ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「米国法律学の下では、第一義的な加害者が、その不法行為によって生じた全ての損害に責を負う」

2013年01月18日 | 日本とわたし
THE WALL STREET JOURNALの電子版に掲載されていた記事を紹介させていただきます。

↓以下、転載はじめ

東電に99億円請求した被ばく米兵8人の代理人弁護士に聞く
肥田美佐子のNYリポート2013年 1月 18日


東日本大震災後「トモダチ作戦」のため三陸沖に停泊中、甲板を洗い流す空母「ロナルド・レーガン」の乗組員(2011年3月)

東京電力福島第1原発の事故から、1年10カ月余りがたった。

日本では、東電に対し、福島県内外の住民による複数の刑事告訴が進行中だと報じられているが、
米国でも、昨年12月21日、カリフォルニア州サンディエゴの米連邦地裁に、東電を相手取り、1億1000万ドル(約99億円)の損害賠償を求める民事訴訟が起こされた。

訴えたのは、サンディエゴの米海軍基地を母港とする、原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員8人。
東日本大震災直後、米海軍の被災地支援プロジェクト「トモダチ作戦」で、三陸沖に停泊し、飛行甲板での除染作業などに当たっていた。

訴状によると、原告のなかには、甲状腺の異常や持続性片頭痛、腸からの出血などの症状が見られるという。
当時、女性乗組員のおなかの中にいた乳児(昨年10月、誕生)も、損害賠償の対象になっている。

請求額の内訳は、原告一人あたま1000万ドルの損害賠償金に加え、東電が放射能に関する正しい情報を与えず、被ばくし、健康を害したとして、
二度と同じようなことが起こらないよう抑止することを目的とする、「懲罰的損害賠償」3000万ドルだ。
また、別途、原告をはじめ、日本の被災者などに治療を施す、非営利医療組織の設立基金、1億ドルも求めている。

原告が、放射能によるものだと主張する症状は、どのように発症したのか。
乗組員の労働災害などに、直接責を負うべき米海軍でなく、東電を訴えたのはなぜか。
米海軍は、正確な情報を、把握していなかったのか。
原告代理人で、サンディエゴ在住のカリフォルニア州弁護士、ポール・C・ガーナー氏に話を聞いた。

――東電が虚偽の情報を流し、安全性を強調したことで、乗組員が被ばくし、健康を害したとの主張だが、訴訟に至った経緯を教えてほしい。

ガーナー弁護士:原告の一人である女性乗組員(リンジー・クーパーさん、23)の父親が、娘の体調が悪いと言って訪ねてきたのが、そもそもの始まりだ。
彼女は、震災直後、ロナルド・レーガンの飛行甲板で「トモダチ作戦」に携わっていたが、かつてないほど体重が増加し、体調もすぐれなかった。
精神的なものなのか、肉体的なものなのか、父親は非常に心配していた。

調査していくうちに、ほかの乗組員のなかにも、具合の悪い人がいることが分かった。
何かに集中できなくなったり、体重が急増したり、逆に体重が約14キロ激減したり。激やせした女性は、胆のう摘出の手術を余儀なくされた。
腸からの出血や鼻血甲状腺に問題が生じた人も複数いる。
原告は、全員20代の若者だ。
いずれも以前は健康だったが、徐々に症状が進み、ある時点で顕著になった。
連日、片頭痛に襲われるようになった人もいる。

――症状と被ばくとの因果関係を診断したのは、米海軍専属の医師か。

ガーナー弁護士:違う。
米海軍は、当時、被ばく線量は最小限に抑えられていた、という見解に終始している。
自然光の下で、30日間くらい浴びる程度の放射線量だった、と。
だが実際は、非常に高かった。
4基の原子炉がメルトダウン(炉心溶融)し、放射性物質が飛散した。

被災地支援に駆け付けた乗組員たちは、ヘリコプターでロナルド・レーガンに戻ると、自分たちの除染作業をしなければならなかった。
安定ヨウ素錠を飲み、着替え、体を洗浄した
だが、(有害な物質を体内から排出する解毒治療である)キレート療法は行われなかった
ヨウ素剤も、乗組員全員には行き渡らなかった
2年たたないうちに、これだけの症状が出ているのだから、今後も様子を見続けるべきだというのが、わたしの見解だ。
否定論者は、何を以てノーと言うのか理解できない。

