団塊世代おじさんの日常生活

夏 日本で二番目に気温が高く、陶器と虎渓山と修道院で知られる多治見市の出身です。

この投稿文を読んで、吉野弘さんの「夕焼け」という詩を思い出しました。

2019-01-09 05:04:20 | 日記
 まだ風邪が治らず本調子でないのでコメント欄は閉じさせていただきます。
喫茶店へ行けるぐらいになったらコメント欄を開けます。(笑)



 中日新聞の「くらしの作文」に「一期一会」というタイトルで75歳の女性が投稿されていました。


 名古屋駅から乗った地下鉄は超満員でした。
降車駅まではそんなに長くもないので、つり革につかまって立っていました。
しばらくすると、前の席の少年が私の目を見ながら、おずおずと席を譲ろうとしています。

 とっさに頭の中では、受けるべきか、遠慮すべきか迷いましたが、
「おばあちゃん、そんなに遠くない駅で降りるから、お心だけでありがとうね」と伝えました。
少年はニコッと笑ってうなずいてくれました。

 よくよく眺めると、そこには7人ほどの少年たちがズラッと座っているので、
ここは年の功です。
「君たちはどこの帰りなの」と聞いたところ、「塾」と異口同音に答えが返ってきました。

 どこか遊びの帰りかとばかり思っていたので、一瞬びっくりしましたが、
思わず「疲れているのは私ではなくて君たちの方ね。勉強だったんだ」と言っていました。

 話すうち、各地の6年生とのこと。
中学受験のための塾通いのようです。
私は「みんな頑張ってね、さようなら」と声かけして降車しました。

 帰路、疲れているはずの私の足取りは、何だかとても軽く、
偶然の出会いのあの輝く瞳の少年たちの未来が、希望と平和で包まれますようにと、
神様に祈りました。

 以上です。



 一期一会、この投稿者の女性は、頑張っている少年たちと少しの間会話され、
疲れもすっかり取れたようですね。(笑)

 でも欲を言えば、せっかく少年が勇気をふるって席を譲ろうとしたのだから、
席を譲ってもらえば良かったのにと思いました。
少年は席を譲って良かったなぁという思いが、きっといつまでも心に残ったのにと思いました。

 この投稿文を読んで、吉野弘さんの「夕焼け」という詩を思い出しました。
心やさしい少女が、2度席を譲って、3度目には席を譲らなかったという詩です。



   夕焼け

 いつものことだが
 電車は満員だった。

 そして

 いつものことだが

 若者と娘が腰をおろし

 としよりが立っていた。

 うつむいていた娘が立って

 としよりに席をゆずった。

 そそくさととしよりが坐った。

 礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。

 娘は坐った。

 別のとしよりが娘の前に

 横あいから押されてきた。

 娘はうつむいた。

 しかし

 又立って

 席を

 そのとしよりにゆずった。

 としよりは次の駅で礼を言って降りた。

 娘は坐った。

 二度あることは と言う通り

 別のとしよりが娘の前に

 押し出された。

 可哀想に。

 娘はうつむいて

 そして今度は席を立たなかった。

 次の駅も

 次の駅も

 下唇をギュッと噛んで

 身体をこわばらせて---。

 僕は電車を降りた。

 固くなってうつむいて

 娘はどこまで行ったろう。

 やさしい心の持主は

 いつでもどこでも

 われにもあらず受難者となる。

 何故って

 やさしい心の持主は

 他人のつらさを自分のつらさのように

 感じるから。

 やさしい心に責められながら

 娘はどこまでゆけるだろう。

 下唇を噛んで

 つらい気持ちで

 美しい夕焼けも見ないで。









佐々木勉「旅立つ彼」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする