ざまあみやがれいブログの記事『今年の夏、全原発停止でも電気は足りる!だが政府試算は「足りない」その理由を徹底追求』に掲載されていたビデオを紹介します。
ビデオをまず観てください。(直接ここに載せる術を知りません。なので文字起こしをしました)
モーニングバード「そもそも総研」より。
去年7月の政府試算によると、原発がすべて停止した場合に、2012年夏の電気は9%足りない、ということになっていたが、実は別の試算があった。
公表されなかった電力の試算とは。
菅・前首相の側近だった、前内閣審議官の梶山恵司氏と下村健一氏に聞く。
↓ここからは文字起こしした内容です。
『テレビ朝日「モーニングバード」内コーナー「そもそも総研」
"2012年の夏の電力は足りる!"
『そもそも、原発全停止でも、電気は足りるのだろうか。
去年7月、当時のエネルギー環境会議の議長だった玄葉光一郎氏によって、
原発が全停止すると、2012年の夏の電気は、9%足りないという政府試算が発表されていた。
これが今のところ存在する、唯一の公式な政府の試算。
足りない足りないと新聞も書いている。
ところが、実は、違う試算もあった。
その試算をした、元内閣審議官、梶山恵司氏に話を聞く。
Q.この夏を考えた時に、電気は足りるんですか?足りないんですか?原発が全部止まっても。
A.「足ります。
政府が発表した9.2%足りなくなる、という試算なんですけれども、根拠が非常に極端な前提に基づいてのものなんです。
それを再計算し直しますと、大体2%台くらいは、なんとかプラスになるのではないかと。
より楽観的な前提に立てば、プラス6%くらいという結果を、去年の夏くらいに試算しました」
足りないとする試算の内訳
需要 1億7954
供給力 1億6298
余裕は -1656(-9.2%)
国家戦略室という政府機関には、実はAチームとBチームの二つが存在し、Aは経産省、Bは民間出身の人間で構成されている。
民間出身のチームで計算された二種類(より現実的とやや楽観的)の試算の内訳
需要 1億7076
供給力 1億7558
余裕は 482(2.8%)
需要 1億6822
供給力 1億7828
余裕は 1006(6%)
Q.どういうことがあると、電力が6%余るのと、9%足りないという、違いが出るかということなんですが?
A.「足りないという試算の方は、再生可能エネルギーは,全く想定されていません」
Q.ゼロ?
A.「ゼロです」
Q.それから他でいうと、
A.「真夏に定期点検する予定になっている火力発電所があったり(なんでわざわざ真夏に定期点検?!)、
これは計上できるだろうと。これが320万キロワットです」
Q.本当にピークというのはせいぜい2週間くらいの範囲だと思いますけど、わざわざその2週間に定期点検をもってきているということですか、このシナリオは?
A.「まあその、データ上ではそういうふうになっています。わざとかどうかは知りませんけれども」
Q.じゃあ、せいぜい1ヵ月ずらせば済むことだということですよね?
A.「ですからまあ、ここに計上したわけです」
-9.2%という試算は、いろいろ極端な状況をわざわざ設定して出されているようだ。
そこで、項目ごとに詳しく検証していく。
[1] 需要の1億7954と、1億7300の差はどうして出たのか。
・経産省チーム
猛暑だった2010年夏のピークを前提
・民間チーム
昨年夏のピーク時実績(1億5661万キロワット)を元に、もちろん節電の効果もあってのことだが、それでも1億7300で足りるだろうという試算
この時点で、経産省チームと民間チームの間には、878の差が出ている。
[2] 供給力の1億6298と、1億7076の差はどうして出たのか。
・経産省チーム
火力発電の定期点検を、夏のピーク時に行うと設定
・民間チーム
そんな時にわざわざやらなくても、消費が落ち着く時期に行う
この時点で、320の差が出てくる。
さらに、
・経産省チーム
他者からの受電をゼロに、そして自家発電の追加もゼロに設定
・民間チーム
あり。その量144と120
この時点で、584の差が出てくる。
そしてさらに、再生可能エネルギーの供給力において、
・経産省チームはゼロ、
・民間チームは280(太陽発電の分のみ)と設定
政府が認定しているだけで700万キロワット(原発7基以上に相当)ある。
余裕は?
どうも9%足りないという試算は正確ではないようだ。
ではなぜ、公表しなかったのか。
内閣官房審議官 下村健一氏へのインタビューより。
Q.去年の夏の段階で(2012年の夏の電力が)6%余るという試算もあったというのが、今になってでてきている。
これはどういうことなんだということなんですけれども、なんなんですか?
