神に対して、そのゲームの中で苦しみ、殺し、死ぬ人々に対して
言い訳するために、その快感に与える美名に過ぎない。こうして、
そういう言葉ー愛、名誉、自由ーは、ほんとうの意味を失い、価値が下落する。
すると人々はそれらの言葉を無意味だと見下すようになり、詩人たちは、
それらの言葉に真実の意味を取り返してやるために、奮闘しなくては
ならない。



ル=グウィンさんは、ご家族で、アメリカのオレゴン州に住んでいるそうですが、
自国への憂いと怒りをもった「詩人」の代弁に、私には思えました。






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うちにもきたスピンドル

2007-10-23 11:06:03 | 好きなもの・工房からの風

10月20日(土)、21日(日)に行われた、今年の「工房からの風」


素晴らしい天気に、人の賑わい。

文字とおり、それぞれの工房から気持ちのよい風が吹いてきて、
その風が、ほっぺたをすり抜けていく心地よさを思う存分感じ、
そして、吸い込んできました。


さて、今回は初めてワークショップに参加しました。磯敦子さんによる
「綿の手紡ぎ」です。

冒頭の写真は、磯先生に、娘rが教えていただいているところです。

娘とともに私も申し込み、ふたりで先生のすぐ隣に陣取り、真剣に説明に
聴き入ったのですが、二人とも、器用でないうえに飲みこみが悪いので、
何度やっても、初めてのスピンドル(綿から糸を紡ぎ出す長いかぎ針のような
道具です)がうまく使えません。
綿を引き出すことができなかったり、太くなったり、すぐに切れてしまったり。

でも、持ち前の根気と強力な助っ人(夫)の登場で、rも私も、
なんとか最後には、糸らしきもがすこしだけできました。

それにしても‥
萩原さんの急須組み立てのデモンストレーションを半分以上見てから
やってきて、rが、何度目かの「やり直し」を敦子先生にしてもらうのを
隣でみていただけなのに、なんで夫のほうが、「できる人」の感じに
なっていたのか不思議です。まあ器用な人はそんなもんなんでしょうが‥。

こんな私たち親子、夫婦のやり取りをそばで見ていて笑いながら
てきぱきと教えてくださった敦子先生、ほんとにありがとうございました。


ワークショップで使わせていただいたサクラとケヤキのスピンドルは
希望者にはその場で販売してくださるということで‥
rの紡ぎかけがくっついたままの「ケヤキスピンドル」が、うちにやってきました。
今年の工房からの風の、いちばんの思い出とともに。


帰宅してからすぐに糸紡ぎを始めたrは、見る見るうちにコツをつかみ
「もうママよりうまいかも」と自信たっぷりに、紡ぎ作業に専念。
ワークショップでの、毛糸のような太い塊がうそのよう。
あー敦子先生にお見せしたいです(笑)。

スピンドルをちっとも貸してもらえない私は、さっそくの皮算用。
できあがった糸で何を作ろうか、妄想が膨らみます。
私たちが紡いでいたのは、練習用のふとん真綿なのですが
先生に伺ったところ、十分に煮沸して縒りを強くしてからだったら
織ったり、編んだりに使えるそうなのです。
(今頭の中では、藍の生葉で染まった薄いグリーンの糸が
風にそよそよ泳いでいます・・・)






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あきいろのホネホネさん

2007-10-19 18:11:44 | ひらきよみ(読み聞かせ)

今日は1年生のクラスで「ひらきよみ」がありました。
選んだのはホネホネさんシリーズの秋ヴァージョン。

           
    
    『あきいろのホネホネさん』
       にしむらあつこ 作


こどものとも年中向きの、2004年11月号です。


ホネホネさんは、ゆうびんやさん。ギコギコキーッと音がする自転車で
今日もまちのみんなにお手紙や小包を届けます。

家にあるのは、この「あきいろの~」と「はるかぜの~」の2冊なのですが、
どちらにも登場するニョロコさんが、私のお気に入りです。
もじゃもじゃばやしの つちのなかアパートの207ごうしつ 
ニョロコさんは音楽を聴きながら、ミシンでお洋服を作っています。
壁にはちょっとおしゃれなポスターが貼ってあったりして。


表紙を見ただけで、1年生は「ホネホネさんだあ、知ってる!」とか
「でも、この黄色は見たことない」とか、言ってくれたので、ホネホネさんが
とっても人気者であることがすぐにわかりました。

