おばさんがアイドルの映画を見るのはさすがに恥ずかしくて、娘を連れて行った
「メッセンジャー」が草彅剛さんの映画初見。1999年の映画だから21年前か。
それ以来「中学生丸山」のほかは全部観ている、と思う。
たくさん観た作品の中で私の好きなは「山のあなた」と「任侠ヘルパー」。
劇場で2回は観ている。なんといっても、
草彅さんの演技力を引き出して魅力たっぷりなすばらしい映画になっていたからね。
そして最新作「ミッドナイトスワン」
好きだ、そうでもない、物足りないなどの範疇に入らない形容しがたい作品に仕上がっていて、
いまだに余韻に浸っている。後を引きずっている。
いや、むしろ鑑賞した後の方がじわじわと感動が押し寄せてきている。
この映画はドキュメンタリーかと思いたくなるほど、凪沙や彼女を取り巻く人たちが、
今も新宿という街で日々いろいろな葛藤を抱えながら暮らしているに違いない、
と思わせてくれる。
トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱えている凪沙と、
親から愛を注がれずに育ちながらもバレエダンサーを夢見る少女・一果の姿を通して、
現代の家族愛の形を描く。
あなたの母になりたい―
陽の当たらない場所であたたかな愛が生まれる。
キャストそれぞれ演じた役がピタッとはまって1枚の美しい絵を描き出した映画だった。
水川あさみさんは、インタビューで
「自身をさらけ出すことを厭わないキャスト陣が揃っている中に飛び込むことができた
というだけで、役者としてこれほど幸せなことはないだろうなと感じました。」
と語っている。
そう、どの俳優も演じていない、俳優としての等身大の自分を見せているだけ。
(写真はすべてweb借用)
内田英治監督は、草彅さんには何の注文も付けなかったという。
草彅さん自身は、どのインタビューでも答えている。
「演技をしないことがいちばんの役作り」
「芝居をしていることを意識しない、役そのものとして生きる」
バレエ教師役の真飛聖さんは、
「ナチュラルでナチュラルで」と何度も言われたそうだ。
母親役の水川あさみさんは、
「例え画面上に映ったとしても、観客からは“水川あさみ”と分からないようにしてほしい」
と注文されたと言う。
そして、重要な一果役の服部樹咲(新人)ちゃん。当時はまだ中学1年生。
オーデションで選ばれたそうだけれど、彼女が踊るバレエシーンの美しいこと。
一気に浄化される、ずっと見ていたくなる。
表情だけで見せる存在感抜群の女優さんになっていた。
私がバレエ『白鳥の湖』『アルレキナーダ』の内容を理解していたら、この映画を
もう少し深く理解していたかもしれない。
タイトルが『ミッドスワン』ですものね。
ともかく、凪沙の草彅さんが化粧をしていく冒頭のシーンからすぐにこの映画に
引き込まれていったわ。
バックに流れるピアノ演奏。澁谷慶一郎さんの音楽がさらに盛り上げる。
雑多な街のちょっと暗めの映像がとても美しい。
そうそうカメラマンが「任侠ヘルパー」の人で、
どうしても剛君の目をアップで撮りたくなると言ってたけど、
そうなの、目の演技ですべての感情を物語っているわけ。
心に突き刺さったセリフ
「人生は一度落ち始めると止まらない」
「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きて行かなきゃいけんけえ・・・
強うならんといかんで」
そして何とも長い予告映像。時間がありましたらこちらをご覧になってくださいませ。
映画『ミッドナイトスワン』925秒(15分25秒)予告映像