焼き物の贋作事件の、話を続けます。
3) 北大路魯山人贋作事件
昭和39(1964)年3月、東京日本橋の白木屋(デパート)で「魯山人陶器書画遺作即売展」が
開催されました。(魯山人没後、4年目の事です。)
陶器460余点、書画40余点が出品されて、開催当初から、大変な盛況で、108点が売れたそうです。
しかし、その後、それらの作品は、贋作ではないかという声が、美術関係者から、高まります。
驚いた白木屋は、専門家3人による、鑑定会を開いて、真贋を明らかにして、贋作は買い戻すと公表し、
異例の措置に出ます。
5月12日、報道関係者らが、取り囲む中、開かれた鑑定会で、書画は90パーセント、陶器は20~
30%が 贋作であると断定されます。
白木屋が、「信用に関る大問題」として、異例の作品の買い戻しを行い、販売展の責任をとりました。
(当時で、395万円の売り上げで、現在の価値で換算すると、だいたい4,000万円位
との事です。)
尚、余談ですが、「即売展」の話を持ってきたのは、佐野乾山事件に、真作派として、深く関係した、
古美術品鑑定家の、秦秀雄氏と、古美術商・米田政勝氏だそうです。
4) 古代ペルシャ秘宝展事件
昭和57(1982)年、東京日本橋の三越で「古代ペルシャ秘宝展」が開かれ、47点が出品されます。
しかし開幕直後から、研究者や古美術商により、「ほとんどが贋作である」という非難の声が上がります。
展覧会の、実質上の主催者である、国際美術社長は、7点については、米国の鑑定機関
「アメリカン・アカデミー」の鑑定証があり、他のものについても、本物であると主張します。
それに対し、研究者や古美術商から、図像的な誤りをはじめ、個々の作品に対して、具体的な疑問点が
提示されます。そして入手ルートが、解明されていく中で、イラン人古美術商と、日本の古美術商が
捜査線上に上り、6点については、古美術商の依頼により、日本の工房で、作られた事も判明します。
展示品47点の大半が、偽物だったと判ります。中には、2億円の売値が、付いた品も有った様です。
三越は、デパート業界の老舗だけに、大きな問題となり、岡田茂社長の解任に発展しました。
5) 高麗青磁詐称事件
谷俊成と言う、陶芸家が、オーストリアのウイーンの、王宮博物館で、2000年に、個展を開きます。
外務省や、京都市も、この催しを、後援していました。
彼は、高麗青磁の再現者として、紹介されますが、実際は単なる、陶磁器の輸入業者で、
韓国で作らせた 青磁を、展示したに過ぎませんでした。
6) 岸和田事件
平成4年10月に開催された、大阪府、岸和田市制施行70周年記念、「東洋の官窯陶磁器展」に
関して起こった贋作事件です。
この展示会は、紀州徳川家由来の、中国や李朝の陶磁器の中で、今まで世に知られていないかった、
世界的名品を、展示したもので、それにまつわる贋作騒動です。
この事件は、清朝の秘宝に関わる事件で、大正末期、奉天城にあった、清朝の秘宝である、古陶磁が
軍閥張作霖によって略奪され、現在の価値で、750億円の軍資金と引き換えに、紀州徳川家に渡った
事に成っています。
現在、紀州文化振興会が、所管する、それらの陶磁器は、陶磁図鑑として公開されています。
しかし、これらの所管品は陶磁界からは、黙殺されています。
・ 真作派、贋作派(主に、新聞社)に分かれて、論争を繰り返しましたが、白黒はっきりする事無く、
幕引きに成った様です。
・ 勿論、科学的鑑定も行われ、真作と断定されましたが、これを信じる陶芸界の、人は少ない様です。
7) 最後に科学鑑定について、お話します。
① 物質中の、各元素を定量的に、分析する方法は、昔は、化学的方法を取りましたが、現在では、
「蛍光 X 線分析」、「原子吸光分析」、「質量分析」、「放射化分析」など多く有ります。
② 天然の陶磁器の原料には、産地毎に、元素比率が、微妙に変化しています。
この事を使い、その作品が、何処で作られかも、判別できる様になりました。
又、真作の釉と、対比する事により、贋作を見破る事も、可能に成りました。
③ しかし、科学的鑑定が、そのまま、受け入れられる訳では、有りません。
分析を依頼する人又は、団体、分析をする人、分析方法、分析すべき物、分析対比物、そして
結果の発表方法など、疑惑を挟む余地が、無い場合のみ、科学的鑑定は、有効に成ります。
鑑定の最終判断は、人が行う事に、成るからです。
美術品や、工芸品には、常に真贋の問題が、付いてきます。第三者として、傍観するには、なんら問題に
なりませんが、金銭が絡む様な事には、十分注意する必要が有ります。
以上にて、陶磁器の真贋の話を、終わります。