症状が顕在化している人は、急増している。
(ロナルド・レーガンが属する)米第7艦隊だけでなく、米海軍駆逐艦「プレブル」、原子力空母「ジョージ・ワシントン」など、「トモダチ作戦」にかかわった軍用船の乗組員らだ。

診断に当たったのは、非常に高名な、米国人の環境毒物学者兼内科医で、(08年)ニュージャージー州の住人が、フォード自動車を相手取って起こした(集団訴訟の)クラスアクションにもかかわったことがある。
同州の組み立て工場から廃棄された、有害化学物質が飲料水に流れ込み、何百人もの住人ががんになったケースだ。

――被ばくと健康被害の関係は、立証が難しいと言われるが、その医師が、今回の訴訟についても、因果関係ありと判断したのか。

ガーナー弁護士:そうだ。
関係がある可能性のほうが高い、と結論づけられた。
もっと多くの症例が出れば、(立証が)容易になるという。
現在、調査を進めている最中だが、何らかの症状が出ている乗組員は、すでに40人を超えている。
骨や骨格組織の衰弱などが見られる人もいる。
単なる偶然にしては、人数が多すぎるだろう。
医者は、因果関係があるという認識を、日ごとに深めている
これは、独断や根拠なき主張ではない。

被告である東電の回答期限(2012年12月21日の提訴から60日間)以内に、追加の訴えを起こすつもりだ。
これから(病気が)どうなるか、誰にも確かなことは分からないが、治療が必要になることだけは間違いない。
退役軍人管理局は、イラクやアフガニスタンからの帰還兵への補償さえ不十分である。
被ばくした乗組員への対応となれば、なおさらだ。

――ロナルド・レーガンには、原子炉が2基搭載されている。乗組員らは、放射能や被ばくに関する知識が豊富だったのではないか。

ガーナー弁護士:空母の原子炉に問題が生じた場合の心得はあったかもしれないが、原発事故の救援については、何の訓練も受けていなかった。
ヘリコプターやジェット、レーガンにも、放射線測定器はあったが、(当時の情報では)害はないと思っていた。

当初から、東電は、問題の程度を軽視していた
組織的な詐欺行為だ。
彼らは現場にいた。
何が起こっているのか知っていたはずだ。
もし自宅で事故が起こり、どのくらい危険か知っていたら、救援に来る人たちに警告するのが務めであるのと同じことだ。

(昨年4月、第1原発を視察した米上院エネルギー委員会の)ワイデン米上院議員は、帰国後、その惨状について注意を喚起し、食物連鎖にも言及している。

「わたしたちのために東電と闘ってほしい」と、日本人からも連絡を受けているが、それはできない。
まず日本には、(ある者が、法的利害関係を共有する別の構成員の許可なしに、代表として提訴できる)クラスアクションが認められていない。

――1億ドルの医療基金とは?

ガーナー弁護士:非営利組織の医療施設を設立し、治療だけでなく、被ばくした人たちがどうやって、生産的で実りある生活を送れるか、といった教育も行う
日本の人たちも利用できるように、ハワイに立ち上げる。
日本国内では、十分な補償を受けられないのではないか、と危惧するから
だ。

この悲惨な状況から、何らかの希望の兆しを見いだせるとしたら、東電の協力を得て、被害に遭った人たちが、適切な治療を受けられるようにすることだろう。
希望や、前進する力を失った被災者のためにも、先んじて訴訟を起こすことで、この問題が葬られないように、世間の関心を喚起したい。


――本来なら、直接の雇用主である米海軍を訴えるべきだったのでは?

