例の野村證券のインサイダー事件、業界一の内部統制が行き届いていた筈の野村證券で起きたことに、内心、証券業界は狼狽しているのではないでしょうか?
どうしたら再発防止ができるのか?と業界の方々は自問自答し、「今回のようなケースは絶対防止出来ない」と観念しているのではないかと。。。
野村の社長が、「年2回誓約書を取っていたのに」と、つい漏らしたようですが、そりゃ、誓約書をいくら取っても駄目でしょう。そんなことは極めて形式的なことです。サインする社員もそれが形式的であることを先刻ご承知です。
では、一体全体どうすれば、こういった不祥事が防げるのか?これが今日のテーマです。
しかし、筆者もいささか無謀ですね。普通に考えると、悪意を持ってやられたら防止のしようがない問題に、あえて、この休日に何か意見を言ってみる気になるとは。
切り口は、タイトルに書いたようにBISです。
これは銀行に対して行われているBIS規制のことではありません。
Biological Incentive Systemの略です。文字通り、生物に生得的に備わったインセンティブシステムのことです。(BISは、ウィリアム・B・アーヴァインが使った言葉です。)
動物も人間も、何らかのインセンティブシステムに従って行動をしているのではないかとの説がBISという訳です。
目的は、自然淘汰に打ち勝ち、自らの子孫をできるだけ多く残そうという、いわば生物が本源的に持たされているリチャード・ドーキンスの利己的遺伝子戦略の1つと言えます。
さて、野村インサイダー事件であの中国人社員の、自らが生き残るためのインセンティブは何だったのでしょうか?
この場合、生き残るとは、野村社内でのことではありません。あくまで彼が生きているこの世の中での生き残り戦略のことです。
彼は直感的に、自らの仕事を通じて、巨万の富が内々に蓄積出来ると考えた筈です。確かに野村社内では自分が所属する部署では社員そのものが株式トレードをすることを禁じております。そのために誓約書も書いております。しかし、抜け穴は十分にあると見込んだのです。絶対にばれない方法があると。
そこまで確信できたとしたら、後はそれを実行し、野村での報酬に加えて、インサイダーでの裏金を加えれば、これは金銭的にはぼろいことになるのではないかと考えた筈です。一生、優雅な暮らしが出来、「美人妻」をめとり、多くの子孫が残せるのではないかとね。
これが、今回の行動に彼に駆り立てたインセンティブです。
ところが、氷山の一角とはいえ、たまたま、M&A絡みでのインサイダー疑惑の「捜査」を行っていた証券取引等監視委員会が、特定のM&Aに絡んで、特定の中国人の名前が出てくること、そしてそのM&A案件がすべて野村證券が絡んだ案件であったことに気がついたのです。
今回はたまたま見つかりましたが、これからはかなりの確率で見つかることを示せば、こうしたインサイダー事件の多くは「撲滅」される筈です。何故なら、見つかる確率が相当に高ければ、証券会社はもちろん、普通の会社の社員でも、懲戒免職を覚悟してまで、当面の数百万円のお金のためにインサイダー事件を起こそうというインセンティブが働かないからです。
問題防止の鍵はここにあります。誓約書の徹底やら、社員教育には決してありません。社員教育が無駄だとは言っておりません。効果が極めて限定的だと言いたいのです。現にこれまでもこうした教育は、過去に不祥事を犯したどの企業も、教育内容は別にしてもそれなりに行ってきた筈です。
さて、かなりの確率でインサイダー事件が見つかる方策はあるのでしょうか?
それは、今回、証券取引等監視委員会がたまたま発見したやり方にヒントが潜んでいると筆者は思います。
いくつかの条件を組み合わせば、そして、うまく名寄せさえ出来れば、今回のケースのように確率的にはあり得ないような人物があぶり出されてくるのです。
これを業界全体でシステムを構築して行う以外には対策はありません。
データベースは各証券会社が持っている口座開設者の個人情報と取引情報です。統計学的な手法も用います。それまではほとんど取引がなかったのに、急にある特定銘柄で取引が増え、しかも統計的に有意な差で大儲けをしている顧客とその銘柄、その銘柄が、今回の野村のM&A案件のように、特定のイベントに絡む儲けかどうかのスクリーニング等々。
専門家の叡智を結集してこうした条件付けを行い、それを金融庁のシステムに一括管理出来るようにして、数百、数千の条件式を絶えずシステム的に自動検証し、疑惑のトレーディングを人物名とともに浮き彫りにすることが出来るようにするのです。
そして、こうしたシステムがほぼ完成した暁には、このことを公表するのです。開発プランを先に公表するだけでも、かなりの効果が見込めるでしょう。何しろ、既に過去の取引履歴は各証券会社にあるのですから。
仮にバレる確率が、どんなに精緻なシステムを組んだとしても、30%に満たなくてもOKです。こうしたことを裏で行っていることのアナウンスメント効果は絶大です。
インサイダー事件を引き起こそうという人間に、それで稼げる金額が、自らの生涯賃金よりも多くないと思わせ、誰もやる気にはならないように持って行くのが眼目です。多く稼げば稼ぐほど、露見する確率が増えるのがこのシステムの特徴です。
関係者が連携して、この方向で今後の対策を固めることを、誠に僭越ながら期待します。
どうしたら再発防止ができるのか?と業界の方々は自問自答し、「今回のようなケースは絶対防止出来ない」と観念しているのではないかと。。。
野村の社長が、「年2回誓約書を取っていたのに」と、つい漏らしたようですが、そりゃ、誓約書をいくら取っても駄目でしょう。そんなことは極めて形式的なことです。サインする社員もそれが形式的であることを先刻ご承知です。
では、一体全体どうすれば、こういった不祥事が防げるのか?これが今日のテーマです。
しかし、筆者もいささか無謀ですね。普通に考えると、悪意を持ってやられたら防止のしようがない問題に、あえて、この休日に何か意見を言ってみる気になるとは。
切り口は、タイトルに書いたようにBISです。
これは銀行に対して行われているBIS規制のことではありません。
Biological Incentive Systemの略です。文字通り、生物に生得的に備わったインセンティブシステムのことです。(BISは、ウィリアム・B・アーヴァインが使った言葉です。)
動物も人間も、何らかのインセンティブシステムに従って行動をしているのではないかとの説がBISという訳です。
目的は、自然淘汰に打ち勝ち、自らの子孫をできるだけ多く残そうという、いわば生物が本源的に持たされているリチャード・ドーキンスの利己的遺伝子戦略の1つと言えます。
さて、野村インサイダー事件であの中国人社員の、自らが生き残るためのインセンティブは何だったのでしょうか?
