先日もこのブログで取り上げたのだが、鉄道写真家の広田泉さんによる「ここから始まる」が自宅にも届き、改めて1ページ、1ページをめくってみた。
作品の舞台となったのは地震、津波で大きな被害を受けたJR大船渡線、気仙沼線、山田線、そしてひたちなか海浜鉄道、三陸鉄道。写真家としての葛藤もある中で被災地に向かい、壊滅的な被害を受けたその姿をとらえた一冊である。数年前に訪れ、風光明媚な自然の中をごく普通に走る列車の写真があり、今回あえて同じポイントで撮影をする。きれいな海岸線を行く線路が砂利に飲み込まれ、山をバックにした雄大な路線ががれきに埋もれる。あの日を境に変わったもの、そして、そのような震災があっても変わらない自然。こうしてみると人間の営みというのは自然の前には無力なのかどうか、自問してみたくもなる。
私も過日気仙沼を訪れ、津波にさらわれた駅舎や、漁船も乗り上げた線路の姿を目の当たりにしたのだが、やはりプロの視点というのは違う。痛々しい姿ながら、本当に「ここから始まる」その芽をどこかでとらえているように思う。今はかすかな光しか見えないが、数年か数十年かかるかわからないにしてもまたいつの日か輝きを取り戻すのだと。
その意味では「ここから始まる」というのは実に言い得たタイトルであると思う。今後広田さんはその復興の様子を少しずつとらえることをライフワークとするようで、今度は人々の笑顔も見られるのかなと期待したい。
さて送付されてきた写真集には直筆のポストカード。「Just Starting」というのが力強いメッセージに思えた。この夏は梅田でも写真展が行われるとの告知がさりげなくあった。こちらはこちらで、また観賞に行こうかな・・・。