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自動車産業が悪いのは当たり前

2008-11-08 09:14:10 | 株に出会う
「XXショック」というのはマスコミが好んで使う言葉です。

今回のトヨタショックもそうですが、こうした言葉で、ある経済現象をひとまとめに括ってしまいそれで分かったつもりになる傾向が、どうもこの世にはあるようです。

ここは1つ、トヨタの今回の大幅減益の背景を探ってみましょう。

◆営業利益(2兆2703億円→6000億円)下方修正の理由の分析と評価
 (連結決算の通期での対前年度比)

 ・為替差損    6900億円
 ・販売台数減   6100億円
 ・原価改善努力未達 600億円
 ・諸経費の増加  3103億円

       計1兆6703億円

 為替は、通期で1ドル=103円(下期は100円)、1ユーロ=146円(下期は130円)に想定し直し。

 この為替見通しは少々甘いと思います。ドルが100円をまた回復すると見ているようですが、それはアメリカのリパトリエーション(海外資金の環流)が終われば、ドル安=円高になるトレンドを読み切っておりません。ユーロも同じ。こちらは購買力平価で見るとドルは90円程度ですが、ユーロは100円近いことを見誤っております。それから、ユーロ圏の金融及び実体経済の悪化は、アメリカよりもひょっとすると酷いという事実も見落としておりますね。

 販売台数減については、

 上期実績---世界販売台数425万台(-1.2%)

 下期予想---世界販売台数399万台(-13.5%)

  -アメリカ 106万台(-9.4%→-27.2%)
  -欧州    63万台(-8.8%→-2.8%) 
  -アジア   48万台(+12.8%→-4.8%)
  -日本   106万台(+1%→-10%)
  -その他   75万台(+10.8%→-7.8%)

  -世界全体 399万台(-1.2%→-13.5%)

  括弧内の左の%は上期の実績、右の%は下期の予想です。

 アメリカは約3割減と大きいのは当たり前ですが、これとて、10月度のレベル(23%減)をそのまま延長しての数字です。更に問題なのはユーロ圏です。下期は上期より「改善」する見通しなのです。これはユーロの経済状態を為替と同じで甘く見過ぎております。

自動車販売台数を景気との関連で予測する時の大きなポイントは下記の2つです。

1.高額商品のため、ローンなど金融の影響を最も強く受ける。
2.不要不急の商品のため、真っ先に買い控えられる。

10月のアメリカ自動車市場の販売不振も、特に1項の影響が強かったようです。買いたいのに4人に1人しかローンが下りないというもの。

◆トヨタ不振のもう1つの重大な理由

それは、トヨタが常日頃から盛んに言っていた、「絶えず危機感を煽り、社内の緊張感を高めておく」ことの裏返しとしての、いわば、世界一になる過程での、背伸びのし過ぎ、膨張のし過ぎが、今回の大幅減益の背景にあると、筆者は思っております。

良い例が、アメリカ市場での大型ピックアップトラック、タンドラへの投資とその後の販売不振です。このビック3の牙城へと攻め込んで、更に大きな利益を狙った戦略が裏目に出ました。

確かに、更に業績を高めるためには、かつてアメリカでレクサス・ブランドで成功したと同じマーケティング手法も使いタンドラを送り出すことは、トヨタ社員にとってはまさに緊張感溢れるやりがいのある仕事でした。

ここに実は、今回のトヨタの減益の大きな理由が胚胎しておりました。

簡単に言います。ゴア元副大統領の「不都合な真実」が昨年来、世の大きな話題となり、今年のサミットまでは環境問題が世界の最重要課題でした。

この潮流をあの優秀なるトヨタ社員が何故先取りできなかったのか?ここにトヨタの最大の問題があります。彼らは、「ビジネスを成功させることしか頭にはなかった」、としか思えません。

それから、昨年夏の段階で、今回のサブプライムの問題が世界経済に深刻な影響を与えるであろうことが、何故社内での共通認識になっていなかったのか?これも、外部のコンサルタントか誰かに世界経済の分析をさせていたため、通り一遍の認識しか持てなかったのでしょう。これは世の他の企業も同じですが。

確かに、販売現場をつぶさに把握して、そこから戦略を立てるその手法については、トヨタは群を抜いていたに違いありません。しかし、この世は現場だけを見ていても見えないことがあるということを、果たしてトヨタはどこまで認識していたのか? タンドラは、アメリカの西部開拓以来の伝統的な「トラック野郎」の好みを徹底的にヒアリングして満を持して送り出しました。しかし突如、ガソリンがぶ飲みを誇るような豪快なトラック野郎は、潮が引くようにいなくなってしまったのです。

また、今回の金融恐慌の進展のように、津波は徐々にではなく一気に襲ってくるという、この世の自然界と経済界に共通する現象への理解(先日の、フラクタルな現象に関する話題を参照)がどこまでトヨタにあったのか?