3) 北大路魯山人贋作事件
昭和39(1964)年3月、東京日本橋の白木屋(デパート)で「魯山人陶器書画遺作即売展」が
開催されました。(魯山人没後、4年目の事です。)
陶器460余点、書画40余点が出品されて、開催当初から、大変な盛況で、108点が売れたそうです。
しかし、その後、それらの作品は、贋作ではないかという声が、美術関係者から、高まります。
驚いた白木屋は、専門家3人による、鑑定会を開いて、真贋を明らかにして、贋作は買い戻すと公表し、
異例の措置に出ます。
5月12日、報道関係者らが、取り囲む中、開かれた鑑定会で、書画は90パーセント、陶器は20~
30%が 贋作であると断定されます。
白木屋が、「信用に関る大問題」として、異例の作品の買い戻しを行い、販売展の責任をとりました。
(当時で、395万円の売り上げで、現在の価値で換算すると、だいたい4,000万円位
との事です。)
尚、余談ですが、「即売展」の話を持ってきたのは、佐野乾山事件に、真作派として、深く関係した、
古美術品鑑定家の、秦秀雄氏と、古美術商・米田政勝氏だそうです。
4) 古代ペルシャ秘宝展事件
昭和57(1982)年、東京日本橋の三越で「古代ペルシャ秘宝展」が開かれ、47点が出品されます。
しかし開幕直後から、研究者や古美術商により、「ほとんどが贋作である」という非難の声が上がります。
展覧会の、実質上の主催者である、国際美術社長は、7点については、米国の鑑定機関
「アメリカン・アカデミー」の鑑定証があり、他のものについても、本物であると主張します。
それに対し、研究者や古美術商から、図像的な誤りをはじめ、個々の作品に対して、具体的な疑問点が
提示されます。そして入手ルートが、解明されていく中で、イラン人古美術商と、日本の古美術商が
捜査線上に上り、6点については、古美術商の依頼により、日本の工房で、作られた事も判明します。
展示品47点の大半が、偽物だったと判ります。中には、2億円の売値が、付いた品も有った様です。
三越は、デパート業界の老舗だけに、大きな問題となり、岡田茂社長の解任に発展しました。
5) 高麗青磁詐称事件
谷俊成と言う、陶芸家が、オーストリアのウイーンの、王宮博物館で、2000年に、個展を開きます。
外務省や、京都市も、この催しを、後援していました。
彼は、高麗青磁の再現者として、紹介されますが、実際は単なる、陶磁器の輸入業者で、
韓国で作らせた 青磁を、展示したに過ぎませんでした。
6) 岸和田事件
平成4年10月に開催された、大阪府、岸和田市制施行70周年記念、「東洋の官窯陶磁器展」に
関して起こった贋作事件です。
この展示会は、紀州徳川家由来の、中国や李朝の陶磁器の中で、今まで世に知られていないかった、
世界的名品を、展示したもので、それにまつわる贋作騒動です。
この事件は、清朝の秘宝に関わる事件で、大正末期、奉天城にあった、清朝の秘宝である、古陶磁が
軍閥張作霖によって略奪され、現在の価値で、750億円の軍資金と引き換えに、紀州徳川家に渡った
事に成っています。
現在、紀州文化振興会が、所管する、それらの陶磁器は、陶磁図鑑として公開されています。
しかし、これらの所管品は陶磁界からは、黙殺されています。
・ 真作派、贋作派(主に、新聞社)に分かれて、論争を繰り返しましたが、白黒はっきりする事無く、
幕引きに成った様です。
・ 勿論、科学的鑑定も行われ、真作と断定されましたが、これを信じる陶芸界の、人は少ない様です。
7) 最後に科学鑑定について、お話します。
① 物質中の、各元素を定量的に、分析する方法は、昔は、化学的方法を取りましたが、現在では、
「蛍光 X 線分析」、「原子吸光分析」、「質量分析」、「放射化分析」など多く有ります。
② 天然の陶磁器の原料には、産地毎に、元素比率が、微妙に変化しています。
この事を使い、その作品が、何処で作られかも、判別できる様になりました。
又、真作の釉と、対比する事により、贋作を見破る事も、可能に成りました。
③ しかし、科学的鑑定が、そのまま、受け入れられる訳では、有りません。
分析を依頼する人又は、団体、分析をする人、分析方法、分析すべき物、分析対比物、そして
結果の発表方法など、疑惑を挟む余地が、無い場合のみ、科学的鑑定は、有効に成ります。
鑑定の最終判断は、人が行う事に、成るからです。
美術品や、工芸品には、常に真贋の問題が、付いてきます。第三者として、傍観するには、なんら問題に
なりませんが、金銭が絡む様な事には、十分注意する必要が有ります。
以上にて、陶磁器の真贋の話を、終わります。