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古今亭志ん生『なめくじ艦隊 志ん生半生記』

2011-01-26 08:36:00 | ノンジャンル
 中島京子さんが紹介していた、古今亭志ん生さんの'56年作品『なめくじ艦隊 志ん生半生記』を読みました。志ん生さんが自身の半生を語り、それを弟子の落語家金原亭馬の助が聞き書きしたものです。
 侍上がりの厳しい父の家を出て、ロクでもない人間がうようよしていた地元・浅草で放蕩を尽くし、子供時分からしょっちゅう寄席に行っていたことから、噺家になろうと思い立ち、日給60銭の時に俥屋に70銭払うという落語家の極貧生活を経験し、家賃を払えないために6回も次々に家を追い出され、時代は下り東京大空襲に会った後、酒を求めるのと、酔った父を家に置いておくのは時勢がら家族が敬遠したことにより、満州を目指すこととなり、新京の放送局では無名時代の森繁久弥の世話になり、ロシア侵攻の前日に満州入りして、冥土の土産にと一席頼まれますが、客は泣いてばかりで落語にならず、ロシア侵攻後は財産を全て巻き上げられて餓死寸前となるも、何とか日本に帰還する、という話が、志ん生の口語で書かれています。
 明治の末から大正の始めにかけて娯楽は芝居と寄席だけであり、寄席は全盛期で東京に百軒近くあったのが、今の映画館に変わっていったこと、当時の落語は座布団の前に火鉢と湯のみがあり、お茶を時間かけて飲んでから、初めてお辞儀して落語を始めたこと、日本人の財産を奪うために、ロシア軍は先ず囚人たちを送り込んで無法の限りを尽くさせたことなど、初めて知ることが多く、また、無賃宿泊で捕まった時に検事に宿代を立て替えてもらったり、満州でロシア人に突き殺されそうになった時にロシア人に急にお呼びがかかったり、餓死寸前のところを落語家としての自分を知っている人に助けられたりと、際どい時にことごとく人との出会いに恵まれている点にも感心しました。明治から大正にかけての落語の歴史と、ロシア占領時の満州の様子を知るためだけでも読む価値のある本だと思います。ノンフィクションが好きな方には特にオススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)