トヨタだけに限らず、これは成長を求め、利益を追求する企業に共通する弱点だと思います。

トヨタは、社内で緊急収益改善委員会を立ち上げて対策を練るようですが、その中で、将来の糧である研究開発投資(9200億円)だけはあまり削らないとしているのは、さすがです。しかし、企業としてのトヨタの上述のような、根本的な弱点の克服論までは多分議論されることはないでしょう。
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市場概況(11.7.08)

2008-11-08 07:48:12 | 市場概況
テクニカル用語の簡単解説 赤字部は8日朝更新

後場は、寄り高から一転下落相場でてんやわんやの騒ぎとなった11月7日(金)の市場概況です。 

◆日経先物:8660円(-140円)、OSC60%(+7%)10月27日の33%から切り返し中。
◆日経平均:8583円(-316円)、OSC59%(-5%)10月24日の33%から切り返し中、或いは11月6日の64%から反落に転じたか?
◆日経平均指数値倍率:116(+4)
◆TOPIX:879(-30)、OSC58%(-5%)10月24日の37%から切り返し中、或いは11月6日の63%から反落に転じたか?
◆マザーズ指数:328.64(+3.99)、OSC62%(同値)10月28日の40%から切り返し中。
◆ヘラクレス指数:514.95(-5.76)、OSC66%(-3%)10月27日の39%から切り返し中、或いは11月6日の69%から反落に転じたか?
◆国債先物:137.44円(55銭安)OSC38%(同値)10月27日の49%からなだらかな下降中。
◆ドル・円:98.22円(51銭の円高)OSC55%(+5%)11月4日の62%から下降中。更新
◆日経先物イーブニングセッション:87100円(大証終値比+50円)
◆シカゴCME日経先物:8855円(大証終値比+195円)更新
◆NYダウ:8944ドル(+248ドル)OSC46%(+4%)11月6日の42%から切り返したか?更新

後場は1時半頃までは8800円を突破するなど、前場終わりからの上昇基調が持続しておりましたが、円高に振れるや否や、2時頃からの大きな下げに見舞われてしまいました。5631日本製鋼所など例によって大きな下落で910円近辺まで落ち、その後970円あたりまで切り返すなど、全く目まぐるしい展開でした。

後場は、6764三洋電機を急落前に211円で売り、201円の下値で再度拾ったつもりが、195円まで落とされましたが結局203円で終了。そのまま持ち越し。もう1つ、地味系の6744能美防災を購入しこれも持ち越し。

今のところ、欧州株は比較的堅調。米株価先物も80ドル程度の上げ、ドル・円も落ち着いておりますが、何と言っても、この後10時半からの非農業部門の10月の雇用統計の結果が注目されます。予想は-20万人。

-------8日朝のコメント-------

注目の雇用統計は予想より悪化。またGMの第3四半期の決算も7.35ドルの損失(予想は3.7ドルの損失)

しかし、雇用統計は8月分を-7.3万人→-12.7万人へ、9月分を-15.9万人→28.4万人に修正をしております。そして、今回は-24万人(予想は-20万人)です。昨年夏にも、夏休みで学校の先生(政府部門雇用)が不在だったのでカウント忘れしたとの、全くふざけた理由での修正と言い、今回も実際は30万人超ではないかと、普通の人なら疑っても自然かと。

にもかかわらず、雇用統計を控えて様子見などと市場は言い、重大イベントとして捉えられているのが不思議ですね。

そのせいなのかどうか、市場は雇用統計やGMの決算には何も反応せず。

むしろ、オバマ次期大統領が、「簡易で、迅速に行える景気対策はない」との、しごく真っ当な見解を述べただけで値を下げております。

これは「新規性」がある発言だったためですね。雇用統計やGM決算が悪いというのは想定の範囲。市場は折り込み済み。だから今日はショートカバーに走った、というところでしょう。

ドル・円相場も、雇用統計が市場予測を下回って悪化したニュースが流れて、一瞬円高に振れておりますが、いつもどおりに、すぐに元の水準に戻しております。心臓が少々ピクついたような動きでした。結局ドル・円はすぐにドルインデックスの上昇に合わせて、円安の方向へと向かって終了しております。

これで、ダウは少し反発を見せましたが、38.2%戻しの9404ドルが奪還できる勢いがつくのかどうかが、来週の見所です。後500ドル余りの上昇が必要。

ところで、新自由主義の歴史的な敗北宣言を議会で行ったことで、またまた歴史に名を刻むことになったグリーンスパンが、住宅価格はあと5-10%の下落は見込まれ、来年の上期には住宅価格は安定すると述べたそうです。

モデル地区として見ているロスアンジェルス地区の8月度のケース・シラー住宅価格指数は、189.18ポイントですので、この地区は後15ヶ月程度は下げ止まりまでかかり、来年末頃になりますが、全米20地区平均では、グリーンスパンの言っている来年上期に底を打つのは妥当性がありそうです。但し、後5-10%の下落と言っているのは少々少なめではないでしょうか。(10月30日のケース・シラー住宅価格指数-8月度の記事を参照)
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