友人の話。
野暮用があってオヤジ同級生宅を訪れたそうな。
呼べど叫べど返事がない。首を伸ばしたら、開いている戸の隙間から部屋の中が見えたんだって。
「あんたねえ、それが殺風景なのよ。何にもないの、空気がひんやりしているの。私さあ、我が息子もああなるのかと思うと・・・胸が痛むっちゃ」と豊かな胸に手を当てる。
そっか彼女の長男は40前後で結婚する気配がないもんな。
趣味のドライブをするといったって、九州まで行っても助手席空っぽなんだって。困る。
いつぞや、やはり40前後の長男が結婚しない女子同級生と、
「やっぱり昔みたいに私たちが相手を連れてこんと駄目らんだねえか」ってな話で意見が一致して。
食事時、顔を見ないで、息子さんにそれとなく「連れて来ようか」みたいなことを言ったそうよ。
そうしたら。
話の最中から横目で伺うと苦虫かみつぶしたような顔になって。
「それから、ぶすこいて(佐渡弁ね、怒ってふくれる、とか、いじけるとかの意味)しもたが」だって。
どんくらいぶすこいとったの?と聞くと「1週間くらい口きかんかったや」と言うからおかしいのなんの。
「もう絶対嫁の話なんてしない!」と宣言していたけれど、その口のそばから。
別の知人と息子の嫁の話になったんだって。そしたらその方が、
「ああ安心したっちゃ、寝るときになると、どうするつもりなんだろと息子のことで頭病めてるのん私ばっかりじゃないのね」って意気投合したって。
「あっちにもこっちにも嫁のきてがねえ息子がいっぱい居るがさ」
と結論づけて無理やり一件落着させる。
そんな話を聞くと。
こういっちゃあなんだが、よくぞ我がとんま息子にお嫁さんが来てくれたもんだ、としみじみありがたくなる。
ともかくあのぼんやり息子を預ける人がいることの安心感、何物にも代えがたいわ。
私が気にしている息子の頭の禿げ具合も意に介していない風で、まことにおっとりなお嫁さん。いっか。
そんなんだから、彼女たちの嘆きは分からなくもない、そうよねほんと。
ほらセミの抜け殻だってちゃんと番いでいるじゃないの。それが自然と言うものよ。