去年の春に家探しを始めた頃から、旦那は三人の金融ブローカーと話をし始めました。その頃のわたし達を相手にしてくれる銀行は一行もありませんでした。
今は、引き続きその三人と二行の銀行の融資担当者、計五人の専門家を相手に、探りを入れたり探られたり、駆け引きをしたりしながら、どこが我々にとって一番いい条件でお金を貸してくれるのかを見極めるのに躍起になっている旦那。
この件ばかりはわたしはお手上げ。なにも手伝えることがありません。
これが英語じゃなかったら、先祖代々大阪は船場の商売人の家系を持つわたしがしゃしゃり出ているところですが、哀しいかな言葉の壁が厚すぎます……。
旦那はアメリカンで英語人ではあるけれど、社会人として働き始めたのも、家庭を持ったのも日本だったので、43才にはなっていてもすべてが初体験です。
去年の夏に、ほとんど本契約のところまで進んでいた別の家のローンを組む時も、それはそれは悩みまくり、脳みそが破裂してしまいそうだった旦那。
今回は前回の経験もあるし、まだマシだろうと思っていましたが、やはり土壇場に来た今、五人五様の意見にがんじがらめになってしまいました。
朝の伴奏バイトが終わり、昼の伴奏までの空いた時間にYMCAに駆け込み汗を流し、昼の伴奏が終わって家に戻ると、旦那がパソコンの前でボーッと座っていました。
あ、ヤバいかも……。
姿勢が悪いし、生気が無いし、イライラ雲が彼の周りに漂っています。
「なんかさ、ぼくさ、とうとうみんなに嫌われたかも……」
「みんなって誰よ?」
「マイケル、ジョー、それからみんな……」
「なんでそんなこと思うん?」
「みんなにそれぞれ電話したけど、全然返事返ってけえへん」
「それっていつよ?」
「1時間前」
こらアカン。なにかいい手を考えなアカン。
昼ご飯を食べながらウンウン考えました。
そや!コーヒー飲ましたろ!
旦那は大の大大コーヒー好き。けれども、去年あたりから、コーヒーを毎日飲むと(といっても朝に一杯程度)胃が荒れるようになり、最近はかなり我慢して三日に一杯ぐらいに抑えています。昨日飲んだので今日は飲む日ではありません。
わたしは基本的にコーヒーを止めています。年に何回か、突然体が言うのです。コーヒー飲まんといてって。
旦那はわたしが止めるのを嬉しがりません。コーヒーはふたり一緒に楽しむもんだと思っているので、楽しみが半減するそうです。
ご飯を食べて、お腹いっぱいになったら眠くなった。けれどもまだこれからいつもの仕事と練習をせなあかん、というシナリオでいくことにしました。
「なあ、久しぶりにコーヒー飲みたいねんけど、作ってくれへん?」
「えぇ~!今日は飲まへん日やのにぃ!」
「けど、なんか突然メチャクチャ飲みとなってんもん」
「どうしても?」
「うん、どうしても」
「う~ん……しゃあないなあ……ほな、まうみのために(←ここんとこをめっちゃ強調する旦那)作ったるわ」
キッチンでミルクコーヒーを飲み終わるか終わらないかのうちに、旦那の携帯がジャンジャン鳴り出しました。きた!彼らからだ!