誰かから、自分宛てに、お手紙や、荷物が届くのって、
子供だって、大人だって大好きですものね
~。


ホネホネさんシリーズの、もうひとつのお楽しみは、ガールフレンドの
ホネコさんとの進展具合 
はるかぜの~が出た、2002年6月号では、ホネコさんから木イチゴ摘みに
誘ってもらい、裏表紙には、二人が仲良くお弁当を食べている様子が
描かれていました。

それが、2004年11月号では、なんとホネホネさんは、まちのみんなに
ふたりの結婚パーティの招待状を配っています。めでたくゴールインですね。
裏表紙をよく見ると、ふたりにそっくりな「ホネミちゃん」と「ホネタくん」まで
登場しています。


本の最後の方で、ぼくたちのけっこんパーティをします と読むと、
何人かから、「けっこん!」 「けっこんだって!!」と、驚いた声がもれ、
結婚っていう言葉にこんなに反応しちゃう1年生って、なんてかわいいと
思ったのでした。


※                
   


   



※印をつけた3冊は、ハードカバー版がでていますが、
「あきいろのホネホネさん」と「ホネホネさんのなつまつり」2006年7月号は
こどものとも年中向きのみです。



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チョコレートブラウン

2007-10-18 16:32:06 | 好きなもの・Tシャツ

新柄・象Tのもう一色は、こんなチョコレートのような茶色です。

印刷をするときに、スクリーンの上部にたっぷりめのインクを、まず置いて
そこから、スキージーという道具を使って刷るのですが、そのインクが
凄くつやつやしていて、まるでチョコレートみたいだね、と言ったところから
「チョコレートブラウン」という名が決まりました。

ちなみに、私が熟した柿の実色と言ったあの夕焼け色は、店長曰く、
「エクセレントオレンジ」とのことです。





この絵柄なら、断然「エクセレントオレンジ」の方がいい、と思っていましたが
チョコブラウンも、なかなかいい感じ♪ に出来上がりました。
(この写真は、ハンガーにかかっているところをただパシャッと撮ったので、
色とデザインの参考程度で見ていただければと思います)







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象Tの背中

2007-10-16 14:55:28 | 好きなもの・Tシャツ

新柄・象Tシャツのバックは、こんなふうになっているんです。

フロントの絵柄は、パペットTの時よりも小さくまとまった感じで。
それに対して、背中のロゴは肩から肩へ広がるように、プリント
されています。

背中のロゴ 大きくて派手かも、と見えるかもしれませんが、
着てみると、それがそうでもなく、かっこいいんですよ~。

でもお好みがあると思いますので、背中は白が好き、という場合、
どうぞご相談ください。


チョコレート色もデザイン、サイズともに同じ展開になります。


(キッズTとレディースT
のサイズ関係はに記してあります)

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熟した柿の実色

2007-10-13 17:20:39 | 好きなもの・Tシャツ

秋も深まろうとしているこの時期に、せっせとTシャツ作っています。

新しい柄は、土星をまわしながら、玉乗りしている器用な象くんです。
版画シリーズの第2弾ということになります。
(写真は、それぞれのTシャツの半分までの印刷がおわったもので、
まだ完成品ではありません。)

レディース用のTシャツは、だいたい私の意見が8割方採用されるので、
とても真剣に、何度も何度も、自分の頭と心の中をのぞきこみます。

どんな絵で、どんな色‥?
柄の位置は…? どんなふうに着てみたい、などなど。

今回の絵は、パペットTを作った頃から、次はこれだね、とほとんど
決っていたのですが、全体のデザインができたあたりから、色のイメージが
私のなかで膨らんできて‥そして、こういう熟した柿の実のような深い朱色
となりました。


もう一色、「おいしそうなチョコレート色?」というのも頼んであります。

キッズTも、140㎝サイズと150cmサイズがあるので、
親子Tシャツにもなりますよ。





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どんぐりバッグ・追記

2007-10-12 10:45:04 | 好きなもの・ちくちく

 あんなにがんばって刺したステッチが、昨日の写真では
ほとんど見えてないと思い、また今朝撮ってみたのですが、
やっぱりあんまり見えてないかも。

    

 針と糸がいつものより太かったため、右手の親指と人差し指には
タコができるかと思いました。(すごく力を入れていたから)