A.「その試算、僕も見ました、当時」
Q.見てるんですか?
A.「見ました、はい。
だけど、政府っていうのは、基本的にまず、調査機関ではないから、やった試算を全部そのままホイホイと出すわけではないわけですよ」
Q.ただあの時、菅政権の時にですよ、やっぱり脱原発という方向に舵を切って、世論の中では菅さんのバッシングがすごかったわけで、
試算をしたら、来年の夏でも電力は足ります、というのを出せば、プラスにこそなれ、マイナスにはならなかったと思うんですよ。
菅さんとしては、6%余裕という方を出した方が、自分のためになったはずですよね?
A.「それはそうですよね。
だけど、そこが本当に政権の責任というもので、威勢よくただ、脱原発を旗を振るだけだったら、この案が出た瞬間に『しめた!よし発表だ!』でしょ?
だけどやっぱり菅さんとしては、政府として本当に脱原発を進めたかったから、だったら責任を持つ形になるまでは出させないね、『本当に出したいね、でも出せない』という気持ちだったわけですよ。
つまり、これで出した後で、例えばこの点、理論的に弱いじゃないかと突っつかれたり、
またこの6%の余裕が、結果的にそんなになかったみたいな話になったりしたら、
逆に、必要以上に、脱原発の流れに対する不信が生まれるじゃないですか。
やっぱり国民としては、脱原発も望みかもしれないけれども、電力供給を絶対に不安定にしないでほしいというのも望みだから、
一方の電力供給の方に不安をもし与えちゃったら、脱原発の流れ自体にブワッと影響しますよね。
それは出来ない。
絶対に、確かな一歩一歩で、山に登っていかなきゃいけない。
そのためには今は出せない。そういう苦渋の判断だったんですよね」
梶山氏
「楽観シナリオ、中間シナリオという形で、第二弾として、もう少しわかりやすく発表するとか、そういうことも考えられると思うんですけど、
そもそも菅総理が退陣されて、我々としてもそこで役目が終わりましたので、結局そこで、我々の検討は終わったということです」
足りない、という話は言いやすい。
足りないけど足りたっていうのは問題無いけれども、足りる、と言って実際足りなかったら大変なことになる。
ということで、足りるという試算を確実に証明するためにいろいろやっているうちに、政権が終わってしまった。
その後、その試算は闇に葬られたままで、再生可能エネルギーの件に関しても全く無視されたままである。
では、足りるという方向で考えた時、電気代はどうなるか?
Q.電気の料金というのは、本当に10%上がらないとダメなのかどうか、ということなんですが?
A.「燃料代がそのうちどれくらいなのかと。そして今回の原発事故の関係費用、これも含まれているのかいないのか。
それも全然わからないわけです。
それと、今回の件は、どこまでが電力会社の責任かというのも、明確ではないわけです。
そうであれば、われわれが本当に負担する義務があるのかですね、そういう倫理的な問題も全く議論されていないわけですね。
それで一方的に10%上げますと通告してくるのは、独占企業でなければできない話ですね」
Q.総括原価方式ということで、高い燃料を買ってきても、それに利益を乗っけて、電気料金ですよ、というのが今までできてわけですよね。
普通だったら、競争があれば、燃料を安く仕入れようとしますよね。
これを例えば、総括原価方式をやめると、電気代はどれくらい下がるのか、というのはわかりますか?
A.そもそも、いまだに総括原価方式を続けていられること自体が驚きですよね。
これだけのことが起きて、国民のみなさん方に相当な無理を言わなければならない。
福島の人達は、想像を絶する苦労をしているわけですよね。
そうした中で、あたかも3.11が無かったかのごとく、原発の再稼働を無理にさせようとしたり、
電気料金の値上げとか、電力不足をあおったり、そういう全体の仕組みをまずきちんとやっていかない限り、
夏に10%値上げというのは、普通だったらとても理解し得ないものだと思います」
では、発送電一体と、総括原価方式をやめたら、電気代は何%下がるのか?
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長からの返答は、30%。
電気料金以外で、総括原価方式を取り入れている事業は何か?
水道、ガス、電車である。
飛行機と電話は、2000年までは総括原価方式であった。
この方式は、まだまだ見直す所はあると思われ、料金も下がる可能性も多々あるが、安定供給ということに関しては効果がある。
とにかく、この夏は、原発が全部停止しても、電気は足りる。
このことは確かなのである』