ガーナー弁護士:彼らも、(東電から)情報を与えられた側だ。
現場の放射線量を測定しにいったのではなく、救援活動をしにいったのだ。
最初に情報を流したのは、東電である。
乗組員らは、米海軍と米政府の言うことを信頼し、自分の身を守ろうとしたわけだが、発信元が、肝心な問題について明らかに情報を隠し、うそをついていたとしたら、部下や自分の身を守ることはできない


当初、乗組員は、自給式呼吸器も、放射能汚染防護スーツも、不要だと教えられていた
ヘリコプターなどの航空機がレーガンに戻り、原告らが洗浄作業に当たったわけだが、問題は、汚染水の海洋投棄により、洗浄に使った海水が、放射性物質に汚染されていたことだ

乗組員の安全を確保すべきなのは米海軍だから、彼らを訴えればいい、とはならない。
米法律学の下では、第一義的な加害者が、その不法行為によって生じたすべての損害に、責を負うことになる
勝つ自信はある。
日本で十分な対応を受けられない人たちのためにも、思い切って立ち向かうことにした

――今後、こうした訴訟が増えていくと思うか。

ガーナー弁護士:何とも言えないが、福島から流れてくるがれきが来年、米西海岸にたどり着くことを考えると、イエスと答えるかもしれない。
すでに、プラスチックなど軽いものは、ハワイに到着している。

先日、米西海岸ワシントン州ブレマートン市の海軍基地に、停泊中のレーガンを見ていたら、福島から流れ着いたと思われる無人の漁船が漂っており、米海軍のスタッフが船底に穴を開け、海に沈めていた。

同様の訴訟を起こしたいという人から連絡をもらうが、むやみやたらにやるつもりはない。
東電からはまだ返答がないが(日本時間1月16日時点)、もっと時間が必要だというのなら、それでもかまわない。
われわれの目的は、無理やりお金を出させることではなく、根拠となる事実に基づき、救済策を話し合うことにあるのだから。

(インタビュー後記)
米東部時間1月17日、訴状の宛先である、東電ワシントンDC事務所に問い合わせたが、訴訟についてはノーコメントという返事が返ってきた。


*****************

肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト

東京都出身。
『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。
ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などに エディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。
2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ト リノ)に参加。
日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。
2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘され る。
現在、『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『ニューズウィーク日本版』『プレジデント』などに寄稿。
ラジオの時事番組への出演や英文記事の執筆、経済・社会関連書籍の翻訳も行う。
翻訳書に『私たちは"99%"だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。
マンハッタン在住。 

↑以上、転載おわり


この件についての記事を読んだ時、こちら側の、いわゆる米国人さんらの反応はどないやろと、いろいろと調べたことがある。
そしたら、意外や意外、恥を知れ!とかいう過激なもんから、元軍人さんらの、否定的な意見がけっこう多くてびっくりした。

イラクやアフガニスタンに派遣されて戻ってきた兵士の中にも、劣化ウラン爆弾の被ばくに苦しんでる人がいる。
けど、ここアメリカも、他の原子力マフィアに牛耳られてる国と同じく、放射能の影響なんかあるわけありませんがな~と相手にされへんことが多いので、
病院をたらい回しにされるか、帰還しても職無しで、医療保険さえ持てずにいるか、まあとにかく、けっこう放ったらかしにされて困ってはる。

今回のこの訴訟は、そんな社会の風潮に、一石投じたろか、という意味もこめられてたんやなあと、このインタビューを読んで思た。

『非営利組織の医療施設を設立し、治療だけでなく、被ばくした人たちがどうやって、生産的で実りある生活を送れるか、といった教育も行う。
日本の人たちも利用できるように、ハワイに立ち上げる。
日本国内では、十分な補償を受けられないのではないか、と危惧するから』

そして、日本での被害者のために直接関われへんけれども、十分な補償も教育も治療も受けられそうにないことを危惧してくれてる。
まあ、ハワイは中間といえども、誰もがそう簡単に、すっすすっすとは行けんのやけども……。

また、他に関連する記事見つけたら、今度は自分で訳して書いてみます。

とにかく今夜の結論。

東電さん、聞こえてます?
「米国法律学の下では、第一義的な加害者が、その不法行為によって生じた全ての損害に責を負う」って言うてはりまっせ~!
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意味不明な理由で体罰容認してた橋下さん、あんたが言うな!

