うちの二階の浴室は桃色。
この家を、最初に見に入った時、旦那もわたしも、この桃色タイルにショックを受けた。
ふたりとも、桃色が苦手なんである。
もう少し正直に言うと、嫌いなんである。
おまけに、前のオーナーの老夫婦は、生前ずっと二階だけで暮らしていて、世話も面倒になっていたのか、床も所々剥がれていた。
わたしは即、この家を買おうと思ったけれど、引っ越してもこの二階の浴室だけは使うまい、と勝手に決めていた。
それで、ほぼ二年近く、決めた通りに、一階のシャワー室だけを使ってきたのだけど、
去年の秋に帰省した時、やっぱお風呂に浸かるのはええなあとつくづく思ったので、
あの桃色部屋で過ごすことに対する抵抗を少しでも和らげる(←おおげさ?)ための手段を考えた。
けれども、その手段は、すご~く注意して考えなければならない。
うるさい男がいるからである。
模様の種類、色合いや感じが、奴の気に入るものでないと却下されてしまう。
なので、これを見つけたものの、この感じがどうも奴の嫌いなタイプっぽかったので、一カ所だけやってみた。
アイスキャンディの棒みたいなんで、ゴシゴシ擦って写し絵するやつ。
これはたまたま、ボタンを買いに行った店で見つけたもので、デザインはともかく、色合い的にはオッケーかと思って買った。
予想に反して、旦那も気に入ったようで、これを少しずつ、うるさくならない程度に、増やしていく予定。
ところが……、
この緑のラグ(床の剥がれた部分を隠すため)を見た旦那。
「あんたの色彩感覚を疑う!」と、思いっきり呆れた口調で言い出した。
写真の、ヒーターに近い部分の、ちょいと見えてる緑色のんがそう。
ええぇ~!とびっくりするわたしに、
「どうしてこの部屋に、こんな色を加えるの?これしか無かったの?それとも思いっきり安売りやったってこと?」とガンガン言い足す旦那。
「桃色を抑えるために、わざわざこの色を選んで買うたのに」と言うと、やれやれ……という素振りをしながら出て行った。
さらに、これはちょっと、わたし的にも普段は絶対に買わない種類の物……。
二年半ぶりに替えたシャワーカーテンと一緒に買ったワゴン売りの超~安かったカーテンリング。
これも指差して「このチャラチャラしたのはもぎ取る」と言う……およよ……。
さて、この家に引っ越してからずっと引っかかっていた、もうひとつのちっちゃいこと。
それはヘアドライヤー。
かなり古くなっていたが、それなりに使えていた。
ところが、半年前ぐらいから、使用中に柄の所の一部がどんどん熱くなってきて、最近ではもうヤケドをしてしまうぐらいになっていた。
なので、ついでに買おうと売り場に行き、息子がマイナスイオンが出るのがいいと言っていたのを思い出して選んだ。
けれども、どこを見ても値段が書かれていない。
箱からすると、ちょいと高そうだったけれど、まあレジで聞いて高かったらやめようと思い、抱えて行った。
「いくらですか?」
「9ドルです」
「え?」
「9ドル」
「9ドル……」(これ以上聞いて、この数字が上がるのは良くない。このままでいってまえ)
いやはや、こういう時の心の葛藤ったら無いわけで、しかもそれを見せるわけにはいかず、ものすごい速さでいろいろ考えるのである。
というわけで、9ドルで手に入れたヘアドライヤー。
家に戻って箱を開けようとすると、あれれ?もう開いているではないか……。
しかも、中身が取り出された形跡がありまくりではないか……。
結局、熱風が出てくる先っぽにつけるプラスティックのノズルが無いことがわかった。
まあでも、どっちにしてもいつもノズル無しで乾かすので、ええんやけどね。
けど、そういう事情で安くなってるならなってると、一言説明してくれてもええんちゃうかと思ったりもする、
アメリカ生活12年目の、ある冬の午後なのであった。