 でも、すごく楽しかったからいいのですが。



 このバッグは、今日入院したアイ子ちゃんに(正確にはアイ子叔母さん)
ちょっと下の売店まで、の時に使ってもらおうかなあと思っていたのです。
 アイ子ちゃんは、私の母の一番下の妹なので、私が子どもの頃は独身で
そのときの呼び名のまま、今に至っています。

 アイ子ちゃんは、とっても縫い物、編物が得意で上手。息子さんご夫婦と
お店をやっているのですが、そこで使っている座布団やのれんや、
トイレペッパーホルダーなど、すべてアイ子ちゃんが作ったのです。
 子どもの頃は、アイ子ちゃんの家に行くのが楽しみでした。だって、
自分の家にはない、手づくりのクッションやら、パッチワークの作品やらが
あったし、器好きのだんなさんが集めたコーヒーカップ(1点もの)が
リビングの棚に並んでいて、好きなカップを選んだりすることができたの
ですから。
 そんなアイ子ちゃんだから、私や私の妹が、何か手づくりのものを見せると
それはそれは誉めてくれて、とても「見せがい」があるのです。

 アイ子ちゃんの病気は乳癌ではないのだけれど、やはり女性しか‥のもの。

 
 でも、きっと手術もうまくいって、1ヶ月くらいで退院できるかもしれないから
そうだ、クリスマスリースを作って、それを家に持っていこう、と今朝思いつきました。

 やはり、天気がいいと、明るくてよい考えが浮かびます。




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どんぐりバッグ

2007-10-11 11:17:36 | 好きなもの・ちくちく

 3連休の最終日はあまりよい天気ではなかったので、作りかけの
ものをちくちくしようと、朝は思っていました。

 しかし、急に作るものを変更して、新規でこんなものを3日かけて
作ってしまいました。
 最初は、麻紐を編んで、蓋付の小物入れにしようと思っていたのですが、
麻紐が足りなくなってしまい、それならば、小物入れはやめて得意の(?)
バッグにしようと思ったのでした。

 下の麻籠の分量に対して、布部分がたよりない感じになっているなあと
布を切ってから気が着いたのですが、いまさら中にキルト綿をはさむことも
できないし‥で、リネン混じりの糸があったので、それでキルティングする
ことを思いつきました。(すべての作業が思いつきと、家にあるあり合わせの
材料で進んでいます‥)

 先週までの私だったら、きっとここで、/のラインとか、格子状に
ちくちくしていったと思うのですが、日曜日に資生堂ギャラリーに行った
私は、変わりました(笑)。
 気持ちのおもむくまま、針の行きたい方向へと、自由に曲線を伸ばして
いこうと思ったのです。この作業の楽しかったこと!糸がなくなったら
そこで玉止めを作ったのも、かわいくて。

 籠と布を縫いとめたときに、すでに気配は表われていましたが、
ここで正式に「どんぐりバッグ」と名前がつきました。
(内側はこんなふうになってます。)


 

 どんぐりバッグ。形がどんぐりに似ているだけじゃなくって、
どんぐり拾いに活躍しそうだから、でもあるのです。麻紐で編んだ
底には、たっぷりどんぐりが入る予定です。



 
        *  *  *  *  *  *  *




 
 でもでもほんとうは、3日で仕上げたのには、別の理由がありまして。
14日(日)にお見舞いへ行く時に、何か作ったものを携え、渡したいと
思ったからだったのです。が、手術前には気持ちが落ち着かないので、
ひとりで居たいという電話が今朝あり、お見舞いは延期となりました。

 時間の余裕ができたので、また新たなちくちくを考えるということにして、
どんぐりバッグは、やはりどんぐり拾いのお供にしようと思っています。

 ピンクリボンにしていたテンプレートをまた戻してしまったのは、単純に
こっちのほうが自分にとって見易いからで‥気持ちにはいつでも大きな
リボンがきつく結ばっています。




 

 

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アフリカン・アメリカン・キルト展@資生堂ギャラリー

2007-10-09 15:25:10 | 好きなもの・美術館や展覧会

 3連休の真ん中の気持ちの良い秋晴れの日、久しぶりに銀座へと
出かけました。

 「アフリカン・アメリカン・キルトー記憶と希望をつなぐ女性たち」展
見るためです。

 アフリカン・アメリカン・キルトとは、アメリカ南部諸州に暮らす
アフリカ系女性が作るキルトのことで、同じ「アメリカン・キルト」でも、
ヨーロッパ系の人々が作る、伝統的なパターンを縫い合わせた端正な
キルトとは、まったく異質なものだと、説明にありました。