2013年01月18日 | 日本とわたし
東京23区内の大学法学部生のある男性が、ご自身のブログ『大学生の徒然日記』に、体罰は否定するべきものという論点を、いろんな方面から書いてはった。
わたしは、体罰にはなんの意味も効果もなく、心を萎縮させ、良くない方向にねじ込んでいくだけの愚かな行為やと思てる。

今回、大阪のバスケ部員の自殺事件で、この体罰についての論議が盛んに行われてるみたいやし、
またまた、例のごとく、体罰賛成派のはずの橋下閣下が、自分の言うたことは高い高い棚に上げて、この事件の指揮する言うておおはしゃぎ。
なんやしらん、入試中止やの、教師全員解雇やの、とんでもないことを言うてるみたいやし……。
どこまで閣下ゴッコが好っきゃねん……。

それでは、これから、この件について書かれた3つの記事を、連ちゃんでご紹介させてもらいます。
↓以下、転載はじめ

●体罰は日本の伝統ではない●
2013-01-13

大阪のバスケ部員が体罰で自殺したニュース関連で、ネット上でも体罰是非をめぐって議論が起きている。

日本だと、体罰が昔から行われていたと思われているようだが、間違いである。
戦前だと、1879年に体罰は禁止されている。
体罰が学校で解禁されたのは、戦争になり、軍事教練のために、軍人が学校に進出してからである。
なお、体罰肯定派の教員は、その時代に影響を受けた教員、つまり大正生まれと、その時代に彼らの生徒だった教員に多い。
実際、その人たちが定年になる昭和50年代に入ると、体罰はかなり減っている。
しかし、体育会だけは、体罰文化が根付いてしまったのである。

明治初年に出た「日本教育史資料」によれば、体罰規定のある藩校と郷校は、維新期に存在した270藩のうち6校と、全体のたったの2%過ぎない。
江森一郎「体罰の社会史」によると、江戸時代の寺子屋、藩校などでは、体罰はほとんどなかったとされる。
1620年に、布教のためにきたイエズス会士のフロイス、1775年に来日したツンベルク、19世紀に日本に駐在していたオールコックなども、日本では体罰が行われていないという記述を残している。

日本は、子供を大切にするという面においては、西欧よりも進んでいた。
死刑制度についても、810年~1156年においては、特例を除くと、死刑が行われていないことから、世界で最も早くに死刑を廃止していたとも言われる。
日本は、かなり先進的だったのである。

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なお、以前私のブログでも扱ったが(「●お馬鹿な体罰信者● 」)、日本には『体罰の会』 ってものまで存在する。
実質的には、親や学校教師による、生徒への暴行を推奨している団体であるが、発起人とかみると、政治家とかもいる(特に保守政治家に多い)。
石原前都知事とかも、たしか体罰肯定で共闘していた団体です。
メディアは、この会に取材しにいかないのかな?
この『体罰の会』にも、客観的なデータとかがなく、精神論に終始している。
体罰は、子供への身体への危険を伴う。
そんな危険を冒してでも体罰するからには、それなりの実証研究が必要だが、体罰信者のよりどころは、「体罰で精神が鍛えられる」程度のお馬鹿な論拠だ。

●体罰は有害なだけ● で書いたように、体罰は医学的・心理学的にも子供に悪影響である。
体罰信者は、一体全体、なぜ体罰を有効とするのか、データを示すべきだ。


●体罰は有害なだけ●
2013-01-11

大阪市のバスケ部で、体罰によって自殺者が出てしまった。
ネット上でも、体罰の是非で意見がわれている。
しかし、感情論のレベルでいくら議論しても、話は収拾がつかない。
「体罰はダメだけど、愛のムチならいい!」などというのは、表現の違いであって、「言葉遊び」の域を出ない。
医学・心理学・統計学・法律学などの、客観的な分析を参考にしつつ、話を進めるべきだ。
私は、体罰否定派である。
以下が、その理由である。


●法律学からの体罰否定
体罰は良い悪いという話がありますが、前提事実として、学校教育法11条の但し書きで、体罰は禁止されていることをちゃんと認識すべきでしょう。
教員に、生徒を懲戒する権利は、同条で認めていますが、体罰は出来ません。
一発ぐらい殴るなら大丈夫とか、勝手に解釈する人がいますが、文科省は、身体への有形力の行使を認めていません。
「100円ぐらいなら万引きにならない」とか、身勝手なことをいう万引き犯とレベルが同じです。
違法は違法です。
日本は「法の支配」する国で、野蛮国家ではない。
「法」というルールに従うのが当然。
ちなみに、一般社会では、身体に有形力の行使をすれば、暴行罪に問われます(刑法上、相手の目の前に石を投げつけただけでも、暴行罪が成立します)。
教育上も、一般社会では違法とみなされる手段で、生徒を懲戒するのは明らかにおかしい。

