朝日新聞の特集記事で紹介されていた、横山秀夫さんの'12年作品『64(ロクヨン)』を読みました。
県警の広報官である三上は、一人娘が父に似た顔を苦にして疾走して以来、身寄りのない娘の死体を確認するために何度か妻の美那子と足を運んでいて、美那子は以前に掛かってきた無言電話が娘からのものだと信じていて、家を空けようとはしません。
県警では昭和の最後の年である64年に起こった少女誘拐殺人事件がまだ未解決のままでしたが、急に警視長官が県警を訪れ、事件現場で焼香し、被害者の唯一の親族となった雨宮の家でも焼香し、そこで記者のぶらさがり会見をすると言ってきます。三上は雨宮の許を訪ね、最初は断られますが、2度目に訪れた時、被害者の娘とその後亡くなった母の仏壇にお参りしている時、妻と娘のことを思って落涙し、それを見た雨宮は長官が来るのを許してくれます。そして三上と同期で今はエリート街道に乗った二渡が64事件の後に辞めた警官・幸田が残したとされる幸田メモの存在を追い、またやはり64事件の後に辞めた警官・柿沼について調べていることを知りますが、幸田メモは64事件の初動捜査のミスを暴くもので、警察を上げて揉み消したものであり、幸田は現在も警察に紹介してもらった警備員の仕事をしながら警察に監視されて過ごし、柿沼に関しては、自分のミスで人を殺してしまったという自責の念から、事件から14年経った今でも部屋に引き蘢っていることが分かります。
そんな折り、妊婦が老人を自動車事故に巻き込む事件が起こり、妊婦の名前を匿名にするしないで、三上と地元の記者たちとの間で険悪な雰囲気となり、場合によっては長官のぶらさがり会見を記者たちがボイコットするという話も出てきます。三上は上司の警務長の反対を押しきり、自分の判断で妊婦の実名と彼女の父が有力者であったこと、老人は既に死んでおり、その老人のこれまでの生涯の些細な部分まで発表し、地元の記者たちとの関係を修復します。一方、長官の訪問は、今まで地元出身者がなってきた刑事部長を今後は警視庁から送るようにすることを発表するためのものであることが、県警の皆に明らかにされます。
そして長官の訪問が近づいたある日、64事件をなぞるような女子高生誘拐事件が起こります。この事件を利用して長官の訪問を中止させ、刑事長官の座を守ろうとする刑事部は、広報官の三上に一切の情報を渡そうとせず、東京から多くの記者が詰めかめた記者会見場は、怒号の飛び交う場と化します。三上は部下に会見場を任せ、誘拐事件の捜査の第一線を担当する松岡に頼み込み、特殊捜査指揮車に同乗させてもらい、そこから携帯で会見場の部下に情報を流します。今回の被害者の父・目崎は、娘の携帯を使って犯人から掛かってくる指図に従い、車を運転し、最終的に2千万の金をドラム缶に入れて燃やすように言われます。そしてそのドラム缶の下には「娘は小さい柩に入っている」と書かれた紙が置かれていて、目崎はその紙を食べてしまおうとします。実際、目崎の娘は万引きの現行犯で既に捕まっていて、彼女から携帯を置き引きし、その携帯を使って目崎に連絡をしていたのは幸田でした。目崎は64事件の犯人であり、それは犯人の声を聞いていた唯一の人間である雨宮が、電話帳のあ行からくまなく電話をかけ、真犯人の声を探し出していたのでした。
事件の終わった今、三上と美那子は娘のいない生活を静かに送っています。そして二渡が刑事部長ポストの「召し上げ」の阻止を目的に動いていたことを知った三上は、改めて二人の仲を認めあうのでした。
主人公の長い独白であるとか、組織同士の権力争いについての策略であるとか、興味のない内容に、何度読むのを止めようとしたかしれません。登場人物もやたらに多く、それでも600ページを超える分量を読み終えたということは、それなりに面白い内容だったということなのでしょう。ミステリーとしても、それほど優れているとは思えませんでした。'05年作品『震度0』の時の読後感がよかっただけに、残念です。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
