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トニー・パーカー『殺人者たちの午後』

2010-02-16 18:32:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、トニー・パーカー著、沢木耕太郎訳の「殺人者たちの午後」を読みました。著者がインタビューした話を短編集としてまとめた本です。
 第一話「過去のない男」は、父親にひどい暴力を振るわれ続け、人生の大半を施設で過ごしてきた男が、言い方が気に入らないというだけの理由で通行人をメッタ刺しにして殺してしまい、その後年寄りの囚人の助言で心理学を勉強するようになる話。
 第二話「ノー・プロブレム!」は、14才の時に酔って発作的に祖父を刺殺してしまったが、将来には楽天的な男の話。
 第三話「とんでもないことが起きてしまった」は、泣くのを止めない1才半の息子を殴り殺した男が、自分の感情が爆発するのを恐れ、良心の呵責に苛まれている話。
 第四話「涙なんて流しても」は、家庭環境に恵まれず、17才で娘を産みますがすぐに養子に出し、次々に男につくしては去られ、自分をレイプしようとしたオランダ人の船員を刺殺し、その後刑務所でレズビアンに目覚め、将来を見据えている女性の話。
 第五話「マラソン・マン」は、グループで窃盗を繰り返す青春期を過ごした後、少年と少女を暴行して絞殺し、隔離棟に入れられた後は一日5マイル走り、マッチ棒による模型作りに熱中する男の話。
 第六話「恋に落ちて」は、23才の時、持ち物を盗んだ犯人と決めつけて、自宅の向かいの部屋に眠っていた住人をクランク棒でめった打ちにして殺し、その後また殺人を犯してしまうのではという恐怖に襲われながら、刑務所内でトラブルを起こし続けていましたが、心理テストの実施者だった22才年上の女性と将来を歩む希望を持てるようになった男の話。
 第七話「記憶の闇」は、小作人の長男として生まれ、労働に明け暮れる日々を過ごし、状況証拠だけで妻殺しの冤罪を受けていると話す白髪の老人の話。
 第八話「サイコパス」は、頭痛とひどい鬱病に悩んでる中で、妻の浮気に悲観して2人の幼い娘を殺し自殺しようとしましたが助かり、精神病質と診断されて特別病院に入れられ、半永久的に隔離された経験を語る男の話。
 第九話「この胸の深い穴」は、19才の時窃盗して追ってきた警官の頭を石で殴って殺してしまい、刑務所では退屈なのでトラブルを起こしては罰を受けることを繰り返し、11年経った今でも仮出所のめどが立たない男の話。
 第十話「神様と一緒に」は、施設を転々として幼少時を過ごし、17才でシングルマザーとなり、29才で嫉妬からカッとなって親友の女性を絞殺しましたが、その後狂暴さを自制できるようになり、仮出所後おだやかな男性に巡り会って結婚し、就職もでき、信仰にめざめて仲間と出会えた女性の話です。
 スタッズ・ターケルと同じスタイルで書かれた本ですが、人を殺すことの重みを再認識させられました。特に第八話の精神病院の閉鎖的な息苦しさは身につまされました。トニー・パーカーの他の本も読んでみたいと思います。文句無しにオススメです。