構成、色使いともに型破りで、ダイナミック、即興性が特徴だそうです。



 実際に目にする前は、ローラ(大草原のちいさな家の)のお母さんや
おばあさんたちが作ったものと、どう違うのだろう、と思っていました。

 実際に目にしたら、そのなにもかもが違っていました。

 同じなのは、貴重な布を、大切に繋ぎ合わせるというスピリットだけでした。



 たいせつなことは、精神〈気持ち)の伸びやかさと自由なのだと
壁に大きく広げられたキルトは、教えてくれているようでした。

 端がまっすぐかとか、三角形の角がピンとしているかとか、
左右対称にするためには、同じ色を入れなければいけないとか。
いろんな決まりごとや技術に縛られて、最初に「作りたい」と思った
ピュアな気持ちを、忘れるようなことがあってはいけないのです。


 それにしても、大胆な色の組み合わせは、どこからやってくるのでしょう。

 展覧会の説明ページでは、強烈な色彩、ふぞろいの針目が誘う躍動感、
即興性、をアフリカにルーツをもつ、音楽のジャズになぞらえていました。
太古からの血の中に、リズムが刻み込まれ、それが音楽に表われたのと
同様に、キルトにも表現されたということなのでしょう。私はそう理解しました。
アフリカ系の人たちは、ただ「歩く」という動作の中にも、リズムを持って
いますもの。


 
 キルトは、アートなのかそうでないのか、という問題があるそうです。
私は、見る人の心に感動を残すという点では、名もない女性が
家族のために作った生活用品であっても、十分アートだと思うのですが、
そうではないと思う批評家も居るそうです。

 今から60、70年も前に、ちくちくとひと針ひと針縫っていた女性たちは
アートだって、アートじゃなくたって、そんなことどっちだっていいのよ、と
きっと笑いとばすだろうなあと思いました。実際の作品を見ていると
そう思えてきてしかたありませんでした。
 
 そして、言葉にならない励ましをもらっているような気さえしました。
だいじなことは、ひと針ひと針縫いすすめること。
一歩、一歩、歩き続けること‥。





       ‥     ‥    ‥    ‥


 

 銀座7丁目ライオンでのお昼ご飯をはさみ、そのあと日本橋へと
足を伸ばしました。ヒナタノオトさんへ行くためです。

 前回おじゃましてから半年以上もたっていたのに、季節をふたつ
飛び越したとは思えない親密さは、決して、ブログで日々の様子を追って
いるからだけではないでしょう。

 端正なポットの作り手である、萩原千春さんの作品展2日目は
見応え十分であると同時に、とてもリラックスできる空間でもありました。

 

 10月20日、21日には、今年も「工房からの風」がひらかれます。
千春さんが、実際にポットを組み立てる様子を見ることができるそうで、
今からとても楽しみにしています。(あ、それとどんぐり拾いも)







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ぼくのコブタは、いいこでわるいこ

2007-10-05 18:06:24 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 今日から2学期の「ひらきよみ」が始まりました。
5年生の3つのクラスからです。

 私が小学校での図書ボランティアを始めたのは、娘が小2の時で、
1学期の間は図書整理だけを、2学期になってから読み聞かせデビューを
果たしたので、ちょうど丸3年が終わり、今日から4年目に入ったことになります。


 選んだのは、マーガレット・ワイズ・ブラウン作のこの本です。

     ぼくのコブタは、いいこでわるいこ
        『ぼくのコブタは、いいこでわるいこ』
      マーガレット・ワイズ・ブラウン 文
     ダン・ヤッカリーノ 絵   灰島カリ 訳



 鮮やかなピンク色は、ワイズ・ブラウンさんの本ぽくないけれど
むかしのアメリカの絵本みたいでいいかも、が私の第一印象でした。

 
 主人公のピーターは、コブタが飼いたいとママに言い、農場の
おじさん宛てに手紙を書いてもらいます。ピーターがリクエストしたのは
こんなコブタです。

   
   ちいさすぎなくて、でも
   おおきすぎない コブタが いいな。

   いいこすぎなくて、でも
   わるいこすぎない コブタが いいな。

 
 悪い子だと一緒に暮らすのが大変だし、でも良い子過ぎても
男の子の遊び相手としてはものたりない‥
ピーターはとても上手な頼み方をしたなあと思います。

 

