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前回の大恐慌時の株価の推移からの教訓は?

2008-11-15 09:59:48 | 金融全般
やはり、週末になると疲れがたまってくるようです。昨晩は午後8時を待たずに食後の眠気に耐えきれず就寝。約7時間後に自然覚醒。暇つぶしにブログを見ておりましたら、以前から求めていた数字が見つかりました。

それは、1929年9月から1932年7月までの大恐慌時の株価の節目の数字です。

岩崎日出俊氏のブログを参照下さい。

この方、「リーマン恐慌」という単行本(11月25日発売予定)も出している、元興銀マンで、リーマン・ブラザーズにも在籍していた方のようです。

このブログは、ポールソン財務長官がゴールドマン時代に5億ドルのGS株を売却して、しかもキャピタルゲイン課税を免れていたという、9月28日の拙ブログのアクセスログからたまたま見つけたものです。

(ブログを書いていると、こうした「連鎖」から新たな発見があるので面白いものですね。)

恐慌時の株価推移のグラフは既に知っておりましたが、節目となる数字を知りたかったのです。

【A】【B】【C】の節目の数字までは、今回の日経平均の数字と非常に良く似ておりますね。

前回は【C】で198.69ドルのボトムを付けた後、5ヶ月にわたって上昇し294.07ドルまで戻しております。この後、約2年かけて【D】の本当のボトムである41.22ドルまで落ちてしまった訳です。

さて、この過去の歴史から今回の金融恐慌の帰趨をどう読むかです。筆者は先の大恐慌時のことを何も知りません。仮に知っていても、それと同じパターンをとることはないでしょうから、返って知らない方が良いのかも知れません。となると、予測はいつものように「いい加減」なものとなります。ご了承下さい。

今回の危機の真の原因は、いわゆる実態経済と金融経済の乖離(元本ベースでは2倍)にあります。これを可能にしたのが、レバレッジを効かせた投資手法です。商業銀行でも10倍、投資銀行では30倍ものレバレッジで住宅証券を始め各種金融商品に投資を行い、価格が高騰している限りで高収益をあげておりました。

それが、サブプライム問題に端を発して逆流を始めました。

FXが良い例ですね。証拠金をあっという間になくし、追加証拠金の差し入れが出来ずに強制決済をされたケースも多いかと思いますが、これと同様なことが世界の金融機関そして金融機関から融資を受けたヘッジファンド、そして更に闇の中にある金融機関の別働隊のSIV(Structured Investment Vehicle)で起きているのです。

こうした強烈な逆流に見舞われた欧米の金融機関は既に自己資本をなくし、やむを得ず政府資金の注入を受けておりますが、当然ながら、レバレッジを効かせた金融取引そのものの縮小(デレバレッジ)に向かわざるを得ない状況に陥っております。

このデレバレッジの動きが、これまでにレバレッジを効かせて投資をしてきた世界の株式市場、商品市場からの資金の一斉引き揚げとなってきているのはご承知の通りです。

このデレバレッジがどこまで進めば、実体経済と金融経済が「融和」する局面になるのかが、最も大きな焦点だと思っております。また、その間にも、融資残高を縮小せざるを得ない金融機関の資金回収がどこまで行き着くのかが、世界の経済にとって最大の問題だと思います。

最近、ちらほらと聞くようになったのが、貿易決済に絡む資金まで不足しつつあるとのニュースです。

金融機関のデレバレッジの動きというのは、こうして実体経済と密接に結びついております。金融機関が資金供給を減らせば、こうした貿易や物流面で支障が出ます。そればかりか、企業の生産と生産物の流通も停滞ないし縮小します。これが劇的な雇用の減少を招き、負のスパイラルに入って世界的な恐慌がここに完成すると言う訳です。

こうした世界的な恐慌に落ち込ませないで、しかし、デレバレッジという名の資金回収を更に更に進めざるを得ない、このジレンマが今の状態ですね。

一例をヘッジファンドで見てみます。

昨日のヘッジファンドニュースで、アメリカの大手ヘッジファンドのファラロン(Farallon)・キャピタル・マネジメントは、旗艦ファンドの10月までの年初来パーフォーマンスがマイナス23.8%に落ち込んでいると報じられております。このファンドは設立以来22年間の年平均リターンが14.6%で、これまで一度もマイナスを記録したことがないとのこと。

このファラロンは、運用資産300億ドルのうち、想定される解約請求に向けて保有株を売却し現金保有比率を30%に引き上げております。つまり、償還請求に向けての動きです。

全ヘッジファンドの昨年末での元本が約200兆円ですが、今年第3四半期の償還請求は310億ドル(3.1兆円)にしか達しておりません。

ところで、ファンド・オブ・ヘッジファンズを除くヘッジファンド業界の運用資産約1兆ドルのうち、今後2-3ヶ月のうちに20-30%が更に償還のために流出すると予想されております。(10月24日付け、ヘッジファンド・リサーチ社)

