今回の年末年始神仏霊場めぐりの当初の目的地である三千院、寂光院を訪ね、バスで京都駅に戻る。雨はやみ、雲の中から晴れ間も見えるかと思えばまたどんよりとするなど、冬の空らしく安定しない。
時刻は13時を回ったところで、このまま大晦日の宿泊地である近江八幡に向かい、大晦日に長命寺、日牟禮八幡宮を先に回ってしまうこともできそうだ。たださすがに、それは元日でもよいのではないかとも思う。
ここでふと思い立ったのが、近江鉄道に乗ってみようというもの。以前、滋賀県内の札所をクルマで回った際、水口~日野~八日市の区間で近江鉄道の線路と並走したことがあるが、経営が厳しいローカル鉄道ということもあり、やはり鉄道に乗っておきたいという思いがあった。今回は札所めぐりの直接のアクセスではないが、近江鉄道の南半分に乗ることにする。
まずは貴生川に向かうべく、京都からJRで草津まで乗り、13時57分発の草津線柘植行きに乗り換える。乗ったのは京阪神近郊を走る221系だが、少し前まで113系や117系といった国鉄近郊型車両が残っていた路線である。草津線に入ると日差しも出てきた。
14時21分、貴生川到着。近江鉄道のほか、信楽高原鐡道との乗り換え駅である。JRの改札を抜け、近江鉄道のホームに向かう。この先、八日市を経由して近江八幡に向かうが、貴生川~近江八幡の普通運賃が930円のところ、「1デイスマイルチケット」を購入する。このきっぷだと900円で近江鉄道全線が1日乗り放題で、普通に近江八幡に向かうだけで元が取れてしまう。これから乗るのは14時28分発の米原行き。近江鉄道に乗るのが目的なら、そのまま米原まで行けばより乗車距離が長くなるのだが、この時点では、八日市から先はひょっとしたら翌日(元日)に乗るかもしれないということで取っておくことにする。
2両合わせて10人ほどの乗客で発車。次の水口城南との間、遠くに野球場の照明が見える。甲賀市民スタジアムである。
プロ野球独立リーグの一つであるBCリーグに、かうて「滋賀ユナイテッドベースボールクラブ」という球団が存在したことがあった。関西にもBCリーグの球団ができたということで、大阪勤務時代に滋賀には何回か足を運んだことがあるが、甲賀も本拠地球場の一つだった。その後、滋賀球団は名称や所属リーグの変更を経て、現在は活動休止となっている。BCリーグじたいも最も多い時で東は福島から西は滋賀まで12球団あったが、北陸を中心とした球団の離脱、活動休止などで関東甲信越を中心とした8球団となっている。そして2024年、新潟アルビレックスがNPBのイースタンリーグに参入することとなった。静岡のハヤテ223とともに、新たな野球の目玉になれるかどうか。
以前の滋賀の札所めぐりで宿泊した水口までで乗客の多くが下車し、残ったのは私以外2人だけ。日付、時間帯によるとは思うが、それにしても寂しい。
京セラ前に到着。京セラの工場が近いことからこの駅名だが、京セラドーム大阪の最寄り駅と間違えてやって来る人がいるというのでネタにされる駅である。どこをどうすれば大阪と滋賀を間違えるのかと思うが、今はスマホに駅名を入れると経路を検索してくれるが、そもそも駅名じたいの入力を間違えたり、あるいは表示された結果を確認しないまま、画面の通りに移動してしまう人もいるのだろう。
八日市に到着。近江八幡行きに乗り換えのため下車する。ホーム向かいに停車中の車両に乗ればよいのだが、「1デイスマイルチケット」を持っていることもあり、いったん改札を出る。
八日市には「近江鉄道ミュージアム」がある。入場無料で、改札内にあるが駅員に声をかければ入れてくれるとある。こちらには近江鉄道の歴史や沿線の案内、かつての鉄道用品などが展示されている。昔ながらの木造駅舎がいくつか現役で残っているのも、ノスタルジーを感じさせる。沿線にもさまざまな見どころがある。また、かつての車両の運転台や座席も置かれており、子どもたちの遊び場にもなっている。
先ほど、八日市から先の米原方面は元日に乗るかもしれない・・と書いたが、その理由として、多賀大社に行ってみるのもありかなというところがあった。多賀大社も神仏霊場の札所の一つ。湖東エリアには他に数ヶ所の未参詣の寺社があるが、それらを回るにはクルマが必須。その中で唯一、鉄道駅からのアクセスがよい多賀大社に、近江鉄道の乗車も兼ねて行くことも考える。翌日の動き次第だが・・。
15時38分発の近江八幡行きに乗る。カーブを曲がったところにある次の新八日市も、かつての木像建物が残る駅の一つである。遠くに太郎坊宮も見える。近江八幡行きということで駅ごとに少しずつ乗客も増える。
終点の近江八幡に到着。京都から少し遠回りしたが、近江鉄道ののんびりした時間を楽しむことができた。駅名標の写真を撮ろうとよく見ると、はいつの間にか「ライオンズブルー」のデザインになっていた。
そして待合室にもライオンズのロゴが並ぶ(気づかなかったのだが、待合室後ろの外壁には選手たちの肖像が描かれているそうだ)。
その間に背番号36の等身大パネルが立つ。地元・滋賀出身の山田陽翔投手。近江高校で甲子園に3季連続で出場、ルーキーイヤーの2023年は1軍登板がなかったが、これからに期待の投手であり、地元出身ということで近江鉄道のPRにはもってこいだろう。
改札を出て、JR側に向かう。ここで、JR西日本の「駅からはじまる西国三十三所デジタルスタンプラリー」のQRコードを読み取る。
この日の宿泊は、北口のロータリーにある「ABホテル近江八幡」。手頃な価格、大浴場付きということで選択。2023年はここで年越しである・・・。