 どんな子も、いい子であると同時にわるい子でもあり、
わるい子のところがあるから、いい子のところがいとおしいものです。

 大人である私たちにできるのは、勝手に決めつけないで、
いろんな角度から見つめ、いろんないいところを見つけることなのでしょう。

 

 

 この作品は、マーガレット・ワイズ・ブラウンさんの未発表作品で、
日本では今年の7月に発売された新しい絵本です。(アメリカでは
2002年に本になったようですが…)
 ワイズ・ブラウンさんにも未発表作品なんて、あるのですね~。
それを見つけてきて、1965年生まれのダン・ヤッカリーノさんに絵を
描いてもらうなんて、なかなか楽しい企画ですよね。



 

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ゴーシュ

2007-10-03 17:41:23 | 好きな絵本

 秋に読みたい、音楽絵本‥

 オーケストラの本を紹介したあとには、ピアノにするか、チェロにするか
迷いましたが、やっぱりチェロが先かなあと思い、『セロひきのゴーシュ』
にしました。

 セロひきのゴーシュといえば、茂田井さんが絵を描いた

セロひきのゴーシュこの本が有名だと思いますが。

 

 私は、こちらを↓を選びました。

 セロひきのゴーシュ
      『セロひきのゴーシュ』
    宮沢賢治 作 ささめやゆき 絵

 
 お話は、私が紹介するまでもなく、よく知られていると思います。
 最初に、文章だけの本から入った場合と、絵本から知った場合では
ゴーシュに対するイメージの持ち方がずいぶん違うかなあと思いました。

 私は、お話のほうはうろ覚えで、ささめやゆきさんの描いたゴーシュを
読んだので、すごくすごく、ゴーシュのイメージと絵があっていると
感じているのですが、茂田井さんの描いた、やさしくて知的な感じすらする
ゴーシュを先に読んでいる方は、おなじひとつの話でも、受け止め方が
大きくちがってきているのかなあと想像しています。

 

 ささめやさんの、表紙に描かれているゴーシュは、すました顔で
一心にチェロを弾いていますが、その生活ぶりはなかなかの破天荒だし、
最初から「やさしくていい人」でもありません。
 演奏の合わせがうまくいかず、楽長に叱られ、きっとおなかもすいているし。
そんなところに、突然ねこが、ゴーシュの畑から持ってきたにちがいないトマトを
「これおみやげ」です、とかなんとか言って訪ねてくる‥
ゴーシュじゃなくったって「切れて」当然の展開なのですが。

 その「切れた」ときのゴーシュ、ささめやさんの絵はすごく迫力があるのです。
こわいです。ガラス窓を蹴破って、かっこうを外に出してあげた場面なんか
ぱりーんというガラスの音と、そのあとから入ってきたすきま風の音が
聞こえてきそうです。

 ねことの場面でも、たぬきとの場面でも、ねずみの親子とのときも
いつでもゴーシュは全力です。自分の音楽に向き合うとき同様、
すこしも手を抜きません。動物だからといって、適当にあしらったり
しないから、激しい感情が、怒りとなって表れてしまうし、逆に、動物から
学ぶべきところは、素直な気持ちで受け入れています。

  おしまいまでひいてしまうとたぬきの子はしばらく
  首をまげて考えました。
  それからやっと考えついたというようにいいました。
  「ゴーシュさんはこの二番目の糸をひくときはきたいに
  おくれるねえ。なんだかぼくがつまづくようになるよ。」

  ゴーシュははっとしました。たしかにその糸はどんなに
  手早くひいてもすこしたってからでないと音が出ないような
  気がゆうべからしていたのでした。

 
 ゴーシュの激しさは、音楽への情熱なのだと、読者である私たちに
ストレートに伝ってきます。だから、私はささめやゆきさんが描いた
(すごくこわい)ゴーシュが、イメージに一番近いゴーシュに思えたのだ
と思います。

 そしてこの本で、はじめて「セロひきのゴーシュ」っておもしろいと
思えたし、ゴーシュが好きになりました。





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