まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

断筆します『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』佐藤愛子著

2025-02-10 08:22:32 | 

佐藤愛子さんの本、自身の最後となる本エッセイ集のタイトルに
『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』と付けたのは、借金は返済したけれど、
人生の戦いはやまず、今も日も暮れていない――。
愛子センセイが97年を生きて来た人生の実感です。愛子センセイがヘトヘトになりながら綴った、
抱腹絶倒のエッセイ全21編をぜひご堪能ください、ですって。
ん、確かに抱腹絶倒、いやそこまではいかなかったけれど、にやにや笑ったことは確か。

『九十歳。何がめでたい』がベストセラーになって。
以来いろいろなメディアからのインタビューにのこのこ出かけて行って、
三十代四十代の元気横溢していた頃と同じような毎日になったそうで。
そんなこんなで2017年は暮れ。
大晦日が近づいて来た頃には、「本が売れて何がめでたい」と呟くようになっていた。
というから、にやにやしてしまう。



とにもかくにも静かに暮らしたいー。思うことはただそれだけだった。
明けて2018年の正月をどんなふうに過ごしたか記憶は曖昧である。
日記には「アホのように1日を過ごす」とか「ただボーっとして冬枯れの庭を眺めていた」だけ
そのうち「終日ヘトヘト」という半行だけの日が。
そうかあ、そういうものか、愛子さんにしてそうか、並の私のこのぼんやりはありうるのね、
なんて、おそれ多くも愛子さんの姿を想像してわが身に照らし合わせて、安心したりして。

愛子さんのヘトヘトはレッキとした病気だった「発作性心房細動」」
そんなことの後、今度は昏倒して打撲、それだけで済んで、毎日紫色に腫れ上がった自分の顔を
見るのが無聊の日々の唯一の楽しみになった、とあるからなんともかんとも。
「それにしてもなかなか死なない人だねえ」という娘と孫の会話。ホント、私もつくづくそう思う。
ですって。なんの、愛子さん、2025年の只今101歳、元気です。

老いてからの長い歳月を前向きに過ごすにはどうすればいいか。
そのコツをというコメントを求められて、老人がべつに前向きに生きなければならない
ってことはないんじゃないの。
「もう前向きもヘッタクレもあるかいな」というセリフ。
いいわあ、好きだわあ、そういうところが愛子さん好きなのよ。
私、愛子さんのように啖呵切って威勢のいいことが言えないから、代わりに言ってくれると
すっとしたりして。上から目線で偉そうなこと言いませんものね、好きだわ。

愛子さんの理想とする老後のありようは、小春日和の縁側で猫のノミを取りながら居眠りし・・
というような日を送りつつ、死ぬ時が来るのを待つともなしに待っている、その境地。だそう。
うーん、いいねいいね。私は猫がいないからどうしようかしら。ほったらかしの庭なんぞ
眺めてうつらうつらかね。

 

そろそろ私のもの書き人生も終わりに近いな、とこの頃、しきりに思うようになった。
視力、聴力、脚力、腕力、とみに衰えて、元気なのはよくしゃべる口だけだ。
一番ひどいのは脳ミソで、グダグダに伸びてたるんで色褪せた脳細胞が目に見えるようだ。

丸めた反古原稿が部屋中に散乱している。足の踏み場もない。
書斎の惨状を見て孫がさすがに神妙に言った「おばあちゃん、もう書くのをやめれば・・・・?」
娘さんが信頼するタロット占いの名手は
「書くのをやめたらこの人は死にます」と占ったそうな。

買い物に行く娘さんについて外に出た。新しい医院に導かれるようにして入って。
身体の衰弱を話したついでに、この頃、物書き家業がつらくなってきたので毎日やめようかどうしようと
思いあぐねている、とつけ加えた。するとその医師は元気のいい声で、打てば響くように言われた。
「ダメです!書くのをやめたら死にます!」その後、縷々励ましのお言葉。

帰る道みち考えた。いかにも愛子さんらしいのよ(特に知らないけれど)
死なないために無理やり書くというのも情けない話だ。佐藤愛子は書くのをやめたら死ぬといわれて
怖気づき、白髪頭ふり立てて無理やり書いている。あいつでもやっぱり死ぬのが怖いのだ、
ということになっては雑文家佐藤愛子のホコリが許さぬ。先祖に対して申しわけが立たぬ。
と考えたそうだ。ふふふ、おかしい、つい笑ってしまう。

 (挿絵は全てネット拝借)

断筆することを宣言。

かくして私はここに筆を措きます。見渡せば部屋は床一面の反古の山。これからかき集めて、
メモ用紙を作ります。それで終わりです。

みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります。

2021年 庭の桜散り敷く日

私、佐藤愛子さんの小説は1冊も読んでなくて、なんだか申しわけない。

 


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1 コメント

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101歳! (hanako)
2025-02-10 14:26:22
ニヤニヤ、フフフと笑わせていただきましたが
私、100歳まであと18年!
もうすでに愛子様の境地です。
「ただボーっとして冬枯れの庭を眺める」なんて
もう毎日の事、これが後20年続く?
せめてへっぽこブログを続けるべく頑張るべーです。
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