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アルフレッド・ジャリ『ユビュ王』

2011-01-30 09:41:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが著書『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』の中で紹介していた、アルフレッド・ジャリの1896~1901年の作品『ユビュ王』を読みました。4つの戯曲とジャリの講演記録などからなっている'70年に刊行された本です。
 『ユビュ王』は、妻の「ユビュおっ母」に焚き付けられたユビュ親父が、伯爵に任じてくれたばかりの王を暗殺して王冠をせしめ、息子たちも殺しますが、末っ子のプーグルラスだけが生き残り、亡者たちから復讐の剣を授けられます。財産を没収するために全ての貴族を自ら死刑にしたユビュ親父は、次に司法官と財政家たちも全員墓穴へ落とし、自ら税の徴収に向かいますが、ユビュ親父に加担するも後に親父によって投獄された大尉が脱獄して、ロシア皇帝の元へ馳せ参じ、共に親父を倒さんと兵を起こし、それに対抗して親父がロシアに向けて進軍してる間に、親父の財産を横取りしようとしていたユビュおっ母はプーグルラスによって追放され、ロシア軍から逃げて来た親父と出くわし、船でフランスへ逃げるという話。
 『寝とられユビュ』は、多面体の研究者アクラスの屋敷を乗っ取ったユビュ親父が、おっ母を寝とった男を串刺しにするため、その実験台になる者を探し、金持ちを捕らえるという話。
 『鎖につながれたユビュ』は、それまでの行動を反省したユビュ親父が、自ら奴隷となり、無理矢理伯爵とその姪の召使いとなり、姪の婚約者に牢獄に送られ、望み通り裁判で奴隷船送りとなりますが、結局最後には立場が逆転し、奴隷船の主人となってトルコへ向かうという話。
 『丘の上のユビュ』は、『ユビュ王』を短縮したものです。

 ジャリ本人が言っているように、ユビュの心を占めている三つのものとは、「形而下学」(物質的な物)と「ゼニっこ」と「くそったれ」であり、はちゃめちゃなキャラクターであるとともに、使われている文体も、卑語、造語、掛詞、シャレなどのオンパレードで、ジャリがシュールレアリスムやダダイスムの先駆者と言われているのもうなずけるものでした。『ユビュ王』の冒頭で、いきなりユビュ親父が「くそったれ!」と叫ぶというのもすごく、初演の時にその一声で大騒ぎになったというのも目に浮かびます。彼はジャン・ヴィゴやボリス・ヴィアンが早くして世を去ったように、アル中で34才で亡くなっているのですが、こうした話を聞く度に、やはりフランスというのは文学の国なのだなあと思ってしまうのでした。19世紀末にこんな戯曲が書かれていたというのはまさに奇跡だと思います。文句無しにオススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)