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世界の通貨体制がどうなるのかが焦点

2008-11-22 14:04:32 | 金融全般
今回の世界同時金融恐慌は、このまま政府資金が金融機関だけでなく民間企業にまで投入された後、どういう手段で急増した国家債務をバランスさせるのか、これが今後の世界を見通すための鍵となりそうです。

レバレッジ解消の動きはまだ序の口です。これまで投資銀行は30倍。シティなど商業銀行でも10倍のレバレッジをかけておりましたが、これを縮小(デレバレッジ)させねばなりません。

これは実体経済の4倍(元本ベースでも2倍)に膨らんでしまった金融経済の収縮の動きですが、これにより、少なくともレバレッジを効かせて世界を巡っていたマネーは減少します。

ざっくり言って、昨年末での世界の金融資産としてのマネー総額はおよそ1京円。世界のGDP5000兆円。レバレッジ運用のマネー総額2京円です。

この1京円の投資マネー元本に対して5%の運用利益を期待するとすれば、年500兆円となります。これは世界のGDPの10%分です。

この巨額の金融収益を上げ続けることを追求すること自体、そもそも理不尽な要請だった訳ですが、それがついに破綻したということですね。

このデレバレッジがどこまで行き着くかということですが、これは誰が見ても通常の金融資産の運用利益の限界値としての5%程度になるまでは収縮するということを考えざるを得ません。

今、アメリカの主要金融機関8社(GS、モルガンスタンレー、JPモルガン・チェース、AIG、シティ、ウェルズ・ファーゴ、バンクオブアメリカ、GEファイナンス)の資産総額は12兆2千億ドルと見積もられておりますが、本来BISの自己資本比率8%を守るためには、1兆円の損失あたり12.5兆円の資産圧縮が必要です。(1兆円÷0.08)

今年に入り、時価会計を停止したり社債の価格低下を利益にかさ上げしたり、さまざまな工夫を凝らしておりますが、それでも、この8社の有形株主資本は4060億ドルに過ぎません。自己資本比率はたったの3.3%です。時価会計をやれば軽くマイナスでしょう。

これが、これら金融機関に対する資本注入を、7000億ドルのアメリカの公的資金枠から優先的に行うと、ポールソンが言いだした理由です。

それでも、サブプライムのみならず、今回の金融危機で生じた損失額が、仮に8社合計で5000億ドル発生しているとするなら、その損失に対する資産圧縮は、6兆2500億ドル相当にもなります。

つまり12兆2千億ドルの約半分のいわゆる「貸し剥がし」が必要なことになります。

もちろん、損失額が今後ますます膨らんで5000億ドルから1兆ドルにもなっていけば、金融業としては全資産の圧縮を求められることとなり、そもそも成り立ちません。これを防ぐために公的資本の注入を継続せざるを得ないのが現状ですね。

さて、ここからが問題ですが、サブプライムのみならずCDSやクレジット関連、また今後深刻となる商業用不動産向けローン証券(CMBS)による損失も含めると、実際の損失額が3兆ドル説も出ている中、各国政府がそれこそ未曾有な資本注入を行わざるを得なくなった結果、政府負債は巨額に膨れあがります。

この落とし前を一体どうやってつけるのか?

金融バブルの崩壊により、それまでのレバレッジ金融は縮小へと向かわざるを得ない。しかし、そのままでは実態経済が破綻する。それを防ぐには政府資金の投入しかないが、もはや国債の買い手はいない。中央銀行が国債を引き受ける以外にはない。このサイクルから来るペーパーマネーの増刷が何を帰結するのかということです。

それは明らかに政府負債の増大からくる各国通貨の価値の下落です。

ここであちこちで噂されているのが通貨の切り下げ論です。プラザ合意の時は米ドルだけの切り下げでした。今回は、世界同時恐慌ですので、米ドルのみならず、ユーロ、円など主要通貨全部が一斉に切り下げられる可能性が大です。

この通貨切り下げについてはG20でも秘密裏に協議がされている筈です。この切り下げしか、今の世界経済のかつてない苦境から脱出する手段はないからです。

通貨の切り下げというのは、要するに借金をその分減らすということです。50%の切り下げなら借金が50%減ります。その原資は、各国の通貨を保有する人々からの「収奪」でしか賄えません。1000万円の資産を持っている人は500万円の価値に落とされます。実際には新貨幣の発行という形で行われる筈です。

そして、この新貨幣と旧貨幣の交換が市中で行われる訳ですが、例えば旧貨幣の千円札は500円の新貨幣と交換できますが、それまで千円の値札が付いていた商品は新貨幣で500円に自動的になるかと言うと、そこはインフレ要素が必ず入ってきます。

かつてデノミ論が日本でも盛んに言われておりました。デフレ経済の頃です。それはデフレ経済の時こそ、デノミを行うチャンスだとの理解が背景にあってのことでした。

その上で、各国政府は新通貨に切り替えた後に生じるであろうインフレをできるだけ昂進させる政策をとることでしょう。

そのことによって、1000兆円の借金が500兆円に減り、かつインフレ率50%にまで持って行ければ250兆円にまで減らすことができます。ここまで来ればかなり借金返済も楽になります。

1つ、このようにデフレからインフレに転じるケースをご紹介します。それは原油価格の推移です。今日の日経新聞にこういう記事が載っております。

「商品価格の急落は世界経済の底割れ懸念を示唆すると同時に、将来の反騰リスクもため込む。新規油田の開発コストとされる1バレル50ドル前後を下回ると、採算割れが増える。金融危機に伴う資金調達難もあり、資源の増産・開発計画は凍結が相次ぐ。中長期の先高感を映し、米原油先物の2016年12月物は1バレル84ドル台と期近に比べ35ドルも高い水準にある。」

デフレ経済が行き過ぎること自体が、将来のインフレのタネを蒔いてしまう典型例ですね。

最後に、通貨制度としての為替制度がどうなるのか、こういう意見もあるということをご参考までに載せておきます。最後の方の「新金本位制度」をご覧下さい。

今日のブログは、金への投資を推奨するものでは決してありません。世界経済が来年どうなるのかを経済の素人が単に占っているだけですので、その点は悪しからずご了承下さい。
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