コーヒーが入った旦那は気分しゃっきり、ガンガンしゃべりまくっています。ああ間に合って良かった。
五人からそれぞれ最終の条件を聞き終えた旦那。明日の朝、こちらから最終の答を電話で伝えるそうです。明日、契約準備のすべてが整います。
夕方の出張レッスンから家に戻ると、あっちゃ~、鞄の中に鍵を入れ忘れていました。もう何回、二階の大家さんの鍵を借りて家に入ったことか……。
ベルを押して、「またやっちゃった~!」と泣きつくと、すぐに鍵を持ってリズが降りてきてくれました。
「これが最後になるように気をつけるね」とわたしが言ったその途端、リズがいきなり涙ぐんでしまいました。
「本当の本当に、もう居なくなっちゃうのね」と言って、わたしをハグしてくれました。
「こんないい店子にはもう巡り会えないもの」とリズ。「こんな素晴らしい大家さんはこの世には居ないよ!」と返すわたし。
大泣きするリズを見て、わたしももらい泣きしてしまいました。
「ねえ、今度の家の鍵、預かっといてくれる?」と言うと、やっと笑ってくれた彼女。
彼女はわたしにとってアメリカのお姉ちゃんのような存在です。この9年間、本当に親切にしてもらいました。
その毎日の思い出は、引っ越ししたからといって途切れるようなものではありません。
やっぱり合鍵、リズの分も作っとこっと。
今は、引き続きその三人と二行の銀行の融資担当者、計五人の専門家を相手に、探りを入れたり探られたり、駆け引きをしたりしながら、どこが我々にとって一番いい条件でお金を貸してくれるのかを見極めるのに躍起になっている旦那。
この件ばかりはわたしはお手上げ。なにも手伝えることがありません。
これが英語じゃなかったら、先祖代々大阪は船場の商売人の家系を持つわたしがしゃしゃり出ているところですが、哀しいかな言葉の壁が厚すぎます……。
旦那はアメリカンで英語人ではあるけれど、社会人として働き始めたのも、家庭を持ったのも日本だったので、43才にはなっていてもすべてが初体験です。
去年の夏に、ほとんど本契約のところまで進んでいた別の家のローンを組む時も、それはそれは悩みまくり、脳みそが破裂してしまいそうだった旦那。
今回は前回の経験もあるし、まだマシだろうと思っていましたが、やはり土壇場に来た今、五人五様の意見にがんじがらめになってしまいました。
朝の伴奏バイトが終わり、昼の伴奏までの空いた時間にYMCAに駆け込み汗を流し、昼の伴奏が終わって家に戻ると、旦那がパソコンの前でボーッと座っていました。
あ、ヤバいかも……。
姿勢が悪いし、生気が無いし、イライラ雲が彼の周りに漂っています。
「なんかさ、ぼくさ、とうとうみんなに嫌われたかも……」
「みんなって誰よ?」
「マイケル、ジョー、それからみんな……」
「なんでそんなこと思うん?」
「みんなにそれぞれ電話したけど、全然返事返ってけえへん」
「それっていつよ?」
「1時間前」
こらアカン。なにかいい手を考えなアカン。
昼ご飯を食べながらウンウン考えました。
そや!コーヒー飲ましたろ!
旦那は大の大大コーヒー好き。けれども、去年あたりから、コーヒーを毎日飲むと(といっても朝に一杯程度)胃が荒れるようになり、最近はかなり我慢して三日に一杯ぐらいに抑えています。昨日飲んだので今日は飲む日ではありません。
わたしは基本的にコーヒーを止めています。年に何回か、突然体が言うのです。コーヒー飲まんといてって。
旦那はわたしが止めるのを嬉しがりません。コーヒーはふたり一緒に楽しむもんだと思っているので、楽しみが半減するそうです。
ご飯を食べて、お腹いっぱいになったら眠くなった。けれどもまだこれからいつもの仕事と練習をせなあかん、というシナリオでいくことにしました。
「なあ、久しぶりにコーヒー飲みたいねんけど、作ってくれへん?」
「えぇ~!今日は飲まへん日やのにぃ!」
「けど、なんか突然メチャクチャ飲みとなってんもん」
「どうしても?」
「うん、どうしても」
「う~ん……しゃあないなあ……ほな、まうみのために(←ここんとこをめっちゃ強調する旦那)作ったるわ」
キッチンでミルクコーヒーを飲み終わるか終わらないかのうちに、旦那の携帯がジャンジャン鳴り出しました。きた!彼らからだ!
コーヒーが入った旦那は気分しゃっきり、ガンガンしゃべりまくっています。ああ間に合って良かった。
五人からそれぞれ最終の条件を聞き終えた旦那。明日の朝、こちらから最終の答を電話で伝えるそうです。明日、契約準備のすべてが整います。
夕方の出張レッスンから家に戻ると、あっちゃ~、鞄の中に鍵を入れ忘れていました。もう何回、二階の大家さんの鍵を借りて家に入ったことか……。
ベルを押して、「またやっちゃった~!」と泣きつくと、すぐに鍵を持ってリズが降りてきてくれました。
「これが最後になるように気をつけるね」とわたしが言ったその途端、リズがいきなり涙ぐんでしまいました。
「本当の本当に、もう居なくなっちゃうのね」と言って、わたしをハグしてくれました。
「こんないい店子にはもう巡り会えないもの」とリズ。「こんな素晴らしい大家さんはこの世には居ないよ!」と返すわたし。
大泣きするリズを見て、わたしももらい泣きしてしまいました。
「ねえ、今度の家の鍵、預かっといてくれる?」と言うと、やっと笑ってくれた彼女。
彼女はわたしにとってアメリカのお姉ちゃんのような存在です。この9年間、本当に親切にしてもらいました。
その毎日の思い出は、引っ越ししたからといって途切れるようなものではありません。
やっぱり合鍵、リズの分も作っとこっと。