この場合、生き残るとは、野村社内でのことではありません。あくまで彼が生きているこの世の中での生き残り戦略のことです。
彼は直感的に、自らの仕事を通じて、巨万の富が内々に蓄積出来ると考えた筈です。確かに野村社内では自分が所属する部署では社員そのものが株式トレードをすることを禁じております。そのために誓約書も書いております。しかし、抜け穴は十分にあると見込んだのです。絶対にばれない方法があると。
そこまで確信できたとしたら、後はそれを実行し、野村での報酬に加えて、インサイダーでの裏金を加えれば、これは金銭的にはぼろいことになるのではないかと考えた筈です。一生、優雅な暮らしが出来、「美人妻」をめとり、多くの子孫が残せるのではないかとね。
これが、今回の行動に彼に駆り立てたインセンティブです。
ところが、氷山の一角とはいえ、たまたま、M&A絡みでのインサイダー疑惑の「捜査」を行っていた証券取引等監視委員会が、特定のM&Aに絡んで、特定の中国人の名前が出てくること、そしてそのM&A案件がすべて野村證券が絡んだ案件であったことに気がついたのです。
今回はたまたま見つかりましたが、これからはかなりの確率で見つかることを示せば、こうしたインサイダー事件の多くは「撲滅」される筈です。何故なら、見つかる確率が相当に高ければ、証券会社はもちろん、普通の会社の社員でも、懲戒免職を覚悟してまで、当面の数百万円のお金のためにインサイダー事件を起こそうというインセンティブが働かないからです。
問題防止の鍵はここにあります。誓約書の徹底やら、社員教育には決してありません。社員教育が無駄だとは言っておりません。効果が極めて限定的だと言いたいのです。現にこれまでもこうした教育は、過去に不祥事を犯したどの企業も、教育内容は別にしてもそれなりに行ってきた筈です。
さて、かなりの確率でインサイダー事件が見つかる方策はあるのでしょうか?
それは、今回、証券取引等監視委員会がたまたま発見したやり方にヒントが潜んでいると筆者は思います。
いくつかの条件を組み合わせば、そして、うまく名寄せさえ出来れば、今回のケースのように確率的にはあり得ないような人物があぶり出されてくるのです。
これを業界全体でシステムを構築して行う以外には対策はありません。
データベースは各証券会社が持っている口座開設者の個人情報と取引情報です。統計学的な手法も用います。それまではほとんど取引がなかったのに、急にある特定銘柄で取引が増え、しかも統計的に有意な差で大儲けをしている顧客とその銘柄、その銘柄が、今回の野村のM&A案件のように、特定のイベントに絡む儲けかどうかのスクリーニング等々。
専門家の叡智を結集してこうした条件付けを行い、それを金融庁のシステムに一括管理出来るようにして、数百、数千の条件式を絶えずシステム的に自動検証し、疑惑のトレーディングを人物名とともに浮き彫りにすることが出来るようにするのです。
そして、こうしたシステムがほぼ完成した暁には、このことを公表するのです。開発プランを先に公表するだけでも、かなりの効果が見込めるでしょう。何しろ、既に過去の取引履歴は各証券会社にあるのですから。
仮にバレる確率が、どんなに精緻なシステムを組んだとしても、30%に満たなくてもOKです。こうしたことを裏で行っていることのアナウンスメント効果は絶大です。
インサイダー事件を引き起こそうという人間に、それで稼げる金額が、自らの生涯賃金よりも多くないと思わせ、誰もやる気にはならないように持って行くのが眼目です。多く稼げば稼ぐほど、露見する確率が増えるのがこのシステムの特徴です。
関係者が連携して、この方向で今後の対策を固めることを、誠に僭越ながら期待します。