仮にこの1兆ドルの20%である2000億ドル(20兆円)が償還用に世界の市場から回収されるとします。これは市場からの20兆円の引き揚げを意味するものではありません。ヘッジファンドはレバレッジを効かせて投資しているためです。株でも信用取引だと約3倍のレバレッジです。プロのヘッジファンドなら最低でも5倍でしょう。すると、20兆円X5=100兆円の資金の引き揚げをこのことは意味します。

既に7-9月期に3.1兆円の元本の償還がありました。3.1兆円X5=15.5兆円ものお金が市場から引き揚げられ、これが世界の株式市場、商品市場の暴落の引き金を引いたのです。株式市場は最大の市場です。60%程度の10兆円が株式市場から引き揚げられたとしても、世界の株価の対する影響力は大きいものとなります。

世界の株式市場の時価総額は、10月31現在で29兆7140億ドルです。(リンク先でSubmitボタンを押してください。)うちアメリカが約46%を占めております。日本は2兆9118億ドルで9.67%です。金曜日の日本市場の売買代金は1兆8千億円弱。まあ、多くて時価総額の1%しか動いていません。

日本市場の売買高に占める外人比率は60%と言われております。1日の売買代金の60%は2兆円X60%として1.2兆円にも達します。

9月までに世界の株式市場からヘッジファンドが引き揚げたお金が10兆円とすると、日本市場からはどのくらい抜いたのかのデータはありませんが、時価総額比率から言っても10%の1兆円は抜いたものと思われます。

ところで、日経平均は6月6日の14601円の高値から9月末で11160円まで落ちました。約25%の下落とごく平穏なものでしたが、これがヘッジファンドが1兆円を日本市場から引き揚げたインパクトだったのです。

さて、問題は今後2-3ヶ月の間に、最低100兆円のレバレッジをかけた資金がヘッジファンドから引き上げられることのインパクトの大きさです。うち株式市場から6割として60兆円。日本市場からは10%分の6兆円の引き揚げとなります。

7-9月期の1兆円(仮の数字ですが)のヘッジファンドの売りでの日本の株式市場での下落率が25%でした。

確かに10月だけで日経平均は39%も下落しましたが、このような下落をずっと続けさせることは、ヘッジファンドが自ら首を絞めることになります。

従って、今後も7-9月期のように最大で25%程度の下落に押さえ込むようにして、手元資金の回収を図って行かざるを得ないと筆者は考えます。

これが、巷間言われているように、今年に限っては11月中旬(昨日)を過ぎたからと言って、ヘッジファンドの手仕舞い売りが収まる訳ではない、という真の理由です。11月中旬とは、「平時」における、ファンドの年末決算に間に合わせるための締め切りに過ぎません。

後6兆円もの償還資金の捻出が待っております。これをこれまでのペースで、四半期毎に25%ずつ日本の株式市場を下落させて資金を手にするなら、計算上は後1年半かかります。しかし、今後2-3ヶ月の間に何とかして償還資金を捻出しなければなりません。1年半もかけて25%ずつ市場を下落させて償還資金を捻出している余裕は一切ありません。何よりも、そんなに下落させたのでは、彼らがかつて仕込んだ日本株の取得価格を大きく割り込んでしまい、それこそ赤字の大垂れ流しとなります。

ここは筆者ならずとも、誰しも、ボラティリティを上げて、空売り戦術を駆使しながら、何とか3ヶ月のうちに、6兆円規模の売却を行いながら、かつ、利ザヤを稼がざるを得ません。更に下げるとしても20-30%程度には何とか抑えたいと、誰しも思うでしょう。

これがNYダウが1日で900ドルも値幅がある原因ですね。日本市場も同じです。

しかし、外人勢の売買代金が6割の日本株式市場です。悲しいかな、上げ下げするつもりが、我々が付和雷同して売りに回ったりするものですから、ジリジリと相場は下がらざるを得ません。

7-9月期の6倍もの資金を捻出するために、10月のような極端な下落は回避するにしても、日経平均の安値水準は適当に更新せざるを得ないのではないでしょうか。

以上は、ヘッジファンドだけを見た、いわゆるデレバレッジの動きの株式市場への影響です。株式市場に関与しているのはヘッジファンドだけではありません。デレバレッジの影響はもっともっと大きいと考えざるを得ません。

一時の原油の高騰で一気にインフレ懸念が高まり、そこにデレバレッジの動きが逆の圧力として作用し、一転デフレ懸念が生じてしまい、産油国は梯子を外された形で大慌てになりました。

今回のデレバレッジも、世界経済を破滅させない範囲での資金回収を図らざるを得ません。そこは、各国の政府が取る様々な施策の動きを睨みながら、何とか穏便にデレバレッジを進めていきたい筈です。

ヘッジファンドの1部が、償還停止をクライアントに告げる時の、殺し文句も恐らくこのようなことでしょう。「キャッシュ、キャッシュと騒ぎ過ぎると、元も子もなくなりますぜ!!旦那。

長くなりましたので、このデレバレッジが進んでいった結果、世界の風景がどうなるのかは、日を改めて考えてみます。

今日のところは、株価がすんなりと1929年の大恐慌時のように5ヶ月かけて一旦戻すような楽観的な見通しは持てないということだけ確認しておきたいと思います。

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