最近「昭和の風景」がブームになっている。現在生きている人たちがちょうと「懐かしさ」を抱く風景や文物というのが取り上げられることが多い。
書店で、こんな一冊を見つけた。「ニッポン鉄道遺産を旅する」(斉木実・米屋浩二著、交通新聞社)。
鉄道というもの、それが誕生した時は当時の「最新の」技術であり文化だったわけだが、技術の進歩というのは早いもので、いつしかそれらも「古いもの」になる。その移り変わりの中で消えたものも多いが、まだまだ健在のものも多い。この一冊は、古くから受け継がれてきた「鉄道遺産」をめぐる紀行文と写真で綴られている。
架け替えの決まった餘部鉄橋に始まり、腕木式信号機、硬券切符、ナローゲージ、客車列車、「開く窓」・・・・。ページをめくるたびに、「見に行きたい!」という衝動にかられる。
最新の技術の粋を集めた新線や新型車両も面白く、また普段利用する客にとってはそちらのほうが快適であるのだが、やはり「風情」という点では、この一冊に登場する「鉄道遺産」のほうに軍配があがる。
その中で「路線そのものが鉄道文化遺産」というタイトルで紹介されたのが、九州は肥薩線。大畑ループ線、スイッチバック、木造駅舎、蒸気機関車の遺構、今でも残る駅弁の立ち売り・・・途中下車しながら全線通して乗るだけでも多くの鉄道遺産に出会えるそうだ。私も肥薩線に乗ったことはあるが、もう長い間ご無沙汰である。往路・肥薩線、復路・九州新幹線で行く鹿児島の旅なんてのも面白そうだ・・・・。
今に残る鉄道遺産、しっかりとこの目と心に焼き付けておきたいものである。