まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

あたしはあたし 『おんなの絶望』

2015-11-15 07:43:01 | 

父の生きる」を読んでからすっかり伊藤比呂美さんが好きになった。
で、次に読んだのが『人生相談 比呂美の万事OK』 
すまぬ、人生相談なのに笑ったりして。でもどこかなんかおかしいのよ、突き抜けてて。
なにしろ万事OK、だから相談ごとはともかくもう全部肯定、から始まる。なかなかできることじゃないわ。
だからかしら、評判が良くて10数年も続いているって。
もちろん肯定しているだけじゃないけど、しっかり比呂美さんの考えを展開しているけど。

孫があちらのお母さんのほうに懐いて、二人でいると自分には来てくれない。
自分ひとりの時は懐いてくれるけど、運動会などで両家がそろって見に行くとあちらのばあばのところに行って
自分は見向きもされない、淋しくて嫉妬します、なんて相談(メモがないからうろ覚え)。
私、ちょこっと笑ったの、そんな気持ちになることがあるんだあって。

そうしたらあったのよ。
正月は一家揃ってお泊りに行こう、と持ちかけたら「お母さんに言ってなかったけど正月は広島に行く予定立てたのよ」
だって。私は内心面白くなかったね、こらえたけど。ほんと、はい。

比呂美さんの回答、分かります分かります、嫉妬は苦しいですよねえ。
運動会に行くのはよしなさい、用事があるとか何とか言って。
家にいたら嘘になるから、温泉にでも行ってらっしゃいって。
いいわあ、そんな解答。すっかり気が楽になっちゃう。

そして図書館で手にした3冊目が 『女の絶望』 ちょっと大げさな書名ね。って。
上にあげた身の上相談が下敷きになっていてそれをより深く考察したのが本書。
全編これ「あたしは、レム睡眠の時も、あたしでいたいんです。」の精神で貫かれていて。
伊藤しろみさんが回答。この本では「しろみさん」なの。 

十年前は、あたしは海千でも山千でもなくて、え、海二十山二十くらいだったから、人間は話し合えばわかる
てぇ理想主義でありました。学級会の引き続きみたいな夫婦がありえると思ってました。
あれからとことん苦労して、今はもう現実が、ずぅゥンと身にしみてェる。そんな夫婦は、ありえない、と。

夫婦だからこそ、話し合えない。
話し合えるのは、おみおつけの実は何がいいかカレーの具は何にするか、くらいなもんだ。
多数決で解決は、もともと出ない。ふたァりっきゃいないんだから。どちらかが我を通してどっちかが譲るしかない。

そうよそうよ、しろみさん。
そりゃあ、何十年も夫婦やって来たから分かる分かる。よその夫婦は知らないが。
夫婦の会話はどうでもいい話題に限る、どうでもいい話題で盛り上がって笑っているのがいちばん。
たまに孫の話題でも出してしみじみするのもこれまた、よ。

寂しいと向き合った生活のその寂しさとはなんだろう。
老いますと、人間関係がどんどん少なっていき、ドンドン寂しくなっていきます。
夫でもぞうきんでも、いたほうがいいのが、老後に向かうということだと思うんです。
「老後は、夫でもぞうきんでもいいからいっしょにいたほうがいい」

「あたしはあたし、人は人」
今まで十年、身の上相談に答えてきて、なんべんこれをくり返してきたことか。でもむずかしい。
これを使いこなすのァ「がさつ、ずぼら、ぐうたら」よりむずかしい。
「あたしはあたし」と思い、「あたしがいちばん大切」とはっきりおもえるようにならなきゃ、「人は人」へ、たどりつけない。

そうよそうよ、しろみさん、その通り。
「あたしはあたし」と言われたって、浮世の義理はそうは問屋が卸さない。
夫婦の間でそれをやったら修羅場になる場合もあるだろうし、
友人間で「あたしはあたし」なんて突っ走ったら大事な友好関係にも角が立つことにもなりかねない。
はっきり思えるようにならなきゃいけないのね。そこが大事なのね。

あたしはあたし、あんたはあんた。
こっちが老い果てたとき、家族だからといって、自分の生活を犠牲にする必要は、絶対にない。
看取りはいらない。

でもね、しろみさん。
いくらあんたはあんたでも、私は子供たちに看取ってもらいたいのよ。
1か月でいいから世話してもらって看取ってもらいたい。そして「ありがと」と手でも握ってあちらに逝きたい。
1週間では短い。
看病疲れの前に逝ってしまって、子供たちにお母さんの世話をもっとやればよかったなんて後悔させかねない。
(そんなことないか)
1か月も看病しているといい加減くたびれて、いつまで続くのかしらなんてうんざりされるくらいがちょうどいい。

ねえ。
一人で向き合う寂しさと不満だらけで夫と暮らす寂しさ。「ぞうきん」は、あったほうがましか。ないほうがましか。
路地裏で遊んでいる子供わひとりしっつかめえてそれから悩まないですむように、しみつをしとつ教えといてやりたい。
知ってたかい、大きくなったら、いずれにしても、しとりになるんだよッて。

死ぬときゃ一人。
それが「あたしはあたし」の神髄です。

きっぱりと潔い。しろみさん。凄いわ。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冬の花蕨 | トップ | 違和感あり »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事