●医学からの体罰否定
友田明美(熊本大教授)のハーバード大医学部との共同調査によると、「4~15歳のころに平手打ちされたり、むちで尻をたたかれたりするなどの体罰を年12回以上、3年以上にわたって受けた米国人」を対象に調査したところ、体罰を受けていない子供よりも前頭前野内側部が平均19.1%、集中力や注意力にかかわる前帯状回が16.9%、認知機能にかかわる前頭前野背外側部が14.5%小さかったことが判明しています。体罰は、脳を委縮させるのです。体罰でストレス下に置かれた脳が、ストレスホルモンを大量に分泌し脳の発達を抑制してしまうのです。

●心理学からの体罰否定
また、こうした脳への悪影響が影響してか、心理学の研究でも、体罰の有害性の調査は多い。
体罰を受けた子供は、強い恐怖心や不安感を抱きやすく、抑うつ傾向が強く、感情表現に乏しく、一方、強い攻撃性や反社会性、習癖異常をきたすことが多いそうです。
親や教師は、体罰によって、子供の悪さの修正を期待して体罰を行いますが、残念なことにこれは独善的な思い込みで、
実際は、恐怖心、不安感、反抗心などを植え付けることの方が圧倒的に多いのです。
 
●統計学からの体罰否定 【1】平均値への回帰
「体罰すると成長する」という、経験則的なことを言う人もいる。
特にスポーツ選手では、体罰があったから成長した、という人も珍しくないない。
しかし、これは統計学の「平均値への回帰」という現象で、説明が可能だ。
人間は常に、一定のパフォーマンスは発揮できない。
ゆえに、学校の試験の成績でも、スポーツの結果でも、どうしても波が生じる。
平均値への回帰というのは、ある回に、平均から大きく外れた数値を出すと、次の回では、より平均に近い数値を出しやすい、という現象のことである。
例えば、スポーツで、ある試合で成功したとしても、次の試合では、より平均に近いパフォーマンスになる可能性が高いので、パフォーマンスは低下する。
逆に、ある試合で失敗しても、次の試合では、より平均に近いパフォーマンスを発揮しやすいので、パフォーマンスは向上するのである。

では、人はいつ褒め、いつ叱るかについて考えてみよう。
普通は、成功した時に褒めて、失敗したら叱る。
これを、さっきの、平均値への回帰という現象にあてはめると、
ある試合で成功すると褒められるが、次の回では、平均値により近い数値のパフォーマンスに戻るので、パフォーマンスは低下し、
ある試合で失敗すると叱られるが、次の試合では、より平均に近いパフォーマンスに戻るので、パフォーマンスは向上するのである。
経験則的にいえば、「褒める→パフォーマンス低下」・「叱る→パフォーマンス向上」という法則が導けるが、
残念ながら、パフォーマンスの上下は、既述のように、褒めたことや叱ったこととは関係がない。
これが、多くの指導者が、体罰は有効な教育手段だと考えてしまう理由である。
選手が失敗した時に体罰を行うと、経験則的にいえば、次の試合でパフォーマンスが高まるので、体罰がパフォーマンスを高めた、と錯覚してしまうのである。
的確なアドバイスで選手が成長するのは理解可能だが、体罰で選手の能力が向上するなどというのは、完全な錯覚に過ぎない。

●統計学からの体罰否定 【2】生存バイアス
また「生存バイアス」も指摘しておく。
生存バイアスとは、脱落ないし淘汰されたサンプルを忘れたがために、一部の成功者のサンプルにだけ着目し、誤った判断を下すことをいう。
つまり、プロの選手の、「体罰で俺・私は成長した」という意見にだけ着目すると、体罰は有効な教育手段に思えてしまう。
しかし、こうした判断は、体罰によって怪我させられ、選手生命を絶たれた人や、挫折を強いられたり、淘汰されてしまった人を見落としている。
途中で脱落を余儀なくされた選手も勘定に入れると、体罰は、多くの選手を苦しめているという結果が得られるのである。

