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藤谷治『下北沢』

2006-10-08 17:12:54 | ノンジャンル
 どこでだったか忘れましたが、推薦されていた藤谷治さんの「下北沢」を読みました。
 自分の売りたいものを展示するボックススペースを貸して商売している僕、元アイドルタレントのみずほ、その彼氏のミチオ、どんどん男を変えるホステスのミナナミ・ナミコ、僕がくどいている年上でバイリンガルの桃子さんらが先ず飲み会の参加者として登場。画家志望で僕の店の前で必ず食事をする女の子や、僕の店の常連客で「ホットパンツ親爺」と呼ばれているオカマらしい中年などが棲息する街として、まず下北沢が紹介されます。そして土蔵真蔵。しょっちゅう店に来ては文学論を僕にふっかけます。詩か何かわからないものを紙に書いて道行く人に売り付けようとしたりして、町中の人から忌み嫌われています。僕は桃子さんと楽しくデートしたりしていたのですが、そんな間に土蔵真蔵はポエトリー・リーディングという、詩のようなものを朗読して聴衆にお金をせびるという新手の商売を始めて、ますます街の人の顰蹙を買います。僕はとうとう土蔵を殴ってしまい、その時に彼がシンナーを吸い始めたことに気付きます。一方、ミナナミ・ナミコの書いた小説が本になり、僕はその素晴らしさに感動します。また、ミチオと同棲することになったみずほは、再起のための資金づくりのため、キャバクラで働くことになります。そしてある日、僕の店に土蔵真蔵とその年老いた両親が来て、詩集を売るためにスペースを借りたいと言いますが、申込書を書く段階で土蔵真蔵は怒って店を出てしまい、店に残った両親の話では、彼は日本におけるポエトリー・リーディングの第一人者だったのが、脳の病気にかかってしまい、発作を起こしては救急車で運ばれるという生活をして行く中で、今のような暮らしになってしまったとのことでした。そしてしばらくして、土蔵真蔵は発作を起こして死んでしまいます。
 下北沢を舞台にした様々な人間模様を描いているのですが、大半を占めているのは、土蔵真蔵の話と僕と桃子さんの会話です。自己破壊的な土蔵真蔵の話はかなり読みごたえがありますが、この小説を楽しめるかどうかは、僕と桃子さんの会話を楽しめるかどうかにかかっているような気がします。
(私はそこそこ、楽しめましたが‥‥)こんな言い方をすると生意気に聞こえるかもしれませんが、まあ読んでみてもいい本じゃないかな、と思いました。