今週はずっと、初夏を思わせる天気が続いていたので、今日の雨は気持ちを落ち着かせるのに、
ちょうどいいかもしれません。仕事や学校が始まる、週明けの月曜日に雨が降ると嫌だけど、
週末の金曜日の雨はそんなに悪くはないのかな。
久しぶりに紹介する本は、『よあけ』や『ゆき』で有名な、ユリ・シュルヴィッツの絵本です。
図書館で偶然見つけ、読んでみたら、私の「大好きなもの」が2つも入っていて、
たちまち好きな絵本になりました。
『あるげつようびのあさ』
ユリ・シュルヴィッツ 作 谷川俊太郎 訳
大好きなもの、ひとつめは、お話の中の街がニューヨークであるということ。
絵本に限らず、小説でも、映画でも、テレビドラマでも、ニューヨークが舞台になっている
というだけで、大抵のものは好きだなあと思ってしまいますが、この絵本は、読み進めていくうちに、
主人公の「ぼく」がどこに住んでいるのか‥通りの名前や、ビルのある番地まで‥が
自然にわかってくるという仕掛けつきです。
ふたつめの、大好きなものは、話を最後まで読んで、そこに描かれている絵をみると、
あれ もしかしてこれって‥と、最初のページを開いて確かめたくなるような、そんな構成に
なっているお話です。
扉に描かれた題名の下に、丸く切り取られたような絵があって、そこには降りしきる雨と、
建物がすこしだけ見えています。
ページを繰ると、街灯がひとつ。
また繰ると、さっきの雨降りの丸がすこし大きく描かれ、次の見開きページには、
雨降りの街が見える窓辺の絵が左側に。その窓辺がさらに大きく描かれた右側の絵には、
主人公の「ぼく」が居ます。
窓枠には、シルエットになっているお人形‥?
あるげつようびのあさ
おうさまと、
じょおうさまと、おうじさまが、ぼくをたずねてきた。
でもぼくはるすだった。
おうじさまはいった、
「そんならかようびにまたこよう」
トランプの絵柄がそのまま抜け出てきたような、王様と女王様と王子様が、自分で傘をさして、
ニューヨークのソーホーを歩いているのです。(たぶん)ぼくに会うために。
「ぼく」はそんな人たちが会いに来ていることを知らずに、バスを待っています。
火曜日。今度は、おうさま、じょおうさま、おうじさまに加えて、きしが、またぼくをたずねてきますが、
でもぼくはるすだった。
だって、その頃地下鉄のDラインに乗っているのですから。
おうじさまはいった
「そんならすいようびにまたこよう」
そうやって、王様たちの一行は毎日ひとりづつ増えてきます。水曜日には衛兵が、木曜日には
王様のコックが行列に加わりました。でも、ぼくは毎日留守なのです。
いよいよ日曜日の朝。8人と1匹にまで増えた王様たちは、「ぼく」に会えるのかな、会ったら、
何の用事があって訪ねてきていたのかがわかるのかなと、期待は膨らみます。
おうじさまが言った最後のひとこと。
‥‥
さすが王家のおぼっちゃまは言うことがちがうなあ、と私はへんに感心してしまいました(笑)。
一行が去った「ぼく」の部屋の窓からは、晴れた空と、ビルが見え‥。
あれっ? 窓枠にのっているあの人形はもしかして、と慌ててページを戻してみたくなるのです。
そして、テーブルの上にはちらばったトランプが‥。
物語のはじまりが月曜の雨の日で、物語のおしまいが日曜の晴れた日なのは、
ちょっと出来すぎていて、ステキだなあと思ったのでした。