この家を、最初に見に入った時、旦那もわたしも、この桃色タイルにショックを受けた。
ふたりとも、桃色が苦手なんである。
もう少し正直に言うと、嫌いなんである。
おまけに、前のオーナーの老夫婦は、生前ずっと二階だけで暮らしていて、世話も面倒になっていたのか、床も所々剥がれていた。
わたしは即、この家を買おうと思ったけれど、引っ越してもこの二階の浴室だけは使うまい、と勝手に決めていた。
それで、ほぼ二年近く、決めた通りに、一階のシャワー室だけを使ってきたのだけど、
去年の秋に帰省した時、やっぱお風呂に浸かるのはええなあとつくづく思ったので、
あの桃色部屋で過ごすことに対する抵抗を少しでも和らげる(←おおげさ?)ための手段を考えた。
けれども、その手段は、すご~く注意して考えなければならない。
うるさい男がいるからである。
模様の種類、色合いや感じが、奴の気に入るものでないと却下されてしまう。
なので、これを見つけたものの、この感じがどうも奴の嫌いなタイプっぽかったので、一カ所だけやってみた。
アイスキャンディの棒みたいなんで、ゴシゴシ擦って写し絵するやつ。
これはたまたま、ボタンを買いに行った店で見つけたもので、デザインはともかく、色合い的にはオッケーかと思って買った。
予想に反して、旦那も気に入ったようで、これを少しずつ、うるさくならない程度に、増やしていく予定。
ところが……、
この緑のラグ(床の剥がれた部分を隠すため)を見た旦那。
「あんたの色彩感覚を疑う!」と、思いっきり呆れた口調で言い出した。
写真の、ヒーターに近い部分の、ちょいと見えてる緑色のんがそう。
ええぇ~!とびっくりするわたしに、
「どうしてこの部屋に、こんな色を加えるの?これしか無かったの?それとも思いっきり安売りやったってこと?」とガンガン言い足す旦那。
「桃色を抑えるために、わざわざこの色を選んで買うたのに」と言うと、やれやれ……という素振りをしながら出て行った。
さらに、これはちょっと、わたし的にも普段は絶対に買わない種類の物……。
二年半ぶりに替えたシャワーカーテンと一緒に買ったワゴン売りの超~安かったカーテンリング。
これも指差して「このチャラチャラしたのはもぎ取る」と言う……およよ……。
さて、この家に引っ越してからずっと引っかかっていた、もうひとつのちっちゃいこと。
それはヘアドライヤー。
かなり古くなっていたが、それなりに使えていた。
ところが、半年前ぐらいから、使用中に柄の所の一部がどんどん熱くなってきて、最近ではもうヤケドをしてしまうぐらいになっていた。
なので、ついでに買おうと売り場に行き、息子がマイナスイオンが出るのがいいと言っていたのを思い出して選んだ。
けれども、どこを見ても値段が書かれていない。
箱からすると、ちょいと高そうだったけれど、まあレジで聞いて高かったらやめようと思い、抱えて行った。
「いくらですか?」
「9ドルです」
「え?」
「9ドル」
「9ドル……」(これ以上聞いて、この数字が上がるのは良くない。このままでいってまえ)
いやはや、こういう時の心の葛藤ったら無いわけで、しかもそれを見せるわけにはいかず、ものすごい速さでいろいろ考えるのである。
というわけで、9ドルで手に入れたヘアドライヤー。
家に戻って箱を開けようとすると、あれれ?もう開いているではないか……。
しかも、中身が取り出された形跡がありまくりではないか……。
結局、熱風が出てくる先っぽにつけるプラスティックのノズルが無いことがわかった。
まあでも、どっちにしてもいつもノズル無しで乾かすので、ええんやけどね。
けど、そういう事情で安くなってるならなってると、一言説明してくれてもええんちゃうかと思ったりもする、
アメリカ生活12年目の、ある冬の午後なのであった。