県警の広報官である三上は、一人娘が父に似た顔を苦にして疾走して以来、身寄りのない娘の死体を確認するために何度か妻の美那子と足を運んでいて、美那子は以前に掛かってきた無言電話が娘からのものだと信じていて、家を空けようとはしません。
県警では昭和の最後の年である64年に起こった少女誘拐殺人事件がまだ未解決のままでしたが、急に警視長官が県警を訪れ、事件現場で焼香し、被害者の唯一の親族となった雨宮の家でも焼香し、そこで記者のぶらさがり会見をすると言ってきます。三上は雨宮の許を訪ね、最初は断られますが、2度目に訪れた時、被害者の娘とその後亡くなった母の仏壇にお参りしている時、妻と娘のことを思って落涙し、それを見た雨宮は長官が来るのを許してくれます。そして三上と同期で今はエリート街道に乗った二渡が64事件の後に辞めた警官・幸田が残したとされる幸田メモの存在を追い、またやはり64事件の後に辞めた警官・柿沼について調べていることを知りますが、幸田メモは64事件の初動捜査のミスを暴くもので、警察を上げて揉み消したものであり、幸田は現在も警察に紹介してもらった警備員の仕事をしながら警察に監視されて過ごし、柿沼に関しては、自分のミスで人を殺してしまったという自責の念から、事件から14年経った今でも部屋に引き蘢っていることが分かります。
そんな折り、妊婦が老人を自動車事故に巻き込む事件が起こり、妊婦の名前を匿名にするしないで、三上と地元の記者たちとの間で険悪な雰囲気となり、場合によっては長官のぶらさがり会見を記者たちがボイコットするという話も出てきます。三上は上司の警務長の反対を押しきり、自分の判断で妊婦の実名と彼女の父が有力者であったこと、老人は既に死んでおり、その老人のこれまでの生涯の些細な部分まで発表し、地元の記者たちとの関係を修復します。一方、長官の訪問は、今まで地元出身者がなってきた刑事部長を今後は警視庁から送るようにすることを発表するためのものであることが、県警の皆に明らかにされます。
そして長官の訪問が近づいたある日、64事件をなぞるような女子高生誘拐事件が起こります。この事件を利用して長官の訪問を中止させ、刑事長官の座を守ろうとする刑事部は、広報官の三上に一切の情報を渡そうとせず、東京から多くの記者が詰めかめた記者会見場は、怒号の飛び交う場と化します。三上は部下に会見場を任せ、誘拐事件の捜査の第一線を担当する松岡に頼み込み、特殊捜査指揮車に同乗させてもらい、そこから携帯で会見場の部下に情報を流します。今回の被害者の父・目崎は、娘の携帯を使って犯人から掛かってくる指図に従い、車を運転し、最終的に2千万の金をドラム缶に入れて燃やすように言われます。そしてそのドラム缶の下には「娘は小さい柩に入っている」と書かれた紙が置かれていて、目崎はその紙を食べてしまおうとします。実際、目崎の娘は万引きの現行犯で既に捕まっていて、彼女から携帯を置き引きし、その携帯を使って目崎に連絡をしていたのは幸田でした。目崎は64事件の犯人であり、それは犯人の声を聞いていた唯一の人間である雨宮が、電話帳のあ行からくまなく電話をかけ、真犯人の声を探し出していたのでした。
事件の終わった今、三上と美那子は娘のいない生活を静かに送っています。そして二渡が刑事部長ポストの「召し上げ」の阻止を目的に動いていたことを知った三上は、改めて二人の仲を認めあうのでした。
主人公の長い独白であるとか、組織同士の権力争いについての策略であるとか、興味のない内容に、何度読むのを止めようとしたかしれません。登場人物もやたらに多く、それでも600ページを超える分量を読み終えたということは、それなりに面白い内容だったということなのでしょう。ミステリーとしても、それほど優れているとは思えませんでした。'05年作品『震度0』の時の読後感がよかっただけに、残念です。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)