※元プロ野球選手の桑田真澄さんのインタビューも興味深いので紹介しておく。

リンク:体罰は自立妨げ成長の芽摘む

以下抜粋。
・暴力で脅して、子どもを思い通りに動かそうとするのは、最も安易な方法(だが正しい指導ではない)。
・殴られるのが嫌で、あるいは指導者や先輩が嫌いになり、野球を辞めた仲間を何人も見ました。
スポーツ界にとって大きな損失です。
・スポーツ医学も、道具も、戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。
・アンケートでは「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%にのぼりました。
「あの指導のおかげで成功した」との思いからかもしれません。
でも、肯定派の人に聞きたいのです。
指導者や先輩の暴力で、失明したり大けがをしたりして、選手生命を失うかもしれない。それでもいいのか、と。

→ ラストの指摘は、私の「生存バイアス」という考え方と共通しています。
桑田氏は、スポーツを続けている人だけにアンケートをとっているようですが、スポーツを体罰によって断念させられた人も含めて調査しなおすと、体罰肯定派はもっと少ないはずです。


●結論●
体罰は有害な指導方法なのは、以上から明白でしょう。
未開の部族じゃないんだから、感情論などではなく、もっと科学的・論理的に体罰の是非を考えるべきです。
体罰だとかのよく分からん教育法は、科学的検証で淘汰していくことが重要です。



●橋下市長、お前が言うな●
2013-01-11

橋下大阪市長は、大阪のバスケ部員自殺事件で、調査チーム発足させてましたね。
学校は、証拠隠蔽したり揉み消そうとするので、第三者の調査チームはいいと思います。
一般論としては。

今回の橋本大阪市長の偽善は、本当に酷い。

橋下大阪市長は以前、
僕は、もみあげをつまんで引き上げるくらいまではいいと思うんですけどね、そんなのしょっちゅうありましたし、それぐらいなかったらねー、ダメです。
大阪市でそれを体罰とか何とか言われたら、政治で僕が引き受けますから
」と発言してて、
さらに、「腹をどつかれた時の痛さ、そういうものが分かれば、相手側の方に対しても歯止めになると思う」と、いじめ対策の側面も強調したりして、意味不明な理由で体罰を容認してた。
たしか、橋下市長は、自分の子供も体罰(という身体への暴行)を加えて育てている、とTVで言ってるの覚えてます。
法律上、体罰はダメです。

で、こんな事件が起きたら、橋下さんは、「こういう問題が起きた時、僕が直接指揮命令できる条例を作れないか」なんていう。
体罰賛成派の橋下さんが、体罰事件の指揮するって、どういうジョークなんですか?
「生徒の自殺」を利用して、教育行政への介入を強めようとは。
すんごい神経してますね。
「大失態」とか学校のこと批判してましたが、橋下さん、あんたも批判される側なの忘れるな。

>「大阪市でそれを体罰とか何とか言われたら、政治で僕が引き受けますから」
橋下さん、この言葉は嘘だったのかな?

それに、橋下さんの盟友こと石原さんは、自殺者とか行方不明者を大勢出した、極悪な戸塚ヨットスクールの戸塚さんと、体罰肯定で共闘してますしね。
いまさら偽善者ぶったところで遅い。
マスコミももっと、橋下氏とか石原氏の、過去の体罰肯定語録とか出せばいいのに。
体罰がどれだけ生徒を傷つけて、死に追いやって、苦しめたかの資料とともにね。


↑以上、転載おわり


ほんま、あんたが言うな!!に尽きます。
っていうか、あの男は、自分が批判されるという状況を察知するや否や、今までどないやったか、なに言うたかやなんてもうどうでもよくて、
手のひらをくるっと返して言いたい放題。
それがあんまりにもあからさまで恥ずかしいほどで、普通の神経やったら到底できんやろという、ある意味見事でもあるので、
呆れまくってしもて、あんぐりあいた口から言葉も出てけえへん。

ようまあこれだけ、文化や教育を蔑ろにできるもんやわ。
っつうか、小小学高学年並み、いや、そんなん言うたら高学年の子が怒ってくるな、
例える人間がおらんほどの痴呆的ええかげんさ……なにより許せへんのは、「生徒の自殺」を利用して、教育行政への介入を強めようっちゅう根性。
どこまで腐っとんのですか。

大阪人さん、たのんまっせ!
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