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矢部嵩『〔少女庭国〕』

2014-11-17 18:25:00 | ノンジャンル
 しばらく更新していませんでした、こちらのブログをまた再開させていただきたいと思います。
 さて、朝日新聞で紹介されていた、矢部嵩さんの’14年作品『〔少女庭国〕』を読みました。
 卒業式に向かうため、講堂へ続く狭い進路を歩いていた、立川野田女学院の中学3年生、仁科羊歯子(しだこ)は気が付くと暗い部屋に寝ていた。部屋は四角く石造りだった。部屋には二枚ドアがあり、一方は取っ手がないので開けられず、もう一方の取っ手のついた開けられるドアには、白い貼り紙が貼ってあり、そこには「下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし、死んだ卒業生の人数をmとする時、n―m=1とせよ。時間は無制限とする。その他条件も試験の範疇とする。合否に於いては脱出を以って発表に替える」と書いてあった。羊歯子がドアを開けると、次の部屋にも1人の卒業生・村田犬子が寝ていて、羊歯子がドアを開けると目覚めた。その部屋も羊歯子が目覚めた部屋と同様の部屋だった。羊歯子と犬子はパニックを起こさないように注意しながら、次々とドアを開けていき、やがて人数が13人に達しても、顔見知り同士が存在せず、友達の繋がりすらやはり不自然に存在しなかった。しかし皆正規の生徒手帳を持ち、先生に関する知識や、学校での思い出などに関する知識は共通して持ち合わせていた。人数が13人になったところで、彼らは先に進むのを止め、時間つぶしのためにパーティを始め、いろんなゲームを行なった。携帯音楽は一つ一つと電池を使い切り、やがて全ての電池が死に、最終的には皆で鼻歌を口ずさんだ。ゲームに引き際はなく、シンガソングがやけくそに続き、水もない羊歯子の五日目、最初に死んだのは隣にいた犬子だった。餓死とも思えぬシンプルな死体だった。羊歯子が急を告げると一同自然にその手が止まり、ギャンブルもカードゲームも結局その時が最後になった。「ではとりあえず生き残る人を決めましょう」「イエー」パーティのノリで拍手が湧いた。それぞれが自己紹介し、無記名投票を終えると、何故だか羊歯子が選ばれてしまった。羊歯子は抵抗したが、既に殺し方も決められていて、選ばれた一人が全員を手にかけることになっていた。羊歯子が他の子を殺すのに、それ以外の子が手を貸してくれもし、最後に残った子は羊歯子を気遣ってかドアノブにシャツを括り、勝手に自殺していってしまった。
 ここまでが「少女庭国」と題された章で、次の章「少女庭国補遺」では、61人の少女が、やはり羊歯子と同じ状態に置かれた後、どのように行動したかが、書かれています。短いのだと数行、長いのだと数十ページに及ぶものがあり、ある者はドアを開けず、自室で自殺して終わり、ある者は隣の者を殺して終わり、ある者は隣の者に殺されて終わり、ある者はどんどんドアを開けた結果、卒業生の数を上回る生徒を目覚めさせ、かつお互いの知り合いが皆無という状況に陥り、ある者はやはりどんどんドアを開け、やがて食料問題が起き、最初は糞食と尿飲でしのぐも、それは一時的なもので、最終的には人肉食に行きつき、ある者は人骨を使って壁を掘り、ドアを壁から取り外すことに成功し、金属の道具を得ることによって、壁を効果的に掘ることに成功し、広大な空間を現出せしめ、ある者はその道具を使って過去の方向に掘り進め、以前そこに文明があったと思われる場所に到り、ある者は広大な空間に広がる文明社会に属する一員によって目覚めさせられ、その文明の持つ奴隷制度を見るに到るといったことが書かれていました。
 生徒の名前が皆「~子」であり、それも鉄子、支部子、軸子、県子、古事子、瀬戸子といった風変わりなものが多く、生徒の発言には「先生がいうのよはいじゃあお片付け競争しますみたいな。あほみたいなんだけどさ本当」のように、句読点を省略したものが多く見られました。ゲーム感覚の変わった構成の小説であり、殺伐とした小説でもありました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/