図書館の本棚をぐるりとまわって、なんとなく借りた本が面白かった時、
ちょっと得したような、嬉しい気持ちになるものです。
好きな作家の本は、偶然出会ったとは言えないけれど、それでも
「なんとなく」気分でえらんだときは、口元がほころびます。
小川洋子さんの本は何冊も読んだけれど、この本が家族の物語であるということも、
時代的に、私の少女時代とまるかぶりなことも、何も知らないで借りました。
読み終わってから、表紙をあらためて見ると、ああここにすべてが集約されて
いたのだなーと感心してしまいます。
ミュンヘンオリンピックの頃に、芦屋の大きなお屋敷に住む、喘息持ちの少女ミーナ。
いとこの朋子は、母の都合で1年間このお屋敷でお世話になることに。
二人の少女の、1年間のものがたり。
ミーナの体の弱さや、ミーナがマッチ箱に描き出す小さな物語に、ふと嫌な予感を覚えた
箇所もあったけれど、他の作品のオガワヨウコ的世界ではなく、ミーナは
コビトカバのポチ子に乗って、小学校まで通ったときのように、力強く、自分の人生を
「行進」していったのでした。
いい意味で、裏切られて、よかったです。
家族のものがたり、って、好きだなあとしみじみ思いました。
今年は、昨年より、多くの本を読みました。
小説もファンタジーもYAもエッセイも時代物も、色々。
3年越しで停まっているわたしのものがたりも、来年こそは完成させようと
ここに記して、2016年を終わります。
どうぞよいお年をお迎えください。
一年間、ありがとうございました。